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E-BANKERさん
平均点: 6.01点 書評数: 1785件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.205 6点 砂の城- 鮎川哲也 2010/03/20 18:15
鬼貫警部シリーズ。
典型的な「時刻表アリバイ崩し」物です。
メインの東京・鳥取間のアリバイトリックは、鉄道ファンくらいにしかウケないレベルですねぇ・・・
確かに昔はこういう純粋な「鉄道路線と時刻表の盲点」を付いたトリックが成立していましたが、21世紀の現代ではありえないトリックになってしまいました。(私が最後に読んだ純粋な盲点利用トリックは、多分、西村京太郎「寝台特急『あかつき』殺人事件」)
ただ、サブのアリバイトリックは、解決方法こそ残念ですが、カバンと鍵と週刊誌をうまく絡ませてある点で、さすが「鮎川」と感じさせます。

No.204 6点 連鎖- 真保裕一 2010/03/20 18:06
第37回の乱歩賞受賞作かつ氏のデビュー作。
チェルノブイリ原発の放射能漏れ事件が発生し、食料汚染が問題になっていたという時代背景をもとに書かれていて、時代を感じさせます。
作品としての完成度は高いと思うんですが、”いかにも”「乱歩賞受賞作」という印象が強く残ります。
やっぱり、創作を重ね脂ののってきた頃の作品(「奪取」とか「ホワイトアウト」)に比べ、主人公やワキ役の造形がいかにもすぎて、「今一歩」という感じ・・・
ラストのサプライズも「まぁ、そうなるんだろうな」というレベルです。
ということで評価は厳しめですが、決して「駄作」ではありませんので、一読には十分耐えうると思います。

No.203 6点 花の下にて春死なむ- 北森鴻 2010/03/12 22:13
香菜里屋シリーズの連作短編集。
作者の急死を悼み、手に取る方も増えているのではないでしょうか。
①「花の下にて春死なむ」:表題作であり本書の白眉。本名も本籍も分からない老人”草魚”の生き方に悲哀を感じます。
②「殺人者の赤い手」:ラストで一気に真犯人に迫るところが良い。
③「七回は多すぎる」:暗号モノかと思いきや・・・
④「魚の交わり」:再び”草魚”の謎に迫ります。
あとの2作はいまいち印象に残らず。
主人公のマスター工藤をはじめ、すべての登場人物がどこか文学的で、たいへん品の良い作品に仕上がっています。
ただ、ミステリー的には高い点数は付けづらいですねぇ・・・

No.202 8点 館島- 東川篤哉 2010/03/12 22:03
タイトルどおり、「孤島」(無人島ではありませんが)+「館」モノの一作。
他の方の書評どおり、久しぶりにこれほどの”大掛かり+大胆”トリックに遭遇しました。
確かに、伏線はたくさん張られているんですよねぇ・・・
解決シーンでは「なるほどねぇ・・・」という思いの連続。第一の殺人の動機はどうかと思いますし、細かいところを挙げればきりがないのですが、それを補って余りある面白さでしょう。
ギャグについてはそれほどうるさく感じませんでしたし、これくらいなら逆にこんな書き方にこだわらなくてもいいんじゃないかと思いますけど・・・

No.201 6点 探偵映画- 我孫子武丸 2010/03/12 21:49
初期のノンシリーズもの。
設定自体が変わっていて面白い作品。
ただ、最初から「叙述トリック」ということを宣言して進めており、ある程度ラストが読めてしまうところが玉に瑕かなぁと感じました。
作者の初期作品は、設定やプロットは面白いけれど、それがあまりうまく生かされてないという印象が強いんですよねぇ・・・「0の…」とか「メビウス」とか
ただ、映画に関する薀蓄や技法については面白かったし、参考になりました。

No.200 10点 占星術殺人事件- 島田荘司 2010/03/12 21:42
御手洗潔シリーズ。
200冊目の書評は是非この作品で。
とにかく、現代の本格ミステリーを語る上では、決してはずすことのできない作品であるのは間違いないでしょう。
狂人が書いたとしか思えない手記のとおりに実際の殺人が起き、そして有名な「アゾート殺人」へ・・・
後の御手洗シリーズを考えれば、御手洗がこれほど迷って、考えさせられるシーン・事件というのはあまり思い浮かびません。それだけ、真犯人のプロットが素晴らしかったということでしょうか。
とにかく、当時、「死者が飲む水」→「本作」→「斜め屋敷」と読み続け、作者のミステリー作家としての資質に大いに驚かされました。
(それ以来、5回も再読するほどハマった・・・)

No.199 6点 オレたちバブル入行組- 池井戸潤 2010/03/02 20:41
タイトルが秀逸な長編。
特に、日頃何かにつけ上司に苛められているサラリーマンにとっては、胸がスカッとするとともに、サラリーマンの悲哀をしみじみ感じさせる作品です。
ストーリーとしては、計画倒産に巻き込まれ、その責任を一身に背負わされた主人公の銀行員が、自らの力で立ち上がり、計画倒産のカラクリを解き明かして汚名を注ぐ・・・という展開。
私も願わくは、この主人公みたいに、「白は白、黒は黒じゃ・・・」と常々正々堂々と言ってみたいものです。

No.198 6点 消える「水晶特急」- 島田荘司 2010/03/02 20:34
一応、吉敷刑事シリーズ。
ですが、主人公はファッション誌の女性編集者2人という作者には珍しい設定。
島田氏も「主人公にどんな洋服を着せるか、ファッション誌を片手に考えるのが面白かった!」という「あとがき」を書いています。(想像できませんけど・・・)
本筋の列車が消えるトリックについては、氏にしては実に「現実的」なトリックだと思います。
伏線は張ってあるし、巻頭の鉄道地図を見れば気付く人も多いのではないでしょうか。
ただ、メイントリックありきとはいえ、他の設定が非常にムリヤリ感が強いので、レベルの高い作品とは言えないでしょう。

No.197 7点 てのひらの闇- 藤原伊織 2010/03/02 20:26
まさに、この作者らしい作品でしょう。
やっぱり、主人公の造形がいいですね。
最初は、単なるくたびれた中年サラリーマンかと思いきや、実は深くて底知れぬ過去を持つ男・・・
主人公は、自らの体も省みず、過去に恩義のある男の死の謎を追っていくわけですが、読者の方も途中までは事件のカラクリがどうなっているのか全く分からないまま、終盤を迎えます。
ラストは、糸がほどけるように一気に解決し、読了感もスッキリします。
まぁ、惜しむらくは、ワキ役の方々があまりにも映画的なカッコいい人揃いなんで、なんかちょっとリアリティに欠けるというか、そんな感じはします。

No.196 6点 夜間飛行(ムーンライト)殺人事件- 西村京太郎 2010/03/02 20:12
十津川警部シリーズ。
光文社文庫ミリオンセラーシリーズで再読しました。
警部が結婚し、妻と北海道へハネムーンに出かけるという設定! 当然のように、ハネムーンの途中で事件に巻き込まれてしまいます。
本作は、ハネムーン途中の新婚夫婦が次々と失踪していく謎を追って展開していきますが、その背景や動機に70年代という時代性を強く感じさせます。
普段は鉄道が主戦場の十津川警部が、航空機を舞台に活躍するというのが本作の魅力ですが、それ以外に特に語るべきところはありません。

No.195 7点 奇跡島の不思議- 二階堂黎人 2010/03/02 20:04
水乃サトルシリーズ。やや番外編。
とにかく本格物の要素をこれでもかと詰め込んだ作品です。
「孤島モノ」+「館モノ」+「見立て殺人」+「密室」+「過去の不思議な事件」・・・etc
作者の意気込みは買うんですが、全体的には見かけ倒れのような印象ですし、真犯人も「やっぱりか・・・」という印象は拭えません。
ただ、私にとっては唯一、「見立て」の理由付けだけ、今まで読んだことのないパターンだったので、この評価としました。(まぁ、もともとこういう作風が好きというのもありますが・・・)
もうこんなコテコテの小説書く人出てこないんだろうな・・・

No.194 4点 赤い雲伝説殺人事件- 内田康夫 2010/02/24 22:00
浅見光彦シリーズ。
比較的初期の浅見シリーズ作品のため、量産期以降の嫌らしさ(?)はありません。
瀬戸内海に浮かぶ島と対岸の町の確執を背景に、原発誘致問題と「1枚の絵」を絡めた連続殺人事件が発生します。
しかし、動機はどうですかねぇ・・・殺しますかねぇ・・・これだけの理由で?
問題となる「絵」についても、それを巡って殺人事件が起こる必然性は微塵も感じませんでした。

No.193 5点 模倣密室- 折原一 2010/02/24 21:51
黒星警部シリーズ。
「七つの棺」に続く、「密室」を主題にした短編集。
収録作は、「北斗星の密室」「つなわたりの密室」「本陣殺人計画」「交換密室」「トロイの密室」「邪な館、1/3の密室」「模倣密室」の全7作。
はっきりいって、「これがお勧め」というほどの作品はありません。
黒星警部のキャラと、部下の竹内刑事や虹子とのドタバタなやり取りが好きという方以外はスルーしても良い作品です。
でも、なんか読んじゃうんだよなぁ・・・

No.192 6点 放浪探偵と七つの殺人- 歌野晶午 2010/02/24 21:45
信濃譲二シリーズの短編集。
前の採点者の方と被りますが、1作ずつ書評します。
①「ドア⇔ドア」: 本作では一番面白い。短編らしい短編ですね。
②「幽霊病棟」: 中学生向けの推理クイズのような趣向&レベル。すぐに分かりました。
③「烏勧請」: 現実性が乏しいんじゃないでしょうか。一時期話題になった「○○屋敷」ネタ。
④「有罪としての不在」: ロジックが効いています。
⑤「水難の夜」: これぞショート&ショートですが、すぐにバレる気がしますけど・・・
⑥「W=mgh」: 別に物理の公式を出さなくても・・・
⑦「阿闍梨天空死譚」: 可もなく不可もなく
以上、トータルでは水準級でしょうか。

No.191 4点 夢見る黄金地球儀- 海堂尊 2010/02/24 21:32
作者としては珍しく、医療モノ以外のミステリー。
ただし、事件の舞台はいつもの桜宮市で、登場人物の中にも旧知の2人が出てきます。
ストーリー的には中途半端ですねぇ。「褒めるところ」が1つもありません。
ドタバタ劇の末、最後は丸く収まるのですが、純粋な意味でのミステリー作家としての氏の力量には疑問符をつけざるを得ません。
まぁ、いつものようにキャラクターは立っているので、こういう作風が好きな方はどうぞ。

No.190 8点 クロイドン発12時30分- F・W・クロフツ 2010/02/11 23:23
倒叙物の古典名作の1つ。
主役とはいえませんが、フレンチ警部が探偵役として登場。
とにかく、読んでいるうちに引き込まれます。
本作は冒頭とラストを除いて、すべて真犯人の視点で語られ、恐れや疑惑、安堵といった彼の心情が読み手の心とシンクロし、まさに感情を共有している気分にさせられます。
完全犯罪を遂行したと思い込んだ矢先に訪れたピンチ、それを乗り切ったと思い込んだあとに、フレンチ警部の明晰な推理力の前に敗北を喫する彼の挫折感・・・
できれば最後に”一捻り”あれば言うことなしですが、時代を考えればそこまで望むのは酷というものでしょう。

No.189 6点 天使の傷痕- 西村京太郎 2010/02/11 23:13
第11回の乱歩賞受賞作。
ミステリーとしては単純な作りですが、被害者が残したダイイングメッセージ「天使」についての謎を中心に話が展開され、意外な犯人に行き着くという構成。
動機や事件の経緯という部分に、やや「社会派」寄りの”暗さ”が窺え、発表された時代背景かなぁと感じさせます。
デビュー間もない作品ですが、氏の文章力の確かさは十分に印象づけられました。
無駄な描写や無意味な薀蓄は一切なし、読みにくい部分も一切なく読ませます。
評点はこんなものですが、大作家「西村京太郎」を知るうえでは欠かすことのできない作品といえるでしょう。

No.188 7点 御手洗潔の挨拶- 島田荘司 2010/02/11 23:02
御手洗潔シリーズの短編集。
4つの短編とも有名作かつ御手洗の魅力を堪能できます。
①「数字錠」:割合地味。トリックは、青梅街道~新宿通り界隈を知っていればすぐに思いつきます。
②「疾走する死者」:御手洗と中村警部、隈能美堂巧の3人が一同に会する豪華版!? 読者への挑戦もありますが、島田氏のある有名作を読んでいれば、あの物理トリックがすぐに思い浮かぶでしょう。
③「紫電改研究保存会」:ホームズ物の名作「赤毛連盟」を彷彿させます。
④「ギリシャの犬」:暗号については、東京の下町方面に詳しければすぐにピンとくるかもしれません。

No.187 7点 ベンスン殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2010/02/05 23:29
ファイロ・ヴァンス探偵譚の記念すべき1作目。
点数はかなり甘めです。
まぁ、何といっても、本作ではヴァンスの名探偵ぶりを堪能できます。
皮肉たっぷりの話し方や主に芸術関係の様々な薀蓄・・・本筋と関係ない部分を省略すれば、長さは半分くらいになったかもしれません。
とにかく、ヴァンスの主張は首尾一貫。「状況証拠には価値はない。心理的推理のみが唯一の探偵法である。」
時代が時代ですから、驚くようなトリックがあるわけではないですが、それでも歴史に残る作品という評価には十分値すると思います。

No.186 3点 思いがけないアンコール- 斎藤肇 2010/02/05 23:19
かなり昔に買ったまま読んでなかった作品。
読まなくてもよかったかな・・・という印象です。
ロジックは感じるんですよね・・・一応。
狙いは悪くないと思うんですけどね・・・作者の。
「読者への宿題」を前半に提示して、さらにヒント付で「読者への挑戦」を挿入するという凝った趣向もあります。
シャム双生児のくだりではさすがにゲンナリしましたが・・・
ただ、本作は小説として決定的によろしくないと思います。読後に何らの感情も抱かせない、上滑りした書き方はどうしようもありません。(ちょっと酷評すぎるか?)

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ひとこと
好きな作家
島田荘司、折原一、池井戸潤などなど
採点傾向
平均点: 6.01点   採点数: 1785件
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