海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2921件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.421 5点 学長の死- マイケル・イネス 2014/08/15 11:45
(ネタバレなしです) 英国のマイケル・イネス(1906-1994)はオーストラリア、米国、英国で大学教授または準教授を歴任し、シェークスピアなどの文学作品研究者としても活躍したするなどこれぞ知識人というキャリアの持ち主です。ミステリーを書いたのも教授ならば著作の一つもなくてはと考えたのがきっかけだそうで、アプルビイ警部シリーズを中心に40作以上のミステリーを書きました(ちなみに本書の世界推理小説全集版では警視と表記されていますが多分間違いです)。その特色はファルス派と称される破天荒なプロットとユーモア、そして高尚な文学知識が散りばめられた独特なスタイルだそうです。1937年発表のアプルビイシリーズ第1作の本書はデビュー作のためか手堅過ぎるぐらいの文章で書かれており、ちょっと退屈でした(文学知識の方は危惧したほど乱用されていませんが)。第10章なんか後年の作者ならもっとユーモアを混じえて盛り上げたでしょう。登場人物も誰が誰だか整理が大変です。しかしながら第17章の「誤解の連鎖反応」が紐解かれる謎解きはなかなか劇的で読み応えがありました。

No.420 6点 チャーリー退場- アレックス・アトキンスン 2014/08/15 10:20
(ネタバレなしです) 演劇界との関係が深く舞台俳優や劇作家としてのキャリアをもつ英国のアレックス・アトキンスン(1916-1962)の1955年に発表した唯一のミステリー作品で本格派推理小説です。劇場を舞台にしておりその描写力はさすがと思わせますが大勢の登場人物の整理に苦心しているようなところもあり、同じ劇場ミステリーでもヘレン・マクロイの傑作「家蠅とカナリア」(1942年)と比べると少し雑然としているように思います。しかし劇が進行する中で迎えるクライマックスシーンはなかななかの迫力で、細かい場面切り替えが効果をあげています。謎解き伏線もしっかり張ってあります。

No.419 5点 月蝕の窓- 篠田真由美 2014/08/15 09:52
(ネタバレなしです) 2001年発表の桜井京介シリーズ第8作の本書は講談社文庫版の作者あとがきでも紹介されていますが桜井京介の視点で描かれる場面が多く、もともと社交的な性格でないシリーズ主人公の上に自閉気味になって悩んでばかりなので物語が何度も停滞します。さらにサイコ・サスペンス色を濃くして歪んだ感情描写を多々取り込んでいるのですから読んでて気が滅入ること!これはこれで高く評価する読書も多いでしょうが個人的には肌が合いませんでした。爽やかな読後感を残した「未明の家」(1994年)がとても懐かしくなりました。

No.418 5点 首切り坂- 相原大輔 2014/08/15 09:25
(ネタバレなしです) 相原大輔(1975年生まれ)が2003年に発表したデビュー作で明治44年を時代背景にした本格派推理小説です。最後に明かされるトリック(若竹七海は「お茶目なトリック」と評価しています)はなかなか意表を突いたものですがプロットとの関連がなく、典型的な「トリックのためのトリック」になっています。動機が完全に後出し的説明になっているところも弱点と指摘されるかもしれません。おどろおどろしいタイトルながら直接的な描写がほとんどなく、すっきりした文体でむしろ洗練さを感じさせます。この題材なら島田荘司や二階堂黎人なら怖さや不気味さをもっと強調できたでしょうけどこれは好みの問題で、私は本書程度が読みやすくて丁度よかったです。

No.417 6点 鐘楼の蝙蝠- E・C・R・ロラック 2014/08/14 18:35
(ネタバレなしです) 1937年発表のマクドナルド警部シリーズ第12作の本格派推理小説です。相次ぐ失踪事件、ついに死体が発見されたと思えば首なし死体と雲をつかむような状況が続きます。マクドナルドの捜査も少しずつ進展はしているのですが、一方で頭のいい犯人に巧妙にミスリードされているのではという不安がつきまといます。退屈ぎりぎりで踏みとどまったのは後半の展開が変化に富んでいることと(演出は抑制を効かせ過ぎという気もしますが)、最終的に5つの仮説を組み立てて犯人に迫るマクドナルドの丁寧な謎解きがあってのものです。

No.416 5点 指に傷のある女- ルース・レンデル 2014/08/14 18:23
(ネタバレなしです) 1975年発表のウェクスフォードシリーズ第9作で、シリーズ作品としては異色のプロットになっています。犯人の正体は意外と早い段階で見当がついており、決定的な証拠をウェクスフォードたちが捜す展開となっています。最後に驚きの仕掛けを用意してあるのは見事ですが、本格派推理小説として評価するとこれは微妙かもしれません。あらかじめ謎として提示されていたわけではないのですから、巧くだまされたという快感にはつながりませんでした。

No.415 5点 ゴールド2 死線- ハーバート・レズニコウ 2014/08/14 17:37
(ネタバレなしです) 1984年発表のゴールド夫妻シリーズ第2作の本格派推理小説です。探偵役のアレックス・ゴールドの毒舌がシリーズ前作の「ゴールド1 密室」(1983年)に比べてかなり抑えられているのはいいのですが、その分語り手役(妻のノーマ・ゴールド)がより攻撃的になってしまったような...(笑)。ゴールド夫妻以外の登場人物は個性を感じられないし、謎解きは結構緻密なんですけど細かすぎて却って印象に残りにくくなってしまいました。

No.414 5点 余波- ピーター・ロビンスン 2014/08/14 17:17
(ネタバレなしです) 2001年発表のアラン・バンクスシリーズ第12作となる警察小説です。私の読んだ講談社文庫版では「英国叙情派ミステリーの傑作」と宣伝されていますが本書の内容をちゃんと読んだのでしょうか?「水曜日の子供」(1992年)では異常性格の犯人を登場させていてもまだ穏健な作風を感じさせていましたが本書あたりになるとグロテスクな場面が赤裸々に描写されているし、特に前半部では喜怒哀楽の「怒」ばかりが突出していてぴりぴりした雰囲気が漂っています。初期作品が持っていた叙情的作風は影もかけらもありません。これはこれで非常によくできた作品で、上下巻合わせて800ページを越すボリュームも苦になりませんでしたがやはり私は初期作品の「叙情性」が懐かしいです。

No.413 5点 六つの奇妙なもの- クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ 2014/08/14 17:02
(ネタバレなしです) スペイン内乱に義勇軍として参加して戦場に散ってしまった英国人作家クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ(1907-1937)の遺作となった1937年出版の本格派推理小説です。不可能犯罪を得意としていたらしいのですが同世代作家のジョン・ディクスン・カーとは作風が異なるタイプのようです。本書でも不可能犯罪を扱っていますがトリックはさほど感心できず、ちゃんと捜査していたらすぐに見破られていたのではと感じました。またタイトルにも使われている「奇妙なもの」もカー(カーター・ディクスン名義)の「五つの箱の死」(1938年)の謎めいた数々の品物と比べるとインパクトは弱いです。とはいえヒロイン役に迫り来る危機また危機や犯人の凶悪性の描写などはサスペンスに満ち溢れており、不可能犯罪の謎解きに過度に期待しなければ十分楽しめる内容です。カーよりもルーファス・キングの「不変の神の事件」(1936年)の方が近い雰囲気の作品だと思います。

No.412 6点 予期せぬ夜- エリザベス・デイリー 2014/08/14 16:39
(ネタバレなしです) エリザベス・デイリー(1878-1962)はヘンリー・ガーメッジ(ハヤカワポケットブック版ではガーマジ)を探偵役にした本格派推理小説を16冊書いた米国の女性作家です。1940年に本書でデビューした時には既に還暦を過ぎていたという、英国のエリザベス・ルマーチャンドに匹敵する遅咲きです。年下ながら作家としては先輩格のアガサ・クリスティーから「お気に入りの米国作家」と評されていますが、本書の雰囲気はまるで英国の本格派推理小説風で私にとっても好みでした。コナン・ドイルの某作品をちょっと連想させるところがありますがどんでん返しで意外性の演出に成功しています。プロットが後半は事件の乱発で錯綜気味になってしまうのと、ある殺人事件の動機がちょっと納得しづらいのが気になりますがまずまず楽しめる謎解きでした。

No.411 6点 悔恨の日- コリン・デクスター 2014/08/14 16:16
(ネタバレなしです) 当初は前作の「死はわが隣人」(1996年)をモース主任警部シリーズ最終作とする予定だったのが読者からの抗議が殺到して書き上げられたのが1999年発表のシリ-ズ第13作の本書で、今度こそシリーズ最終作です(未発表の隠し玉作品が出てこない限り)。そういう経緯で書かれるとおまけレベル、下手をすると蛇足的な作品になってしまうのですが本書はいい意味で裏切ってくれました。これは最終作にふさわしいし、内容的にも前作より優れていると思います。シリーズ中かなりの大作となりましたが謎解きプロットはしっかりしていますし、最終作としての演出もばっちり極まっています。作中で「ウッドストック行最終バス」(1975年)のネタバレがあるので最低でもそちらは先に読了しておくことを勧めます。それからハヤカワ文庫版はシリーズ全作を同じ訳者(大庭忠男)で統一していますが、本書の翻訳時には訳者は八十歳を超えていたとか。高齢に加えて緑内障と戦いながらの達成には本当に頭が下がります。これこそプロの仕事ですね。

No.410 4点 ネロ・ウルフ最後の事件- レックス・スタウト 2014/08/14 15:42
(ネタバレなしです) スタウト(1886-1975)の最後の作品となった1975年発表のネロ・ウルフシリーズ第33作の本格派推理小説です(英語原題は「A Family Affair」です)。作者が最後の作品のつもりで書いたのかはわかりませんが内容的にはシリーズ締め括りにふさわしい趣向が用意されています。但しこの趣向はある程度シリーズ作品を読んでいないとわかりにくいので、できればシリーズ作品を沢山読んでいることを勧めます。謎解きとしては読者に対してアンフェアなのが残念です(例えばソール・パンザーがある手掛かりを説明していますが、あれは普通の読者には手掛かりとして認知できないと思います)。とはいえシリーズファン読者なら読み落とすわけにはいかないでしょうね。

No.409 6点 マローン御難- クレイグ・ライス 2014/08/14 15:10
(ネタバレなしです) 非シリーズ作品の「居合わせた女」(1949年)以降長らく長編作品を発表しなかったライスは1957年になって「わが王国は霊柩車」と本書のマローンシリーズ作品を立て続けに発表しましたが、それが蝋燭が消える直前の輝きだったのかのように同年亡くなってしまいました。シリーズ第11作の本書はシリーズ作品中ではややおとなしく、事務所で死体に出くわしたマローンが次々に危機的状況にはまるのですが淡々と物語が進みます。もっとマローンがあたふたしていればより面白かったのではと思います。それでも後半になるとスピード感が増してどたばたぶりは派手になります。謎解き伏線も丁寧に張ってあって、最晩年の作品だからといって衰えは感じさせません。

No.408 6点 時計は十三を打つ- ハーバート・ブリーン 2014/08/14 14:05
(ネタバレなしです) 1952年発表のレイノルド・フレームシリーズ第4作(そしてシリーズ最終作)は細菌研究所のある孤島を舞台にし、細菌の恐怖と戦いながらの捜査という異色の本格派推理小説です。まあ描写はあっさりしているのでそれほど恐怖感は感じませんが(過激な描写が苦手な私でも問題なし)。冒険スリラー色の強いプロットなのでハヤカワポケットブック版の翻訳の古さもそれほど読みにくさを感じさせず、すらすらと読めました。評論家のアントニー・バウチャーが「推理があてずっぽう」と批判したそうですが確かに緻密な推理とは言えないでしょうけど目くじらをたてるほどひどいとも思えず、結構楽しめる謎解きでした。ただ魅力的なタイトルがストーリーの中でほとんど活かされていないのはちょっと拍子抜けでしたが。

No.407 5点 ロープとリングの事件- レオ・ブルース 2014/08/14 12:24
(ネタバレなしです) 1940年発表のビーフ巡査部長シリーズ第5作です。この作品はアイデアの秀抜さと作品の完成度をどう評価するかで読者の好き嫌いが大きく分かれそうですね。謎解きの論理性や読者に対するフェアプレーという点では遺漏があり、おまけに信じ難いほどの警察のチョンボ(国書刊行会版の巻末解説でも触れています)もあって本格派推理小説としてのプロット完成度は低く、ここを重視する読者の評価は厳しいものになるでしょう。一方で非常に珍しい仕掛けが用意してあり、この独創性(私は他の例を知りませんです)を高く評価する読者もいるでしょう。せっかくのアイデアも処理の仕方が雑なので損をしていますが。

No.406 6点 タナスグ湖の怪物- グラディス・ミッチェル 2014/08/14 11:48
(ネタバレなしです) 1974年発表のミセス・ブラッドリー(本書ではディム・ベアトリスと表記)シリーズ第48作です。有名なネス湖のネッシー伝説を意識した作品で怪獣探しの面白さもありますが、メインプロットはあくまても犯人当て本格派推理小説です。動機、機会、犯行手段の謎解きをバランスよく捜査していますがこの内容ならタナスグ湖の地図は付けてほしかったですね。後期の作品ゆえかミセス・ブラッドリーの強烈な個性があまり表に出ず(しかも前半はほとんど登場しない)、普通のキャラクターにしか感じられません。プロットもそれほどひねったものでなく、これまで私の読んだシリーズ作品では読みやすい部類です。ただ結末のインパクトはかなりのものです。

No.405 6点 殺人鬼登場- ナイオ・マーシュ 2014/08/14 11:20
(ネタバレなしです) 1935年発表のアレンシリーズ第2作で、演劇の世界を背景にしているところは演劇プロデューサーとしても名高いこの作者ならではです。「安全なはずの小道具が凶器にすり替わっていた」事件を扱った本格派推理小説です。登場人物の心理描写が前作の「アレン警部登場」(1934年)から格段に進歩しており、アリバイと動機調査というオーソドックスかつ地味なプロットながら、だれることなく物語が進行します。最後はまさに「劇的な」犯人指摘場面が用意されています。ところで本筋とは関係ないのですが、「アレン警部登場」の犯人名を作中でばらしてしまっているのが非常に残念でした。

No.404 3点 退職刑事4- 都筑道夫 2014/08/13 20:00
(ネタバレなしです) 1986年出版の退職刑事シリーズ第4短編集ですが徳間文庫版では「退職刑事健在なり」というタイトルで、続く第5短編集(1990年)が「退職刑事4」というタイトルで出版されました。これが創元推理文庫版だと第4短編集が「退職刑事4」、第5短編集が「退職刑事5」で、とてもややこしいことになっています。後発出版の創元推理文庫版の方がタイトルに配慮すべきでしたね。とにかくここでは第4短編集の感想を書きますがマンネリ打破を目指したのか新趣向に取り組んでいます。メッセージの謎解きを扱っているのが特徴です。ミステリーのメッセージの謎解きというと何と言ってもダイイング・メッセージが頭に浮かびますが、本書のメッセージは犯罪予告だったり、本への書き込みだったり、容疑者からの挑戦だったり、未完の小説だったりと実に多彩です。なぜ雨の日に花火を買いに行くかの謎解きかと思えた「線香花火」さえもメッセージの謎解きになっています。作者の挑戦意欲を誉めてあげたいところですが、残念ながら趣向倒れにしか感じられません。そもそも謎の魅力が弱いし、推理というか解釈というか説明が論理的でないので説得力という点でも弱いです。

No.403 4点 トレント最後の事件- E・C・ベントリー 2014/08/13 19:10
(ネタバレなしです) 英国のジャーナリストであるE・C・ベントリー(1875-1956)が発表した本書は歴史的傑作として評価の高い作品なのですが、kanamoriさんのご指摘の通り、普通のミステリーにしか感じられず何が凄いのか私にはさっぱりわかりませんでした。多分発表された1913年では相当モダンな作品だったのでしょう(1900年代から1910年代にかけてのミステリーの中では洗練された文体だと思います)。当時としては型破りであろう結末、そしてシャーロック・ホームズやそのフォロワーである古典的名探偵とは違う探偵役を登場させたというのが画期的だったんでしょうね。でも現代の読者が発表時代順にミステリーを読むわけではないし、むしろ現代ミステリーから手をつけるのが普通でしょうから、歴史的価値は認められても現代水準で評価すると平凡な作品という位置づけに留まってしまうかもしれません。

No.402 5点 幽霊屋敷の謎- キャロリン・キーン 2014/08/13 18:39
(ネタバレなしです) 1930年発表のナンシー・ドルーシリーズ第2作で、前作「古時計の秘密」(1930年)と同じくエドワード・ストラッテメイヤー創案、ミルドレッド・A・ワード・ベンソン執筆、ハリエット・ストラッテメイヤー・アダムズ校訂という体制で完成されました。幽霊屋敷という、いかにも子供向けミステリーの定番の一つである謎を扱っています。「古時計の秘密」と違ってナンシーが謎解きに結構苦戦しており、そこに重苦しいサスペンスを生み出すことに成功しています。成功といっても子供向けミステリーとしてそれでいいのかというと微妙かも。とんとん拍子に解決に向かっていた「古時計の秘密」の方が子供読者には好まれるかもしれません。

キーワードから探す
nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2921件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(84)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(43)
F・W・クロフツ(33)
レックス・スタウト(28)
A・A・フェア(28)
ローラ・チャイルズ(26)
カーター・ディクスン(24)
横溝正史(23)