皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2814件 |
No.1014 | 4点 | 短刀を忍ばせ微笑む者- ニコラス・ブレイク | 2016/01/23 23:32 |
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(ネタバレなしです) 1939年発表の本書はナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ第5作と紹介されることも多いですが、主人公はナイジェルの妻ジョージアです。ナイジェルはほとんど登場せず、さりとて裏で暗躍していた様子もなくシリーズ番外編と言うべき作品だと思います。第二次世界大戦の直前に書かれたと思われ、秘密組織の黒幕探しの冒険スリラー小説となっています。謎解き要素がほとんどないのはまだしも、捜査の進展が場当たり的のため前半の展開がだらだら感が強いのは作品の弱点と思われます。後半になるとジョージアに迫り来る危機描写でやっとサスペンスが盛り上がります。タイトルが(短刀が登場していないので)作品内容と合ってるのか意味不明でしたが、kanamoriさんのご講評の説明でようやく理解できました。この場を借りて御礼申し上げます。 |
No.1013 | 6点 | ダリの繭- 有栖川有栖 | 2016/01/23 23:20 |
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(ネタバレなしです) シュールレアリスムの画家サルヴァドール・ダリに心酔し、ダリを真似た髭をトレードマークにしていた男が殺される事件の、1993年発表の火村英夫シリーズ第2作の本格派推理小説です。不思議なタイトルが目を引きますが、「繭」についてはプロットの中で巧く活用していると思いますが「ダリ」についてはタイトルに採用するには作中の扱いが物足りなく感じます。もっとも私のように美術に関心の低い読者だと、美術用語を多用されてもそれはそれで読みづらくなってしまうのですけど。謎解きはそつなくまとめてはいますが、記憶に残るような特色がなく地味な印象の作品でした(自分の記憶力の問題は棚上げ)。 |
No.1012 | 5点 | 花の旅 夜の旅- 皆川博子 | 2016/01/23 23:07 |
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(ネタバレなしです) ミステリーの初期代表作と評価の高い1972年発表の本書は、花をモチーフにした短編の仕事の依頼を受けた売れない作家がカメラマン、マネージャー、モデル、アシスタントらとの取材旅行を続けながら作品を書いていくが怪事件が発生するという展開を見せます。作中作の短編第一話で始まり、その後に現実の世界が続き、その後も虚構の世界と現実の世界が交互に描かれる凝ったプロットの本格派推理小説です。作中作はどれももやもや感が濃い上に、時に虚構の世界か現実の世界かよくわからなくなり、終盤で登場人物に「読者はめんくらうでしょうね」と言わせています。謎解きもしてはいますが解決のすっきり感よりも幻想性の方が高かった印象を受けました。ミステリーとしては「紙芝居殺人事件」(1984年)の方が本書より完成度が高いように感じられて個人的には好みなのですが、幻想作家としての皆川を期待している読者には本書の方が受けがいいかもしれません。 |
No.1011 | 6点 | 奥様は失踪中- サイモン・ブレット | 2016/01/23 22:33 |
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(ネタバレなしです) 1988年発表のパージェター夫人シリーズ第2作です。この作者は軽妙な文章による読みやすさを特徴とし、時にユーモアも織り込みますが一方で落ち目の人生とその悲哀を描くことにも秀でており、本書でも第29章の描写は非常に印象に残ります。犯人を特定する手掛かりらしい手掛かりもなく、最後は犯人をおびき寄せる作戦で正体を見抜くという結末だったのでサスペンス小説かと思いましたが、一応はパージェター夫人が謎解き伏線の説明をしており何とか本格派推理小説としても成立しています。 |
No.1010 | 5点 | マヂック・オペラ- 山田正紀 | 2016/01/23 22:29 |
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(ネタバレなしです) 「二・二六殺人事件」の副題を持つ、2005年発表の黙忌一郎シリーズ三部作の第2作となる、幻想性の強い本格派推理小説です。ミステリにおいてはしばしば謎の人物が登場して謎を深めるのに重要な役割を果たしますが本書の場合はそういう人物が多過ぎて、私のような単純な読者は人物整理が追いつかず謎解きに集中できませんでした。これでもかと言わんばかりの謎の提供が圧巻だったシリーズ前作「ミステリ・オペラ」(2001年)と違いを出そうとするのはいいのですが、歴史描写の充実と引き換えに謎解きが後退しているのは残念です。タイトルに使われている「マヂック」もぴんと来ませんでした(一応は密室殺人事件がありますが)。 |
No.1009 | 5点 | 探偵ダゴベルトの功績と冒険- バルドゥイン・グロラー | 2016/01/23 22:15 |
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(ネタバレなしです) オーストリアのバルドゥイン・グロラー(1848-1916)はコラミニスト、編集者として活躍し、小説もかなりの作品を残しています。探偵愛好家のダゴベルト・トロストラーシリーズは1910年から1912年にかけて18短編が6冊に分けて出版され、更に1914年発表の4短編を収めた短編集があり、そして短編集未収録の1編と合計23編の短編があるそうです。本書(創元推理文庫版)は初期18編の中から9編を抜粋したものです。解決済みの事件をダゴベルトがグルムバッハ夫妻に語って聞かせるプロットのためか、謎解きプロセスを楽しめる作品ではなく、また真相を明かすよりもスキャンダルにならないように処理することに重点を置いた作品が多いのも特徴です。それが同時代のメルヴィル・D・ポーストのアブナー伯父シリーズやジャック・フットレルの思考機械シリーズとは異なる作品個性でもあるのですが、謎の魅力のアピール度が低いのがミステリーとしての弱みになっているように思えます。風変わりな殺害方法の「特別な事件」とスリリングな冒険談の「ダゴベルトの不本意な旅」が印象的でした。 |
No.1008 | 6点 | 摩天楼の弩- 高柳芳夫 | 2016/01/23 22:04 |
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(ネタバレなしです) 1983年発表の本書ではコンピューター産業と企業秘密を巡る産業スパイ行為がちらつきますが社会派推理小説でもスパイ・スリラーでもなく、本格派推理小説に分類すべきミステリーです。「摩天楼」というタイトルが作品内容と合っているとは言い難いのが(高層ビルが舞台になっているわけではありません)少々気になりましたが、緻密に考えられた犯罪をどんでん返しの推理で明らかにしていく展開は謎解きの面白さ十分です。中盤での企業間の関係説明はあまり万人向けとは思えませんが、全体の中ではそれほどの弱点に感じませんでした。 |
No.1007 | 5点 | 月曜日ラビは旅立った- ハリイ・ケメルマン | 2016/01/23 21:53 |
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(ネタバレなしです) 米国では第二次世界大戦以降から長い間本格派推理小説の人気が低迷し、ジョン・スラデックの傑作「見えないグリーン」(1977年)でさえもあまり評判にならなかったようです。しかしケメルマンのラビ・スモールシリーズはそれなりの人気があったらしく、中でも1972年発表のシリーズ第4作である本書はイスラエルを舞台にしたという珍しさもあってか小説部門のトップ10入りしたほどヒットしたそうです。もっともラビは休暇に徹していてあまり目立たないし、事件は中盤まで起きません。しかも起こった事件がテロリストによる無差別爆弾殺人風とあっては謎解きのワクワク感がいまひとつ盛り上がりません。もちろん犯人はテロリストではありませんし、最後は推理による謎解きで辻褄は合わせてますが。米国で人気が高かったのはこのシリーズが本格派推理小説だからではなく、ユダヤ社会の描写が注目を浴びたからではないでしょうか。 |
No.1006 | 5点 | 最後の人- 樹下太郎 | 2016/01/23 10:12 |
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(ネタバレなしです) 樹下太郎(きのしたたろう)(1921-2000)はミステリー作家としてデビューしましたがミステリーを書いたのはわずか5年ほどで、サラリーマン小説家としての活躍で有名です。1959年に発表された本書が長編ミステリー第1作にあたります。登場人物たちの心理を丁寧に描写したサスペンス小説としてなかなかよくできた作品だと思います。社会常識や価値観は時代と共に変化するところもありますけど、人間の感情の本質は今も昔も同じ、現代の読者が読んでもそれほど古臭さを感じないと思います。3月23日に卒業を控えた大学生3人による女性暴行事件が起き(官能描写はほとんどありません)、その1年後の3月23日に彼らの1人が変死体となる事件を扱い、犯人当ての興味を最後まで維持していますがたった一つの手掛かりに基づく一発推理勝負に近いので本格派推理小説としての謎解きはおまけ程度と思った方がよいです。 |
No.1005 | 4点 | 本の町の殺人- ローナ・バレット | 2016/01/23 10:02 |
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(ネタバレなしです) ローナ・バレットはL・L・バートレットやロレイン・バートレット名義でも作品を発表している女性作家です。2008年発表の本書は本の町ストーナムのミステリ専門店店主のトリシア・マイルズを主人公にしたシリーズ第1作です。主人公の設定がキャロリン・G・ハートのデス・オン・デマンドシリーズを連想させますが、残念ながらハートの作品ほど謎解き伏線が用意されているわけではなく読者が推理に参加できる余地がほとんどありません。トリシアがコンビを組むことになる人物との人間関係の紆余曲折が数少ない読みどころです。 |
No.1004 | 5点 | 消える「水晶特急」- 島田荘司 | 2016/01/23 09:50 |
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(ネタバレなしです) 1985年発表の吉敷竹史シリーズ第4作でそれまでのシリーズ作品とはかなり異なる印象の作品です。前半は何とトレインジャックを描いたスリラー小説風で、サスペンスは豊かですが謎らしい謎がありません。後半になるとタイトル通り列車と乗客が「消える」事件が起きるのですが、吉敷の描写が少ないだけでなく彼の行動自体が謎を多く含んでいて、主人公の女性記者と一緒に読者も何がどうなっているのかわからなくてやきもきさせられます。最後は様々な伏線を見事に回収して真相が明らかになるのですが読者にあらかじめ知らされていない要素も多く(プロットの性格上これはやむを得ないのですが)、読者が謎解きに参加するのは難しいと思います。個人的には本書はサスペンス小説への分類に一票投じます。 |
No.1003 | 4点 | フィリップ・マーロウよりも孤独- 平石貴樹 | 2016/01/23 09:27 |
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(ネタバレなしです) 1986年発表の長編ミステリー第3作です。レイモンド・チャンドラーの私立探偵フィリップ・マーロウ(読んだことありませんが私でも名前は知っています)をタイトルに使っていますが、ハードボイルドどころかミステリーでさえあるかさえ個人的には微妙な作品でした(強いて言えば本格派でしょうか)。大学の工事現場から10年以上前に殺されて埋められたらしい白骨死体が発見され、主人公はかつてオニイと呼んでいた人物が犯人ではないかと疑います。そこから主人公の回想を通しての謎解きが(本格派風に)始まるのですが、この回想が主人公とオニイとママの奇妙な三角関係描写中心でしかも筋道無視の妄想気味、ミステリーである以前に小説として読みにくいです。終盤に主人公が「謎は解決されるのでなく、かたちを得てはっきり残ったのだ。あたしに」と謎めいた述懐しているように、すっきり感のないままに終わってしまいました(私の理解力も弱いのですけど)。 |
No.1002 | 6点 | 不必要な犯罪- 狩久 | 2016/01/23 09:10 |
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(ネタバレなしです) 狩久(かりきゅう)(男性作家です)(1922-1977)は1951年に作家デビューして約100編の中短編作品を世に送り出しました。本格派推理小説から官能サスペンス、SF小説と作風は幅広いです。1962年から休筆状態になってしまいますが1975年に復活します。本格派の中編「虎よ、虎よ、爛爛と-101番目の密室」(1976年)(これは傑作ですよ)で長編執筆への自信を得た作者が生前の1976年に発表できた唯一の長編作品が本書です。セックス描写があるのは本来は私がミステリーに期待していることではないのですが、本書の場合は乱れた人間関係が本格派推理小説としての謎を深めるのに必要な要素となっています。さすがに子供にも勧められる作品とは言えませんけど、どんでん返しの連続が圧巻の謎解きを構築していることは間違いありません。復活した作者に残されていた時間がわずかだったのは本当に惜しまれます。 |
No.1001 | 5点 | 風の時/狼の時- 天城一 | 2016/01/23 08:52 |
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(ネタバレなしです) 数学者であった天城一(1919-2007)にとってミステリー執筆は余技でしたが、1947年から本格派推理小説の短編を書き始めました。本書は1990年発表の長編本格派推理小説ですがなかなか数奇な経緯をたどっており、最初に完成されたのが1948年で、その後改訂されて「圷家殺人事件」というタイトルで1955年に私家版で出版されました。作者は更に大幅に手を加え(殺人のあった圷家が阿久津家に改名されました)、まるで小野不由美の十二国記シリーズみたいなタイトルを付けて発表したのが本書です(本書の方が十二国記シリーズよりも先なんですけどね)。ちなみに1990年の出版もまた私家版で、ようやく商業出版されたのは作者没後の2009年でした(長編「沈める濤」やいくつかの短編が一緒に収まってます)。ということで最終版になるまでに作者の半生を費やした作品ではあるのですが、さぞや思い入れたっぷりかと思いきや意外とドライに淡々と書かれています。作者は動機とトリックにこだわったと述べていますが、喜怒哀楽がほとんど表現されていない人物描写ではせっかくの独創的な真相もインパクトが弱いです。途中の戦史評論もいかにも学者風な堅苦しい評論で血沸き肉踊るような戦闘描写など全くなく、冗長にしか感じられませんでした。 |
No.1000 | 6点 | 二つの陰画- 仁木悦子 | 2016/01/23 08:39 |
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(ネタバレなしです) 1964年発表の長編第5作の本格派推理小説です。アパートの大家から部屋代の値上げを宣言されて頭にきている若い夫婦が主人公で探偵役ですがシリーズ探偵の仁木兄妹といい、この作者はアマチュア探偵コンビの活躍を描くのが得意ですね。密室殺人事件を扱っていますが前半は地道な捜査と探偵の苦戦ぶりが丁寧に描かれていて盛り上がりには乏しいです。しかし終盤では謎解きのスリルを楽しめました。犯人が犯行に至るまでの経緯も詳細に説明されますが、ちょっと犯人に好都合過ぎな展開だったような気がします。 |
No.999 | 5点 | 新任警部補- 佐竹一彦 | 2016/01/23 03:50 |
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(ネタバレなしです) 佐竹一彦(1949-2003)は警察官出身のミステリー作家で作家生活は非常に短く、10作にも満たない作品を残しただけですが警察描写のリアリティーでは他の追随を許さないと評価されています。1993年発表の本書が長編第1作になりますが発表当時は「凶刀『村正』殺人事件」というタイトルでした(私が読んだのもこちら。いかにも警察小説っぽい今のタイトルだったら多分手に取らなかったと思います)。刀剣による殺人、密室、名刀(凶刀?)「村正」探しといった本格派推理小説的な派手な謎と地道で丁寧な捜査の組み合わせで読ませる作品です。現場を知らない新任警部補を主人公にしているのも新鮮ですが、この人独力での解決に持っていかないところが警察小説ならではでしょうね。第8章最後でのどんでん返しも本格派推理小説を期待する読者は「異色」に感じるかもしれません。密室トリック(こんなの通用するのかと思うぐらい単純なトリック)を犯人の自白で明らかにしているのも本格派を期待していた私にはちょっと拍子抜けでした。 |
No.998 | 6点 | 色っぽい幽霊- E・S・ガードナー | 2016/01/23 03:28 |
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(ネタバレなしです) 1955年発表のペリー・メイスンシリーズ第46作の本格派推理小説です。ハヤカワポケットブック版の裏表紙紹介では「全篇の約三分の二が法廷場面」と書かれていますがさすがに3分の2は誇大広告気味です。物語は全17章で構成されていますが法廷場面が開始されるのは第10章から。しかもその後も何度か捜査場面の挿入で中断されています。とはいえ内容は十分面白く、メイスンの宿敵(?)の地方検事ハミルトン・バーガーが自信満々なのもごもっともな状況設定と、複雑な人間関係が徐々に明らかになる展開はサスペンスに富んでいて、謎解きも意外としっかりしています。ちなみにタイトル(英語原題は「The Case of the Glamorous Ghost」)から色事描写を期待してはいけません(笑)。 |
No.997 | 5点 | バビロンの迷宮- 天野裕美 | 2016/01/23 03:08 |
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(ネタバレなしです) 斎藤栄のミステリー講座を受講した天野裕美(あまのゆみ)(1957年生まれ)の1992年発表のデビュー作です。ファンタジー小説か冒険小説みたいなタイトルですが普通に現代を舞台にした本格派推理小説です。ゲーム好きな学生たちが大勢登場し、多少ご都合主義的なところがあるものの軽快なテンポの展開とどんでん返しの謎解きが楽しめます(動機はややひねり過ぎにも感じますが)。パソコン通信やフロッピーなど現代ではあまり使わなくなった用語やツールも散見されますがストーリーの流れを妨げるほどではありません。それにしても斎藤栄は本書の講談社ノベルズ版に推薦の辞を投稿しているのはまだしも、自作の「Sの大悲劇」(1993年)(私は未読です)に天野を出演させたりして一体どういう師弟関係なんだと下種の勘繰りを招きそうなことをやってますね(笑)。天野も恥ずかしくなったのか本書以降作品を発表していないようですが...。 |
No.996 | 5点 | 歌麿殺贋事件- 高橋克彦 | 2016/01/22 10:26 |
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(ネタバレなしです) 「北斎殺人事件」(1986年)に続く塔馬双太郎シリーズ第2作にあたる作品です。もともとは短編作品で、第一短編の「歌麿の首」が「北斎殺人事件」より早い1984年に出版されています。1987年までに発表された5短編を統合し、新たに書かれた物語を加えて6章形式の長編として1988年に出版されました。物語は各章で完結しているので長編というより連作短編風です。殺人事件は起きず(自殺はある)、美術品の真贋を扱っていますが単に本物か贋物かという謎解きでなくなぜ贋物を世に出したのかという動機の方に重きを置いた物語が多かったです。中にはいかにして悪徳業者をこらしめるかというコン・ゲーム(だまし合い)的な作品もあります。美術を扱ったミステリーとしては比較的読みやすい作品ですが、自分で謎解きをしたい読者にはあまり勧められません。 |
No.995 | 4点 | 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン | 2016/01/22 09:59 |
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(ネタバレなしです) 1939年発表のヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)シリーズ第9作で、超能力(思念力)による殺人(に見える事件)という怪奇風というより科学的なテーマを扱っているのがこの作者としては異色に感じます。英語原題は「The Reader is Warned」ですがこの日本語タイトルは本格派推理小説好き読者へのアピ-ル度抜群ですね。ただ謎解き内容に関しては少々タイトル負けかなという気がします。メイントリックは短編作品の焼き直しですが、プロットが全く別物になってるので先に短編を読んだ読者でもなかなか気づかないと思います。ただこのプロットが結構問題で、第一の事件と第二の事件の関連性といい、事件解決の鍵を握る重要人物(登場人物リストにも載っていない)を終盤に唐突に登場させたことといい、ややアンフェアではないでしょうか。私の読んだハヤカワ文庫版の巻末解説では「いたずらっぽいはぐらかし」と弁護していますけど、個人的にはタイトルで期待が大きかった分、不満の方が強かったです。 |