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吃音
伝えられないもどかしさ
近藤雄生 出版月: 2019年01月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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新潮社
2019年01月

新潮社
2021年04月

No.1 6点 メルカトル 2025/08/30 22:56
頭の中に伝えたい言葉ははっきりとあるのに、
相手に伝える前に詰まってしまう――それが吃音(きつおん)だ。
店での注文や電話の着信に怯え、
コミュニケーションがうまくいかないことで、
離職、家庭の危機、時に自殺にまで追い込まれることさえある。
Amazon内容紹介より。

吃音と言えば、小学生の時同じクラスに吃音の女の子がいました。彼女は明るい性格で誰とでも親しく話す事が出来ました。だから決して誰も真似したりからかったりしてイジメたりはしませんでした。私はそんな彼女には差別意識とかは全くなく、まあそんな事もあるのだろう位にしか思っていませんでした。しかし本書を読んで、おそらく内心すごく悩んでいたんだろうなと考え直しました。

本書は吃音が一体どういったメカニズムで起こるのかを起点として、その治療法や職場の人間とどう向き合うのか、実際に自殺して残された家族の心情や労災を認められなかった事に対する訴訟など、数々の吃音で苦しむ人々に寄り添って書かれたノンフィクションです。
百人に一人存在すると言われる吃音者が本気で自殺を考える程苦悩しているのを、初めて実感させてくれた渾身の作品だと思います。
ミステリで吃音と言えばやはり金田一耕助でしょう。それは一つの個性として映画でも描かれていますが、日本を代表する名探偵として名を馳せた彼も吃音者だったというのは感慨深いものがありますね。文庫本の解説を書いている重松清も吃音者でした。そんな人ならではの解説だったと思います。そして本書にはある仕掛け(意図されたものではないですが)が施されています。幾つかの賞にノミネートされた良作です。


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近藤雄生
2019年01月
吃音
平均:6.00 / 書評数:1