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[ 本格 ]
ウィルソン警視の休日
ヘンリー・ウィルソンシリーズ
G・D・H&M・I・コール 出版月: 2016年01月 平均: 5.00点 書評数: 3件

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論創社
2016年01月

No.3 4点 人並由真 2016/06/18 02:01
(ネタバレなし)
 一編一編から興味のポイントを探ればそれぞれ、それなりに面白い部分もある(足跡の謎、不可思議な発砲事件、地上から消えた人物の行方…などなど)が、登場人物の描写、会話偏重の話作りなどなど、全体にストーリーテリングがヘタ。クラシックミステリ連作としては、正直キツイ部類の一冊だった。

 実は『国際的社会主義者』の人を食った真相なんか割と好みなんだけど、演出の悪さで損してる、という感じ。記憶に刻まれる部分だけあとあと思い返せば、そこそこ悪くなかった連作短編集といった印象が残りそうな作品集ではあっただが、実際に読むと結構シンドくて、疲れているときにページをめくると瞼が重くなってくる。

 いやミステリとしては、たしかにところどころ、宝石の原石的な魅力はあるんだけどね。『オクスフォードのミステリー』なんかも、こういうアイデアにマジメに取り組もうとしたところなんかは、悪くはなかったんだけど。

No.2 6点 kanamori 2016/03/10 18:13
ミステリ史における重要な個人短編集をエラリークイーンがリストアップした”クイーンの定員”(Q'Q)にも選定されているウィルソン警視シリーズの第1短編集。ヘンリー・ウィルソンは、長編2作目「百万長者の死」の事件を契機に一旦警察を退職し、探偵事務所を立ち上げた経緯があり、収録作のうち3編(1、2、7話)が警視時代のもの、残りの5編が私立探偵として登場しています。

最初の「電話室にて」は、トリックの実現可能性の問題以前に、スマホ世代の読者には、その装置の形状自体が理解不能ではという難点がありますが、冒頭の伏線が最後に効いていて、その部分が印象に残る作品です。そういう意味では、タイトルは乱歩編『世界短編傑作集2』収録の「窓のふくろう」のほうがよかったのかな。
「ウィルソンの休日」は、現場の海岸に残された多くの痕跡から、ウィルソンが緻密な推理を積み重ね真相に至るオーソドックスな捜査モノ。もう足跡のある現場見取り図が出てきただけでテンションがあがるw
最後の「消えた准男爵」は、複数のトリックとなにげない伏線を活かした緻密なプロットがよく出来ていて、完成度の高い篇中の個人的ベスト作品。なぜ犯人がそのような複雑な工作を行ったのか?という理由が明快で感心してしまった。
ウィルソン警視の実直な造形もあって総体的に地味で、謎解きミステリとしても他の作品は底が浅いものが多いのですが、1920年代という発表時期を考慮すれば十分楽しめる作品集だと思います。

No.1 5点 nukkam 2016/02/22 09:55
(ネタバレなしです) ヘンリー・ウィルソンシリーズ短編を8作収めた1928年発表の第一短編集です(警視時代の作品と私立探偵時代の作品が混在しています)。論創社版の巻末解説でこの作者は作品の出来不出来のバラツキが指摘されていますが、この短編集でもそれを感じます。「電話室にて」、「ウィルソン警視の休日」、「キャムデン・タウンの火事」、「消えた准男爵」などは地味ながら緻密なプロットだと思いますが、中には終盤に突然登場した人物(論創社版の冒頭に置かれた登場人物リストにも載っていません)が犯人だったのに唖然とさせられるような作品もあります。珍しくもトリッキーな「電話室にて」(「窓のふくろう」という別タイトルの方が有名かも)は現代ミステリーならトリックの実現可能性について大いに問題とされるでしょうが書かれた時代を考慮すると笑って許すべきでしょう。


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