皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
まさむねさん |
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平均点: 5.86点 | 書評数: 1195件 |
No.975 | 7点 | 蒼海館の殺人- 阿津川辰海 | 2021/11/14 22:56 |
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力作です。最後まで感心しながら読ませていただきました。
一方で、同様の感想を持たれた方もいらっしゃるようですが、ソコまでは操れないと思いますがねぇ。特に、大前提となる最後の一手までは…。その点は結構気になりましたね。あと、前半のとある表記はフェアと言えるのかな? とは言え、繰り返しになりますが、熱のこもった力作です。心意気を評価し、次回作にも期待。 |
No.974 | 7点 | 新・新幹線殺人事件- 森村誠一 | 2021/10/30 18:15 |
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二本の「ひかり」に絡む謎もいいのだけれど、誘拐事件や詐欺事件と贅沢に?話が広がり、発想の転換を含めて終盤に収束していく構成が印象に残りそう。会社人間とその家族の再生を感じさせる点も好印象。前作以上の評価。 |
No.973 | 6点 | 暗色コメディ- 連城三紀彦 | 2021/10/24 22:43 |
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①もう一人の自分を目撃したという人妻、②消失狂の画家、③「今日はあんたの初七日じゃないの」と妻に言われる葬儀屋、④妻が別人にすり替わっていると悩む外科医…。謎は魅力的だし、精緻に組み立てられているし、筆致も流麗だし、流石だなと思わせてくれます。
でも何だろう、何かストンと落ちないような複雑な心境。精神的な病を組み合わせると、ご都合主義とまでは言わないけれども、色々とできてしまいますからねぇ。雰囲気も陰鬱になるし。 ちなみに、上記③は、自分に置き換えて考えてみると相当に怖い状況。旦那さんが可哀想すぎです。 |
No.972 | 5点 | 祈りのカルテ- 知念実希人 | 2021/10/17 09:27 |
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研修医を探偵役に据えた連作医療短編集。患者の行動の謎・行動の裏側にある心理が読みどころ、ということなのでしょう。
確かに、1話目の「彼女が瞳を閉じる理由」の読了後は、なるほどと感じましたし、そのフリが後々の短編にも効いているのだけれど、広い意味で「同パターン」に偏り過ぎた印象はあります。もうワンパンチ、という気もします。現役医師らしい医療描写の安定感やスラスラと読ませる力は、素直に評価します。 |
No.971 | 6点 | 炎舞館の殺人- 月原渉 | 2021/10/14 21:29 |
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ツユリ・シズカシリーズ第5弾。
肝となるトリックの本質的な部分は、多くの方が既視感を抱くものと思われますが、一定の工夫は施されています。変に水増しせず、締まった分量での本格モノは、個人的には嬉しいかな。色々とあり得ないお話だし、突っ込みどころもあるのだけれども。 |
No.970 | 6点 | 石ノ目- 乙一 | 2021/10/09 18:32 |
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「平面いぬ。」と改題された文庫版で読了。
4つの短編で構成されています。いずれも、実際にはあり得ない能力や状況を設定しながら、何気に感情移入させられてしまう辺りは流石と言うべきか。決してハッピーエンドとは言えないのに、温かみのある切なさを醸し出しています。 ベストは文庫版の表題作でしょうか。やっぱり家族っていいな。そしてイヌがいい味を出しています。当初の?表題作「石ノ目」は、ある方の正体は自明と言っていいのだけれど、一捻りが効いていました。 |
No.969 | 6点 | あいにくの雨で- 麻耶雄嵩 | 2021/10/03 21:16 |
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確かに麻耶雄嵩らしくないのだけれど、一方で麻耶雄嵩らしいか…という、相反する感想をもった作品です。でも、全体の突き抜け感は他の作品には及ばす。そんな高校はないよね、と現実的に考えちゃったりして。
最後の捻りは嫌いではなく、若かりし頃の作者の一断面を見られたこともあって、この採点。 |
No.968 | 7点 | invert 城塚翡翠倒叙集- 相沢沙呼 | 2021/09/26 16:52 |
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昨年度の話題作「medium」の続編で、引き続き「城塚翡翠」が登場。今回は倒叙形式の3つの中編で構成されています。
うち2作品は、上質でオーソドックスな倒叙ミステリ。翡翠の古畑任三郎化?も微笑ましい。その流れでの最終話「信用ならない目撃者」が断トツにおススメ。主人公に語らせておいて、そう来たかという結末で、純粋に楽しめました。なかなか興味深いタイトルだったけれども、最も信用ならないのは作者だったりして。油断ならないなぁ。次作も楽しみに待つとしましょう。 |
No.967 | 5点 | 葛登志岬の雁よ、雁たちよ- 平石貴樹 | 2021/09/18 21:58 |
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函館物語(個人的には「岬シリーズ」と呼びたい)の第3弾。読者が推理できる要素は少なく、警察の捜査と、そこで得られた新情報をひたすら追い掛けるスタイル。退屈と感じられる方もいらっしゃると思います。自分としては、時にそういった作品も読みたくなるので、悪くはなかったのですが、2つ目の殺人の動機にはちょっと疑問。現場とトリックの状況も分かりにくかったかな(読解力が不足しているだけかもしれませんが)。
終盤で探偵役「ジャン・ピエール・プラット」の渡仏の意向が語られたので、このシリーズに幕が下ろされる可能性もあるのかな?シリーズ作品内で描かれる函館の生活感が好きだったのだけれど。ちなみにシリーズの中では第一作の「潮首岬に郭公の鳴く」がベスト。 |
No.966 | 6点 | 新幹線殺人事件- 森村誠一 | 2021/09/13 21:40 |
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2つのアリバイトリック。1つ目の新幹線電話の件は、なかなか面白いですね。ある1点だけが判れば、「水平思考アリバイ」とやらは、読者としても気付きやすかったかな。2つ目のトリックは、何というか、最初の捜査で警察が気付いてほしかった。
トリック以外にも、警察の捜査や芸能界を交えて読ませてくれます。終盤の転換もいいですね。ただ、これを言ってはオシマイかもしれないけれど、2つの殺人とも、そんなリスクの高い手法を採る必要がないのでは…と気になって仕方がありませんでした。 |
No.965 | 6点 | 彼女が追ってくる- 石持浅海 | 2021/09/05 20:56 |
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碓氷優佳シリーズ第3弾。個人的には、倒叙形式はそれほど好まず、碓氷優佳のキャラはそれ以上に好まないのですが、カフスボタンの工夫等々もあって楽しく読ませていただきました。最終盤もイイですね。
一方で、昨晩夕食を共にした知人の刺殺死体を前にしながら、警察への連絡をせずに2時間も推理をする大人たちって、どうなのでしょうねぇ。しかも亡骸のある部屋でねぇ。まぁ、この作者なのだし、読者が慣れるべきなのか。 |
No.964 | 7点 | さよなら僕らのスツールハウス - 岡崎琢磨 | 2021/08/31 22:15 |
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シェアハウス舞台を舞台とした連作短編集。若者たちが人生の一時期を共有している風景、それを少し後にそれぞれが振り返っている描写にグッときましたね。ノスタルジックな気分に浸ってしまう辺り、自分も歳を重ねてきたのものだと、あらためて感じました。読後感もよく、様々に考えさせられます。
短編の中では「陰の花」が個人的ベスト。短い尺ながら、心情的な二転三転が織り込まれています。作品全体としての構成もなかなか考えられています。多少の「あざとさ」にも、むしろ好感。幅広い年齢層にお勧めできそうな作品ですね。 |
No.963 | 7点 | 崩れる脳を抱きしめて- 知念実希人 | 2021/08/26 22:27 |
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この作者さんの作品は初読です。いやはや、グイグイ読まされ、最終的にはやられてしまいました。よくよく考えれば、予測がつくような気もするのですが、グイグイと読まされている時点で作者の術中にはまっていますよね。全体構成も巧く、売れる要素が詰まっています。幅広い層に楽しんでいただけるのではないでしょうか。映像化に向いていそうな作品でもあります。
ちなみに、極めて個人的な意見なのですが、実は冴子の方がフイットするような気がするし、私も冴子の方が好み。こういった意見は好ましくないか。すみません。 |
No.962 | 5点 | 化学探偵Mrキュリー7- 喜多喜久 | 2021/08/21 21:10 |
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シリーズ7作目。前回は長編でしたが、今回は短編集で、沖野准教授&七瀬舞衣のコンビとしての活躍はございません。準レギュラーに焦点を当てた短編集と言っていいかも。
各短編のタイトルを「(準レギュラー)と〇色の〇〇」といった形に統一したり、沖野の家庭教師時代の教え子との交流について時間軸を分けて挟み込んだりといった、工夫は認めるのですが、どうにも「ありがち」な手法。ミステリとしても消極的に評価せざるを得ないです。化学的な知識がないので詳細までは分からないけれども、きっとこういった流れで結末はこんな感じなのだろうと、想定しやすいのですよねぇ。何らかの捻りは欲しかったかな。甘々にして、この採点。 |
No.961 | 6点 | 神の悪手- 芦沢央 | 2021/08/14 18:18 |
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将棋をテーマにした短編集。結構裾野が広い作家さんなのだなぁ…というのが第一印象。でも、ちょっと意図を掴み切れない短編もあったりして、個人的にはちょっと消化不良な感じも受けたかな。 |
No.960 | 6点 | ボーンヤードは語らない- 市川憂人 | 2021/08/09 10:48 |
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このシリーズ初の、というか作者初の短編集。今のマリア&漣、それぞれの原点となった事件や、「ジェリーフィッシュは凍らない」の前日譚などが描かれています。
人種差別などの社会的なテーマも含んでいて、そういった側面での重みはあるのですが、ミステリーの部分はやや軽量か。登場人物の心情面を複雑にすればOKというものではないかな。それと、各短編のパターンが似すぎているかなぁ。 辛口っぽくなってしまいましたが、勿論筋立てはしっかりしているし、決して楽しめなかったわけではございませんので、誤解なきよう。 |
No.959 | 7点 | 樹のごときもの歩く- 坂口安吾 | 2021/08/01 23:44 |
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坂口安吾氏の未完の長編推理小説を高木彬光氏が引き継いで完結させたもの。引き継いだといっても、坂口氏の急逝を受け、江戸川乱歩氏が高木氏をご指名?したようで、全容が判る詳細メモがあったものでもないようなので、高木氏の苦労は相当なものであったと思われます。
高木氏の結論は、なるほど高木氏らしいし、ラストもビシッとしています。しかし、坂口氏が生前に奥様に打ち明けていた内容(犯人も含む)とは異なる結末にせざるを得なかったとのこと。奥様に打ち明けた内容が、本人が構想していた真相と完全に一致していたのか、今となっては誰にも分からず、それこそミステリー。その点を考えながら読み返してみるのも一興かと。 |
No.958 | 6点 | 新 謎解きはディナーのあとで- 東川篤哉 | 2021/07/28 22:51 |
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映像化もされた人気シリーズの続編。お久しぶりですね。
前シリーズとの相違点は、形式的には、天然キャラの後輩新米刑事「若宮愛里」刑事が登場したことでしょうか。とはいえ、ミステリとしての貢献度は高くなく、コミカルさの演出の効果を狙って…といった感じでしょうか。ちなみに、執事・影山の毒舌はそのままでしたが、ちょっとマイルドに、そして人間味を帯びてきたような気がしましたね。ドラマの影響なのでしょうか。風祭警部の貢献度?も無視できない。 各短編の出来栄えには幅がありましたが、総じて本格度を保っています。「五つの目覚まし時計」「煙草二本分のアリバイ」におけるロジックの転換が好印象。「墜落死体はどこから」の島荘感もイイ感じかな。 |
No.957 | 7点 | 運命の八分休符- 連城三紀彦 | 2021/07/25 11:47 |
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同一探偵が登場する連作短編集。連城氏の同種の作品集として思い浮かぶのは、夕萩心中に収録されている「陽だまり課事件簿」くらい。そういった意味でも、興味深く読ませていただきました。
探偵役は、ドングリ目に分厚い眼鏡の定職を持たない「軍平」くん。実際の読み方や漢字は違うものの、いずれも「しょうこ」とも読める5人の女性との切ない恋愛模様を描きながら、ミステリとしてキッチリと作り込まれています。ユーモラスで軽快な書きぶりながら、「画になる」シーンも多く、作者らしい構図の反転も十分に味わえます。数多くの名作短編を産み出しているだけに、作者の作品群の中で決して目立ちはしないけれども、初期の好短編集の一つと言えそうです。 |
No.956 | 6点 | 野球が好きすぎて- 東川篤哉 | 2021/07/11 12:03 |
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これまでの作品でも、しばしば野球ネタ(殊にカープネタ)を活用してきた東川さん。今回は、タイトルどおり、野球ネタ一気通貫の短編集。何か楽しんで書いていそうだ。探偵役にカープ女子、刑事役にスワローズファンのおじさんとその娘を添えるという念の入れよう。パ・リーグをもう少し取り上げてほしかった…という願望もありましたが、プロ野球愛に満ちた書きぶりは嫌いじゃない(むしろ大好物)。「野球ファンあるある」的なところもいい。その分、プロ野球に興味のない方には、ちょっと辛いかも。
どの短編も、ミステリとしての一定の質は備えているのですが、ネタとしてはどうしても小粒。その中でも、一発ネタだけれども、短編としての使い方が巧みな「カープレッドよりも真っ赤な嘘」がベストかな。この短編が、有名ミステリ作家に褒められたりと好評だったことを受けて、年イチペースで続編短編を書き続け、この短編集に辿り着いた模様。ちなみに「有名ミステリ作家」がどなたなのか、ちょっと気になりますねぇ。 |