皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
まさむねさん |
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平均点: 5.86点 | 書評数: 1161件 |
No.361 | 5点 | モロッコ水晶の謎- 有栖川有栖 | 2013/02/04 22:02 |
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中編と呼んでもよい長さの短編3本+掌編1本で構成。
表題作の真相は,ある意味で衝撃的。確かに心理としてはあり得るのだけれども…うーん。でもまぁ,個人的に火村シリーズの短編は「色々あって,それで良い」と捉えているので,良しとしておきましょうか。 ちなみに,この作品集で一番印象に残ったのは「推理合戦」と題する掌編。こういうのは好きなんだなぁ。 |
No.360 | 6点 | 空耳の森- 七河迦南 | 2013/01/30 23:14 |
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前作「アルバトロスは羽ばたかない」において,私に極めて鮮烈な印象を与えてくれた作家。さてさて,最新作は?との気持ちで何の事前情報もなく読み進めた訳ですが…実に書評が難しい!何を書いても(私が思うところの)面白味を削ぐような気がしまして…。
(以下の記述は,重大なネタバレは避けてますが,真にこの作品を楽しみたい方にはオススメしません。) 中盤くらいまでは,ノンシリーズの短編集といった趣です(特に「アイランド」などは単独でも一定の評価をしたくなる出来栄えだけに)。しかし,中盤以降はやや趣が変化し,終盤に至って連作短編としての姿が見えてきます。この「繋がってる!」という発見感が爽快で,幾度か読み戻りました。各短編を時系列に並べ直したりする楽しみも。 また,この作品のみでも一応は楽しめると思うのですが,七海学園シリーズ,少なくとも前作「アルバトロスは~」は既読であることが望ましいです。(ちなみに,私は前作は既読でしたが,デビュー作「七つの海を~」は未読。そのため一部分かりにくい点も…)つまり,「繋がってる!」のはこの短編集内のみならず,前作を含めたシリーズ全体というわけです。感慨深いラストなのですが,これも前作あってのもの。連作短編が巧みな作者だなぁ。 |
No.359 | 7点 | 珈琲店タレーランの事件簿- 岡崎琢磨 | 2013/01/27 21:59 |
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『このミステリーがすごい! 』大賞最終選考作品の中から推薦された「隠し玉」作品。個人的には大賞を与えてもよい位の出来栄えと感じたのですが,出版に当たって全面的に改稿され,ミステリ要素の改善が図られたとのコト…なるほど。
舞台は京都。女性バリスタを始めとする登場人物も魅力的ですし,会話も軽妙で楽しめます。しかし,一筋縄ではいかない作品。なかなかに巧妙です。「過ぎたるは及ばざるが如し」的なご批判もありましょうが,私としては好みのタイプの作品。デビュー作でこれだけ売れたわけですし,経歴からも,個人的な今後の期待は高いです。 |
No.358 | 7点 | 密室蒐集家- 大山誠一郎 | 2013/01/24 22:49 |
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直球の密室短編5本。
余分な要素を極力削ぎ落としており,本格の純度は相当に高いです。一方で,その副作用といって差し支えないと思いますが,各短編とも偶然性に頼りすぎている印象は拭えません。ご都合主義と感じる方もいらっしゃるでしょう。また,記号的ともいえる人物描写(「密室蒐集家」たる探偵役も例外ではない)が合わない方もいらっしゃると思います。 でも,私は,むしろこのストイックさに好感を持ちました。“本格好き”の欲求を十二分に満たす作品であることは間違いないですし,割り切りも重要です(笑)。 ちなみに,マイベストは「少年と少女の密室」かな? |
No.357 | 7点 | 葬式組曲- 天祢涼 | 2013/01/19 15:18 |
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「葬式は無駄」との世論から高額の葬式税が導入され,事実上葬式が禁止されている日本。今日では,何ら儀式もせず速やかに火葬する「直葬」が一般的となっている。しかし,S県だけは,葬式助成条例の施行により,唯一葬式が行われる地域に。そのS県での葬儀社,その社員,葬儀に係わる人々を取り巻く連作短編です。
この設定自体が興味深いのですが,私は第一話「父の葬式」で完全に引き込まれました。年を経るにつれ,自分の身内を含めて葬式というものがある意味身近になってきますからねぇ。 各短編とも,ミステリとしても良いのですが,死と遺族というものを考えさせられる内容,しかし決して重くはない軽快な語り口に好感。その流れで最終話に突入するわけですが…。なかなか凝ったプロットでしたね。私はかなり楽しめました。 |
No.356 | 5点 | 母性- 湊かなえ | 2013/01/15 23:05 |
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タイトルどおりの内容なのですが,うーん,作者の意図は分かるようで,やっぱりイマイチ分からない。感情移入できる人物も少ないしなぁ。ちなみに,書き込んでおきながらアレですが,ミステリの範疇には入らないような気がします。
(以下,未読の方は注意) ラスト直前まで,いかにもこの作者らしい展開(嫌ミス的展開)なのですが,ラストの多方面ハッピーエンド感はどうなのだろう。個人的には,何ら救いようのない話よりは良いような気もしますが,だからといって爽快な読後感も受けなかったし,何か釈然としなかったのですよねぇ。むしろ,ソコに何か作者が述べたかった真実があるのかなぁ…などと考えてみたのですが,私の読み方が浅いのか,よく分かりません。 |
No.355 | 5点 | ココロ・ファインダ- 相沢沙呼 | 2013/01/12 23:33 |
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写真部の女子高生4人をそれぞれの主人公に据えた連作短編。各短編にミステリが織り込まれているものの(第3話のモノは結構好みですが…),「青春小説」としての側面の方が強く出ていた感じですね。
この作者は,デビュー作「午前零時のサンドリヨン」以降,高校生の心理,特にコンプレックスをテーマにしています。本作も同様であり,「またか?」という思いが無かったといえば嘘になるのですが,多視点でもあり,これまでとは多少違ったテイストも感じたので,まぁ,悪い印象は残らなかったですかね。でも,そろそろこのテーマとは違った作品も読んでみたいなぁ。 |
No.354 | 7点 | キングを探せ- 法月綸太郎 | 2013/01/11 22:17 |
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4人による交換殺人。序盤は犯人側視点での倒叙形式です。次第に法月親子の視点の比重が増していって…という流れ。捻りも効いており,さすがと思わせる精緻なプロットです。(おそらく)敢えて重厚感を抱かせず,端正なタッチ&分量にした点も,私はプラスに評価します。
法月親子の長編は「生首に~」以来だと思うのですが,私はこちらの作品の方が好み。 |
No.353 | 6点 | 夜の蝉- 北村薫 | 2013/01/07 21:14 |
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前作に比して,「私」とその周辺人物にスポットライトを強く当てています。(その分,円紫師匠の出番は少なかったかな?)「私」の成長譚としても楽しめました。
「ミステリ」というよりも,純粋な「小説」として読ませてくれます。特に,人間の悪意の描き方が深くて秀逸。勿論,ミステリとしての味付けがあるからこそ,際立つのでしょうが。 私としては,前作「空飛ぶ馬」よりもこちらの方が好みかな。 |
No.352 | 4点 | 高原のフーダニット- 有栖川有栖 | 2013/01/06 16:01 |
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①オノコロ島ラプソディ
思いっきり羽目を外した作品。非常にバカらしいトリックなのですが,最終的にはその伏線(?)にニヤリとさせられたので,まぁ良しとしましょう。 ②ミステリ夢十夜 掌編10連発。メタ的掌編と言えるのもありますが,結局は何をしたかったのか疑問。 ③高原のフーダニット 最も「らしい」作品なのでしょうが,犯人特定のロジックには,個人的に異議アリ。いくら何でもアレでは見えないと思うなぁ…。 |
No.351 | 5点 | 玩具店の英雄 座間味くんの推理- 石持浅海 | 2013/01/03 21:59 |
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座間味くんシリーズの短編集。
過去の「事件」について食事をしながら雑談⇒不自然な点について座間味くんが推理⇒事件の様相がガラッと変わってくる… という一連のスタイルは前作同様です。雑談者としては,前作の座間味くん,大迫警視正に加え,科警研所属の女性エリート津久井さんが新たに登場。彼女が事件の「語り部」となります。 座間味くんの語るロジックはなかなか楽しめたのですが,同じパターンが続きますと先が読めますし,正直ちょっと食傷気味に…。ちなみに,作者お得意の食事&酒のシーンは好きです。 |
No.350 | 6点 | 体育館の殺人- 青崎有吾 | 2012/12/31 17:12 |
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「エラリー・クイーンを彷彿とさせる論理展開+抜群のリーダビリティ」という触れ込みの,鮎川哲也賞受賞作。
選評にもあるとおり,突っ込みたくなる穴はありますねぇ。ハウ(密室)についても分かり易すぎるかなぁ…と。 しかし,一本の傘からのロジック展開に拘り,真っ向勝負に挑んだ心意気は買います。鮎川哲也賞史上初の平成生まれだそうで,今後の更なる飛翔に期待します。 ちなみに,タイトルについては,様々なご意見がありましょうが,内容とは確かにリンクしているし,まぁスルーしておきましょう。次作は「図書館」あたりでどうでしょうか(笑)。 来年も良い読書ができますように。皆様良いお年を。 |
No.349 | 6点 | ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件- 七尾与史 | 2012/12/24 22:33 |
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サクサクっと進行させつつの,終盤の捻りはなかなか良かったですね。単なるキャラ小説かと勝手に思い込んでいたことが功を奏した(?)のか,個人的には,結構ベタなネタながらも想定以上に楽しめましたよ。
ちなみに,主人公の性癖と「ドS」とは全く異質のものであります。さらに,そもそも彼女がドS気質であるのかも怪しい。確かに,タイトルには相当の違和感があります。 |
No.348 | 4点 | 沈没ホテルとカオスすぎる仲間たち- 七尾与史 | 2012/12/21 23:18 |
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「日本社会から脱落したバックパッカーの皆様の生態」という側面を除けば,かなり平凡な作品という印象は拭えません。「新しさがあり,感動がある。」とカバーの裏に書いてあったのだけれども…そうかなぁ?
ちなみに「はい!コレ伏線(orミスディレクション)です!」って声高に叫びすぎかなぁ…と。一応フーダニットってコトなのでしょうが…。 |
No.347 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖3- 三上延 | 2012/12/19 21:54 |
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どんどん安定感が増している印象です。安心感をもって読書できるシリーズがあるということは,何とも幸せなことだなぁ…と感じ入っています。
「栞子さんの家族の秘密」については,結構引っ張るなぁ…というもどかしさと,簡単に秘密の開示がなされシリーズ終了ってのも困る…という,相反した心情を持っています。それも,このシリーズにハマっている証拠か。早く次作を読みたいですね。 |
No.346 | 8点 | とむらい機関車- 大阪圭吉 | 2012/12/16 11:12 |
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(創元推理文庫版)
戦前の探偵小説作家の中で,本格度の高さ,手法の先駆性という意味においては,やはり大阪圭吉氏は外せない…旨の薦めを目にし,かつ,個人的には唯一読んだことのある短編「デパートの絞刑吏」が良かった記憶もあったため,何気なく手にした次第。 結論から言えば,「坑鬼」と表題作がずば抜けて面白かったですね。 「坑鬼」は,極めて完成度の高い本格中編。海底炭鉱という,現代では想像しにくい舞台ながらも,最後まで読めば,決して「時代が違うお話」とは思えない辺りが相当に趣深いです。今だからこそ読むべし。傑作。 また,表題作も記憶に残ります。「豚の連続轢死事件」「鉄道会社を退職した理由」という謎が魅力的ですし,ラストの反転も見事。「日常の謎系」の原型とすら言いたくなるプロットです。 他にも,倒叙形式の「雪解」,ホワイが魅力の「気狂い機関車」など,多種多彩。若くして戦地に散ってしまわれたことが,本当に惜しく,悔しい。 |
No.345 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖2- 三上延 | 2012/12/15 21:14 |
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有意義な読書時間を頂戴いたしました。キャラの魅力,古書の薀蓄,温かな雰囲気などなど,確かに売れる要素が多いですねぇ。読者層も幅広いのではないでしょうか。早速続編も読むことになりそうです。 |
No.344 | 5点 | 魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?- 東川篤哉 | 2012/12/10 23:35 |
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魔法使いと本格ミステリという突っ込みどころ満載の設定(笑)を,逆に上手く使ってまとめていますねぇ。そこは流石人気作家。
ただし,ネタとしてもギャグとしても小粒だったという印象。(1時間ドラマには,キャラ設定を含めて丁度良い塩梅かもしれません。むしろ狙っているのか?) 個人的には,烏賊川市シリーズか鯉ヶ窪学園シリーズの方が好みかな。 |
No.343 | 3点 | ケルベロスの肖像- 海堂尊 | 2012/12/08 11:22 |
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「バチスタ・シリーズついに完結!」という謳い文句の割には,何とも微妙な内容。これまでの作品で散らかしまくっていた種を,無難に(無理やり?)押し込めた感じでしょうか。
したがって,バチスタ・シリーズはもとより,さらに広い範囲の桜宮シリーズ(特に「螺鈿迷宮」と「ブラックペアン1988」)を読んでいないと,ちょっと意味不明に感じるものと思われます。なお,ミステリ的要素を期待してはいけません。 個人的には,これまでの作品に対する「懐かしさ」は感じたものの,本作品自体はかなり散漫であり,駄作と言わざるを得ません。 注:シリーズファンなら楽しめる作品なのかも。私は,シリーズの初期は結構楽しんで読んでいたのですが,途中でどうしても作者の作風が肌に合わなくなったものですから…。 |
No.342 | 7点 | ビブリア古書堂の事件手帖- 三上延 | 2012/12/02 18:30 |
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店長の栞子さん,アルバイトの五浦クンその他登場人物も魅力的で,非常に読み心地のよい連作短編ですね。売れるのも素直に頷けます。…と言うか,こういう作品が売れるってこと自体で,何かいい気分になれるなぁ。そのうち続編も読んでみます。 |