皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2814件 |
No.914 | 5点 | 間にあった殺人- エリザベス・フェラーズ | 2015/12/27 05:16 |
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(ネタバレなしです) 1953年発表の本格派推理小説です。フランスのニースでのパーティへ招待された男女が何かの企みがあるのではないかと疑いつつもサリイにある招待者の家へ集合したところへ殺人事件が起きるという展開です(ニースへ出発とはなりません)。特定の探偵役をおかず(警察は登場しますが直接描写は少ない)、登場人物の疑心暗鬼ぶりが丁寧に描かれてはいるのですが謎解きがいまひとつ盛り上がりません。ハヤカワポケットブック版の翻訳が半世紀以上前の古い翻訳であることも読者にとっては厳しいでしょう。新訳ならじわじわとサスペンスが増していったかもしれませんが。 |
No.913 | 5点 | 七面鳥殺人事件- クレイグ・ライス | 2015/12/27 01:24 |
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(ネタバレなしです) 1943年発表のビンゴ・リグスとハンサム・クザックのコンビシリーズ第2作の本格派推理小説です。この作者は登場人物が多くても描き分けが上手いので読者にあまり難解さを感じさせないのですが、本書の場合は素性の知れない人物が多いためか人物整理が大変で結構読みにくかったです(私の読んだハヤカワポケット版の翻訳が半世紀以上も前の古い訳であることも理由の一つですが)。場当たり的なプロットのようですが最後はしっかり謎解きして締めているところはさすがです。 |
No.912 | 4点 | バレンタインは雪あそび- レスリー・メイヤー | 2015/12/27 01:12 |
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(ネタバレなしです) 1999年発表のルーシー・ストーンシリーズ第5作のコージー派ミステリーです。残念ながら推理要素はほとんどないまま行き当たりばったりで解決されてしまいます。しかし語り口は安定しており、派手な内容ではありませんが安心してすらすら楽しく読める作品です(これが次作の「史上最悪のクリスマスクッキー交換会」(1999年)になると意外とダークな描写があるのですが)。 |
No.911 | 6点 | 青の殺人- エラリイ・クイーン | 2015/12/27 00:49 |
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(ネタバレなしです) エラリー・クイーン名義で1972年に発表されたマイカ・マッコールシリーズ第3作です。真正のクイーンであるフレデリック・ダネイとマンフレッド・リーのコンビではなくゴーストライターによる作品ですが、本書のライターは短編ミステリーの名手として名高いエドワード・D・ホックであることが注目に値します(ちなみに他のマイカ・マッコールシリーズは別の作家による代作です)。ホックらしくないのは(クイーンらしくもありませんが)ハードボイルド要素が強いことです。濃厚な描写ではありませんが暴力シーンやベッドシーンもあります。とはいえ最後は本格派推理小説としてきちんと推理で犯人を見つけており(巧妙に張られた伏線があります)、「謎解き」ハードボイルドと分類できそうな出来栄えです。 |
No.910 | 4点 | 夏のレプリカ- 森博嗣 | 2015/12/26 16:47 |
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(ネタバレなしです) 1998年発表のS&Mシリーズ第7作ですがこれまでのシリーズのお約束事(というよりこちらの勝手な期待ですが)からの脱却を試みたようなところがあります。例えば初めて不可能犯罪を扱わなかったこと、犀川でも萌絵でもない人物を主人公にしたこと、もやもやを残す幕切れにしたことなどです。個人的にはちょっと変化させ過ぎかなという気がします。せめて本格派推理小説として謎解きは明快な結末にしてほしかったです。 |
No.909 | 6点 | ヨギ ガンジーの妖術- 泡坂妻夫 | 2015/12/26 16:38 |
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(ネタバレなしです) 1980年から1984年にかけて発表されたヨギ・ガンジーシリーズ短編7作品をまとめて1984年に出版された第一短編集です。シリーズ短編はあと数作あるらしいので再版されるならそれも収めてほしいですね。ヨギ・ガンジーは怪しい雰囲気ぷんぷんではありますが、その一方で自ら演じる妖術(?)をすぐに「これはトリックです」と明かすなどどこか憎めない人物で、取り巻きが増えていくのも納得です。迷探偵と紹介されることも多いようですが本書では結構まともな謎解きをしていて普通に名探偵の資格十分です。事件は単純、トリックも単純ながらひっくり返し方の鮮やかさが印象的な「王の恵み」と真相は古典的ながら謎の演出が巧妙な「ヨギ・ガンジーの予言」が個人的には好みです。 |
No.908 | 5点 | 鍵孔のない扉- 鮎川哲也 | 2015/12/26 16:22 |
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(ネタバレなしです) 1969年発表の鬼貫警部シリーズ第12作のアリバイ崩し本格派推理小説で、文献によると本書から時刻表が載らなくなったそうです。「最終章に至る前に」読者が真相にたどりつけるようフェアプレーで謎解き挑戦しているようですが、犯人当てならまぐれ当たりもあるでしょうがアリバイトリック破りはそうもいかず、難易度は高いと思います(作者側からすればまぐれ当たりなんか認めたくないかもしれませんが)。伏線は丁寧に張ってあり、複雑で緻密なトリックはアリバイ崩し好きの読者にはたまらない魅力でしょうが、そうでない私にはあまり楽しめませんでした。 |
No.907 | 6点 | コージー作家の秘密の原稿- G・M・マリエット | 2015/12/26 15:50 |
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(ネタバレなしです) G・M・マリエットはイギリス出身の米国女性作家で(日本で暮らしたこともあるそうです)、現在もイギリスと米国を行ったり来たりの生活をしているようです。2008年発表の本書(舞台はイギリスです)がミステリーデビュー作です。タイトルから謎解きが薄味のコージー派かと思いましたが(英語原題は「Death of a Cozy Writer」です)、さにあらず。事件が発生するまではやや冗長ですが探偵役のセント・ジャスト警部が登場してからはしっかりした謎解きプロットです。推理はそれほど論理的ではありませんが古典的な本格派推理小説の雰囲気を楽しめました。 |
No.906 | 3点 | プラムプディングが慌てている- ジョアン・フルーク | 2015/12/26 11:53 |
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(ネタバレなしです) 2009年発表のハンナ・スウェンセンシリーズ第12作のコージー派ミステリーです。第1章でハンナが最後の訪問者となるはずのところに殺人者が被害者を訪問する場面が描かれます。第2章からは時間をさかのぼって犯罪に至るまでの色々な出来事が描かれています。しかしその大半はハンナ日常生活がらみのもので、これが中盤まで延々と続くのでミステリー好き読者に訴えるものがほとんどありません。殺人が起きてからも謎解きは盛り上がりを欠いており、ハンナとシリーズキャラの熱心なファン読者以外にはお勧めしにくい内容です。 |
No.905 | 5点 | 祟り火の一族- 小島正樹 | 2015/12/22 08:51 |
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(ネタバレなしです) 2012年発表の海老原浩一シリーズ第5作です(島田荘司との共著「天に還る舟」(2005年)はカウントしていません)。半端ない謎が詰め込まれていて「やり過ぎの小島」らしさが十分に発揮されています。雰囲気づくりには手が回りきっていないし、感心できない謎解きもあってそういうところを批判することもありだとは思いますが、双葉文庫版で400ページ少々のボリュームにこれだけ謎がてんこ盛りサービスされた作品を読めた喜びの方が勝りました。 |
No.904 | 5点 | 狂い壁狂い窓- 竹本健治 | 2015/12/21 17:48 |
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(ネタバレなしです) 1983年発表の長編ミステリー第5作で、「将棋殺人事件」(1981年)、「トランプ殺人事件」(1981年)と共に狂気三部作を構成しています。ホラー小説と本格派推理小説のジャンルミックス型ですがどちらかと言えば後者寄りでしょうか。作中人物が述べているように「じめじめした薄暗さ」が全編を覆っています。前半は怪現象のグロテスク描写が多いですが、やはり作中人物が「この家は狂気を招き寄せる」と述べるとおり、進行していく狂気描写が後半は増えていきます。最後は探偵役が推理で犯人を指摘する本格派推理小説として着地するのですが、巻末の作者コメントにあるように「相当濃い作品に仕上がっている」ので好き嫌いはかなり分かれそうです。 |
No.903 | 4点 | 寝台特急「あさかぜ」殺人事件- 草川隆 | 2015/12/21 17:25 |
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(ネタバレなしです) 1988年に発表された本書は地味で特徴のないトラベルミステリーに強引に密室の謎を加えたような印象の作品でした。「個室寝台殺人事件」(1986年)と探偵役が共通していますが個性の乏しさは改善されておらず、しかも女性奇術師を捜査に参加させる経緯が不自然です。専門家の意見を求めるにしてももっとそれなりの名声や地位を築きあげている人を探すべきではないでしょうか。これでは公私混同でしょう。また密室の謎解きも手掛かりに基づく推理ではなく、こうすれば密室でなくなるという可能性の一つを示唆しているにしか感じられません。これで解決では本格派推理小説の謎解きとしては物足りないです。 |
No.902 | 4点 | プーアール茶で謎解きを- オヴィディア・ユウ | 2015/12/20 16:45 |
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(ネタバレなしです) シンガポール女性作家のミステリー作品が日本で翻訳紹介されるとは驚きました。舞台劇の脚本を30作以上書いているそうですがミステリーは2013年発表の本書がデビュー作になります。米国のコージー派的なところもありますがそれほど回り道をせずに謎解きを重点に置いたプロットになっているのは好印象です。とはいえどのような推理で犯人にたどりついたのかが説明不十分なのが残念です。それにしてもアンティ・リーと犯人との最後の対決は、拷問風なところがあってちょっと不気味でしたね。 |
No.901 | 2点 | パスカルの鼻は長かった- 小峰元 | 2015/12/17 09:47 |
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(ネタバレなしです) 1975年発表の長編第4作で高校生向けの雑誌に掲載されています。主人公が小峰元ですが別に作者の分身というわけではなく、高校3年生の設定です。エキセントリックな人物個性が読み手の心にしみじみと伝わるかは微妙ですけれど、勢いのある言動は確かに若さを感じます。しかしプロットが謎解きメインでない上に、何度もパスカルの原理が謎解きに役立ちそうなことが示唆されるのですが結局十分な説明もされずに終わってしまい、推理小説としては出来が悪いとしか言えません。青春推理小説でなく青春小説と割り切って読んだ方がいいかも。 |
No.900 | 5点 | 消えた修道士- ピーター・トレメイン | 2015/12/12 22:27 |
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(ネタバレなしです) 1999年発表の修道女フィデルマシリーズ第7長編です。このシリーズは本格派推理小説と冒険スリラーのジャンルミックス型であることが多いのですが本書の場合は後者の要素の方が多いように思います。2人の国王の会見で起こった同時暗殺未遂事件で幕を開け、その黒幕(実行犯はその場で殺されます)探しにフィデルマが乗りだすというプロットです。ストーリーテリングの見事さは相変わらずで、手掛かりを求めての旅先で起きる様々な出来事から最後は暗殺未遂事件の起きたキャシェルに戻り、関係者のほとんどが集まった法廷でのフィデルマによる謎解きまで、創元推理文庫版で上下巻合わせて650ページを越す分量も気にならずすらすらと読めました。この法廷場面がフィデルマのほとんど独壇場となっていて法廷論争としては物足りないのが(相手方がやや小物でした)ちょっと惜しいところです。また第12章で起こった殺人事件(被害者の名前は最後までわかりません)の真相が全体の謎解きの中で蛇足的な扱いだったのも本格派の謎解きを期待していた自分にとってはやはり残念でした。 |
No.899 | 6点 | 花の棺- 山村美紗 | 2015/12/08 20:22 |
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(ネタバレなしです) 膨大な山村作品の中でも最も有名なキャサリンシリーズ(長編だけで20作、中短編集もかなりの数があります)の1975年発表の第1作の本格派推理小説です。私の読んだ光文社文庫版の巻末解説ではキャンピング・カーの消失トリックの方をべた褒めしてましたが、現在では和風密室トリックの方が高く評価されているようです。シリーズ第1作だからでしょうが、キャサリン(本書では米国副大統領の令嬢という設定)が外国人であるゆえに日本人と違う視点から事件を観察して解決に結びつけるというユニークさがよく考えられています。 |
No.898 | 5点 | 黒い列車の悲劇- 阿井渉介 | 2015/12/08 14:19 |
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(ネタバレなしです) 1993年発表の列車シリーズ第10作にてシリーズ最終作です。序盤にスケールの大きな謎が2つ提示されます。一つは単線路を走る列車がトンネルに入ったまま出て来ず、反対側からやって来た列車が無事にトンネルをくぐり抜けたという列車消失の謎。もう一つは消えた列車と同じと思われる列車が線路のない霧の海の上を走っているのを目撃されるという謎。しかし捜査で重要視されるのは誘拐された列車の乗客の安否であり、また身代金の運び人として犯人から牛深刑事が指名されたことから牛深と犯人との間にどういう因縁があるのかという謎解きに多くのページが費やされます。牛深を単なる捜査官にしていないところはシリーズ前作の「虹列車の悲劇」(1992年)に通じるところがありますが人間ドラマとしての緊迫感はやや薄れたように思います。それにしてもトリックも含めてこれほど大掛かりにする必要性があったのかは疑問ですね。 |
No.897 | 5点 | 生首殺人事件- 尾久木弾歩 | 2015/12/06 22:50 |
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(ネタバレなしです) 1951年に雑誌発表された江良利久一シリーズ第2作の本格派推理小説です。密室内で首なし死体が発見される殺人事件(首はどこへ?)が次々に起こるプロットが派手そうですが、アリバイ捜査が延々と続いて実は結構地味です。第9章の終わりで「読者への挑戦状」が挿入されるのでいよいよ解決間近かと思いましたが、まだまだ新しい事件が起きるは捜査陣の混乱はエスカレートするはと物語は何と15章まで続くのです。このプロット構成を冗長と感じるかは意見が分かれそうです。密室トリックが複数用意されているのはいいのですが、平凡を通り越していくらなんでもこれはひどいというレベルのものがあったのは残念。シリーズ前作の「般若面の秘密」(1950年)と比べて残虐描写がそれほど強烈でなかったのは(個人的には)幸いでした。 |
No.896 | 4点 | りんご酒と嘆きの休暇- アレクサンダー・キャンピオン | 2015/12/06 22:03 |
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(ネタバレなしです) 2011年発表のカプシーヌ・ル・テリエシリーズ第2作です。パリの事件とノルマンディーの事件を扱っていますが、前者については部下のイザベルに事件の担当を任せ、後者については地元の憲兵隊からよそ者扱いされるためカプシーヌが表立って活躍できないのがプロットの特色となっています。一応は犯人を特定した推理を説明してますが、カプシーヌが言うほど論理的には思えず、証拠としてはあまりに薄弱な伏線を直感で補っているように感じます。パリとノルマンディの風景描写もほとんどありません。代わりに目立つのがフランス料理描写で、さすがレストラン評論家の顔を併せ持つ作者ならではです。 |
No.895 | 6点 | fの魔弾- 柄刀一 | 2015/12/06 02:23 |
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(ネタバレなしです) 2004年発表の南美希風シリーズ第2作の本格派推理小説です。タイムリミットによるサスペンスを狙っていますが、多くのタイムリミット作品が死刑執行をデッドラインにしているのに対して本書は求刑(判決が下るまで)をデッドラインにしているのが珍しいです(サスペンス効果という点では死刑執行パターンより劣ると思いますが)。某国内作家の作品に似た前例のある密室トリックが使われていますがトリックを成功させるための細かい工夫が印象的でした。美希風がトリックの詳細を一般には知らせない方がいいと発言していたので「火の神の熱い夏」(2004年)のように曖昧な説明で終わってしまうのではと心配しましたが、幸いそれは杞憂に終わりました。 |