皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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メルカトルさん |
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| 平均点: 6.04点 | 書評数: 2006件 |
| No.1926 | 5点 | 9人はなぜ殺される- ピーター・スワンソン | 2025/09/21 22:16 |
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| アメリカ各地の9人に、自分の名を含む9つの名前だけが記されたリストが郵送された。差出人も意図も不明。だがその後、リストにあったホテル経営者の老人が溺死。翌日、ランニング中の男性が射殺された。FBI捜査官のジェシカはリストの人々の特定を進めていた。自分も、死んだふたりと同じリストを受け取っていたのだ。次は誰が殺されるのか? 謎が横溢する極上のサスペンス!
Amazon内容紹介より。 まあまあですかね。全体の8割以上がリストに名前を書かれた人々の日常が淡々と描かれているだけで、どの辺りがサスペンス?と言いたくなる内容。殺害シーンも数行で終わっており、正直言って面白味がありません。そんな時私は心を無にして読み進めます。でないと先に行けないから。これを日本のミステリ作家が書いたらもっと楽しめただろうと思いました。 これだけの大事件なのに、警察の動きが全く描かれていないし、マスコミも無反応というのはやはりどこかおかしいです。劇場型犯罪でありながら、命を狙われた人物は普段と変わらぬ生活をしていて、警護も殆ど付いていないのにも疑問を覚えます。己に危機が迫っている割にはほとんどが動揺した様子もなく、如何にも不自然と言わざるを得ません。 肝となる何故リストの9人が殺されなければならないのか、という所謂ミッシングリンクの謎は、切実ではあるものの新味はありません。乱暴な言い方をすれば最初と最後だけ読めば大筋は掴めるでしょうって感じです。 |
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| No.1925 | 6点 | 妖精鬼殺人事件- 吉村達也 | 2025/09/18 22:40 |
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| 精神分析医・氷室想介の女性患者の息子が転落死した。その原因を調査する氷室だったが、その背後にはQAZの影が……悪魔の書『陰陽大観』を携え殺人者を生み出す狂気の伝道師QAZとの対決が幕を開ける!
Amazon内容紹介より。 サブタイトルに『魔界百物語』とある様に、あとがきによれば元々シリーズとして百の長編を書く予定だったらしいです。そこには込み入った事情があり、取り敢えずseason1として5作で一応完結させるつもりだった様です。これだけ壮大な構想なので、作者のライフワークとなる筈だったのですが、ご存じの通りご逝去されて早々に打ち切りとなった訳です。とは言え、一話完結としても読めますので支障はありませんが、肝心のQAZの正体などが判らず仕舞いなのは残念な限りです。 後に文庫版として角川ホラー文庫から刊行されていますが、ホラーと言うよりは本格ミステリだと思います。マンションから転落した少年の事件の背後に潜んでいた人物の正体には唖然としました。その動機にはいささか問題がある感じがします、というかどうにも腑に落ちません。事件としては地味ではあるものの、様々な角度から真相に迫る氷室想介の推理には納得でしたが。 物語全体としてやはり序章的な役割が大きく、これから本格的にストーリーが動き出すだろうという予感がして、吉村氏が生きていたらさぞ面白い物が読めただろうなと思うと、悔しくてなりません。 |
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| No.1924 | 5点 | ないもの、あります- 評論・エッセイ | 2025/09/14 22:36 |
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| よく耳にするけれど一度として見たことのないものたち、あります。
たとえば「転ばぬ先の杖」。あるいは「堪忍袋の緒」。こういうものは、どこに行ったら手に入れられるのでしょうか? このような素朴な疑問とニーズにお応えするべく、わたくしどもクラフト・エヴィング商會は、この世のさまざまなる「ないもの」たちを、古今東西より取り寄せて、読者の皆様のお手元にお届けします。文庫化にあたり、新たに3品を加えました。 Amazon内容紹介より。 上記の他にも「左うちわ」「舌鼓」「口車」「金字塔」「一筋縄」「語り草」等様々な目に見えない言葉をどう解釈し説明するかに注目が集まるエッセイ集。ユーモアを効かせたつもりでしょうが、全く笑えません。至極当然の事ばかり書かれていて、当たり前じゃんとしか言いようがありません。 中には「金字塔」や「冥途の土産」みたいな死に直結するものがあり、これらは頷ける内容ではありました。尚それぞれ図とその取扱説明書的な解説が付属していて、字が細かいのを除けばそれなりに納得出来ます。それにしても、何故このような本が世間に認知され広く受け入れられているのかが理解出来ません。コスパは悪いし短いので暇潰しにもなりません。 |
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| No.1923 | 6点 | 怪談小説という名の小説怪談- 澤村伊智 | 2025/09/13 22:37 |
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| ”小説” ならではの企みに満ちた“怪談” 全7編。深夜、疾走する車内を戦慄させた「高速怪談」、呪われた大ヒットホラー映画「苦々陀の仮面」、禁忌を犯してしまった夫婦と「こうとげい」、正体不明の殺戮犯「うらみせんせい」、作者不明の恐怖譚「涸れ井戸の声」他。謎めいた語りが恐怖と驚愕を生み、奇妙で不穏な空気と意外な結末に嫌な汗が滲みだす。著者真髄の大どんでん返し恐怖短編集!
Amazon内容紹介より。 流石と云うか、これまで私が読んで来た怪談話とは一味も二味も違う出来の短編が多いです。ミステリ的仕掛けが施されているものもあり、その意味でも好感が持てます。全体的に怖いと思われる作品は少ないけれど、生理的にジワジワ染み込んでくる、嫌らしい感じがします。人間の持つ原始的な恐怖を揺さぶる何かがあります。 しかし、期待していた程ではなく惜しくもこの点数に落ち着きました。個人的には『こうとげい』と『笛を吹く家』が面白かったですね。ああ、他の作品も勿論一定のレベルに達した佳作と言えると思いますよ。ホラーと言っても多くの方に読まれるべき一冊ではないかと。飽くまで怪談ではなく小説として。 |
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| No.1922 | 7点 | 記憶の中の誘拐 赤い博物館- 大山誠一郎 | 2025/09/10 22:53 |
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| 赤い博物館こと犯罪資料館に勤める緋色冴子が、過去の事件の遺留品や資料を元に、未解決事件に挑むシリーズ第二弾。文庫オリジナル。
Amazon内容紹介より。 これっぽっちも無駄のないプロット、洗練された文章に非常に感心しました。連作短編いずれも遜色なく、よく練られた構成にも納得です。細かい伏線を回収して推理するというものではなく、緋色冴子の名を借りた神の視点から観た真相をズバッと突きつけるその切れ味には、得難い快感を得られました。 特に表題作と『連火』の動機に驚かされ、全ての短編で世界が反転する様を目の当たりにさせられ、おお、これは凄いと唸らされました。前作では緋色冴子は安楽椅子探偵に徹していましたが、今回は助手の聡とともに捜査に乗り出します。そして犯人に相対しても、いささかも揺るがない信念でもって推理を突き付けます。そこには隠された正義の魂が籠っている気がしてなりません。そんな素振りは微塵も見せませんがね、クールビューティーだけに。 |
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| No.1921 | 5点 | 銀河列車の悲しみ- 阿井渉介 | 2025/09/07 22:30 |
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| 奇妙な出来事の数々は、壮大なドラマの前兆だった。誘拐と間違われた少女が無事もどって、銀河鉄道の夜を体験したと語り、ゴジラに襲われたと訴える青年が現われる。そして蒸気機関車に引かれたミステリアス銀河列車が60人の乗客とともに消えて殺人事件が……。犯人の狙いはなに? 牛深警部の推理は!
Amazon内容紹介より。 島荘褒め過ぎ(笑)。確かに序盤に提示される荒唐無稽で不可思議な謎の数々は、ワクワクするものがあり又私の好みではありました。しかし、傑作となるか駄作となるかは着地次第で、どちらかと言えば期待より不安の方が大きかったです。結局説明不足の部分があったり、何故そこまでするのかに納得が行かなかったのは確か。なので、やっぱりこんなものかという諦めに似た感情が私を襲いました。残念の一言です。 まあ整合性という点では一応取られていると思います。しかし如何にもリアリティに欠けるのは誰が読んでも同一の意見となるでしょう。なぜと云う意味では誘拐事件は何だったのかがよく解りませんでした。ある種の実験だったのかとも思いますが、あまり意味がなかった気がします。ちょっとやり過ぎの感が否めませんね。 |
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| No.1920 | 5点 | 声が聞こえたで始まる七つのミステリー- 小森香折 | 2025/09/03 22:43 |
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| 7つのミステリーの冒頭の一行が全て、「声が聞こえた」で始まる。場面・発想・登場人物など、見事に味わいの違う作品を揃え、短編の面白さを十二分に味わえる一冊。
Amazon内容紹介より。 小学校3、4年生位向きの児童文学の短編集。タイトルでは「ミステリー」と謳っていますが、中身はホラー、ファンタジー、不条理劇など様々で、私が期待したものとは全く違っていました。いつ買ったのかも判らない自宅の本の山から引っ張り出してきたのに、まさかこんな小説だったのかとがっかりでした。中にはとても分かりやすい叙述トリックが混じっていましたが、果たして小学生でも騙せたかどうか怪しいくらいのレベルの低さには驚きましたよ。 いくら子供向けでももう少しエッジを効かせた物語を書けないものかと、憤懣やる方の無い私なのでした。それでも一応作者なりの奇想を発揮したつもりなのでしょう。確かにその片鱗は見えましたが、私には物足りませんでした。日々刺激的なミステリ等々を読んでいるせいか、少々の事では驚かない身体になってしまった自分が恨めしくもあります。幼少時の純真さとは程遠い存在になり果てました。 |
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| No.1919 | 6点 | 町内会死者蘇生事件- 五条紀夫 | 2025/09/02 22:08 |
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| この町には、死者を蘇生させる秘術があるんだよ――。生まれも育ちもここ信津(しなづ)町の、健康(たけやす)・昇太・由佳里は、町を支配する信津寺の住職で、悪辣非道な町内会長の権造を殺害することを決意する。酒に酔わせて風呂に沈めて、大成功! のはずだったのに……。なぜか翌朝、ラジオ体操にピンピン元気な権造が。「誰だよ! せっかく殺したクソジジイを勝手に生き返らせたのは!?」殺人犯が蘇生犯を追う、痛快なユーモアメタミステリーの超傑作、爆誕。
Amazon内容紹介より。 まずこれは死者蘇生術ありきの作品なので、そこを踏まえた上で読まないとなんだか損をした気分になりますので注意してください。それは厳然たる事実なので、トリックとかはありません。じゃあ、何を指標として読めば良いのか?判りませんでした、ギリギリまで。途中ドタバタ劇を見せられているようで、あまり好みではないなと思いながら漫然と読んでいました。 要するに権造をいかにして殺すかが命題となっており、そこを中心に読み進めるしかない様に思わせておいて実は・・・という展開で、アッと驚きの結末が待っています。それは流石に読めなかったなあという心地よいカタルシスを得られます。ここだけなら8点相当だったと思いますが、それまでがややダルかったので控えめにこの点数にしました。まあ7点に近い6点という事でご勘弁願いたい。伏線は一応張られており、まさかの着地点にも納得出来ました。 |
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| No.1918 | 6点 | 吃音- 近藤雄生 | 2025/08/30 22:56 |
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| 頭の中に伝えたい言葉ははっきりとあるのに、
相手に伝える前に詰まってしまう――それが吃音(きつおん)だ。 店での注文や電話の着信に怯え、 コミュニケーションがうまくいかないことで、 離職、家庭の危機、時に自殺にまで追い込まれることさえある。 Amazon内容紹介より。 吃音と言えば、小学生の時同じクラスに吃音の女の子がいました。彼女は明るい性格で誰とでも親しく話す事が出来ました。だから決して誰も真似したりからかったりしてイジメたりはしませんでした。私はそんな彼女には差別意識とかは全くなく、まあそんな事もあるのだろう位にしか思っていませんでした。しかし本書を読んで、おそらく内心すごく悩んでいたんだろうなと考え直しました。 本書は吃音が一体どういったメカニズムで起こるのかを起点として、その治療法や職場の人間とどう向き合うのか、実際に自殺して残された家族の心情や労災を認められなかった事に対する訴訟など、数々の吃音で苦しむ人々に寄り添って書かれたノンフィクションです。 百人に一人存在すると言われる吃音者が本気で自殺を考える程苦悩しているのを、初めて実感させてくれた渾身の作品だと思います。 ミステリで吃音と言えばやはり金田一耕助でしょう。それは一つの個性として映画でも描かれていますが、日本を代表する名探偵として名を馳せた彼も吃音者だったというのは感慨深いものがありますね。文庫本の解説を書いている重松清も吃音者でした。そんな人ならではの解説だったと思います。そして本書にはある仕掛け(意図されたものではないですが)が施されています。幾つかの賞にノミネートされた良作です。 |
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| No.1917 | 5点 | 童提灯 - 黒史郎 | 2025/08/27 22:25 |
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| アザコは十(とお)ほどの子供にしか見えなかった。
けれども、貧しい漁村に生まれてから二十年を生きていた。 穢れを知らぬ生娘のように見えたが、アザコは男であり、 とっくに父親に穢されていた。 父に捨てられたアザコは山中を彷徨い不思議な爺と出会う。 やがて爺の後を継ぎ、鬼のための提灯を作るようになる。 子供の身体全てを材料とする「童提灯」を・・・。 Amazon内容紹介より。 全体的にトーンは陰湿で、グロや汚れた要素が満載です。それを平板に描かれている為、それ程嫌悪感は覚えません。単行本で380頁、普通かなと思っていたら二段組みで文字びっしりなので、文庫本相当だと感覚的には600ページを超えています。その上難読漢字や当て字が多く、読み易いとは言い難くかなり苦労しました。 最初の印象はまずまず悪くなく、このままの感じで進んでくれればと思いましたが、そうは問屋が卸しません。折角のキャラを捨て駒にして、ああ勿体ないなあと思ったり、女っ気が全然ないのにも暑苦しさを感じたりしました。所々にこれは、と思う様なエピソードがありましたが、描写に情感が不足しているので、あまり面白くは読めませんでした。文体が合わなかったと簡単に言えばそうなります。ただ一部のファンには受けると思います。出来としてはまずまずとしか言いようがありませんね。 |
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| No.1916 | 5点 | 熾火- 東直己 | 2025/08/22 22:42 |
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| 虐待された少女に突然太股にしがみ付かれた私立探偵畝原。そこから物語は転がり始めますが、余計な描写が多くてやや冗長に感じます。少女は保護されますが喋る事が出来ないし、覚醒している時は暴れる為病院のベッドで眠らされます。私としてはこの少女が気になるところですが、そちらにはあまり触れられません。そうこうしているうちに畝原と親しい女性の姉川が拉致され、ヤマダと名乗る男から連絡が入り畝原にある取引を持ち掛けられます。
Amazonのレビューを見てもグロいとの評判があります。確かにその傾向はあると思います。まあこれは好みの別れるところで、それが一つの持ち味にもなっていると考えれば是とするべきと私は考えます。 終盤は結構盛り上がりますが、それまではあまり読みどころがありません。ファンにとっては面白いであろうと思いますが、一般受けはしないんじゃないかなと感じました。勿論ハードボイルドらしさはありますし、畝原の苦悩は伝わってきます。だから余計に横道にそれてそんな事やってる場合じゃないだろうとか思ってしまいます。 |
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| No.1915 | 6点 | 杉森くんを殺すには- 長谷川まりる | 2025/08/18 22:30 |
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| ――「杉森くんを殺すことにしたの」
高校1年生のヒロは、一大決心をして兄のミトさんに電話をかけた。ヒロは友人の杉森くんを殺すことにしたのだ。そんなヒロにミトさんは「今のうちにやりのこしたことをやっておくこと、裁判所で理由を話すために、どうして杉森くんを殺すことにしたのか、きちんと言葉にしておくこと」という2つの助言をする。具体的な助言に納得したヒロは、ミトさんからのアドバイスをあますことなく実践していくことにするが……。 Amazon内容紹介より。 児童書ですが、私の様な心の病んだ大人が読んでも心に響くものがありました。ここではないどこかで半分ネタバレされたんですが、それでも読む価値はあったと思います。ミステリではないのであまり気にしてはいけないかも知れませんが、仕掛けの見せ方をもう少し上手く出来なかったかなという残念な気持ちはあります。 微笑ましさと痛々しさが同居する青春小説です。誰にとっても優しい語り口調で大衆に訴えかける、ある女子高生の物語で、何故彼女は杉森くんを殺そうと計画しているのかといういわゆるホワイダニットと捉える事も出来ます。 尚特に注目したいのが解説で、本編よりもこちらの方がそれぞれの人の生き方の参考になったりします。人の性格も色々で人生も何が起こるか分からない中で、今まさに苦しんだり悩んだりしている人に読んで欲しい作品です。 |
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| No.1914 | 5点 | 流星と吐き気- 金子玲介 | 2025/08/16 22:23 |
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| ・偶然の再会を「運命」と勘違いして、安全圏から告白をしようとするアーティスト。――流星と吐き気
・アニメにもなった作品の主人公のモデルは自分? サイン会で作者が元カレか確かめる高校教師。――リビングデッドの呼び声 ・担当編集者に振られたにもかかわらず、才能は認められていて作品だけで繫がっている人気漫画家。――種 ・昔付き合っていた彼女から独り言のようなLINEが送られてきて、死を仄めかされた編集者。――消えない ・かつて旅行先で意気投合した男性が偶然お客さんとなり舞い上がるレンタル彼女。――プラネリウム Amazon内容紹介より。 私はこれまでの作者の「死んだシリーズ」を全て読みました。全部7点というそれなりの高評価をしてきました。しかし本作は正直いただけません。大人の恋愛小説という事になるんでしょうが、読みどころに欠けるというか、刺激が足りていないんですよね。衝撃とか驚愕と云った要素が一切ありません。そういうものを求めている私にとっては大いに物足りませんでした。 連作短編としてある趣向が施されてはいますが、決して目新しいものではなく、評価の対象とはなり得ません。Amazonでは相変わらず高評価が目立ちますが、私は評価しません。確かに主人公の内面は描かれていると思いますが、だからどうした、としか言えません。読み易いのでプラス1点としました。これが読み難ければ4点でしたね、っていうか気分的には裏切られた感が強いので気持ちとしては4点です。 |
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| No.1913 | 5点 | 希土類少女- 青柳碧人 | 2025/08/14 22:17 |
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| 高純度のレアメタルを生成する能力を持つ冴矢。症状が発見された少女は、産業を潤わせる一方、25歳までしか生きられない。そんな冴矢の絶望的な日常は施設職員・江波との出会いで変わり始める。だが、やがて二人はコミュニティ全体の命運を左右する決断を迫られるのだった――。限られた時間を生き、運命と対峙する少女の、儚くも美しいSF長編。
Amazon内容紹介より。 うーん、何とも言えませんねえ。良いとも悪いとも言えない、何とも・・・。レアメタル生成症候群という発想は悪くないと思いますが、現実味が薄すぎて如何にも作り物めいた感じが拭えません。それともう少し医学的観点からの描写があっても良かった気がします。ただ記憶に残りそうな印象はあって、その意味では捨てがたいものがあったのかも知れません。 で、結局何がやりたかったのかがよく理解出来ませんでした。要するに特異設定に於ける沙矢と江波のラブストーリーだったのでしょう。時折琴線に触れる様な瞬間もありましたが、どこか喰い足りない側面も見られ、高得点とはならなかったのは残念でした。まあSFと言っても人間臭さが漂うちょっと風変わりなファンタジーと云ったところでしょうか。 |
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| No.1912 | 7点 | 嘘つきパズル- 黒田研二 | 2025/08/12 22:17 |
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| 黒田研二らしくない超異色作。変態ミステリというか、変格ミステリというか、しかしバカミスではないと思います。わざわざ人面猿やモンスターを出してまで呪いを演出するという馬鹿馬鹿しさには、そこまでするかとの疑問が湧きますが、必要とあらば何でもするという姿勢が清々しいです。ただそこだけが浮いている気もします。しかし、これは本作の肝となる部分なのでやむを得ません。
それでも土壇場で究極の探偵(確かに)が誕生し、謎が自然に解決されてしまうシーンには唖然とさせられます。トリックらしきものは物語の設定自体だけなのですが、タイトルの通りパズラーであるのは間違いありません。一般的な孤島物とは一線を画し、良くここまでマニアックな作品が書けたなと感心します。作者の抽斗の多さが伺える珍品です。 |
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| No.1911 | 7点 | 祈れ、最後まで サギサワ麻雀- 鷺沢萠 | 2025/08/09 22:53 |
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| この呆れるほど静かで、けれど熱い気持ちは何なのだろう。(小説「祈れ、最後まで」本文より) 鷺沢萠の愛した世界、最初で最後の麻雀作品集。没後に発見された中編小説「祈れ、最後まで」未発表・完全版、笑って泣ける痛快エッセイ「サギサワ麻雀」を収録!!
Amazon内容紹介より。 サギサワ麻雀はエッセイ集。『祈れ、最後まで』は中編麻雀小説。 エッセイの方は自身や他人の麻雀でのミスやチョンボ、フリテンなどの失敗を綴った物が殆どで、これがまた一々面白いのです。小島武夫、藤原伊織くらいしか有名人は出て来ませんが、頻繁に登場するのが小田原ユキという人物です。調べてみたら著者と親交が深かったというだけで、詳細は何も分かりませんでした。ただ、二人ともガメり過ぎてリーチが掛かると途端に捨てる牌が無くなるという不運に見舞われていたようです。安全牌を持たず、目一杯手を広げてしまうクセが牌図によく表れています。この様に自虐ネタがほとんどで、その方が読む側としては笑える事が改めて実感できました。 『祈れ、最後まで』は打って変わって本格麻雀小説ですが、元雀ゴロに見込まれた、雀荘のメンバーである主人公の若者が、それほど強くないのが残念でした。タンピン三色一盃口のイーシャンテンの手に、わざわざ後々危険になりかねないドラ(一盃口の中膨れ)をいつまでも暗刻で抱えたりして、手を広げ過ぎの感が否めません。一般的に言えば安パイを一枚持つ形に構えるのがセオリーですから。 まあしかし、そう云った些事に目を瞑れば麻雀小説として十分楽しめるものでした。著者は35歳の若さで自ら命を絶ち永眠されました。そうした事情を考える上で、カッコいいお姉さん(結構美人)だったと同時に、ある種破滅型の人だったのかなと、何ともやりきれない思いに駆られる私なのでした。 |
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| No.1910 | 7点 | 蜘蛛の牢より落つるもの- 原浩 | 2025/08/06 22:25 |
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| フリーライターの指谷は、オカルト系情報誌『月刊ダミアン』の依頼で21年前に起こった事件の調査記事を書くことに。
六河原村キャンプ場集団生き埋め死事件――キャンプ場に掘られた穴から複数の人間の死体が見つかったもので、集団自殺とされているが不可解な点が多い。 事件の数年後にダムが建設され、現場の村が今では水底に沈んでいるという状況や、村に伝わる「比丘尼」の逸話、そして事件の生き残りである少年の「知らない女性が穴を掘るよう指示した」という証言から、オカルト好きの間では「比丘尼の怨霊」によるものと囁かれ、伝説的な事件となっている。 事件関係者に話を聞くことになった指谷は、現地調査も兼ねて六河原ダム湖の近くでキャンプをすることに。テントの中で取材準備を進める指谷だが、夜が更けるにつれて湖のまわりには異様な気配が―― Amazon内容紹介より。 何と言っても序盤に提示される事件の不可解さ、奇妙さが際立っており、その後のストーリーを支える牽引力になっているのは間違いないと思います。なかなか全容を現さない割にはテンポ良く物語は進み、手を変え品を変え読者を飽きさせません。文章も上手くホラーとしても良く出来ています。 しかしながら本作は実はホラーの皮を被った本格ミステリなのだったというのは、最後まで読んでから判りました。一枚一枚薄皮を剥いでいくように真相が明かされる様は、そうだったのかという意外性を十分発揮していると思います。比丘尼を祓うシーンだけは余計だった気がしますが、ホラー要素として一応あったほうが良かったという作者の判断だったのでしょうから文句は言えませんね。面白かったですよ、いや本当に。 |
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| No.1909 | 5点 | ミノタウロス現象- 潮谷験 | 2025/08/03 22:28 |
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| 目の前には三メートル超えの怪物、背後には震える少年。好感度を何よりも重視する史上最年少市長・利根川翼は、人生最大のピンチに陥っていた。だが、その危機からの脱出直後、「異様な死体」が発見される――。容疑者の一人になってしまった翼は、自身の疑惑を晴らすために謎解きを始める。『スイッチ 悪意の実験』『時空犯』で話題の新鋭が挑む、渾身の本格ミステリ。
Amazon内容紹介より。 これは本格ミステリと言うよりSFかファンタジーの範疇に入る作品だと思います。それにしても主人公の若き市長は何をするでもなく、己の無能さを晒してしまっているのはどうなんでしょうね。冒頭に起きた殺害事件を置き去りにして、政治を絡めてあらぬ方向へ向かって突っ走る姿勢には、読んでいてなんだこれは?作者はどこを目指しているのだろうかという疑問が自然と湧いてきました。 ジョークではなく本物の怪物を登場させてしまって、何故か分からないけれどある事をすると出現するその怪物は一体何なのかが深掘りされておらず、正体不明の無意味さに辟易させられました。 アイディアとしては悪くないかも知れませんが、どうにもうまく料理出来ているとは思えませんでしたねえ。ここまでやるなら、もっと大胆な仮説やミノタウロスの正体に迫る科学的、医学的アプローチが欲しかったところです。 |
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| No.1908 | 7点 | 白夜行- 東野圭吾 | 2025/07/31 22:32 |
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| 愛することは「罪」なのか。それとも愛されることが「罪」なのか。
1973年、大阪の廃墟ビルで質屋を経営する男が一人殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りしてしまう。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んでいくことになるのだが、二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪の形跡。しかし、何も「証拠」はない。そして十九年の歳月が流れ……。伏線が幾重にも張り巡らされた緻密なストーリー。壮大なスケールで描かれた、ミステリー史に燦然と輝く大人気作家の記念碑的傑作。200万部突破! Amazon内容紹介より。 今更ながら読みました。流石に一流の大人気作家だと素直に思いました。これだけの大作を一章ごとに視点を変え乍ら二人の男女を外側から描く手腕は、やはり只者ではないなと感じます。其々の章が見事に読者を飽きさせることなく読ませ、物語にのめり込ませるのは出来そうで出来ないことでしょう。 ミステリとしてはそれほど複雑なものではありませんが、物語は大河小説の如き変遷を経て、そしてその裏にはそれぞれの男女の愛憎劇があり、非常に読み応えがありました。最後まで主役の内面はスッキリとは描かれないもどかしさはありますが、その幼少期の悲劇が更なる悲劇を生んだ結果にはある種の納得感がありました。最後はこれで良かったのだろうかとの想いもありましたが、この作品に、そしてこのタイトルに相応しいエンディングだったのかなとも思いました。評点は8点か迷いました。がそんなに簡単にその点数をあげる訳にはいかない気がして・・・。 |
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| No.1907 | 6点 | アルラウネの独白- てにをは | 2025/07/24 22:28 |
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| シリーズ累計160万再生超えの大人気ボカロ曲の小説第3弾! 推理小説が好きな高校生・ひばりと、偏屈な推理作家・久堂の事件簿!! 『推理作家は夜走る』『アルラウネの独白』『雪宿りの作法』の3編収録!!
Amazon内容紹介より。 女学生探偵シリーズ第三弾。個人的には『推理作家は夜走る』>『雪宿りの作法』>『アルラウネの独白』。『推理作家は夜走る』は主人公の女学生探偵ひばりが何やら訳ありげな久堂を尾行し、彼の過去を掘り起こしていきます。その間にひばりの同級生達とも同行したりして、誰一人無駄な人物が出て来ないのが好印象でした。相変わらずの微妙な師弟関が付かず離れず描かれて、二人の行方が気になります。 表題作は呪いが掛けられていると噂される演劇『アルラウネの独白』を巡る日常の謎が描かれています。読み物としては面白いですが、ミステリとしては弱いです。シンプルな密室トリックもありますが、他愛のないものであまり誉められたものではありません。 最後の『雪宿りの作法』は少女?幼女?時代のひばりを預かることになった学生時代の若き日の久堂と、幼気なひばりの初めての出会いが、そこはかとない優しさに包まれた雰囲気で描かれています。中編と短編の最後を飾る物語としては、温かい余韻を残す心に沁みる好編に仕上がっていると思います。 |
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