皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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simo10さん |
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平均点: 5.69点 | 書評数: 193件 |
No.11 | 4点 | 臨場 スペシャルブック- 横山秀夫 | 2013/09/16 22:40 |
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クライシス・クライシこと検視官倉石義男が主人公の未収録短編集です。短編4作が収録されており、残りはTVドラマ版の登場人物の紹介とインタビューが掲載されています。
①「罪つくり」:取り調べで容疑者を落とすための「キメ」のセリフというのがあるようですが、自分にはピンとこなかった…。「十八年蝉」で登場した検視官心得の永嶋がちょっと登場し、その才能を発揮します。 ②「墓標」:スランプに陥る作家の心境は作家にしか解らないことでしょう。 ③「未来の花」:安楽椅子もの(ベッドの上だが)です。極めつけの証拠だという刺切創というのがよくわからん。 ④「カウントダウン」:孤独死を扱った作品。うちで飼っている犬と犬種も名前も同じなのですごく悲しくなってしまった。 スペシャルブックという立ち位置もあってか、どうやら本書はもう出版されていないようで、古本で購入しました。 私の中での倉石のイメージは正に内野聖陽氏であったため、少しうれしい。 |
No.10 | 6点 | 臨場- 横山秀夫 | 2013/09/16 22:19 |
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「クライシス・クライシ」、「修身検視官」の異名を持つ男、L県警検視官、倉石義男を主人公とした短編集です。以下の8話で構成されます。
①「赤い名刺」:検視対象者は倉石の部下一ノ瀬の不倫相手。倉石の手にかかれば自分の不倫がばれるかも、というハラハラ感が見所。犯人は読者にも分かるようにヒントが提示されています。 ②「眼前の密室」:歌野氏の密室殺人ゲームのトリックの一つを彷彿とさせる。ただスズムシの論理がよくわからなかった。 ③「鉢植えの女」:ミスターパーフェクトこと捜査一課長高嶋VSクライシス・倉石。どちらも偽装他殺を見破るが…。最初は一ノ瀬の卒業試験の方がメインかと思ったけど関連性はなかったのかな。 ④「餞(はなむけ)」:退任を迎えるL県警刑事部長への倉石の餞の捜査協力。暖かいラストです。 ⑤「声」:本人にはその気はなくとも男が欲望の目で見ずにはいられない悲しき魔性の女の人生。リアルにエロい。 ⑥「真夜中の調書」:百万人に一人のDNAの型、血液型遺伝法則のいたずらから一つの事実が浮かび上がる。 ⑦「黒星」:著者の描く女性警察官もしくは女性記者は苦労が絶えないなあ‥ ⑧「十七年蝉」:十七年蝉自体はどんなものかは分かったが、ストーリー的な結びつきがよくわからん。強引過ぎない? 相変わらず読みやすいが、検視官が主人公ということで警務部が舞台のこれまでの作品に比べ、少し血生臭い雰囲気があります。全体的にレベルは高いけど個人的にはイチオシはなかったかな。 |
No.9 | 6点 | 看守眼- 横山秀夫 | 2013/08/11 22:10 |
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--ネタばれ含みます--
以下の6話で構成された短編集です。それぞれの関連性はまったくありません。 ①「看守眼」:刑事眼ならぬ、看守として培われた看守眼が迷宮入りした事件の真相を見破る。事件関係者らの人物像のドンデンが巧い。ただこの元看守の身勝手さは大嫌いな部類に入る。 ②「自伝」:誠実であれば報われることもあるが、実際に欲望を突きつけられるとそうそう誠実ではいられないというお話。 ③「口癖」:妬みに優越感、非常に下らない感情だと思いつつ、この主人公の感情が理解できてしまう自分に苦笑してしまう。 ④「午前五時の男」:ホームページの不正アクセス事件を通じて、警察側の隠蔽、責任回避、クラッカーの異常思考を描かれます。 ⑤「静かな家」:校了までの切迫感と校了ミス時の絶望感の描き方は元記者の氏ならでは。 ⑥「秘書課の男」:ライバル秘書とのポジション争いやクレームの防波堤となったり等、議員秘書の苦労が描かれている。 本作品では警察官(元看守、ウェブ管理)の他、記者、裁判員、議員秘書とまたも様々な職種からの話があります。 さすがどれもよくできていると思います。 |
No.8 | 6点 | 影踏み- 横山秀夫 | 2013/08/11 22:06 |
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忍び込み専門のドロボウ(ノビ師)の真壁修一を主人公とした連作短編集です。
ドロボウが主人公というだけで異色であり、伊坂氏を連想してしまいますが、さらにこの主人公、死んだ弟「啓二」の魂が住み着いており、対話までできてしまうという特殊能力を持っています。 横山氏らしく、謎の提示と真相の解明までのバランスが良いです。 全体的に暗めの作風が私的には好みで、修一、啓二、久子の成り行きが気になってぐいぐい読めました。 ラストは切ないが納得です。 |
No.7 | 6点 | 真相- 横山秀夫 | 2013/06/20 22:44 |
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著者には珍しく警察を舞台としない短編集です。以下の五話で構成されます。
①「真相」:跡継ぎと明言してもダメ、しなくてもダメ。じゃあどうすりゃええねん。著者の作品はほとんどが最後に「真相」が明かされるものなので、なぜこの作品に限ってこのタイトルなのか、いまいちピンとこない。 ②「18番ホール」:暗い展開で話が進みますが、著者のことだから「逆転の夏」のように最後は綺麗に終わらせるかと思っていましたが…この先の展開を考えるのも恐ろしい程のブラックなラストでした。何か真相が明らかになるでもなく、色々と意外な作品です。 ③「不眠」:家族持ちでリストラされる人の辛さが痛い程伝わってきます。この作品もタイトルと内容がいまいちしっくりこない。 ④「花輪の海」:今でこそスポーツ現場の体罰の実態が大きく取り沙汰されていますが、空手もやっぱそうなんですかね。しかしこれは酷い。 ⑤「他人の家」:刑期を終えた人の苦労を描いた話。②と似た展開を見せるが… どの作品も暗い話で、各主人公は最後まで辛い立場に立たされますが、ラストに描かれるの意志の示し様によって大きく印象を変えています。その中で異色の意志(?)を示した②がインパクト強し。 |
No.6 | 5点 | 深追い- 横山秀夫 | 2013/06/19 22:57 |
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今作の舞台は三ツ鐘署。都心から少し離れたところの様です。以下の七話で構成されます。
①「深追い」:コンヤハカレーデス。そのメッセージの真相は何とも悲劇的なものでした。 ②「又聞き」:命と引き換えに自分を救ってくれた人とその遺族に対する感情の描写がリアル過ぎて嫌だ。ラストに救われて良かったが。 ③「引継ぎ」:泥棒にも職業意識的なものがあるんですかね。どうでもいいが拘置所に空きがないというのは、それだけ治安が悪いってことなんじゃないかと思ってしまうのでもう少し説明がほしいところ。 ④「訳あり」:上司に逆らったら出世に影響するとか、どんだけ腐ってんねんと思います。あと当然のごとく行われている天下りもどうなんだろうと思う。 ⑤「締め出し」:捜査に関わっているのに重要な情報は本部だけでかこってしまう。しょうがないっちゃしょうがないが嫌だなあ。 ⑥「仕返し」:マスコミにバレたら責任問題に発展→出世に響く→隠蔽する。著者の作品を見ると警察ってこんなことが日常茶飯事のように思えてくる。 ⑦「人ごと」:自分の遺産相続で娘達に揉められたらかなわんですな。寂しい展開だが最後にちょっと救われます。 これまでの短編集と同様、刑事部以外の部署でのお話です。ただこれまでの作品よりもさらに若干暗めな印象です。相変わらずどれも読み易いですが個人的にヒットした作品はありませんでした。 |
No.5 | 7点 | 第三の時効- 横山秀夫 | 2013/06/17 00:25 |
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F県警強行犯シリーズ。F県警刑事部の三人の無敵の班長達が主役です。以下の六話で構成されます。
①「沈黙のアリバイ」:強制自白を促す取調べ問題を逆手に取った知能犯を一班班長、通称「赤鬼」、理論派の朽木が執念で追い詰める。 ②「第三の時効」:二班班長、通称「冷血漢」、謀略の楠見が活躍。周到かつ冷徹に罠を張り巡らしています。 ③「囚人のジレンマ」:強力過ぎて制御不能な三人の班長達を部下を抱える刑事部長のジレンマのほうがメインかな。 ④「密室の抜け穴」:三班班長、通称「天才」、閃き型の村瀬が登場。登場した時点で既に解決していたようなので閃き型の真髄は伝わってこなかったです。 ⑤「ペルソナの微笑」:一班所属の若手刑事矢代が主役。最後の容疑者とのやり取りがシビれました。 ⑥「モノクロームの反転」:一班朽木VS三班村瀬の競争捜査。タイトルの内容に関して東野氏のガリレオっぽいとこがあるが、作風に合わない気がします。 警務課を主に舞台に描いてきた著者が描く刑事モノですが、非常に面白かったです。刑事モノも一級品ですね。③、⑥やや物足りなかったけど、他はどれも好きです。唯一、三班の村瀬の天才ぶりがイマイチ描き切れてないと感じたのが不満点かな。 |
No.4 | 6点 | 顔 FACE- 横山秀夫 | 2013/06/10 23:18 |
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D県警シリーズ第三弾。第一弾の短編「黒い線」で登場したお手柄似顔絵女性警察官平野瑞穂が主人公とした短編集です。以下の五話で構成されます。
①「魔女狩り」:警察側からするとネタ元は裏切り者のようなものなんですね。密告があるでもなし、ちょっとタイトル負けな内容。 ②「訣別の春」:<なんでも相談テレホン>に移動した平野巡査の優しいお姉さんぶりが発揮されます。 ③「疑惑のデッサン」:自分が就きたいポストに自分より実力が明らかに劣る者に就かれたら嫌ですねえ。実は逆もまた然りで劣る方は奪われまいとビクビクしてしまうもんなんですね。 ④「共犯者」:抜き打ちで銀行強盗対策の訓練というのがあるんですね。監査課というのが憎まれ役というのもよく解りました。 ⑤「心の銃口」:この著者の描く刑事はどれも荒っぽいが、それがなかなか好きであったりする。犯人のイメージはシズちゃんを連想してしまった。 女性警察官が主人公ということで、これまでの氏の作品に比べて、グッと華やいだ印象があります。どれも読み易いですが個人的ヒット作はありませんでした。平野瑞穂は私のイメージでは綾瀬はるかだったのですが、すでにドラマ化されていて仲間由紀恵が演じてるんですね。 |
No.3 | 6点 | 動機- 横山秀夫 | 2013/06/05 22:38 |
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D県警シリーズ第二弾。以下の四話で構成されます。
①「動機」:一種の「木を隠すなら森」のパターンですが、なるほど巧い。個人的には好戦的な刑事の描写がしびれる。 ②「逆転の夏」:警察官ではなく、刑期を終えた前科を持つ人のお話。非常に暗いジメジメとした雰囲気だったのですが、ラストのカサイの独白(?)以降で一気に内容が深まりました。 ③「ネタ元」:元記者の著者ならではの、記者視点のお話。やっぱ男稼業で女性が働くのは厳しいよなあ。 ④「密室の人」:裁判官のお話。裁判所の世界は独特ですね。しかし茶を入れる人の心を分かれと言われてもそれは厳しいかな。 D県警シリーズとのことですが、D県警絡みの話は①だけでした。個人的には②がベスト、次点に①でした。 |
No.2 | 6点 | 陰の季節- 横山秀夫 | 2013/05/30 22:59 |
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氏の「半落ち」が面白かったことと非常に読み易かったことから他の作品にも興味を持ちました。
そんな訳でまずは当たり障りのないシリーズものを順番に読んでみようということにしました。 最近話題の「64」をシリーズ作品とするD県警シリーズ第一弾。以下の四話で構成されます。 ①「陰の季節」:真相も面白かったが、人事の内情に触れられているのも新鮮でした。天下りって普通なんですね。 ②「地の声」:冴えないベテラン警察官を貶める怪文書。その真意にまんまと私も引っ掛かりました。 ③「黒い線」:警察という男社会における女性警察官の立場というか扱いがいかに厳しいものであるか分かります。 ④「鞄」:秘書課のお話。出世のために、邪魔な人間の弱みを握るどころか、弱みを作り出してしまう。実際ここまでやるかどうかはともかく、警察の出世競争はそれだけ激しいことは伝わった。 著者の作品は主に警務課を舞台としているんですね。非常に新鮮で楽しめました。事件はなくとも謎の提示から真相の解明までの流れはミステリの味わいがありました。 |
No.1 | 6点 | 半落ち- 横山秀夫 | 2013/05/29 22:38 |
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この作品の映画版を飛行機の中で見たことがあるのですがラスト辺りで着陸態勢に入ってしまい、落ちを知ることはありませんでした。
以来この作品の存在を忘れていたのですが、書店でふと目に入り、読んでみようと思いました。 他の方々がおっしゃるように、確かにオチまでは非常に面白かった。 特に一章、二章の登場人物の荒っぽいノリが最高でした。 そしてオチに関してはまさに半オチ。唐突な感じだし、特に感動もできない。 一番釈然としないのは半落ちの理由付けかな。警察へ迷惑がかからないよう配慮することも考えてるなら、さっさと虚偽の自白をすりゃ良かったのに。 |