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E-BANKERさん
平均点: 6.00点 書評数: 1845件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.605 6点 隅の老人の事件簿- バロネス・オルツィ 2011/12/17 15:23
ロンドン・ノーフォーク街にある『ABCショップ』(喫茶店?)の片隅に居座り、チーズケーキを頬張る変なおじいさん、こと、名もなき「隅の老人」が活躍する作品集。
今回は、創元版の「ホームズのライヴァル」シリーズで読了。

①「フェンチャーチ街の謎」=シリーズを通じて「隅の老人」の相手役となるミス・バートンも最初から登場。前述の「ABCショップ」の紹介を含め、冒頭の作品に相応しい。
②「地下鉄の怪事件」=さすがにロンドンにおける地下鉄の歴史は古い!と変な所に感心。「金は10の犯罪のうち9までの動機になりうる」という台詞はシリーズ全編に共通するプロット。
③「ミス・エリオット事件」=この作品をはじめ、たびたび登場するのが「人の入れ替え」または「誤認」に関するトリック。
④「ダートムア・テラスの悲劇」=ちょっとした思い違いが事件の鍵となる・・・。あまり印象には残らず。
⑤「ペブマージュ殺し」=これは「動機」がどうかなぁ? 登場人物の配役を無理やり割り振った感じ。
⑥「リッスン・グローブの謎」=これはなかなか面白い。トリックの実現性云々は置いといて、プロット自体は多くの長編作品へも応用可能なもの。でも、実の娘がねぇ・・・金って怖い!
⑦「トレマーン事件」=こんな大掛かりな謎を隅に座りながら解決してしまう・・・何だか妄想のようにも見えるが・・・。
⑧「商船アルテミス号の危難」=単なる殺人事件ではないところがやや異色の作品。本筋とは関係ないが、このアルテミス号の積荷というのが、「ロシアが旅順にて使用する速射砲」っていうことは、時代背景から考えて日露戦争で使用するための武器?!
⑨「コリーニ伯爵の失踪」=これなんて、まさにこの作品集の「典型」とも言える作品。周りも簡単に騙されるなよなぁ・・・
⑩「エイシャムの惨劇」=またまた「入れ替え」ならぬ「取り違え」がプロット。
⑪「バーンズデール荘園の惨劇」=今回は「金」と「愛情」。この2大動機が絡み合うところがミソ。
⑫「リージェント・パークの殺人」=要は初歩的なアリバイトリックだが、暗闇で仕掛けるからこそのトリックが面白い。
⑬「隅の老人最後の事件」=まさに「最後の事件」に相応しいが、最終的に動機や事件の背景・構図が不明のまま終了。この辺りがドルリー・レーン譚などとは違ってる。

以上13編。
ごく薄手の本なのだが、独特の読みにくさもあって、読了まで結構時間を要してしまった。
全体的には、他の方の書評にもありますが、とにかくプロットの似通ったものが多いということかな。さすがに似ている作品を13も続けて読むと、どうしても1つ1つの印象が弱まるのは避けられない。
そういう意味でいうと、ホームズ作品の方が優れているということになるのだが、ホームズのように実際に現場に出向いたり、関係者と会話したりというところがない分、純粋に謎解きを楽しめるという気はした。
まぁ、これがいわゆる「安楽椅子型探偵もの」(隅の老人は純粋な安楽椅子探偵とは違うようだが)の「良さ」かな。
(⑥や⑫辺りが面白かった。あとは⑧・⑬を除けば似通った感じ・・・)

No.604 7点 冷たい密室と博士たち- 森博嗣 2011/12/17 15:21
「すべてがFになる」に続くS&Mシリーズの長編2作目。
今回は犀川が所属するN大が事件の舞台に。

~同僚・喜多准教授の誘いで低温度実験室を訪ねた犀川准教授とお嬢様学生の西之園萌絵。だがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室の中で、男女2名の大学院生が死体となって発見された。被害者は、そして犯人はどうやって現場の部屋に入ったのか。人気の師弟コンビが事件を推理し真相に迫るが・・・~

本格好きなら単純に楽しめる作品だと思う。
前作もそうだが、本作もとにかく「密室」に拘った作品。
ただし、前作ではアクロバティックな解法であった密室が、本作では非常に「ミステリーらしい」解法が成されるのが特徴。
これは好みが分かれるのかもしれませんが、こと「密室」に関しては、個人的には前作よりも好感を持った。
犀川の推理過程はまさしく『困難は分割せよ』を地でいくものだし、ロジックはたいへんしっかりしている。
「低温室」に纏わる小道具(例の宇宙服ね)も実に効いていて良い。

まぁ、難をいうなら、多くの方が指摘しているとおり「動機」や事件の背景についての面。
他の方の書評を見るまで気が付かなかったけど、確かに「服部さん」を殺す動機は超薄いよなぁ・・・
いずれにせよ、十分に楽しめる作品には間違いないという評価。
(萌絵みたいなキャラってやっぱり人気あるんだろうなぁ・・・こういうのが売れる1つの要素かも)

No.603 6点 原始の骨- アーロン・エルキンズ 2011/12/11 21:38
大好評のスケルトン探偵シリーズの15作目の長編。
今回の舞台は、イベリア半島にあり古くから要所として知られている地・「ジブラルタル」。

~ネアンデルタール人と現生人類との混血を示唆する太古の骨・・・。この大発見の5周年記念行事に参加すべく骨の発見されたジブラルタルを訪れたギデオン。だが、喜ばしい記念行事の影には発掘現場での死亡事故をはじめ、不審な気配が漂っていた。彼自身まであわや事故死しかけ、発見に貢献した老富豪が自室で焼死するに至り、ギデオンは疑いを深めるが・・・一片の骨から先史時代と現代にまたがる謎を解く!~

まずはテーマが興味深い。
「ネアンデルタール人」なんて久しぶりに聞いた気がする。
(私の頭の中では人類の直接の祖先がネアンデルタール人だという認識だったが、どうもそれは誤っているらしい。)
こういう話題に「捏造」というのは、非常に親和性があり、門外漢の私にもたいへん分かりやすいプロットだった。
それはともかく、本筋の連続殺人事件は何だかオマケのように思えた。
トリックや仕掛けには特に見るべきものはなし。
ただ、フーダニットについては、なかなか小憎らしい「伏線」が撒かれてるのが唯一の読み所か。
ある「地名」についての誤解や、真犯人の「性格」についての記述がいい具合にラストで回収されていく手練手管は見事。

ということで、安定感十分のシリーズものという評価でいいのではないでしょうか。
(ジブラルタルの薀蓄も満載でなかなか興味深い)

No.602 5点 裁判員法廷- 芦辺拓 2011/12/11 21:36
2009年より本格的に始まった「裁判員裁判」に先駆けて発表された意欲作。
名探偵・森江春策が本職の弁護士として、裁判の舞台で大活躍。

①「審理」=まずは、裁判員裁判の序章的な位置付け。攻める菊園検事に対して、効果的な突っ込みを入れる森江という図式が続くが、ラストはやや尻切れ気味に。
②「評議」=2作目は1作目よりもやや深い事件についての裁判が舞台。これも1作目同様、「結局出廷することを拒んだ証人」というプロットが共通しているが、尻切れだった①に比べ、本作は一応判決が下される。
③「自白」=この作品のみが書き下ろし作、且つテレビ朝日の土曜ワイド劇場でドラマ化された作品。(たまたま見てた)
①②よりもまともなミステリー風で、アリバイの「錯誤」が事件の鍵となっている。ラストは法廷の場で真相が明らかにされる。

以上3編。
読む前は、てっきり長編作品だと思ってましたが、それぞれが独立した事件&裁判になってます。
確かに「裁判員裁判」を扱ったという意味では、画期的な作品かもしれないが、それ以外にはあまり見るべきものはなかったなぁ。
冒頭から「あなた」とルビ入りで、読者をあたかも裁判員の1人として扱っているので、てっきり何か「叙述系トリック」がラストで炸裂するかと思いきや、そのようなサプライズは特になし。
地味なまま終わった。
作者の作品って、いつも何かが足りないような気がする・・・(何かは分からないが・・・)。

No.601 6点 陽気なギャングが地球を回す- 伊坂幸太郎 2011/12/11 21:34
「オーデュポンの祈り」、「ラッシュライフ」に続く作者の第3長編。
映画化され、続編も発表されたいわゆる「出世作」という位置づけの作品。

~嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持った女。この4人の天才(?)たちは百発百中の銀行強盗だった・・・はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ。奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。ハイテンポな都会派サスペンス~

さすがに大衆受けはしそうだけど、他の作品よりは若干落ちるかなという読後感。
いつもなら、まさに「伊坂ワールド」とでも言うべき特殊設定下で、作者の気の利いた「台詞まわし」に翻弄されながら、次々とページを捲らされていく・・・という結果になるのだが、今回はそれほどでもなかった。
確かに、銀行強盗の4人は常人にはない「特殊能力」を持っているわけで、そういう意味ではいつもどおりなのだが、プロットそのものは特に「ブッ飛んでる」感はなく、ややノーマルなもの。
終盤~ラストも、ちょっと盛り上がりに欠けるように思えた。

本作は、サントリーミステリー大賞への応募作「悪党たちが目にしみる」を下敷きに「手を入れた」作品であり、その辺りがやや影響しているのかも?
ただ、エンタメ小説としては十分に及第点の出来だと思いますので、まぁ誰が読んでも一応の満足感は得られるかと・・・
(本作の舞台はいつもの仙台ではなく「横浜」なのが珍しい。まぁどうでもいいけど。)

No.600 5点 鉄の骨- 池井戸潤 2011/12/10 00:38
600冊目の書評は、吉川英治文学新人賞受賞の本作で。
今や、乱歩賞&吉川英治賞&直木賞まで受賞した作者の、躍進のきっかけとも言える作品。

~中堅ゼネコン・一松組の若手社員・富島平太が異動した先は「談合課」と揶揄される、大口公共工事の受注部署だった。今度の地下鉄工事を取らないと「ウチが傾く」・・・技術力を武器に真正面から入札に挑もうとする平太らの前に、「談合」の壁が。組織に殉じるか、正義を貫くか。吉川英治文学新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ~

これぞ「空飛ぶタイヤ」以降、作者が確立した熱血&勧善懲悪経済エンタメ小説。
今回の舞台は、未だ旧態依然とした「談合」により、業界の利益を守ろうとする建設業界。作者は、1人の若者を通して、この「暗い闇」にスポットライトを当て、見事な人間ドラマに仕上げてます。
「工事落札」に心血を注ぐ平太と上司、「談合事件」を摘発しようとする検察特捜部、銀行員である平太の恋人とライバルの融資課員など、すべての人物が、その良し悪しに関わらず、己の矜持を貫いているわけです。
(相変わらず、分かりやすい勧善懲悪の図式は今回も健在。)

ただねぇ、あまりにもデフォルメし過ぎているような感覚は持ってしまった。
無論、一般読者向けに平易で分かりやすい表現やプロットをというのは、販売サイドから見ればあるんだろうけど、実際、日頃厳しい社会の端くれとして働いている私自身として、「こんな単純な話じゃないよ!」って突っ込みを入れたくなるシーンがあまりにも多い。
(もちろん、フィクションだと分かってますけどね・・・)
本作は、主人公である平太がいっぱしのサラリーマンとして成長していく、というのが1つの大きな本筋ではありますが、いくらなんでも入社して3年目のヒラ社員が、ゼネコン談合のフィクサーと対等に話をするという図式は、ちょっと荒唐無稽すぎるよなぁ。
というわけで、『ホントは、こんなに簡単じゃないんだよ、平太君!』って諭したくなる場面が何度もありました。

ミステリー度は極めて低いし、もう少し「厳しさ」や「緊張感」のある作品を書いて欲しいという願いをこめて、評価はやや辛めに抑えておこう。
(作品中の兼松課長や西田係長みたいな地道な人が、日本経済の底辺を支えているんだよなぁ・・・)

No.599 6点 エンジェル家の殺人- ロジャー・スカーレット 2011/12/10 00:33
謎(?)のミステリー作家、R・スカーレットの1932年発表の第4長編。
江戸川乱歩が激賞し、自身で「三角館の恐怖」へ翻案した作品としても有名。

~エンジェル家はまるで牢獄のような陰気な外観を持つ家だった。しかも内部は対角線を引いたように二分され、年老いた双子の兄弟が其々の家族を率いて暮らしていた。彼らを支配していたのは長生きした方に全財産を相続させるという亡父の遺言だった。そして、死期の近いことを感じた兄が遺言の中味を変更することを提案した時から全ての悲劇が始まった。愛憎渦巻く2つの家族の間に起こる連続殺人事件を巧みなストーリー&サスペンスで描いた古典的名作~

舞台は理想的だが、やや尻つぼみ。
っていうのが、読後の感想でしょうか。
悪意ある遺言といがみ合う家族、真ん中にあるエレベーターにより2分された妙な「館」と作品中に挿入された数々の見取り図、そして「密室殺人」と謎の帽子の男・・・どうですか!
凡そ本格物を愛する読者であれば、この舞台設定を見れば狂喜乱舞してもおかしくない(!?)

ただ、惜しいなぁ。この舞台設定が十分生かしきれてるとは言えない。
まずは「密室」。
エレベーターで3階から1階へ降りるまでの間に殺人が起こるのだが、このトリックでは仕掛けの「跡」が残ってしまうという致命的な欠点がある!(実際、それをケイン警視が見つける)
つぎに「フーダニット」。
動機からのアプローチがかなりあからさま。全体的に「金」への執着心というものが前面に出され過ぎて、それがダミーなのだということがどうしても分かってしまうのだ。

というような欠点が目に付き、高評価というわけにはいかないのだが、やっぱり好きなんだよなぁ、こういう作品。
乱歩を始めとして、日本の作家へも強い影響を与えたのは確かだと思う。
(新訳版のせいか、非常に読みやすく、「館」の平面図が豊富に挿入されており大変親切)

No.598 6点 トライアル- 真保裕一 2011/12/10 00:30
公営ギャンブルに生きる人々にスポットライトを当てた短編集。
それぞれに作者の「行き届いた」取材振りが窺える気がしました。

①「逆風」=舞台は競輪(主人公の所属は立川?)。借金を重ね失踪した実兄が競輪場に姿を見せたと同時に、不審な男たちの姿が見え隠れしてきて・・・という展開。ラストは少しホロッとさせる。
②「午後の引き波」=舞台は競艇。夫婦で競艇選手という妻の方が主人公。最近、年齢のせいか結果を残せていない夫が見せる不審な行動の謎。妻の方が稼ぎがいいっていうのは、夫としてはツライよねぇ。
③「最終確定」=舞台はオート(所属は船橋)。なかなか壁を破れず、ランク下位に沈んでいる主人公にかかってくる電話の謎。頑なな父親との関係と自分自身の煮え切らないレース振り・・・なんか分かるよなぁ。
④「流れ星の夢」=舞台は競馬(JRAじゃなくて、公営川崎競馬が舞台)。新入りの厩務員が担当するクセ馬や故障馬が見違えるように変身していく謎。さて厩務員の正体は? 

以上4編。
全て公営ギャンブルが舞台だが、どちらかというと華やかな「光」の部分ではなく、燻ってたり、迷ったり、焦ってたり・・・という「影」の部分に焦点を当て、うまくまとめてある感じ。さすがにうまい作家ですよ。
(④以外は「家族」がプロットの骨子になってる)
個人的には、競馬以外はそれ程詳しくないので、特に競艇やオートの薀蓄や舞台裏はなかなか面白かった。
まぁ、サラッと読むには手軽でいい作品集でしょう。
(『参考文献』にある「ギャンブルレーサー」って、昔「某週刊モー○ング」で連載してた奴? 確かに抜群に面白かったけど・・・)

No.597 6点 暗い鏡の中に- ヘレン・マクロイ 2011/12/03 21:42
精神科医ウィリング博士が登場する作者の第11長編。
オカルト的題材を扱った有名作。

~ブレアトン女子学院に勤めてまだ間もない女性教師フォスティーナは、校長から突然解雇を申し渡される。理由を尋ねるも、校長は口を濁して語らない。彼女に何の落ち度があったのか。彼女への仕打ちに憤慨した同僚のギゼラと、その恋人で精神科医のウィリングは事情を調べ始めるが、関係者が明かした原因の全貌は想像を絶するものだった。ウィリングは謎の解明に挑むが、その矢先に学院で死者が出てしまう・・・~

なるほど、マクロイっぽい作品だなと思いました。
いわゆる「ドッペルゲンガー」現象を事件の背景に取り込んだことで有名な作品ですが、本格志向の読者にとっては、このトリックや真相ではちょっと不満が残りそうですねぇ。
たまたま同時期に書評した泡坂妻夫の「湖底のまつり」もそうなのですが、要は「取り違え」、簡単にいえば「錯誤」によるトリック。でもちょっと現実的には「ありえないだろっ」的な感想になってしまうわけなのです。
それに、真犯人がここまでオカルト現象の創出に拘った理由が今一つ分からないというのもあるかな・・・

ただ、本作はいわゆるトリックやドンデン返しといった、インパクトの大きさで評価すべき作品ではなく、怪奇性とロジックをうまい具合に融合させた、その美しさを評価すべき作品なのでしょう。
そういう意味では、さすがにマクロイらしい、繊細な筆致や細やかな心理描写を味わえる佳作という評価でもいいんじゃないかな。
(「暗い鏡」というのが象徴的で、なかなかいいね)

No.596 5点 鬼の跫音- 道尾秀介 2011/12/03 21:38
ブラック風味溢れる短編集。
ジワジワと恐怖が心根に浸食していく感じが何とも言えない作品が並んでます。

①「鈴虫」=一見して普通の男が過去に犯した罪。そして、それが露見するとき、さあどうなる? 「鈴虫」という存在自体がまるで何かの象徴のように思える・・・
②「ケモノ」=刑務所で作られた椅子に奇妙な文書が彫られ、それは家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語が、哀しい事件の真相を示していた・・・
③「よいぎつね」=子供のいたずらが、本当の「罪」になってしまうという忌まわしい過去。そして、その過去が主人公の記憶に蘇るとき・・・
④「箱詰めの文字」=これは相当ブラック。ドンデン返しの連続も効いていて、短編らしい切れ味を感じる作品。ただ、何となく既視感はありますが・・・
⑤「冬の鬼」=これは④以上にブラック、っていうか寒気がした。日記風の文書形式でストーリーは進みますが、日付が逆になっていく(=徐々に遡っていく)という趣向が凝っている。
⑥「悪意の顔」=同級生のひどい「イジメ」に怯えて毎日を過ごす少年が出会った女性は、何でも中に入れられる不思議なキャンパスを持っていた・・・こんなキャンパス欲しいわ!

以上6編。
最近こういう手の作品が多くなってるような気がしますし、そういう意味ではちょっと食傷気味にさせられる。
さすがに道尾氏らしく「うまさ」を感じるが、それだけではあまり高い評価はしにくい。
まぁ、いわゆる「軽~いホラー」なので、それほど読者を選ばないのが長所でしょうか。
(④⑤はなかなか面白い。それ以外は・・・それ程でもないかな)

No.595 5点 湖底のまつり- 泡坂妻夫 2011/12/03 21:37
「11枚のトランプ」、「乱れからくり」に続く作者の第3長編。
1978年より「幻影城」誌で連載され、評判を呼んだ作品。

~傷心を癒す旅に出た若い女性・紀子は、東北地方の山村で急に水量の増した川の岩場に取り残される。岸に戻ろうと水に入った紀子は流れに呑まれそうになるが、ロープが投げられ辛うじて救出された。助けてくれたのは、土地の若者・晃二で、その夜彼の家に泊まった紀子は抱かれる。しかし、晃二は1か月前に毒殺されていたのだ。では、紀子を助け晃二と名乗ったのは誰なのか? 文学的な香気漂う作品~

これは・・・「幻想小説」でしょうか?
第2章「晃二」の章に進んだとき、全ての読者が「アレッ??」と思うはず・・・そして、どんなトリック・騙しが仕掛けられているかという期待感を持つはず・・・
ただ、このトリックというか真相はどうだろう?
「騙し」のプロットそのものは実に泡坂氏らしいし、「そういう手で来たか!」と思わせる。
でもねぇ・・・さすがに「気付くだろう!」、紀子も!
一応、言い訳めいたフォローはしていますが、ここまでリアリティを無視されるとやや興ざめにはさせられた。

「亜愛一郎」シリーズのように軽妙な作品と並んで、こういう「大人な」作品も多いのですが、これはちょっと嗜好が合わないというのが正直な感想。
(アッチ系の描写も実に上手いね)

No.594 7点 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件- 麻耶雄嵩 2011/11/28 22:28
記念すべき(?)作者デビュー長編にして問題作。
実はノベルズ版出版時に購入し読んでいたのですが、その後しばらくの間、私を「麻耶嫌い」にさせた作品でもあるのです。

~首なし死体、密室、蘇る死者、見立て殺人・・・etc。京都近郊に建つヨーロッパ中世の古城と見紛うばかりの館・「蒼鴉城」を私が訪れたとき、惨劇はすでに始まっていた。2人の名探偵の火花散る対決の行方は。そして迎える壮絶な結末・・・名立たる作家たちの賛辞を受けた著者のデビュー作~

再読して改めて思いましたが、何とも言えない「パンチ」の効いた作品ですよねぇ。
本作が出版された当時、弱冠20歳の青年が作者だと分かったとき、相当の衝撃を受けましたが、同時に、全編に漂う何とも言えない「作り物めいたような」、「地に付いてないような」文書とあまりにも詰め込み過ぎた本格モノのガジェットに中てられ、この作者の作品は読むべきではないという気にさせられてしまいました。

ただ、メルカトル鮎登場以降、次々に出しては壊される推理&真相は、やっぱり圧倒的なパワーは感じざるを得ません。
はっきりいって、「密室トリック」(これは笑撃!)にしても、「見立て」(これもスゴイね)にしても、最後に明かされる真犯人の正体(これに至ってはもう笑うしかない・・・)にしても、もはやリアリティ云々なんて完全に無関係。とにかく、「書きたいことを書きたいように書いている」としか言いようがない。
これを「是」とするか「否」とするかは、読者の嗜好と度量次第でしょう。
「私」?・・・まぁ、決して嫌いではないですよ。もちろん。
麻耶雄嵩という稀代のミステリー作家が、成虫に羽化していくためのまさに「蛹」の作品なのでしょう。
その後、余計な肉を削ぎ落とし、見事な成虫になったのですから・・・
(なんか、書評になってないような気がしますが・・・)

No.593 7点 続813- モーリス・ルブラン 2011/11/28 22:25
前作「813」の続編。
A.ルパン最大級の冒険譚がいよいよ終結(!)。なかなかの大作。今回も堀口大学訳の新潮文庫版で読了。

~謎の人物、L・Mの手によって刑務所に放り込まれたルパンは、持ち前の沈着冷静さで警察陣を翻弄して脱獄に成功。一路ベルデンツの廃城へ向かう。全ヨーロッパの運命を握る秘密を解くカギが、必ずあるに違いない・・・が、またしてもL・Mの恐るべき刃は先回りしていた。L・Mとはいったい何者なのか? ルパンの鋭い追及の前についに姿を現した人物は意外にも・・・~

これは「さすが」のスケールと面白さを備えた作品でした。
「813」と「続813」の合計ではなかなかのボリュームですが、それだけの価値は十分ありでしょう。
(「813」の粗筋を忘れる前に読んで良かった!・・・)
さて、問題の人物「L・M」ですが、まぁ数多のミステリーが出版された現代においては、十分予想できた結果でしたが、それでもこれはこれで何とも言えないような驚きと悲しみに満ちた真相だという感想。
まさに「毒婦」という称号がピッタリ(ってこれは完全にネタバレかな?)
全ヨーロッパの運命を握る秘密ってほどの秘密ではないような気もするし、「813」の暗号に関する仕掛けは大したことはありません。
そんなことより、警察や政府をあれほど手玉に取るルパンが、美女や愛する女性を前に苦悩していることのギャップが、なんともフランス人(作家)らしいんでしょうねぇ・・・

いずれにしても、歴史に残る作品として、1度は手に取ることをお勧めします。
「813」と「続813」トータルとしての評価。
(「ヘルロック・ショルメス」って、冗談きつくないですか! フランス人ってイギリスのこと本当に嫌いなんだろうな・・・)

No.592 5点 材木座の殺人- 鮎川哲也 2011/11/28 22:23
銀座のとあるビルにあるというBAR「三番館」を舞台とするシリーズ4作目。
今回も、肥満の弁護士=名無しの私立探偵=「三番館」の達磨大使のようなバーテン、の三者がそれぞれ活躍(?)。

①「棄てられた男」=雪国のとあるペンションに集められた「いわく付き」の男女と、彼らを脅すために招待した男。そして、脅迫者の男が殺された! って書くと、何だか魅力的なプロットのように見えますが・・・なんともあっさりしたオチと真相。
②「人を呑む家」=以前、住人が忽然と消えた「家」。そしてまた新しい住人が忽然と消えた! って書くと、何だか魅力的なプロットのように見えますが、非常にあっさりしたというか、子供だましのようなトリック。こんなトリックに引っ掛かるなよなぁ・・・
③「同期の桜」=同じ会社で働く女性を殺害した容疑者として挙がったのは、「同期の桜」3名。それぞれアリバイがあるのだが、探偵の捜査&三番館のバーテンの推理により意外な犯人が判明。
④「青嵐荘事件」=金満家で「青嵐荘」の主人である男が毒殺される事件が発生。鍵になるのは、死亡推定時刻と容疑者(=青嵐荘の住人たち)のアリバイ。よく「推理クイズ」なんかで出てくるようなプロット&レベル。
⑤「停電にご注意」=これも主題は「アリバイトリック」だが、かなり強引なトリック。この写真のトリックって、相当使い古されたやつだと思っていたが、まさかこんなに堂々と使われていたとは・・・「三番館」のバーテン推理後に再度事件が起こるというのが、珍しいパターンの作品。
⑥「材木座の殺人」=鎌倉在住だった鮎川氏らしく、鎌倉~三浦半島の名所めぐりをした後に事件が発生。これもアリバイトリックが主題だが、ラストはあっさり。
以上6編。

よく言えば「偉大なるマンネリズム」、悪く言えば「いつものワンパターン」。
ただ、いつもは『事件発生の顛末』⇒『名無しの私立探偵の捜査』⇒『三番館のバーテンの推理』という3部構成だったのが、探偵の捜査をほとんど省略して、すぐにバーテンが推理して解決というものが数編ある。
プロットもまさに「ワンアイデア」の一発勝負ばかりで、こうなるとかなり味気ない気もしてくる。
シリーズものの宿命とはいえますが、やっぱり回を重ねるごとにクオリティが落ちてくるのが仕方ないのかなぁ・・・?
(特にお勧めはなし。敢えて言えば⑤)

No.591 5点 コンピュータの熱い罠- 岡嶋二人 2011/11/23 20:56
1986年発表のノン・シリーズ長編。
タイトルからして、岡島(井上)氏らしく、コンピュータに題材をとった作品。

~相性診断によって男女を引き合わせるコンピュータ結婚相談所。オペレーターの夏村絵里子は、恋人の名前を登録車リストに見つけて愕然とする。「何かがおかしい・・・」。彼のデータを見直し、不審を抱いた彼女を正体不明の悪意が捕らえる。相次いで身辺で起こる殺人事件は増殖する恐怖の始まりでしかなかった!~

まとまりのいい作品。
プロットとしては、それほどオリジナリティを感じないし、ストーリーの進行に従い、徐々に明らかになる「事件の背景」というやつがちょっと薄っぺらい感はある。
真犯人もねぇ・・・ちょっと「いかにも」すぎるかな?
最近でも、サイバーテロ等がマスコミを騒がせていますが、本作が発表された約25年前には、こういったコンピュータのセキュリティやハッキングといった話題は、まだまだ一般的ではなかったはず。
そういう意味では、実に先見性のある作品ということは言えそうです。
見せ方もさすがです。

まぁ、トータルでは水準級という評価。
(結局、本筋の殺人事件とコンピュータ絡みの謎があまり有機的につながってない気がするが・・・)

No.590 8点 妖魔の森の家- ジョン・ディクスン・カー 2011/11/23 20:54
創元文庫版のカー短編集。
短編になっても「カーはカー」とでも言いたくなる作品が並んでる。

①「妖魔の森の家」=20年前に発生した森の家からの幼児消失事件。そして、20年後の今再び、同じ人物が同じ家で消え失せる
・・・H.M卿が解明した真相は現実的なもの。ただ、H.Mも「アレ」を持ったのなら、少なくとも「変だな?」くらいは思うんじゃないかなぁ??
②「軽率だった夜盗」=これは、カーター・ディクスン名義で発表した長編「仮面荘の惨劇」の元ネタ。なかなか小気味いいトリックなので、むしろ短編の方が合う感じ。こちらは、フェル博士が探偵役になっている。
③「ある密室」=カーお得意の密室もの。トリック自体は、カーが分類してみせた「密室トリック」の中の代表例のようなやつ。ただ、かなり強引で、犯人側にはリスキーなものに見えるのが難。
④「赤いカツラの手がかり」=これはちょっと毛色の変わった作品。真夜中、素っ裸で殺害された女性の謎。要は、「なぜ素っ裸なのか?」が事件の鍵になるわけですが・・・日本人にはちょっと分かりづらいかな?
⑤「第三の銃弾」=この作品は中編と言うべき分量。これは、まさにカーそのものっていう作品で面白い。「密室トリック」はさすがに考えられてる。今回は、窓は密閉されていないが、目撃者の目が光っていたという、いわゆる「準密室」。密室トリックに3発の銃弾の取り違えや犯人側の錯誤(?)も交えていて、なんともまとまりのある作品になっている。お勧め。
以上5編。

これは評判に違わない作品集。
短編だけに、余計な寄り道もなく、ストレートにトリックや仕掛けを味わうことができる。
「密室」はトリック云々もいいが、やはり「なぜ密室にしたか?」や「なぜ密室になってしまったのか?」というポイントをどれだけ読者に納得させられるかが「いい作品」の分かれ道。本作はそういう点でも「お手本」でしょう。
(やはり⑤がベスト。①~④もどれも楽しめる)

No.589 6点 魔術はささやく- 宮部みゆき 2011/11/23 20:51
第2回日本推理サスペンス大賞受賞作。
作者のストーリーテリングの鮮やかさが窺える作品。

~それぞれは社会面のありふれた記事だった。1人目はマンションの屋上から飛び降りた。2人目は地下鉄に飛び込んだ。そして、3人目はタクシーの前に。何びとたりとも相互の関連など想像し得べくもなく仕組まれた3つの死。さらに魔の手は4人目に伸びていた。だが、逮捕されたタクシー運転手の甥・守は知らず知らずのうち事件の真相に迫っていたのだったが・・・~

さすがに読ませるなぁーという感想。
序盤から中盤は、いわゆる「ミッシング・リンク」テーマで、被害者たちのつながりが何なのかという謎を追うのが主題。
被害者をつなぐ「リンク」が判明した後半以降は、守と「魔術師」との対決が主軸に・・・というのが大まかな展開。
守の周りに魅力的な人物を配して、徐々に読者の心を煽っていくやり方がにくい。
ただ、「謎解きもの」としての魅力はやはり弱いかなという感じ。
(もちろん、これが作者の作風なのですが・・・)
「サブリミナル効果」やら、守の「技術」に関する部分も、ネタの1つとしてはいいが、どれも中途半端。
ラストもちょっとインパクトは弱いかなぁ。
例の老人も、結局「いい人」なのか「邪悪な人」なのかの書き分けがうまくいってない気がする。

実は、宮部女史の作品は今回初読(!)だったわけなのですが、やっぱり個人的には合わない作風のようです。
(うまいのは間違いないけどね)

No.588 6点 災厄の紳士- D・M・ディヴァイン 2011/11/19 14:27
1971年発表、作者の第10長編。
「本格ミステリーベスト10(2010年度)」第1位(!)作品。

~ネヴィル・リチャードソンは、見た目は美男子だが根っからの怠け者。ジゴロ稼業で何とか糊口を凌いでいたところ、さる筋からうまい話が転がりこんできた。今回の標的は、婚約者に捨てられたばかりの財産家の娘・アルマ。我儘でかつ気の強いアルマに手を焼くが、共犯者の的確な指示により、計画は順調に進んでいた。彼は夢にも思わなかった・・・とんでもない災難がわが身に降りかかることを・・・~

「うまい」が、ちょっとインパクトには欠けるという読後感。
ディヴァインというと、家族や職場といった限られた人間関係の中で発生した事件を、卓越した心理描写で読ませる・・・というイメージですが、本作もまさにその通り。
主要な視点人物であるサラを通して、登場人物の造形が鮮やかに浮かび上がります。
ただ、他作品に比べると、落ちるなという印象は拭えない。
特に、フーダニットについては、確かに意外なのだが、何となく「ディヴァインのパターン」というものがあって、本作の真犯人もそのパターンに当てはまっているのだ。
ミスリードもあからさま過ぎるのが玉に瑕。
ということで、世間的な評判ほどではないかなという評価ですねぇ。
(ジョンはちょっと可哀そうだね・・・)

No.587 6点 猿島館の殺人~モンキー・パズル~- 折原一 2011/11/19 14:26
「鬼面村の殺人」に続く黒星警部シリーズの長編2作目。
黒星と虹子のコンビが、パロディに次ぐパロディに彩られた事件に挑む!

~東京湾の孤島・猿島で、ひっそりと暮らす猿谷家の人々。その館にフリーライターの葉山虹子が迷い込んだ。ところが主人の藤吉郎が、密室の書斎で不可解な死を遂げるや、次々と起こる変死事件。現場の状況が示す犯人は、なんと『猿』! 折しも、脱獄犯を追ってきた黒星警部と虹子が推理をするが・・・~

久し振りに再読したけど、いやぁなかなかの「怪作」って感じです。
よく言えば「遊びごころたっぷり」ですけど、逆にいえば「悪ふざけ」。
それでも、途中まではまずまずの面白さ。
「モルグ街の怪事件」(当然「猿」つながりね)と「Yの悲劇」を思いっきりパロってるとはいえ、デビュー作「七つの棺」で思いっきりパロデイ作品を連発した作者ですから、これくらいならむしろかわいい方。
ただねぇ・・・真相は相当脱力感がある。
なんだ、この「動機」と「密室トリック」は!!
(折原ファン以外なら、怒り出すレベルかも・・・)

というわけで、遊びこころを理解できる方にしかお勧めできません。
「どくしゃへの挑戦」のヤツもなぁ・・・ (小学生が、○○を△△とを間違えないだろ!)

No.586 5点 儚い羊たちの祝宴- 米澤穂信 2011/11/19 14:24
ブラック風味の濃い作品が並ぶ連作短編集。
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」が各作品を緩やかに繋げてます。

①「身内に不幸がありまして」=最後の一撃に唸らされる・・・という趣向。確かに「動機」は相当ブラックだね。
②「北の館の罪人」=この中では地味だが、なかなか味わい深い一作。離れの館に幽閉された男が、使用人の女性に次々と頼む買い物の品々の謎。ラストの衝撃はそれほどでもないが、割合好み。
③「山荘秘聞」=ストーリーの進行とともに寒気がしてくるような作品。仕掛けがあからさまなので、逆のラストを予想してましたが、真相はやっぱりブラックに・・・この女は怖い!
④「玉野五十鈴の誉れ」=ストーリーの途中に引用されることば『初めチョロチョロ、なかパッパッ、・・・』がラストに効いてくる・・・確かに切れ味のいい作品。
⑤「儚い羊たちの晩餐」=何だ、その「アミルスタン羊」って? もしや?・・・あらゆる食材を使いすぎる料理人の謎と「バベルの会」の謎がシンクロし、ラストへ・・・

以上5編。
作者の独特の世界観が滲み出てます。
①~⑤とも、主人と使用人とを軸にしたある種異様な主従関係を背景に事件が発生し、ブラックな結末へという流れ。
最近、こういう手の作品も多いので、目新しさには乏しいとはいえ、作者のストーリーテリングの巧みさは感じられた。
ただ、折角「連作」形式にしたのなら、もう少し全体通しての「仕掛け」が欲しかったなあというのが不満点。
(③がベストかな。④はそれほどでもない)

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