皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
メルカトルさん |
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平均点: 6.04点 | 書評数: 1835件 |
No.275 | 9点 | オリエント急行の殺人- アガサ・クリスティー | 2013/03/02 23:51 |
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この作品は、私が思うにクリスティーの代表作の一つではないだろうか。おそらく多くの読者がこの意見に賛同されると思う。それくらい意外性のある、クリスティーらしい大仕掛けの逸品であろう。
アリバイ崩しがメインかと思わせておいて、実は究極のフーダニットだったという、いかにもなアイディアには脱帽せざるを得ない。 それにしても、さすが灰色の脳細胞を誇るポアロだけのことはあり、これだけの事件を見事に解決に導いているのはさすがだ。 事件そのものは、考えてみれば単純なものだし、容疑者も完全に限定されているので、簡単に解けるかと言えば決してそうではない。 単純なトリックほど盲点になりやすいという、好例ではないかと。 余談だが、アルバート・フィニー主演の映画もDVDで観たが、こちらも面白かった。お薦めである。 |
No.274 | 6点 | 水中眼鏡の女- 逢坂剛 | 2013/03/01 22:16 |
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表題作他、併せて3編からなる短編集。
20数年前に書かれた作品だが、現在でも十分通用すると思われる、大胆な仕掛けが魅力の粒揃いと言って差し支えない短編というか、中編に近いものが並ぶ。 いずれも精神鑑定が何らかの形で関わってくるが、だからと言って小難しい要素は全然なく、むしろそれをエンターテインメントに昇華させる作者の腕は確かなものがあるようだ。 テンポも良く、とても読みやすい、すぐに物語にのめり込んでしまえる、なかなかのサスペンスぶりを示している。 それぞれ、結末には驚きが待っていて、一瞬「えっ」を心の中で叫んでしまうそうになる。 よって、どんでん返しや意外な結末が好きな読者にはお薦めとなっている。 |
No.273 | 9点 | そして誰もいなくなった- アガサ・クリスティー | 2013/02/28 22:17 |
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今更私ごときが書評を書くのもおこがましい、世界的な名作。
今読んでみたら、もしかしたら古臭さを感じてしまうかもしれないが、やはり書かれた年代を考えると素晴らしいと言わざるを得ないだろう。 現在巷にあふれるミステリ小説とは、同じ土俵で語られるべきではない作品じゃないかな、というのが個人的に思うところ。 後世に大いなる影響を与えた稀有な名作として、低い評価は付けられない。 当時でこの全員が探偵で、全員が被害者、全員が容疑者というアイディアは凄いと思う。 孤島物というジャンルを確立した、記念すべき作品でもある。 |
No.272 | 7点 | 水車館の殺人- 綾辻行人 | 2013/02/27 22:18 |
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再読です。
私にとって、館シリーズ中最も印象が薄かった作品だった。 がしかし、改めて読み返してみると、意外と面白かった。確かに地味ではあるが、じっくり読んで自ら真相を追及してみたい読者には持って来いの一作なのではないだろうか。 取り敢えず、犯人はすぐに目星がついたし、おおよそのからくりにも気づいたが、残念ながら人間消失のトリックだけは分からなかったのが悔しい。 全体として、島田潔の推理が始まるまで、なんとなく淡々と進行していくので、その辺りやや物足りなかった気もするが、館シリーズらしい仕掛けも健在だし、伏線の張り方もなかなかうまいと感じた。 前作ほどの派手さはないが、じっくり腰を据えて物語に入り込める良作だと思う。雰囲気も館シリーズらしいしね。 |
No.271 | 8点 | 双頭の悪魔- 有栖川有栖 | 2013/02/24 22:33 |
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再読です。
川の氾濫により橋が崩壊し、陸の孤島と化した芸術家が集う小さな村で起きた奇妙な殺人事件。 そしてその川を隔てた隣村で起こる殺人、果たして二つの事件には関連性があるのか。更に起こる第三の殺人、しかもいずれの事件にも一々「読者への挑戦状」が挿入されているという徹底ぶり。 これは作家有栖川有栖畢生の大作であり、間違いなく代表作に挙げられる作品であろう。 トリックよりロジックに重きを置いた、クイーンの継承者としての肩書を背負って臨む、江神シリーズ第三弾の本格的な推理小説である。 こうした論理的に推理していけば、確実に犯人にたどり着けるという、フーダニット物を愛するミステリファンにとっては堪らないだろうと容易に想像できる。 しかし、私はどちらかというと派手なトリックやどんでん返しが好きなほうなので、この手の作品はあまり好みではない。 が、やはり高得点は付けざるを得ないであろう。 ただし、一点だけ第一の殺人で説明されていない部分があったように思われるのが、やや残念ではある。 |
No.270 | 5点 | 水底の殺意- 折原一 | 2013/02/19 21:50 |
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再読です。
てっきり読んでいないと思っていた、私の中で完全に忘れ去られた作品。 殺人リストに次々と名前が書き加えられていくというアイディアはなかなか面白いと思うが、いかんせん内容が伴っていない感は否めない。 この作品に関しては、折原氏得意の叙述トリックもなりを潜めているようだし、サスペンスもいまひとつ効いていない気がする。 従って、折原ファンの一人として高得点は付けられない。 |
No.269 | 7点 | 螢- 麻耶雄嵩 | 2013/02/12 21:56 |
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再読です。
ネタバレしています。(初読の際の記憶は全くありませんので、再読とは言え、初読のようなものです) 麻耶作品にしては地味と言うか、大人しめなんだよね。 氏にはもっとこう突き抜けた、破天荒なものを書いてほしいと、私は思うんだけど。 しかしながら、決してつまらない訳ではなく、むしろ力作だと感じる。ジャンル的には典型的な嵐の山荘ものである。 三人称だか一人称だか判然としない文章は、いかにも怪しげで叙述トリックの匂いがプンプンする。これはどう考えても一人称の部分を記述している人物が真犯人だと確信するものの、作者の策略にまんまと嵌まり、見事に騙された。 まあ良い線はいっていたと思うけれど、ミスリードにやられました。 又もうひとつの叙述トリックは、読者には分かりきっている事実を、登場人物は知らなかったという、誠に珍しい仕掛けとなっている。 が、ちょっとした驚きはあるものの、あまり感心しないトリックだと思う。別に事件そのものに関わってくるわけでもないしね。 まあしかし、なんだかんだ言っても楽しめたのは間違いないので、ギリギリこの点数に落ち着いた。 |
No.268 | 7点 | 人体模型の夜- 中島らも | 2013/02/09 21:31 |
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再読です。
人間の身体のパーツにまつわるちょっと怖い話をまとめた、連作短編集。と言っても、それぞれが独立した話であり、相互間系は全くない。 私が一番気に入っているのは第一話の『邪眼』。ラスト一行でやられます。 しかしながら、ほとんどがオチが予想できるものであり、ページ数が残り少なくなると、なんとなく想像出来てきて、大抵が想像通りに終わってしまうのが何とも・・・ 多くの短編がブラック・ジョーク風味であり、まあいかにも中島らも氏らしい作品と言えるだろうか。 それでも、一風変わった、それぞれ趣の違うホラーが並んでおり、読み出したらすぐに引き込まれることは間違いない。 どことなく『世にも奇妙な物語』的なストーリーが多いような気もする。 |
No.267 | 7点 | 金雀枝荘の殺人- 今邑彩 | 2013/02/07 20:23 |
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再読です。
なるほど、あとがきを読んだ後には、もう一度序章を読みかえしてしまう。ネバー・エンディング・ストーリーは言い過ぎだが、これはなかなか面白い試みだと思う。 本格的な館ものであり、密室も必然性がありよく練られている。そして見立て殺人と、本格ミステリの美味しいところをこれでもかと詰め込まれており、これこそは隠れた名作と呼んでも差し支えないだろう。 今邑女史の作品の中でも、一、二を争う出来の良さかもしれない。 まあ、相変わらず警察がいかにも頼りないというか、ほとんど出番がないのは作品の性質上仕方ないのか。 霊感少女の存在は個人的には不要な気もするのだが、作者としては遊び心というか、雰囲気作りの一環として登場させたものとして解釈したいと思う。 とにかく全体的に重すぎず軽すぎず、丁度いい感じのさじ加減はさすがにプロの作家と言えるだろう。 |
No.266 | 5点 | 匣の中- 乾くるみ | 2013/02/05 21:54 |
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再読です。
ネタバレするかも。 名作『匣の中の失楽』とは似て非なるもの。 構成は似たところがあるが、それだけ、比較するのも憚れるまがい物といった感じである。 道中の衒学趣味は果たして必要なのか、かなり疑問に思われるし、私にとってはただただ鬱陶しいだけであった。 そして何より、結局誰が誰を殺害したのか、全ては藪の中で判然としないのは、こういった作品ではやむを得ないのであろうか。 最後には作者まで登場し、メタ的展開を見せるのには辟易とさせられる。これでは何でもありで、アンチ・ミステリどころではなくなってしまう。 読後感はひたすらもやもやしていて、いかにもすっきりしない。かなり気分が沈みがちな後味の悪さを覚える結末。 一体「揚げ物、メシの残り食うかや」このセリフは何だったのだろうか。 |
No.265 | 8点 | 獄門島- 横溝正史 | 2013/02/01 21:40 |
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不朽の名作だね。
登場人物がそれぞれの役割を果たしている点や、第二次世界大戦が物語に大きな影響を与えている点、ある条件が揃ってしまい動機が生まれる点など、評価されるべき部分が多いところは見所の一つと言えるかもしれない。 私が面白いと感じたのは、あまり本筋とは関係ないが、釣鐘が動くという奇妙な出来事である。 無論、見立て殺人はそれぞれが際立っており、横溝氏の美意識を感じる。 また、例の名台詞はやはり物語の根幹を成すものとして、後世に語り継がれるだろう。 ただ、ストーリー自体は他の氏の名作に比較すると、私の好みとは若干ずれるのが少々残念ではある。 だから、9点でも良かったのだが、1点マイナスとした。 |
No.264 | 7点 | 戻り川心中- 連城三紀彦 | 2013/02/01 21:23 |
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再読です。
たまにはいいね、文学作品も。えっ、本格?これが。 いや、確かにミステリ的要素は幾分か含まれてはいるが、どう考えても本格ミステリじゃないでしょう。やっぱり純文学、いくら贔屓目にみても文学だよね。 個人的には、格調高い文章に載せて語られる、男女の愛憎劇だと考える。 ミステリ的角度から見れば、ホワイダニットが中心となるだろうか。意外な犯人とかを期待すると間違いなく裏切られるが、ちょっとした反転は味わえる。 ミステリじゃないから、どう評価していいかやや困惑してしまうが、やはり文学作品として低い点数は付けられないので、無難に7点にしておく。 |
No.263 | 6点 | A先生の名推理- 津島誠司 | 2013/01/29 21:55 |
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再読です。
事件の概要が説明される前半と、A先生が登場する解決編がはっきりと区別されている連作短編集。 前半の事件はどれも奇天烈なもので、謎としては申し分なく実に魅力的だが、一転それらの謎を解く後半は味も素っ気もないくらい、あっけなく解決されてしまう。 A先生の推理は、なるほどと思わせる部分もあるが、いささか強引で説得力が無い。 『宇宙からの物体X』の前半が最も面白かったかな、後半は相変わらず肩すかしだが。 それと、もしかしたらこの作者の本領が最も発揮されているのは最終話の『真夏の最終列車』かもしれない。 この短編だけはA先生が登場しない、氏のデビュー作であるらしい。 このアリバイトリックはすっきりしていて、意表を衝かれる、なかなかよく考えられたものであると思う。 ただ、轢断死体、つまり変死体なので、警察が本気で調べればあっけなく真相が看破されてしまうはずなのだが。 それでも、この最終話だけは評価されるべきではないだろうか。 |
No.262 | 7点 | ドグマ・マ=グロ- 梶尾真治 | 2013/01/26 22:10 |
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再読です。
最初に断っておきますが、タイトルが例の名作に酷似していますが、一切関係ありませんのであしからず。 さて本作品、登録しようか迷ったが、せっかく読み返したので、書き留めておこうと思う。 というわけで、ほとんどの人が興味ないと予想されるので、概要などは割愛して簡潔にまとめてみたい。と言っても、ストーリーは意外と複雑で登場人物も多いので、書こうにも書き切れない、一言でいうと、新米看護師の主人公が初夜勤で体験するある病院での一夜の恐怖の物語である。 通称カジシン、この人は基本的にホラー作家だと思うが、ほとんどの作品がホラーでありながらヒューマン・ドラマとなっているのが特徴ではないだろうか。 簡単に表現すると、人間臭いというか人間味溢れるホラーか。 本作では老婆の患者5人の活躍が、胸を熱くする。 他にも、思わず目頭が熱くなるシーンが随所に見られ、感動のホラー巨編に仕上がっている。 ラストシーンは、これまたご愛嬌である。 |
No.261 | 6点 | さらわれたい女- 歌野晶午 | 2013/01/24 21:43 |
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再読です。
巧妙なプロット、意外な展開、さすがに歌野晶午と言いたいところだが、いかんせん面白みに欠けるのがどうもね。 本格的な誘拐物では勿論ないし、さりとてユーモア・ミステリとも違う。サスペンスと呼ぶにはやや緊迫感に欠ける。 じゃあ、どういうスタンスで読み進めば良いのか、正直迷ってしまう。 しかしながら、十分水準点はクリアしているし、読みやすいので苦痛は感じない。 ところで、ジャンルは何に投票すれば良いのだろうか、本格か、サスペンスか、ちょっと迷ってしまう。なんとも表現しがたい作風なのだ。 ラストは、個人的にはこれで良かったのではないかと思う。 それほど意外性はないけれど、無難な着地の仕方だろう。 まあ、結局右往左往しながら、主人公の何でも屋と一緒に冒険を楽しむ作品なのかな。 |
No.260 | 8点 | 頼子のために- 法月綸太郎 | 2013/01/22 21:58 |
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再読です。
初読の際は、なんだか切ない読後感だったが、今回読み直してみて、全体を通して痛々しい印象を持った。 痛々しくなかったのは、唯一探偵の綸太郎のみで、登場人物それぞれが心に何かしらの傷をもっており、読んでいて辛くなるような心持がしたものだ。 一方、綸太郎は最初から「僕は真実の側につく」との言葉通り、最後の最後まで己のスタンスを貫いている。 この姿勢は、解説にもあるように、どちらかと言うとハードボイルドを思わせる。 従って、この作品は本格ミステリというよりも、ハードボイルド寄りのある(名探偵ではない)探偵の物語という側面を持っていると思われる。 さて、冒頭の手記に関してだが、私は一読後唯一首を捻りたくなるような記述があったことを除いて、特にこれといって不可解な点には気付かなかった。 その手記をもってして、再調査に乗り出し、真相に迫る法月綸太郎はさすがと言えるかもしれない。 しかし、最後に真犯人に対して、○○を促すような言動は探偵としていかがなものかとは思う。 たとえ真実の側についた人間だといえ、ここは思い留まらせるべき場面だった気がするが、どうなのだろう。この点も一つ後味の悪さにつながっているように思える。 まあしかし、様々な面で優れた作品であるのは間違いないし、端正な文章に載せて語られる氏の代表作と言って良いだろう。 |
No.259 | 8点 | 黒い家- 貴志祐介 | 2013/01/19 21:52 |
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再読です。
ネタバレするかも。 これぞホラー小説の真髄。誠に素晴らしい出来栄えの傑作である。 舞台が保険会社なので、生命保険、傷害保険、入院保険などの勉強にもなり、為にもなる小説。 そして、なんといっても怖いのである、それはもう心底。背中を這い上がるようなぞくぞくする怖さと、とても心臓に悪いショッキングなシーンの両面攻撃で、読者を恐怖のどん底に陥れる。 ハイライトはSが旦那の○○を○○してしまうところ、これはもう半ば予想していながら、トラウマになりそうなくらいの恐ろしさだ。 病棟の個室で、三善が恫喝するシーンが私のお気に入りなのだが、その百戦錬磨の三善が簡単にやられてしまうのはやや不満と言うか、不可思議で疑問が残る。 しかし、気になるのはその点くらいで、他は何を取っても完璧ではないだろうか。 前半のサスペンスフルな展開や、主人公の若槻が事件を追うミステリ的な趣向、後半の若槻とSとの対決はどれも読み応え十分である。 |
No.258 | 5点 | 思い通りにエンドマーク- 斎藤肇 | 2013/01/16 20:20 |
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再読です。
本棚から溢れた本を整理していて、たまたま目に付いた一冊。 今ひとつ覚えていなかったので、読み直してみようかと思い立ったのが運の尽き。 主人公である学生の僕が名探偵よろしく、いわゆる嵐の山荘状態での連続殺人を解決して凱旋するのだが、そこに待ち受けていた陣内先輩に一刀両断される。 曰く「お前の推理は滅茶苦茶だ」。というわけで、一旦解決を見たかに思われた密室絡みの連続殺人事件の真相を暴きに、陣内先輩と僕は再び惨劇の館へ向かう。 その前に「作者への挑戦状」(読者への挑戦)が挿入されるが、正直、真犯人はボンクラの私にも丸分かりであったし、動機も予想通り。 これだけ分かり易い謎も珍しい。 アリバイトリックはなかなかよく考えられているものの、密室トリックには大きな疵がある。 よく読めばいくつかの疑問点やアラが見えてくる、とても高得点は望めない凡作であろう。 |
No.257 | 6点 | 女囮捜査官 触姦- 山田正紀 | 2013/01/13 21:48 |
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再読です。
囮捜査官という、これまでにない捜査法を取り入れたなかなか斬新なアイディアを持つ新感覚のミステリ。 本格ミステリと呼ぶにはやや抵抗があるので、新型の警察小説とでも言うべきなのだろうか。 駅の女子トイレで起こる連続殺人事件、次々と現れては消える容疑者たち、囮捜査を巡って巻き起こる警察組織内での軋轢と人間関係、めまぐるしく展開していくストーリー、どれを取っても悪くない、むしろ面白い。 結末も良い感じで、意外な犯人像も十分納得のいくものだろうと考えられる。 ただ、最初から感じていた違和感が結局真犯人逮捕の決め手になろうとは、何とも脱力ものではある。 中身は薄味だが、読みやすい珍品の娯楽作と言えるだろう。 |
No.256 | 7点 | 水晶のピラミッド- 島田荘司 | 2013/01/12 21:33 |
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再読です。
初読では期待しすぎたあまり、今ひとつと感じたが、読み直してみて意外に面白いのを再認識した作品。 多くの方が指摘されているように、古代エジプトとタイタニック号のくだりは不必要なのかもしれないが、これがあってこそ物語が盛り上がるのではないだろうか。これらのエピソードが交互に配される事によって、御手洗シリーズの雰囲気作りに一役買っているように思われて仕方ない。 内容は密室あり、人工ピラミッドの最上階で溺死した死体という不可能犯罪あり、さらには謎の怪物まで出現して、まさに盛りだくさんで読者を飽きさせない。 またリーダビリティもさすがと言えるが、説明文がややくどく、若干分かりづらいのが難点かと思う。 レオナの台詞が芝居じみていて鼻に付くのも気になる。まあしかし、御手洗と対等に渡り合うためにはやむを得ないのかもしれない。 ラストの捻りも良い感じに決まっており、若干地味ではあるが、御手洗シリーズの面目は保っているのではないだろうか。 |