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まさむねさん
平均点: 5.89点 書評数: 1282件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.482 7点 法月綸太郎の功績- 法月綸太郎 2014/08/27 22:04
 粒ぞろいの短編集。この作者の短編は本当にレベルが高く,ハズレがないですね。
 ベストは日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作の「都市伝説パズル」。ド直球の本格短編で,シンプルな構成がこれまたイイ。ラストまで考え抜かれています。この作品のみ再読だったのですが,数年ぶりに読んでも楽しめました。
 次点は「イコールYの悲劇」か。個人的にダイイング・メッセージ系は苦手なのですが,それ以上の捻りとロジカルな解決に満足。
 「ABCD包囲網」の反転も見事。でも,作者本人も認めている「警察は何のために犯人に罠をかけたのか?」という点は気になりましたねぇ。

No.481 5点 菩提樹荘の殺人- 有栖川有栖 2014/08/25 23:29
 そもそも昔から火村シリーズは読み心地がよくてお気に入りなのですが,この短編集の共通テーマである「若さ」の苦さが,これまた心地よかったですね。(ちょっと強引かなぁ…と思わなくもない作品もありましたが。)
 その中でも,「探偵、青の時代」に登場する,学生・火村の立ち振る舞いが最も印象に残りそうかな。

No.480 6点 貘の檻- 道尾秀介 2014/08/16 19:10
 近年は非ミステリ作品も多い作者ですが,この作品は,作者の初期作風を思い起こさせ,ファンとしては懐かしさとともに(?)引き込まれました。過去と現在,夢と現実が入り混じった構成,舞台が地方の寒村,向日葵とか蜘蛛も登場して…って,初期の複数の作品が思い浮かびますよねぇ。
 というわけで,ちょっと過度に期待を膨らまして読んでしまったのかも。いや,確かに作者らしい展開だし,少なくとも現実の風景&人物描写はイイのだけれども…この点数くらいにしておきます。
 ちなみに,悪夢の描写は結構くどくて読み飛ばしたくなりました。無論,この部分が特徴といえば特徴なのですが…。この点については,好き嫌いがハッキリと分かれると思いますね。

No.479 5点 地下街の雨- 宮部みゆき 2014/08/10 10:20
 反転重視の作品からホラー風味の作品まで、幅広い7編から成る短編集。
 気の利いた反転の「さよなら、キリハラさん」と表題作「地下街の雨」が良かったかな。「ムクロバラ」の狂気と温かさも印象的。

No.478 5点 朽ちる散る落ちる- 森博嗣 2014/08/03 23:39
 このシリーズも9作目。「空前の地下密室と前代未聞の宇宙密室」なのだそうです。
 地下密室は,まぁこの作者らしいのかもしれませんが,宇宙密室はどうかなぁ?あっちの国まで巻き込んじゃっているという意味で,確かにスケールはデカいけれども…。それと,読んでいて何か疲れちゃったなぁ…。
 ちなみに,短編も含めて,このシリーズは発売順に読んだ方が確実に楽しめますね。

No.477 6点 影踏み- 横山秀夫 2014/07/30 23:37
 犯罪者(出所したばかりの窃盗犯)を主人公に据えた,横山作品の中では異色と言ってよい連作短編集。ハードボイルド的な色彩もあって,結構新鮮な気分で読み進められました。
 火事で亡くなった双子の弟「啓二」や,恋人「久子」との関係も気になって,グイグイ読ませます。勿論,筆者のリーダビリティの高さがあってこそですが。
 ラスト2編,「遺言」と「行方」が好み。こういう横山作品もイイと思いますよ。

No.476 5点 東京下町殺人暮色- 宮部みゆき 2014/07/26 22:16
 非常に読みやすい作品と言えますが,普通といえば普通。
 華はないけど,家政婦の「ハナ」さんはいい味出してます。

No.475 6点 三毛猫ホームズの推理- 赤川次郎 2014/07/20 22:54
 三毛猫ホームズシリーズの第一作。
 赤川作品を読むのは四半世紀ぶり。(ちなみに,本作は未読だったと思う。)コミカルで軽いタッチに懐かしさも手伝い,想像以上に楽しめました。
 ミステリとしての要素がかなり詰め込まれており,伏線も綺麗です。ご都合主義的な側面や,キーパーソンがかなり絞りやすいのでは…といったところは,まぁ良しとしましょう。それ以上にページをめくらされました。今後もたまに赤川作品を読んでみようかな。
 ちなみに,四半世紀前の私の「赤川作品」への印象に反してこの作品は,結構「大人」な話でしたねぇ。

No.474 6点 解決まではあと6人 5W1H殺人事件- 岡嶋二人 2014/07/19 22:04
 複数の興信所を訪れ,各々に奇妙な依頼をしていく「平林貴子」と名乗る女。彼女の目的は何か?
 章ごとに探偵小説的な楽しみもありつつ,謎が深まるという,なかなか面白いプロットです。
 しかし,期待が膨らんだ分だけ,ラストには何とも微妙な印象が。意外性はあるのでしょうが,ちょっと狙い過ぎかなぁ…と。犯人のラストの行動にも疑問が。
 勿論,水準以上には楽しめたのですけどね。

No.473 5点 捩れ屋敷の利鈍- 森博嗣 2014/07/11 23:08
 密室トリック自体は,まぁ,そんなところか…といった印象。「保呂草VS萌絵」の部分の方が楽しめたかな。
 なお,この作品最大の(と私は思う)謎がエピローグで登場しますが,この答は,「四季・秋」を読まねば正式には分からないようです。四季シリーズが未読であるのに,気になってネタバレサイトを覗いてしまった私は,損をしたのか,実を得たのか…。

No.472 7点 満願- 米澤穂信 2014/07/03 21:22
 ノンシリーズ短編集。バラエティに富んでいますが,ブラックな色彩の作品が多いかな。個人的には「儚い羊たちの祝宴」よりも好印象。
1 夜警
 佐々木譲or横山秀夫と読み間違うような展開。伏線は「いかにも」だったのですが,想定以上の反転でした。
2 死人宿
 1とは異なる意味での「反転」が見事。私は結構怖かった。
3 柘榴
 これも怖い。
4 万灯
 梓崎優の「叫びと祈り」を思い起こさせる雰囲気。犯行の発覚理由が何とも興味深い。
5 関守
 一定想像はつくのだが…やっぱり怖い。
6 満願
 雰囲気作りが巧い。ホワイの部分はやや納得しがたい面も。

 どの作品もハズレはないですが,好みとしては「万灯」「満願」「柘榴」の順でしょうか。

No.471 7点 刑事のまなざし- 薬丸岳 2014/06/29 14:03
 7編で構成される連作短編集。
 通り魔によって娘を植物状態にされた夏目信人は,事件後,少年鑑別所で少年たちの心理を調査する法務技官から警察官に転職した。そして,この通り魔事件の犯人はいまだ捕らえられていない…。
 終盤の反転が見事な短編が多く,また,人間ドラマとしても良質。第三者の視点で淡々と語るスタイルが効いています。
 収録作でベストの短編は,日本推理作家協会賞短編部門の候補作にもなった「オムライス」。広くお薦めしたい。その後に,表題作「刑事のまなざし」と「黒い履歴」が続く印象かな。

No.470 5点 六人の超音波科学者- 森博嗣 2014/06/23 23:40
 今回の主人公は,瀬在丸紅子(と祖父江七夏)。小鳥遊クンと紫子さんのキャラも活きてはいますが,保呂草の印象は薄いですねぇ(煙草をよく吸っていた印象はあるけけど)。
 ネタとしては,極めて典型的なモノで,インパクトとしては弱いですかね。祖父江さんについては,今回は何とも損な役回りで可哀想ではあるけれども,「ソコは気付こうよ」と思わずにはいられませんね。って,それでは小説自体が成り立たないか…。

No.469 7点 気分は名探偵 犯人当てアンソロジー- アンソロジー(出版社編) 2014/06/18 22:00
 夕刊フジの連載企画から生まれた,犯人当てアンソロジー。出題者は,有栖川有栖氏,貫井徳郎氏,麻耶雄高氏,霧舎巧氏,我孫子武丸氏,法月倫太郎氏という錚々たるメンバーでして,内容も充実しています。最後に収録されている座談会も,「犯人当て作品」に関する各々のスタンスが垣間見えて楽しい。犯人当てに挑むという本来の読み方が最も楽しめることは間違いないですが,肩ひじを張らずに普通の短編集として読んでも良いと思います。
 犯人当てに成功したかどうかは別として,楽しめた作品は,漂流者(我孫子武丸氏),ヒュドラ第十の首(法月倫太郎氏),蝶番の問題(貫井徳郎氏)ですかね。

No.468 6点 競作 五十円玉二十枚の謎- アンソロジー(出版社編) 2014/06/14 20:44
 池袋の書店を土曜日ごとに訪れて,20枚の50円玉を千円札に両替していく中年男。 バイト中にこの「謎」に遭遇した若竹七海氏が出題者となり,プロ・アマ混合でその回答編を書くという競作アンソロジー。なかなか興味深い試みです。
 プロ側の回答編は,謎に真正面から…というよりも,技巧で体裁を整えた感じの作品が大半。プロ側のベストは有栖川氏の作品かな?
 一般公募の中では,自動販売機モノが最も好印象。アマ時代の倉知淳氏の作品(猫丸先輩初登場作品)を読めたことにもお得感が。

No.467 7点 法月綸太郎の冒険- 法月綸太郎 2014/06/08 17:02
 法月綸太郎シリーズの第1短編集。
 「死刑囚パズル」と「カニバリズム小論」が抜きんでていますかね。どちらもホワイが印象的です。でも,決してソコだけが読みどころではない辺りもミソ。
 前半の短編とは雰囲気が一変する,後半の4編「図書館シリーズに」ついても,個人的には嫌いではないですね。
 ちなみに,「土曜日の本」は楽屋オチ以外の何物でもなく(捌き方としては巧いと思いますが),「50円玉20枚の謎」自体が気になってしょうがないので,近々に本家のアンソロジーを読む羽目になりそうです。

No.466 5点 世界で一つだけの殺し方- 深水黎一郎 2014/06/06 20:29
 中編2本で構成。どちらの作品も,お馴染み「神泉寺瞬一郎」が探偵役を務めますが,作品自体の雰囲気は対照的と言えます。(時間軸として両作品に繋がりを持たせてはいますが)
1 不可能アイランドの殺人
 確かに「舞田ひとみが探偵ガリレオしている」との書評のとおりです。本筋の殺人事件に無理やり「奇妙な出来事」をくっつけた…という印象もありますが,モモちゃんのキャラも良く,サラサラ読む分には楽しめると思います。ちなみに「神泉寺瞬一郎」の出番は少ないです。
2 インペリアルと象
 「芸術探偵」の特長が色濃く反映されている作品。音楽に無縁な私にはちょっとピンとこない面も正直ありましたが,クラシック好きの方には楽しめるでしょう。冒頭とラストの内容は,「いかにも」と思いつつ,やっぱり良いですね。

No.465 6点 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 2014/06/01 18:39
 ページをめくらせる力はさすがです。終盤前に真相の大枠(あくまでも「大枠」ですよ)を予測できてしまう方も多いと思いますが,既にそういう方向では読ませていないのですよねぇ。登場人物たちの人生の見せ方が何とも心憎く,巧いです。
 これまでの加賀シリーズの設定に加え,「白夜行」の雰囲気,「容疑者X~」の切なさ,「天空の蜂」から続く作者の主張などなど,目一杯に盛り込まれています。(だからこそ東野ファンには真相の「大枠」が見えやすいかもしれませんね。)
 加賀恭一郎の家族の過去が描かれていますし,今後の展開が楽しみな締めにもなっているので,加賀シリーズファンには必読と言えましょう。

No.464 4点 波形の声- 長岡弘樹 2014/05/29 21:03
 7編からなる短編集。
 登場人物の心情の動きと終盤の反転が読みどころ,のはず。この点は氏の出世作「傍聞き」と同じ方向性なのですが,比べれば相当に小粒だし,こじつけ感も気になります。
 横山秀夫氏の作風ともダブるのですが,本作品のみで比較するとすれば差は明確。読みやすい作品ではあるのですが…。辛口かもしれませんが,この点数で。

No.463 7点 首折り男のための協奏曲- 伊坂幸太郎 2014/05/24 10:15
 7話から成る連作短編集。とはいえ,各話の繋がりは緩やかです。
 個人的なベストは第5話の「月曜日から逃げろ」。ミステリ的にも,これまで読んだ伊坂短編の中でもベストに位置付けたい。敢えて多くは書きませんが,様々な面で綺麗に纏めた秀作です。伊坂作品でお馴染み「黒澤」ファンの方にはさらに楽しめるのではないでしょうか。
 他の短編は,いつもの伊坂ワールドは勿論,恋愛モノやホラー風味の作品もあり,さらには作者の主張や遊び心も加わっていて,氏の短編集としては比較的バラエティに富んでいると言えましょう。(ミステリとしては弱いですが。)何を期待して読むかで評価は大きく変わると思いますが,純粋な読書としては十分に楽しめましたね。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.89点   採点数: 1282件
採点の多い作家(TOP10)
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東川篤哉(44)
森博嗣(37)
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伊坂幸太郎(26)
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