皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2814件 |
No.1154 | 7点 | 死の会計- エマ・レイサン | 2016/05/06 15:01 |
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(ネタバレなしです) 1964年に発表され、1965年のCWA(英国推理作家協会)のシルヴァー・ダガー賞を受賞したジョン・サッチャーシリーズ第3作の本書は企業ミステリーでもありますがそれほど難解ではなく、すがすがしささえ感じさせる結末が心地いいし、謎解きとしてもある種のどんでん返し(着想の逆転といった方がいいかも)が巧さを感じさせます。読みやすいといっても会社勤務を経験していない読者だとこういう作品舞台がなじめやすいかは微妙かもしれませんが、初期代表作と評されるのも納得の1冊だと思います。 |
No.1153 | 6点 | 熱く冷たいアリバイ- エラリイ・クイーン | 2016/05/01 21:54 |
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(ネタバレないです) 米国のフレッチャー・フローラ(1914-1968)はエラリー・クイーン名義での代作3冊を含めても長編ミステリー作品は10作に満たず、短編ミステリーの方は130作を超しています(非ミステリーの通俗小説なども書いているようです)。ミステリー作品は犯罪小説やハードボイルドが多いようですが、1964年にエラリー・クイーン名義で発表した本書は本格派推理小説です(探偵クイーンは登場しません)。原書房版の巻末解説で「思いつきがたまたま的中しただけであって、推理とほど遠い」部分は確かにありますが謎解き伏線はそれなりに張ってありますし、弱点を補ってあまりあるのが登場人物の内面描写と人間ドラマで、少々通俗的ではあるものの味気のないパズル・ストーリーに留まってはいません。アンソニー・バウチャーやF・M・ネヴィンズが好意的に評価したのも納得です。 |
No.1152 | 6点 | 去来氏曰く- 島田一男 | 2016/04/28 14:10 |
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(ネタバレなしです) 「去来氏曰く」というタイトルで1960年に発表された南郷弁護士シリーズ第7作で、後に「夜の指揮者」に改題されています。作者自身が「ガッチリ、本格物と取ッ組んでみたいと考えた」とコメントしており、このジャンルのシリーズ作品としては第2作の「その灯を消すな」(1957年)以来ということになります(シリーズ第6作の「黒い花束」(1959年)もまあ本格派ではありますが謎解きが結構強引で粗いです)。3つの事件にそれぞれトリックを凝らしてあり(但し光文社文庫版で第1の事件を「密室」と紹介しているのは間違い)、謎解き説明はあっさり気味ですが犯人の深遠謀慮は敢闘賞ものでしょう(しかし細工が過ぎて結局ぼろがでる)。それにしてもこのシリーズ、本格派の作品では南郷の1人称形式、軽ハードボイルドの作品では3人称形式ですが探偵役の1人称と犯人当て謎解きの両立とはなかなか珍しいですね。 |
No.1151 | 6点 | 向うみずな離婚者- E・S・ガードナー | 2016/04/25 02:39 |
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(ネタバレなしです) 1964年発表のペリー・メイスンシリーズ第72作で、メイスンの事務所で(さすがに殺人ではないけど)事件が起きたり、弁護士同士の対決があったりとプロットの工夫が光ります。ただ推理はやや中途半端で、メイスンは被告の無罪を証明はしますが犯人の正体については指摘するまでには至りません。弁護士としての役割はこれで十分果たしたとは言えるでしょうけど、ミステリーの探偵役としては物足りなかったです(ちゃんと最後には事件が解決されていますが)。 |
No.1150 | 5点 | 製材所の秘密- F・W・クロフツ | 2016/04/25 02:32 |
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(ネタバレなしです) 1959年に「サンデー・タイムズ紙」がベストミステリ99を選んだ時にクロフツの作品から選ばれたのが1922年発表の冒険スリラー小説である本書だったそうです。クロフツは1957年に死去しているので全作品が選考対象だったはずですが、なぜ本書がベスト作品として選ばれたのか不思議ですね。多分イギリスでは冒険スリラーの人気が日本人が想像している以上に高いのでしょう。前半はアマチュア探偵のシーモア、後半はプロの捜査官であるウィリス警部が活躍するのですが、それにしても悪役たちのひそひそ話を盗み聞きする場面の多いこと!多少の都合よい展開には目をつぶりますけど、こうも易々と情報筒抜けを許してしまうとは犯人たち、あまりにも杜撰(笑)。 |
No.1149 | 5点 | 水晶玉は嘘をつく?- アラン・ブラッドリー | 2016/04/25 02:20 |
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(ネタバレなしです) 2011年発表のフレーヴィア・ド・ルースシリーズ第3作の本格派推理小説です。いくらフィクションの世界だと言っても犯人当てはまだしも自分の都合のいい解決へ持っていこうとするフレーヴィアに共感できませんでした。起伏に富んだプロットは読み応えたっぷりなんですけど。うーん、3作読んでもフレーヴィアの考え方を無条件に支持できない自分はやっぱ頑固爺さんなんだろうか(笑)。 |
No.1148 | 4点 | ワンダーランドの悪意- ニコラス・ブレイク | 2016/04/24 23:56 |
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(ネタバレなしです) 1940年発表のナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ第6作です。「不思議の国のアリス」のパロディーみたいなタイトル、「アリス」を読んだ読者なら楽しめそうな場面の数々、そしてマッド・ハッターを名乗る人物(犯人?)。しかし本格派推理小説とファンタジーの融合化を目指したのであれば、本書は中途半端に終わったような気がします。わくわくもどきどきもしないし、事件は色々と起きるのですが凶悪事件性がなくて長編ミステリーを支えるには物足りません。推理はそれなりに細かいところまで考えられていますが。 |
No.1147 | 5点 | 火よ燃えろ!- ジョン・ディクスン・カー | 2016/04/24 22:33 |
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(ネタバレなしです) 1957年発表の歴史本格派推理小説です。不可能状況下での銃殺という魅力的な謎を扱っていますが、目撃情報がかなりあやふやなこともあって不可能性がいまひとつ伝わりにくくなっているのは惜しいところです。冒険スリラー小説要素が強いため謎解きが盛り上がりにくくなっているのも否めません。まあそれでも「喉切り隊長」(1955年)よりはなんとかミステリーとして踏みとどまっていますが。トリックは歴史物だから謎として成立したというものなので賛否両論あるかもしれません。ちゃんと謎解き伏線があることは巨匠カーならではです。それにしても「ビロードの悪魔」(1951年)、(カーター・ディクスン名義の)「恐怖は同じ」(1956年)に次いで3度目のタイムスリップとは、いくらなんでも多すぎでは(本書でタイムスリップは最後みたいですが)。 |
No.1146 | 4点 | しっかりものの老女の死- ジェイニー・ボライソー | 2016/04/24 22:23 |
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(ネタバレなしです) 1998年発表のローズ・トレヴェニアンシリーズ第2作です。どきどきしたりわくわくしたりするような場面がほとんどありません。抑制された文章表現に加えて自殺か他殺かさえなかなかはっきりしないスローな展開なので読者によっては退屈してしまうかもしれません。推理場面もほとんど目立ってません。悲惨極まりない決着場面がそれほど気味悪さを感じさせないのは、この地味な描写のおかげといえなくもありませんが。 |
No.1145 | 4点 | 悪魔が来りて笛を吹く- 横溝正史 | 2016/04/24 22:13 |
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(ネタバレなしです) 1951年発表の金田一耕助シリーズ第8作の本格派推理小説です。横溝には「悪魔」をタイトルに使っている作品がいくつかありますがその中でも本書は最もそれにふさわしく、特に第16章の最後の文章には戦慄さえ感じます。謎解きは不満点が多く、ある手掛かりが文章では読者に伝わりにくいものであることや、何よりも淡路島の事件の真相は反則技にしか感じられません。しかし戦後の混乱期と没落貴族の描写はさすがですし、インパクトのある悲劇ドラマとして読ませる作品です。 |
No.1144 | 6点 | 白魔の歌- 高木彬光 | 2016/04/24 16:54 |
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(ネタバレなしです) 1958年発表の神津恭介シリーズ第9作の本格派推理小説です。このシリーズとしては変わったプロットで、死体の演出こそ派手ですが物語のテンポは遅めでトリックへのこだわりもなく、全体的には地味な作品です。空さんのご講評の通り、プロットのバランスが悪いように感じます。神津恭介の真相説明はそれほど論理的ではありませんが虚しさの残る結末の効果がよく効いていて、推理への不満をそれほど感じさせませんでした。 |
No.1143 | 6点 | 三つの消失- ピエール・ボアロー | 2016/04/24 16:40 |
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(ネタバレなしです) フランスのピエール・ボアロー(1906-1989)はフレンチミステリー界では数少ない本格派推理小説の書き手です。1938年発表のアンドレ・ブリュネルシリーズ第3作の本書は冒険小説大賞(冒険小説でなくても受賞できるようです)を獲得した代表作です。本格派ですがいきなり殺人犯が現行犯も同然で捕まってしまう展開に驚かされます。本書のメインの謎解きは消失トリックというのがなかなか新鮮です。第一の絵画消失は不可能犯罪としてはそれほど魅力的な謎ではありませんが(隠し場所はいくらでもありそうなので)、第二、第三の消失は結構派手な謎で読者を魅了します(但しトリックには多くを期待してはいけませんけど)。なお本書はトーマ・ナルスジャック(1908-1998)のサスペンス小説「死者は旅行中」(1948年)と一緒に晶文社版で「大密室」という大仰なタイトルで出版されていますので、本書を探す場合は「大密室」を忘れずに。 |
No.1142 | 4点 | 旅のお供に殺人を- コリン・ホルト・ソーヤー | 2016/04/23 23:02 |
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(ネタバレなしです) 1997年発表の<海の上のカムデン>シリーズ第8作でシリーズ最終作です。舞台はいつもの<海の上のカムデン>ではなく、この老人ホームの住人たちが何とメキシコ旅行に行って色々な出来事に遭います(メキシコ情緒はなかなかよく描けています)。アンジェラとキャレドニアが(特に前者は)好奇心から事件の謎解きに取り組むのがこのシリーズのパターンですが、本書に関しては殺人事件が起きているにも関わらず犯人探しのプロットにならず、推理要素の薄いトラベル・ミステリー調なのが異色です。どちらかといえば巻き込まれ型冒険スリラー色が濃いです。個人的には犯人がべらべらと自白して真相がわかる展開はあまり好みではないのですが。 |
No.1141 | 4点 | 破壊者- ミネット・ウォルターズ | 2016/04/17 22:34 |
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(ネタバレなしです) 1998年発表の長編第6作です。創元推理文庫版の巻末解説ではウォルターズ作品の中では伝統的な謎解き小説の要素が強いと評価していますが、あまりそれを感じることができませんでした。kanamoriさんのご講評の通り、読者が犯人当てに挑戦するようなタイプではありません。もともとこの作者は意図的に不快なものを読者に突きつける傾向がありますが、特に本書では文章表現が猥褻だったり汚かったりする度合いが過剰気味で、とても「伝統的」とは言えないと思います。むしろ非情なハードボイルド小説が好きな読者の方が本書を受け入れやすいと思います。 |
No.1140 | 5点 | 女には向かない職業- P・D・ジェイムズ | 2016/04/17 22:24 |
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(ネタバレなしです) 1972年発表のコーデリア・グレイシリーズ第1作で、アダム・ダルグリッシュシリーズ第5作ですが、後者の出番は終盤のみでコーデリアがほとんど出ずっぱりのプロットです。22歳の若い女性探偵を主役にしていますが、感情をほとんど表に出さずに淡々と捜査を進めていて、まるで年齢不詳(笑)。アクションシーンなどないにも関わらず、一部でハードボイルドの女性探偵の先駆のように評価されるのも(私はハードボイルドをほとんど読んでないのですが)なんとなく納得です。謎解きとしてはそれほど凝ったものではありませんが、真相が明らかになってからの展開で読ませる作品です。比較的コンパクトな作品ですがそれでも重厚でじっくりした筋運びで読みやすくはないところがこの作者らしいです。 |
No.1139 | 5点 | 殿下とパリの美女- ピーター・ラヴゼイ | 2016/04/17 22:01 |
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(ネタバレなしです) 1993年発表のバーティシリーズ第3作です。実在した女優サラ・ベルナールを探偵パートナーとして登場させているのが本書の特徴で、ドロシー・L・セイヤーズの「死体をどうぞ」(1932年)を連想させるプロットはなかなか読ませます。残念ながら推理説明が十分でなく唐突感の残る解決になっています。作者の関心は既にピーター・ダイヤモンドシリーズに移っていたようで、この後の本シリーズは若干の短編が書かれただけのようです。 |
No.1138 | 5点 | クッキング・ママのクリスマス- ダイアン・デヴィッドソン | 2016/04/17 21:55 |
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(ネタバレなしです) 2007年発表のゴルディシリーズ第14作です。「クッキング・ママの鎮魂歌」(2004年)の続編的な内容でであるけでなく重大なネタバレをやっていますので、ぜひともそちらを先に読むことを勧めます。クリスマスの雰囲気はあっさり目ですが冬の季節感はなかなかよく描けています。今回はゴルディが推理で犯人にたどり着いていますがかなり飛躍した推理のようで、頭の悪い私にはなぜそういう結論になったのかよくわかりませんでした。 |
No.1137 | 4点 | 写楽殺人事件- 高橋克彦 | 2016/04/17 21:24 |
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(ネタバレなしです) 高橋克彦(1947年生まれ)はホラー小説、歴史小説、SF伝奇小説など幅広い作風で有名ですが、1983年発表のデビュー作である本書は歴史本格派推理小説で浮世絵三部作の1作目です。前半は主人公である津田良平が東洲斎写楽の素性を調べていく歴史の謎解き、後半は現代で起きた殺人事件の謎解きです。歴史にも美術にも疎い私は「写楽別人説」の章あたりまでは何とか付いていけましたけど、そこから先はもういけません。頭の中が真っ白状態のままで機械的にページめくりです(ひどいな)。殺人事件の謎解きも推理要素は少ないし、犯人当てとして楽しくありませんでした。しかし事件の背後にある事情や犯人の計画は複雑で緻密に考えられており、仮に推理の手掛かりを文中に忍ばせてあったとしても読者が完全に見抜くのは難しいでしょう。歴史の謎と現代の謎の関連づけがしっかりしているのも本書の良い一面だと思います。 |
No.1136 | 6点 | 火焔の鎖- ジム・ケリー | 2016/04/17 05:42 |
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(ネタバレなしです) 2004年発表のフィリップ・ドライデンシリーズ第2作です。創元推理文庫版では「現代英国探偵小説の白眉」と紹介されていますが推理については説明があっさりしており、人間関係や事件の悲劇性の描写の方が印象に残ります。舞台となる沼沢地帯の描写もなかなかの筆力を感じさせます(意外にも乾いた雰囲気でした)。プロットはやや複雑にし過ぎたかという気もしますが。 |
No.1135 | 5点 | 沈黙の函- 鮎川哲也 | 2016/04/16 22:47 |
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(ネタバレなしです) 1978年発表の鬼貫警部シリーズ第18作の本格派推理小説ですが鬼貫警部の出番は最後の2章のみです。その鬼貫が第8章の終わりで「伏線というやつはそれが伏線であることに気づかれてしまうと、今度は弱点となる場合が多い」と述べていますが、トリックを弄するための不自然な行為が目だっていて犯人の正体はわかりやすいと思います。そのトリックも結構シンプルで、底の浅い謎解きという印象を受けました。まあ個人的には複雑なアリバイ崩しよりはまだありがたいのですが。 |