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[ 本格 ]
死は囁く
ノース夫妻シリーズ
フランセス&リチャード・ロックリッジ 出版月: 1957年01月 平均: 5.00点 書評数: 2件

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東京創元社
1957年01月

No.2 5点 人並由真 2020/12/04 15:00
(ネタバレなし)
 1950年代はじめのニューヨーク。アマチュア探偵として多くの事件を解決してきたジェラルド(ジェリー)とパメラのノース夫妻。版元「ノース出版社」の社長であるジェリーは現在、作家との交渉のためサンフランシスコに出張中。子供のいないパメラは3匹の愛猫、通いの女中マーサとともに留守番をしていた。そんな時、ノース家に、一般人でも音声を記録可能な録音媒体のレコード(円盤)が送られてくる。中身が気になったパメラは夜間に夫の無人のオフィスに赴き、そこの設備で録音を再生。すると中から聞こえてきたのは、女性が殺される現場? と思える状況の記録だった。驚くパメラだが、彼女はそのまま何者かに誘拐されてしまう。一方その頃、NY市警の警視でノース夫妻とも付き合いの長いビル・ウェイガンドは、ある男の殺人事件を追いかけていた。

 1953年のアメリカ作品。ノース夫妻もののミステリ第17長編。
 もともと夫婦探偵もの、あるいは男女のパートナー探偵ものは大好き。
 さらにこの叢書「現代推理小説全集」の解説をまとめた植草甚一の著作「雨降りだからミステリでも勉強しよう」などを読んで、本シリーズのことは少年時代から知っていた。特に、当初はホームコメディ風の普通小説のキャラクターだったのが路線変更して名探偵キャラになったというノース夫妻シリーズの経緯がすごく興味深い。
 ゆえに評者なんか、そのうち読みたい読みたいとはなんとなく思っていたが、気がついたらウン十年。いつのまにかこのトシになってしまった(笑)。
(まあ翻訳されている3長編のどれも、微妙~相当に敷居が高い入手難易度なんだけれど。)

 でもって一番、手近&手頃そうなこの作品から読んでみたが、うーん……。
 主人公の片方ジェリーは出張で物語の後半までほぼ不在、さらにパメラは何者かに捕まってしまい、前半の実質的な主役はウェイガンド警視が担当する。たぶんこれはシリーズのなかでも、変化球的な一本っぽいね。

 しかし紙幅が薄め(本文170ページちょっと)でまあまあテンポよく読めるのはいいとして、パメラのピンチからの脱出の経緯も、最後の数人に絞られた容疑者からの真犯人の確定も、どっちもひとことで言ってかなり雑。特に後者なんかこのヒトが犯人でなくっても別にいいよね? という感じ。前者にしたって、パメラはさっさと(中略)。

 悪い意味でアメリカの赤川次郎作品。大きく期待はしていなかったものの、もうちょっとは楽しめるものを予期していたので、こんなものか……という感触であった。

 やんちゃな猫たち「猫族」の愛らしい描写と、夫妻の愛猫ぶりには好感。次にこのシリーズを手にするときは、そっちの興味で読み始めるであろう。

No.1 5点 nukkam 2016/05/21 23:23
(ネタバレなしです) 1953年発表のノース夫妻シリーズシリーズ第17作で、本格派推理小説と巻き込まれ型サスペンス小説のジャンルミックスミステリーです。プロットはかなり粗くてご都合主義的な展開が目立つし、一応犯人の正体は最後まで伏せられているとはいえウェイガンド警部の推理はしっかりした謎解きを期待する読者には物足りないレベルですが、巧みなストーリーテリングとテンポのよさでぐいぐい読ませます。それでも現代推理小説全集版の半世紀以上前の古い翻訳はさすがに読んでて違和感を覚える時があります。「南京町」とはチャイナタウンのことでしょうか?


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