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まさむねさん
平均点: 5.89点 書評数: 1282件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.542 6点 支那そば館の謎- 北森鴻 2015/08/10 23:26
 あまり芳しくない評価もあるようですが、雰囲気も含めて私は好きなタイプ。ベストは「鮎踊る夜に」かな(事件そのものは、何とも陰惨でありますが…)。
 なお、後半から登場する、売れないバカミス作家「ムンちゃん」の存在自体はウザいものの、彼が唯一受賞(大日本バカミス作家協会賞)したという設定の作品名が「鼻の下伸ばして春ムンムン」って…。そのちょっとした作者の遊び心(?)が、個人的に結構ツボでした。
 ちなみに、舞台となっている、京都嵐山の大悲閣千光寺は実在するとのことで、是非とも訪れてみたくなりましたねぇ。

No.541 6点 腕貫探偵、残業中- 西澤保彦 2015/08/10 23:08
 腕貫探偵シリーズの第2作。
 私事で恐縮ですが、高知を旅行することになったので、高知出身(かつ在住?)の作者の作品を手にした次第。
 今回は、タイトルに「残業中」とあるとおり、探偵役の「市民サーヴィス課」職員としての就業時間外の推理(サービス残業?)で構成されています。
 作者らしく、サクサク読み進めさせながらの後半の反転が楽しいですね。探偵役よりも目立っているといっても過言ではない、住吉ユリエ嬢のキャラも良く、結構好きなタイプの短編集でした。個人的ベストは、過去・現在・未来の絶妙なバランスが印象に残った「夢の通い路」かな。

No.540 5点 ライオンの歌が聞こえる- 東川篤哉 2015/08/09 22:36
 シリーズ第2弾。これまでの作者のシリーズと比べて、キャラ自体の特徴は弱めなのですが、逆に使い勝手は良いのかもしれません。だからなのでしょうか、ちょっと「やっつけ感」が匂わないではありません。③がなかったならば、4点レベルかなぁ…。
①亀とライオン:犯人がわざわざ策を弄した意義がよく判りませんねぇ。私だったら、そんなことはせずに「とても急いでいたようでしたので…」と証言するだけだけれどなぁ。
②轢き逃げは珈琲の香り:小さな思い付きから即興で作られた作品…って感じ。
③首吊り死体と南京錠の謎:密室をベースにしながらの反転が実にお見事で、本短編集中のベスト。雰囲気は全然違うものの、個人的には「容疑者Xの献身」を思い起こしましたねぇ。
④消えたフィアットを捜して:いやいや、いくらなんでも強引すぎますなぁ。

No.539 5点 松谷警部と三鷹の石- 平石貴樹 2015/08/01 19:51
 松谷警部&白石巡査によるシリーズ第二弾。
 伏線とその回収は流石なのですが、読者としては聞き込み捜査によって得られた新たな事実をひたすらに追いかける…といったスタイルにならざるを得ず、好まない方もいらっしゃると思います。
 全体的に地味な印象で、犯人特定のロジック自体も期待を下回ったと言わざるを得ないのですが、登場人物たちのキャラがなかなか面白く、その流れの中で終盤に明らかにされる、とある人物間のサプライズは個人的にツボだったので、この点数に。

No.538 8点 香菜里屋を知っていますか- 北森鴻 2015/07/28 23:50
 「香菜里屋」シリーズ完結編。
 序盤は、香菜里屋の常連客を含む、シリーズ主要メンバーの人生の「転機」が描かれます。いずれも、応援したくなる、前向きな「転機」であって、爽やかな読後感ではあるのですが、だからこそ、「嗚呼、シリーズの締めが近づいているのだなぁ…」という寂しさも感じざるを得ない展開。
 その中で語られる工藤マスターの過去と香菜里屋の閉店。そして閉店後の後日談…。シリーズをほぼ一気通貫で読了した読者としては、自分も香菜里屋の昔からの常連といった心持ちになっているので、心に沁みましたね。
 ちなみに、このシリーズが本書をもって終結したのが2007年11月。作者が48歳という若さで亡くなったのが2010年1月。何らかの覚悟あって、このタイミングでの終結としたのか…。いずれにしても、哀しく、そして惜しまれます。
 シリーズ全体の評価として、個人的採点基準では相当に上級のこの点数で。

No.537 6点 螢坂- 北森鴻 2015/07/25 23:35
 連作短編集「香菜里屋」シリーズ第3弾。
 「雪待人」を初めとして、まずは美しい。表題作「蛍坂」は、現実的にソコまでする女性がいるかはともかくとして、とにかく哀しい。その哀しさを、個人的には決して美しいとは表現できないけれども、人によってはそう感じる方もいらっしゃるであろうし、その感覚も否定はできますまい。
 本格度という面では何らコメントできない弱さもありますが、既にそういう視点で読ませていないところがこのシリーズの真髄。マスター・工藤の過去の秘密も気になりますし(醸し出し具合も絶妙なんだよなぁ…)、早速続編(シリーズ最終短編集)も手にすることになりそうです。

No.536 6点 桜宵- 北森鴻 2015/07/20 16:34
 連作短編集「香菜里屋」シリーズの第2弾。
 前作「花の下にて春死なむ」における、ビアバー「香菜里屋」の雰囲気に魅了されたワタクシといたしましては、謎に対する伏線があったのか…とか、ちょっと現実には考えられないよなぁ…とかいうことは脇に措いて、楽しめましたね。常連客がいい味を出しているんですよねぇ。料理の表現がまたイイ。皆さまが書かれておりますとおり、こんなバーが近くにあればなぁ…と思わずにはいられません。個人的ベストは、珍しく工藤マスターが主張し、かつ、怒りを隠さなかった「約束」か。

No.535 5点 セブン- 乾くるみ 2015/07/18 10:27
 「林真紅郎と五つの謎(探偵役:林真紅郎)」、「六つの手掛り(探偵役:林茶父)」があって、このタイトル。またまた林兄弟が登場かと思いきや、林兄弟とは何ら関係のない独立した短編(一部掌編)集でした。
 とはいえ、収録されている7つの短編&掌編は、何らかの形で「7」に関係するもので、その点に関する一定の拘りは感じるのですが、なんと申しますか、ちょっと唯我独尊的な面も否めません。数学学科卒らしい「ラッキーセブン」などは悪くはないのですが、あまりにも作られたゲーム性が鼻について、イマイチ琴線に触れなかった。ハズレだったかな…と読み進めた中での最終話「ユニーク・ゲーム」のロジックはそれなりに楽しめたので(オチ自体は判りやすかったけれども)、ギリギリこの点数ということで。

No.534 7点 花の下にて春死なむ- 北森鴻 2015/07/12 21:52
 日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作。
 表題作「花の下にて春死なむ」の美しさにまずは魅せられました。次作の「家族写真」の転換も見事。やや技巧に走り過ぎた感の短編もあるものの、全体的に綺麗で心地よい作品集でしたね。
 ちなみに、ビアバー「香菜里屋」の料理&ビールのシーンが良いですねぇ。マスター作のツマミを前に、4種類のビールを制覇してみたいものですね。

No.533 4点 人魚と金魚鉢- 市井豊 2015/07/08 22:58
 「聴き屋」シリーズの続編短編集。
 独特の雰囲気が溢れまくる「先輩」を始めとする個々のキャラ設定、軽快な語り口は前作同様で、この点は楽しめたと言えます。
 一方で、ロジックという観点では、前作に及ばないかなぁ…と。「驚き」という面でもちょっと弱い。
 表題作の「人魚と金魚鉢」や「恋の仮病」辺りは嫌いなタイプではなく、それだけに結構辛目な採点だと自分でも思うのですが、次回作に期待して、敢えてこの点数に。

No.532 10点 りら荘事件- 鮎川哲也 2015/07/05 13:49
 まさに本格の王道。
 登場人物たちの切迫感の薄さとか、気になる点がないといえば嘘になりますが、それを補って余りある展開。散りばめられた伏線も見事で、もう堪らない。
 久しぶりに、この点数で。

No.531 4点 長野・上越新幹線四時間三十分の壁- 蘇部健一 2015/06/28 22:19
 文庫版で読了。中編と言ってもよい長さの表題作に、短編2本+ボーナストラック(掌編)で構成。
 表題作について、作者はあとがきで「出来の悪い二時間ドラマをお届けする」と語っていますが、正直、出来の悪い二時間ドラマよりは出来がいい印象。でも、文章が致命的に下手すぎます。文庫化に際し百枚以上削ったとのことで、ノベルス版を読まれた方は、さらに辛かったでしょうねぇ。
 短編のうち、「指紋」は、ノベルス版では評判が良かったらしいのですが、何と文庫版でラストをガラリと変えたとのこと。何故に?文庫版で読む限り、きっと自ら改悪されてしまわれたのでしょう。何と馬鹿なことを。
 身勝手な意見で申し訳ないのですが、「ちゃんとした(しようとした)蘇部健一作品」というのは、何ともアンバランスで、落ち着かない心持ちにさせるのですよねぇ。これが味なのか?

No.530 7点 夜よ鼠たちのために- 連城三紀彦 2015/06/27 19:05
 高水準の短編集。「戻り川心中」とは違うタイプが並んでいるのが嬉しい(?)ですね。良作ぞろいでベストは選びにくいですが、印象に残るといえば表題作ですかね(現実味はともかくとして…)。後半の8と9は一段落ちる印象かな。
1 二つの顔:心理系かもと思わせておきつつの、美しく翻す反転が見事。
2 過去からの声:個人的に、誘拐モノといえば連城&岡嶋。流石の出来栄え。
4 奇妙な依頼:ハードボイルド調。でも真髄はラストに明かされるホワイ。
5 夜よ鼠たちのために:とある1行で眩暈が。二度読み必至の良作。現実的には不可能と思う部分もありますが、それを上回るダブルの仕掛け。
6 二重生活:これも眩暈レベルの良作ですが、5と似たタイプだけに、ちょっと割を食っているような気が。
7 代役:これも頭がクラクラする展開。ここまでやるか!と驚きました。
8 ベイ・シティに死す:ハードボイルド調。捻りは弱め。
9 ひらかれた闇:この短編集の中では異色。あまり好きなタイプではない。

No.529 5点 準急ながら- 鮎川哲也 2015/06/07 20:47
 個人的には、アリバイものは決して嫌いな訳ではなく、むしろ好きな部類なのですが、トリック自体が相当に地味でして、拍子抜けする方もいらっしゃるでしょう。
 一方で、謎めいた複数のエピソードが折り重なる序盤の展開や、「足で稼ぐ」刑事の姿、鬼貫警部の自問自答型推理などなど、何とも言えない懐かしさを感じる方も、これまた多いと思います。
 良くも悪くも“昭和”の香り溢れる作品ですねぇ。

No.528 6点 冬のオペラ- 北村薫 2015/05/31 22:12
 短編2本と中編(表題作)1本で構成。短編は正直肩透かし気味ですが、うち1本は、完全に表題作の伏線(導入?)って感じで、まぁしょうがないのかな。
 表題作は、冬の京都の情景とマッチした、端麗な本格モノで好印象。主人公の女性を含めた、作者の筆致も心地よいです。探偵の描き方にも、作者の意思が明確に表れていて興味深かったですね。

No.527 6点 マスカレード・イブ- 東野圭吾 2015/05/17 22:43
 マスカレード・ホテルで出会う前の、山岸尚美と新田浩介それぞれの物語。ニアミスはあるものの、二人が直接接することはありません。個人的には、山岸尚美の人物設定に好感を抱きましたね。
 ガツンとした衝撃を受けるような展開でないだけに印象が薄くなる可能性もあるのですが、人間性を織り込み、ストレスなく読み進められる作品を次々に繰り出せる東野氏の筆達者ぶりは、やっぱりスゴイと思いますね。

No.526 5点 冷たい太陽- 鯨統一郎 2015/05/05 17:47
 トリッキーな誘拐物と言えるのかな。読中は、これまで作者に抱いてきた印象と違っていて、失礼ながら、へぇこういうのも書けるんだ…と感心しつつ、読後には、まぁ確かにこの作者らしいのか…っていうのが率直な感想です。
 とある1本の仕掛け頼った作品であり、無理筋な面や、とってつけたようなミスディレクションなど、気になる点が多々あるのも事実ですが、着眼点を含めた総合的な印象は悪くないです。ドラマ台本のような淡々とした進行については好き嫌いが分かれそうですが。
 ちなみに、kanamoriさんと同様、私も読後に乾くるみ氏の名前が思い浮かびましたねぇ。

No.525 5点 浪花少年探偵団2- 東野圭吾 2015/05/03 21:14
 しのぶセンセシリーズの続編。安心して(?)軽快に読み進められますし、大阪出身の作者らしい、テンポの良い会話も心地よいです。本格度は決して高いとは言えないですが、まぁ、不満はなかったですね。
 このシリーズは2冊で打ち止めとなりましたが、その理由について、作者は「作者自身が、この世界に留まっていられなくなったから」と語っております。その後の縦横無尽の活躍を知った後にそのコメントを読めば、なるほどと納得せざるを得ないのですが、こういうタッチの作品を再び読んでみたいな…と思うのは、私だけでしょうか?

No.524 6点 神様の裏の顔- 藤崎翔 2015/05/02 09:46
 第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
 既視感はありますが、構成自体は確実。軽妙な語り口にユーモアも交えて、楽しく読ませていただきました。作者は元お笑い芸人だそうで、次作にも大いに期待したいと思います。
 ちなみに、この作品と大賞を争ったのが、白井智之氏の「人間の顔は食べづらい」。両作品を読み比べてみますと、「明るくひょうきんな優等生」VS「頭はいいけど何を考えているのか分からない生徒」という感じ。選考会での評価も分かれたようですが、個人的には、「神様の裏の顔」の総合力を素直に認めつつも、「人間の顔は食べづらい」のチャレンジ精神に一票。選考委員の中では有栖川有栖氏、道尾秀介氏の選評に近いですね。恩田陸氏、黒川博行氏の選評にはちょっと同意しがたい面もあって、なるほど、こういう観点でも好みの作者さんかどうかってことが分かるのだねぇ…などと改めて感じ入った次第です。

No.523 6点 顔 FACE- 横山秀夫 2015/04/09 22:48
 警察モノに違いないのですが、「婦警」が主人公という点で、横山作品の中でもドロッと感が少ないというか、優しさが勝ったタッチとなっています。しかし、中身は婦警やその周りの人物の心理を見事に描いており、捻りも効いています。さすがです。個人的ベストは、最終話の「心の銃口」かな。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.89点   採点数: 1282件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(58)
有栖川有栖(45)
東川篤哉(44)
森博嗣(37)
島田荘司(29)
道尾秀介(28)
伊坂幸太郎(26)
西村京太郎(24)
米澤穂信(23)
歌野晶午(21)