皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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メルカトルさん |
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平均点: 6.04点 | 書評数: 1835件 |
No.375 | 6点 | 七回死んだ男- 西澤保彦 | 2013/11/27 22:24 |
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再読です。
まあ面白かった。しかしそれはあくまで、「遊び」或いは「実験」としての面白さであって、真摯に本格ミステリを標榜する読者には受け入れられ難いのではないかと思う。 ところが、本サイトでは非常に得点が高いので、これは私にはちょっとした驚きすら感じてしまう。どうやら本サイトだけではなく、他のサイトなどでもかなりの高評価なので、公平に見てそれだけの評価に値する作品なのであろう。ただ単に私がへそ曲がりなのか、それとも私に審美眼がないだけなのか、おそらくそのどちらかだと思う。 このSF的な設定は、それ程目新しいものではないので、それ自体は驚かないが、そこに「殺人」を絡ませたという点は目の付け所が良かったのではないだろうか。 蛇足というか、どうでもいいことだが、なぜこの作者は句点ばかりを用いて、読点をほとんど使わなかったのかが不思議だった「。」ばかりが目立って読みづらいだけだと思うのだが。 まあとにかく本作は西澤氏らしい、奇妙な味わいの作品であることは間違いないし、(私にとっては)意外にも本格ミステリファンにも十分受け入れられる変則的なミステリといえるようだ。 |
No.374 | 6点 | 誰彼- 法月綸太郎 | 2013/11/26 22:29 |
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仮説を構築してはそれを崩壊させるの繰り返しで、読んでいていささか疲れるというか、飽きてしまう。でも、プロットやストーリーがかの名作『エジプト十字架の謎』に何となく似ていなくもないので、そこは気に入っている。
それにしても本作の法月綸太郎はあまり苦悩していない気がする。悩んで何ぼの名探偵なんだから、もっと苦しむ姿も見たかったかも。 ところでこのタイトル、一体どう読むのかと思っていたが、「たそがれ」とはねえ、なかなかセンスがいいね。 まあ、そこそこ面白かったし、楽しめた。みなさんが言うほどひどい作品だとはあまり思えない。 |
No.373 | 6点 | コズミック・ゼロ 日本絶滅計画- 清涼院流水 | 2013/11/25 22:46 |
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その年の大晦日も例年のように、大勢の初詣客で各寺社はにぎわっていた。そして年が明けると同時に、明治神宮、熱田神宮、川崎大師、伏見稲荷大社など10ヵ所の初詣客のほとんどが消された。その数およそ650万人。
更に正月休みが明けると、ラッシュアワー時のJR、私鉄の約3000万人の乗客が消された。 そして、時を待たずに今度は、東京、大阪、名古屋の3大都市がダムの爆破により水没した。 これは大規模なテロ行為なのか、或いは某国の工作員の仕業なのか、一体何の目的で・・・ といった、いきなりの怒涛の展開で始まる、この作者らしい荒唐無稽なパニック小説となっている。 単行本が刊行された際、あちらこちらでこれ以上ないほどこき下ろされた作品だが、それは全体を通してマクロな視点からパニックの状況を淡々と描写しており、ミクロの視点からの細かな描写がなされなかったため、リアリティに欠けるとの印象を持たれたからだろうと想像される。 確かに私もそう思うし、公平に見てそのそしりは免れないだろうけれど、私は本作が決して嫌いではないし、出来も悪くないと思う。少なくともお金と時間の無駄とは思わない。 そんなことを書いても、おそらく清涼院流水氏の作品を好意的に受け入れているのは、このサイトでは私以外ほとんどいないだろうから、誰も見向きもしないと思うが、面白いよ、本当に。それだけは言っておきたい。 |
No.372 | 8点 | りら荘事件- 鮎川哲也 | 2013/11/24 22:16 |
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これぞ本格推理小説の王道を行く傑作ではないだろうか。
書かれた年代を考えれば、数々のトリックやプロットは見事だと思う。まさに本格パズラーのお手本のような作品。 まあ今読めば細かいアラが見えてくるかもしれないが、当時(確か高校生の頃だったと思う)の私には十分新鮮な印象を持った。特にトランプを利用したトリックには感心した、これは読者の盲点を突くさすがの仕掛けだと思う。 ただ、何人かの方が指摘されているように、次々と殺人が起きているわりには、緊迫感が欠けるというのは否めない。 だがそれはそれとして、やはりこの作品は鮎川哲也の代表作だと私は思う。 |
No.371 | 7点 | 邪馬台国はどこですか?- 鯨統一郎 | 2013/11/23 23:20 |
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これは歴史好きには堪らない作品だね。私は特に日本史が好きとか得意とかではないので、そこまでは楽しめなかったけれど、それでもこの高得点。
本作には歴史ミステリのロマンが香っているねえ、どの短編も珍説、新説が盛りだくさんで、なるほど本当にそうなのかもしれないと思わず納得しそうになるものが多くて、興味深い。 個人的に一番気に入っているのは『謀反の動機はなんですか?』で、信長○○説がなんだかとても信憑性がありそうだし、意外性を買って一押し。でも、この説だと信長の性格まで通説とがらりと変わってくるので、やや無理があるかなとは思うが。 そして表題作は、これはまさに歴史のロマンが漂う佳作だろう。定説を覆してのまさかの邪馬台国東北説、しかし、それなりに土台がしっかりしているので、なるほどと頷ける点も多い。 まあとにかく、歴史好きには必須アイテムであるのは間違いない。 |
No.370 | 8点 | パラサイト・イヴ- 瀬名秀明 | 2013/11/22 22:56 |
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再読です。
若い頃、ある女性に薦めたところ、友人がとても怖い思いをしたとの理由で拒絶された、苦い思い出のある作品。 とは言っても、良いものはやはり何度読んでも面白い。そこら辺に転がっているホラーとはレベルが違う秀作である。 前半は専門用語が氾濫して、相当チンプンカンプンな部分も多かったが、それを補って余りあるアカデミックな香りと、じわじわ迫ってくる怖さがウリのひとつだと思う。さらには、それぞれの人物描写もしっかりしていて、その意味でも優れた作品と言えよう。 一転後半は怒涛のホラー&アクションの連続で、読者を引き付けて離さない魅力を持っている。ホラー小説大賞の審査員の一人、林真理子女史が徹夜して読破したというのも納得の出来である。 |
No.369 | 5点 | ロートレック荘事件- 筒井康隆 | 2013/11/21 22:26 |
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なんだか違和感ありありの文章で、何か仕掛けがあるのかなと思いながら読み進んでいったのだが、これがいわゆる叙述トリックだと気付くのにちょっと時間が掛かった。その頃の私はまだ擦れていなくてあまりこのようなトリックに慣れていなかったため、あっさり騙された。しかし、やられたという感じは全く受けなかった。なので、良い意味でのカタルシスは生まれなかったのを覚えている。本来なら、そうだったのかと、膝を打つような軽いショックを受けても良さそうなものなのに、その辺がミステリ作家ではないゆえなのかとも思う。
事件そのものもありきたりであまり感心しないが、まあ短くて伏線を後から確認しやすいのが美点と言えるだろうか。 他はこれと言って褒めるべきところが見当たらないかな。 |
No.368 | 5点 | ラジオ・キラー- セバスチャン・フィツェック | 2013/11/20 22:23 |
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数々の難事件を解決に導いたベルリン警察のベテラン交渉人、イーラ。彼女は長女ザラの自殺に心を痛め、その日が彼女の最期になるはずだったが・・・しかし、皮肉にもラジオ局を乗っ取っての立てこもり事件に駆り出されることになってしまう。
事件の犯人はサイコな知能犯で、人質を盾に殺人ゲームを始めようとしていた。しかも彼の要求は事故で亡くなった恋人を連れて来いというものだった。 とまあ、なかなか派手な展開で、飽きることなく楽しませてくれる。主人公のイーラの心理描写もよく描き込まれている上に、各登場人物の造形がしっかりしているのは好感が持てる。 アマゾンではすこぶる評価が高いが、私にはそれ程でもなかった。確かにスピード感あふれるサスペンスは一読に値するとは思うが、この程度なら日本の作家のほうがよりきめ細やかに描くことができるだろう。ただ、翻訳物独特の雰囲気のようなものは勿論真似できるわけではないけれど。 後味は悪くなかった。果たしてアル中でシングルマザーの主人公がこの事件を通じて得たものは何か、その後彼女はどんな人生を歩んでいくのか、その辺りも想像をかき立てられる。 |
No.367 | 5点 | 軽井沢マジック- 二階堂黎人 | 2013/11/19 22:21 |
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再読です。
コージーミステリはやはり肌に合わないと痛感させられた作品。 水乃サトルのキャラは嫌いではないし、さらにそのお姉さまはとても素敵だとは思う。本筋よりもむしろこの軽すぎる探偵の紹介や、お姉さまが大暴れするシーンのほうが面白い。よって、ミステリとしての面白さはイマイチとしか言いようがない。 何もかもが中途半端で、ライト感覚のユーモアミステリでもなければ、トリック重視の本格物でもない、新興宗教やトラベルミステリ的な要素も絡んでくるが、それも際立ったものが見当たらない。 一番注目していた、死体の眼球を抉り取った理由もなんだか納得できない感じで。 二階堂氏は蘭子の「~ですわ」口調が鼻につくが、やはり二階堂蘭子シリーズのほうが読み応えがあっていいんじゃないかな。 |
No.366 | 7点 | 永遠の0- 百田尚樹 | 2013/11/18 22:24 |
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これはミステリじゃないね、立派な文芸作品だよ。でも書いちゃうよ、登録されていたからね。
とても素晴らしい作品、何が?それは読まなきゃ分からない。そこかしこに落涙ポイントが散見されるし、その上立派なエンターテインメントとしても成り立つという、まれにみる名作じゃないだろうか。 志願せずして特攻隊として亡くなった祖父の謎を、孫たちが彼を知る当時の仲間たちを訪ねて聴取するという構図は確かにミステリのようではあるが、あくまで文芸作品と捉えたい。 それにしても、本作は様々なことを勉強させられるし、また感動を与えてくれる、勿論嗚咽を堪えながら読まなければならないシーンも少なくない。戦争を体験することなく育った我々が読むべき作品であり、長きに亘って語り継がれるであろう作品でもある。 尚、文庫版の解説は、本好きで知られた今は亡き児玉清さんが担当しているのも、因縁浅からぬものがあるような気がする。 |
No.365 | 5点 | 覆面作家- 折原一 | 2013/11/17 22:21 |
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再読です。
そうねえ、まあ折原氏らしいと言えばそうなんだろうが。どうもいまいちインパクトに欠けるというか、盛り上がらないんだよね。 トリックというか、覆面作家の正体を明かされても、はあそうですか、くらいの感慨しか浮かんでこなかった。そうだったのか!とか、一杯喰わされたとか、とにかくやられた感がほとんどないので、全体が霞んでしまうのだろうかね。 多重構造はお手の物の作家だから、今更驚かないし、こちらも身構えて読むから、この結果にはいささか拍子抜けしてしまう。 残念だが、読み返す必要もなかった。折原氏の作品の中でもどちらかというと精彩を欠いた仕上がりに思えてならない。 |
No.364 | 7点 | 鼻- 曽根圭介 | 2013/11/16 23:20 |
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第14回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作『鼻』他、『暴落』『受難』を収録した短編集。
それぞれ違ったタイプの不条理劇とでもいうべき佳作が揃っている。ホラー小説とは言ってもさほど怖くはなく、むしろブラックユーモア的な独自の世界観を醸し出している辺りは、新人らしからぬ筆力の持ち主だと感じる。 個人的に最も気に入っているのは『暴落』でラストの衝撃はもうね、これ程意表を突いた結末はなかろうというくらい、まさかの展開が待っている。『鼻』も途中サスペンスを交えながら、これまたオチが見事に決まっている。 『受難』はこれぞ不条理の世界って感じで、なぜだか分からないが身動きが取れなくなった主人公の前に3人のタイプの異なるちょっといかれた人々が現れては去っていくという、何とももどかしいホラーである。何故誰も助けてくれないのか、その辺り不条理さ全開で、奇妙な味わいを醸し出している。 どれもかなり面白く、レベルの高い作品ばかりで、とても印象深い一冊である。 |
No.363 | 9点 | 絡新婦の理- 京極夏彦 | 2013/11/15 22:34 |
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まず何と言っても冒頭の美しさは、日本のミステリ史上髄一と言っても過言ではあるまい。そしてそれはラストシーンに繋がるという、まさに構成の妙を見せている。勿論、ストーリー全体の構成力はさすがなものがあり、これだけの長尺を無理なく描いている腕は確かである。
本作は、いきなり犯人が登場することで『鉄鼠の檻』と共通する部分を持っている。そして、『鉄鼠』は男の世界、『絡新婦』は女の世界というようにまるで対比するような描かれ方をしている。その意味で両者は兄弟或いは姉妹的な関係にあると考えられるのではあるまいか。 いずれにしも本作は、ある意味「百鬼夜行シリーズ」の頂点に立つ作品なのかもしれない。シリーズ最長であることも、何かを示唆してはいないだろうか。 まあそれにしても、よくこれだけ長い小説を書けるものだと感心する。ただ書くだけではなく、複雑な事件や人間関係をキッチリまとめ上げる手腕は大したものだと思う。 確かに犯人は分かりやすいかもしれない、しかしそんな些末なことはこの大作を前にしては、いか程のものでもない。 |
No.362 | 7点 | 殺人方程式- 綾辻行人 | 2013/11/14 22:22 |
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再読です。
犯人も死体切断の理由も分かった上で読み直したので、どうかなとやや不安だったが、やはり上質の本格推理小説であった。 氏にしては珍しく物理的トリックを駆使して、死体を○○させているのはお見事。図解も入って分かりやすく、まるで本格物の教科書のような印象すら受ける。 反面、「館シリーズ」のような独特の雰囲気が全くなく、文章も淡々としすぎていて、ワクワクするとかドキドキするといったミステリ特有の愉しさが欠けているのは大きなマイナス点だろう。おそらくそれが災いして、平均点の低さにつながっているのではないかと思う。 とにかく綾辻らしさがないので、氏らしいミステリを期待した読者には裏切られた感があったのではないかと感じる。だが、例えば他の作家がこれを書いたとしたらどうだろう。もっと評価が高くなっていたのではないかと私は思うのだが。 |
No.361 | 6点 | チャイナ蜜柑の秘密- エラリイ・クイーン | 2013/11/13 22:00 |
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国名シリーズの中でも異色作だと思う。クイーンと言えば、殺人事件のそれ程不可思議ではない謎をロジックで徹底して詰めていって、段階的に真相を解き明かしていく過程に、特徴があるのだと思うが、本作はまずトリックありきで、そのホワイダニットを解けば自然と犯人にたどり着くという珍しい構造を持っている。
半分密室の中であべこべに服を着せられて殺されている男、しかも部屋の中のすべての家具などもあべこべに向きを変えられている。 犯人は何故そんな面倒なことをしなければならなかったのか。とにかくその謎が不可解であり、その理由が解き明かされた時にはなるほどと思ったものだが、よく考えてみればそこまでする必要性が果たしてあったのかどうか、やや疑問視される。 作中の切手に関する薀蓄は興味のない人間にとっては退屈だろうし、中国があべこべの国だという解釈には、首を捻らざるを得ないと私は考える。 単純な事件のわりには尺が長すぎるきらいがあるのも、やや気になる点である。 多分当時としてはかなり画期的な謎の提示だったのだと思うが、改めて今読んだらどうだろう、それ程までには魅力を感じないのかもしれない。 |
No.360 | 6点 | 迷宮学事件- 秋月涼介 | 2013/11/12 21:59 |
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再読です。
みなさんは迷宮と迷路の違いをご存知ですか?本書を読むとその答えが明らかになります。 そんな事はどうでもいいが、これは綾辻と京極を掛け合わせたような作品である。プロットや雰囲気、事件そのものは綾辻似、登場人物の人間模様は京極似で、当然京極堂、榎木津、関口、木場に相当する人物が登場する。誰が誰に対応しているのかは敢えて書かないが、そういう事を頭に入れて読んでいくと一層楽しめるのではないだろうか。無論、秋月氏が大先輩諸氏の影響を受けたかどうかは定かではない。 面白いのは、上記の4人のうち3人までが女性であること。しかし彼女らすべてが女性らしさをあまり前面に押し出さず、どちらかというと中性的に描かれているのも興味深い。 まあいずれ絶版になっているだろうから読む機会はないと思うが、もし図書館や古書店で見かけたら、読んでみても悪くはないと思うよ。ハズレの多い【密室本】の中では、かなりよく描かれているほうであろう。 |
No.359 | 6点 | 阿弥陀ヶ滝の雪密室- 黒田研二 | 2013/11/11 22:13 |
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再読です。
切断された死体が移動する謎、幼児連続誘拐事件の謎、雪密室の謎と中身が盛りだくさんで大丈夫かと心配したが、思った以上にスッキリと解決してなかなかの満足感。 特に「J」の正体を告げられた時は唖然としたが、謎が解明されるにつれてなるほどと思わず唸らされる真相であった。 切断された死体の謎はやや無理があるが、それでも面白いと個人的には思った。意表を突く感じで、イマジネーションを掻き立てられるような、それでいて絵になるような、不思議な感覚とでも言おうか。 タイトルにもなっている雪の密室は、残念ながら前例があるため、これはあまり評価できない。 なのでこの点数にとどまった、心情的にはもう少し上なんだけど。 |
No.358 | 5点 | ドサ健ばくち地獄- 阿佐田哲也 | 2013/11/10 22:31 |
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これはミステリじゃないね。でも書いちゃうよ、登録されていたからね。
本作は、阿佐田哲也氏が創作したキャラの中でおそらく最も人気の高いドサ健が主役の、ギャンブル小説である。確かにドサ健を中心にひりつくような勝負の数々を描いており、ある意味ピカレスクロマンとは言えるかもしれないが、やはり博打の世界だから、ミステリとは全く別物と考えるべきだろう。 この作品は私にとっては麻雀シーンが少ないのが不満の一つである。それに、別格の『麻雀放浪記』或いは『小説・麻雀新撰組』、『新麻雀放浪記』などの長編や『雀鬼五十番勝負』『雀鬼くずれ』『牌の魔術師』他多数の短編集に比較すると、幾分出来が劣る気がするのは、私の気のせいだろうか。 阿佐田氏といえば麻雀小説、だから、本作ももっと麻雀の勝負を描いて欲しかったというのが私の本音である。 たまたまこれを目にして、興味を持たれた方は、もし未読であるならば、まず『麻雀放浪記』から読み始めていただきたい。勿論『青春編』『風雲編』『激闘編』『番外編』の順でお願いしたいところである。面白さは太鼓判を押させてもらう。 |
No.357 | 5点 | 赤きマント 第四赤口の会- 物集高音 | 2013/11/09 23:16 |
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怪しげな趣味を持つ収集家たちが集う、地下組織的な秘密集会、それが第四赤口の会だ。
彼らはいわゆる都市伝説や昔話、おとぎ話といった不可思議で怪しい噂を持ち寄って検証し、様々な角度から仮説を組み立てる。そして一応の結論を出していくのだが、これが今一つスッキリしないものが多いのである。よって、結局推測はあくまで推測であり、真実とは限らないというわけだ。それも当然、都市伝説という噂を検証しようということ自体に無理があるから。 まあそれはいいとしても、この文章、短文が畳み掛けるように続いており、慣れるまでが大変である。まるで一つの文章が途中でぶつぶつと切られているようで、読者によっては途中で放り投げたくなる不快さを感じるかもしれないので、その点は要注意である。 |
No.356 | 5点 | 殺しも鯖もMで始まる- 浅暮三文 | 2013/11/08 22:13 |
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再読です。
冒頭、地下約2メートルの空洞に眠る餓死した奇術師。それをたまたま釣りに来ていた老人とその愛犬が掘り返すという奇妙な滑り出しは、なかなか興味深く読めたが、話が進むに従って次第に中だるみの様相を呈してくる。 そして第二の密室殺人が起こるが、最初の事件と同様、ダイイングメッセージが真相解明のカギを握ることになる。 第一の事件は「サバ」第二の事件は「ミソ」、一体これは何を意味するのかが、物語の焦点であり、密室ははっきり言っておまけのようなものである。 葬儀屋が探偵役を務めるのだが、最初から最後まで当たり前のように担当刑事につきっきりでアドヴァイスを送ったりする不自然さはどうにかならないものかと思う。他にもツッコミどころ満載で、多少イラッとするが、そこそこ面白かったとは言える。 |