皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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nukkamさん |
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| 平均点: 5.44点 | 書評数: 2921件 |
| No.521 | 5点 | アキテーヌ城の殺人- ナンシー・リヴィングストン | 2014/09/09 13:47 |
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| (ネタバレなしです) ナンシー・リヴィングストン(1935-1994)は女優やステュワーデス、TV番組制作会社勤務といった多彩な経歴を持っている英国の推理小説家で、趣味である高級絵画を買うために探偵をしているという名探偵ミスター・プリングルの登場する本格派推理小説のシリーズを書いていますが、デビューが遅かったためか作品数は多くないとのことです。1985年発表の本書がそのデビュー作ですが、殺人が起きるのも名探偵役のプリングルが登場するのも物語が3分の1ぐらい進んでからです。そこに至るまでは変な人物が次々に登場してはどこかピントがずれているような言動を繰り返してばかりでとても読みづらかったです。中盤以降はようやくまともに謎解き小説らしくなりますが、結末があれでよかったのかと考えさせるような内容で、好き嫌いが分かれそうな作品です。 | |||
| No.520 | 6点 | 雪と罪の季節- パトリシア・モイーズ | 2014/09/09 12:58 |
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| (ネタバレなしです) 1971年発表のティベットシリーズ第10作の本格派推理小説で、秋のスイスと冬のスイスが描かれていており、スイス料理のラクレット描写が実に美味しそうです。解決はやや駆け足気味ですが、3人の女性が交代で語り手役を務めているのがプロットの工夫になっており、ちょっと変わった趣向のタイムリミット・サスペンスが実にいい効果を演出しています。 | |||
| No.519 | 5点 | サクソンの司教冠- ピーター・トレメイン | 2014/09/09 12:10 |
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| (ネタバレなしです) 1995年発表の修道女フィデルマシリーズ第2作です。巻末の訳注を読むと、被害者のウィガードが実在の人物だったことに驚きます(史実では病死のようです)。前半は地道な捜査場面に終始していてあまり面白くなく、時代性もローマという舞台もそれほど活かされていないように感じました。後半はようやく物語のテンポが上がり、ある人物の意外な素性(犯人の正体のことではない)には驚きました。ところで若竹七海による創元推理文庫版の巻末解説はどうも本書を素直にほめていない印象を受けるのですが、よくこの内容で出版社が掲載にOK出しましたね。「くどすぎたり長すぎたりする」という指摘には個人的には賛同しますけど(笑)。 | |||
| No.518 | 5点 | 視聴率の殺人- ウィリアム・L・デアンドリア | 2014/09/09 12:02 |
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| (ネタバレなしです) 米国のウィリアム・L・デアンドリア(1952-1996)はエラリー・クイーンにあこがれてミステリー作家となった人物で、夫人のオレイニア・パパゾグロウ(ジェーン・ハッダム)もミステリー作家です。本書は1978年発表のデビュー作ですが、軽いハードボイルド風な味付けがしてあってクイーンよりもネロ・ウルフを連想しました。軽快で読みやすい文章で書かれていますがめりはりに乏しく、深刻な場面でもあっさり流れてしまうきらいがあります。また主人公のマットのキャラクターは気さくでスマートな面を見せながらも、ある作中人物から指摘されたように「つくりものの丁寧な態度が見え透いている」ところがあるので読者の共感を集めれるか微妙かもしれません。専門的知識が必要なトリックが使われていますがトリックのみに頼った作品ではなく、プロットは意外と複雑です。 | |||
| No.517 | 5点 | ミントの香りは危険がいっぱい- ローラ・チャイルズ | 2014/09/09 11:30 |
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| (ネタバレなしです) 2011年発表のシリーズ第11作の本書は500ページ近くあってこのシリーズとしては大作の部類ですが、他のシリーズ作品と比べても別に読みにくさを感じさせないスムーズな語り口には感心します。謎解きとしては前作の「ウーロンと仮面舞踏会の夜」(2009年)と同じく、そこそこ意外性を意識した結末が待っているのですが謎解き伏線が十分でないので、これならいくらだって意外な結末を用意できるだろうと不満が増えてしまうような気もします(もちろん平凡な結末に終わるよりはいいのですけど)。 | |||
| No.516 | 5点 | ロンドン橋が落ちる- ジョン・ディクスン・カー | 2014/09/09 11:16 |
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| (ネタバレなしです) 1962年発表の本書は作中時代を1757年に設定した歴史本格派推理小説ですが、冒険小説の要素も強いことやニューゲイト監獄が登場するところなどが「ニューゲイトの花嫁」(1950年)を連想させます(作中時代が異なるので登場人物はダブリません)。冒頭場面が既に冒険の途中みたいになっており、後になってからどういう経緯になっていたかが説明される展開なのでわかりにくく、そのためかジェフリーとペッグの心理葛藤もどちらに肩入れすればいいのか悩みます。ブルース・アレグザンダーのミステリーで主役を務めているジョン・フィールディング判事が本書で登場しており、どう扱われているのかが注目です(書かれたのは本書の方が先です)。謎解きはトリックが冴えないのが残念です。近代を舞台にした「引き潮の魔女」(1961年)に比べるとさすがに歴史ミステリーならではの雰囲気がよく描けています。昔はロンドン橋の上に住居があったなんてのは新鮮な情報でした。 | |||
| No.515 | 6点 | 殺人の朝- コリン・ロバートスン | 2014/09/08 19:06 |
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| (ネタバレなしです) 英国のコリン・ロバートスン(1906-1980)はマイケル・イネス、ニコラス・ブレイク、クリスチアナ・ブランドといった英国本格派推理小説界の実力者たちと同世代の作家ですが、本格派からハードボイルド、スパイ・スリラーと何でも屋的に書きまくったことや通俗的な文体が災いしたか50冊を超す多作家ながら20世紀に日本へ翻訳された作品は1957年発表のブラッドリー警視シリーズ第1作の本書のみでした。確かに文体は通俗的で人物描写に深みもありませんがクライム・クラブ版の古い翻訳が全くハンデにならないほど読みやすいです。何よりも第一部は犯罪小説、第二部は倒叙推理小説、そして第三部は犯人当て本格派推理小説とこだわりの三部構成の妙が光る作品です。これで犯人を示す手掛かりをもう少し読者に対してフェアに提示できていればかなりの傑作になったと思いますが一読して損はしない作品だと思います。 | |||
| No.514 | 5点 | 三回殺して、さようなら- パスカル・レネ | 2014/09/08 18:57 |
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| (ネテバレなしです) フランスのパスカル・レネ(1942年生まれ)はいくつかの文学賞を受賞するほど純文学畑で有名な作家ですが1985年からミステリーを書くようになって世間を驚かせました。シリーズ主人公のロベール・レスター主任警部はアガサ・クリスティーの名探偵ミス・マープルの甥という設定で(残念ながらミス・マープルは故人扱いです)、さらに1985年発表のシリーズ第2作である本書では某クリスティー作品(ポワロシリーズです)の登場人物が主役級の役割を与えられています。とはいえ創元推理文庫版の巻末解説でも言及されているように「クリスティーのフランス版」を期待すると裏切られる内容で、皮肉や後味の悪さを感じさせる真相が用意されています。別にクリスティーを模倣したスタイルでなければ駄目とはいいませんが、本書を読む限りではわざわざクリスティー作品と関連させる必要性もあまりないように感じました。 | |||
| No.513 | 4点 | 封印の島- ピーター・ディキンスン | 2014/09/08 15:38 |
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| (ネタバレなしです) 1970年発表のピブルシリーズ第3作ですが、これまでとがらりと趣向を変えて冒険スリラーになっているのに驚かされます。いや、変幻自在の作者ということをよく知っている読者なら不思議でも何でもないのかもしれませんが、いずれにしろ推理の要素は皆無に近い作品です。なぜフランシス卿がピブルを呼んだかの説明が不十分なまま話がどんどん進むのが読んでて辛かったです。後半からは冒険小説らしく起伏に富む展開となりますが、ピブルも決して頼もしい主人公ではないところに彼の周囲にはさらに心もとない人間ばかりが集まってしまい、どうやって危機を脱するのかで読者の興味を引っ張ります。サスペンスの中にもどこかとぼけたような味わいがあり、骨折り損のくたびれもうけに終わったようなピブルもそれほど悲壮感はありません。 | |||
| No.512 | 5点 | 美の秘密- ジョセフィン・テイ | 2014/09/08 15:30 |
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| (ネテバレなしです) 1950年発表のグラント警部シリーズ第4作の本格派推理小説です。「フランチャイズ事件」(1948年)では完全な脇役、しかもまるでいいとこなしだったグラント警部、主役返り咲きおめでとうでしょうか(笑)。ハヤカワポケットブック版は半世紀以上前の骨董品級の翻訳で読みにくく(誤訳があると紹介している文献あり)、また登場人物リストに載っていない重要人物も多くて頭の整理が大変です。それでも人間味あふれるグラントの捜査描写は読み応えがあり、ぜひ新訳で再版してほしいです。使われているトリックの実現性には疑問符がつきますが、それでも「フランチャイズ事件」の(悪い意味で)驚嘆のトリックに比べればまだまともに感じられました。 | |||
| No.511 | 5点 | おしゃべり雀の殺人- ダーウィン・L・ティーレット | 2014/09/08 15:02 |
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| (ネタバレなしです) ダーウィン・L・ティーレット(1904-1964)は生粋の米国人ながらドイツ人女性と結婚してドイツに在住しました。第二次世界大戦前は不可能犯罪の本格派推理小説を、戦後はスパイ・スリラー小説を書いたそうです。本書は1934年の作品なので本格派推理小説かと思ったら微妙な作品でした。しゃべる雀の謎解きや犯人当て推理もありますが、一方で巻き込まれ型スパイ・スリラー的な展開もあるジャンルミックス型になっています。誰が敵か味方かわからなくするために必要以上に人物の個性を殺してしまったようなところがあって、テンポの速い物語にもかかわらず意外と読みにくかったです。とはいえナチスが勢力拡大してユダヤ人や共産主義者への迫害が日常茶飯事となっているドイツが描かれていて、(物語としてはフィクションながら)時代の証言的なところは価値があります。 | |||
| No.510 | 6点 | パディントン・フェアへようこそ- デレック・スミス | 2014/09/08 11:21 |
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| (ネタバレなしです) アマチュア作家デレック・スミスの「悪魔を呼び起こせ」(1953年)は知る人ぞ知る幻の本格派推理小説的な存在でしたが、それから40年以上経った1997年に発表した本書は更にレア度アップ(笑)。何と本書は日本でのみ限定出版されたのです。これでは本国(英国)でもほとんど認知されなかったでしょうし、オリジナルは当然英語版なので日本の読者でも相当のマニアしか入手していないのではないでしょうか。よくこれが日本語版で出版されましたね。劇場を舞台にした本格派推理小説で、ジョン・ディクスン・カーに献呈されていますが、「悪魔を呼び起こせ」のようなオカルト演出はなく不可能犯罪でもありません。別々の銃による狙撃という、カーター・ディクスンの「第三の銃弾」(1937年)を連想させる事件がちょっと珍しいですが派手な要素はまるでなく、複雑な人間関係の整理と地道なアリバイ調査が中心のプロットです。重箱の隅をつつくような捜査場面がじれったくなる時もありますが、丁寧な真相説明は本格派推理小説を読んだという手応え十分です。 | |||
| No.509 | 6点 | 地底獣国の殺人- 芦辺拓 | 2014/09/05 10:42 |
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| (ネタバレなしです) 1997年発表の森江春策シリーズ第4作です。プロローグの中で作者はわざわざ「本作品はあくまで本格推理小説であります」と注釈しておりそれはその通りなのですが、秘境冒険小説と国際陰謀小説の雰囲気が濃厚なプロットに圧倒され、謎解きにはほとんど集中できませんでした。それだけ冒険小説としてもよくできているとも言えるのですが、秘境や古典的SFのくどいほどの描写は好き嫌いが分かれるかもしれません。 | |||
| No.508 | 5点 | 逃げ出した死体- ノエル・ヴァンドリ | 2014/09/03 18:27 |
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| (ネタバレなしです) フランスでは1930年代に本格派推理小説の黄金時代を迎えていたそうですが、アルー予審判事シリーズで知られるノエル・ヴァンドリ(1896-1954)はその代表的作家の1人です。第二次世界大戦後のフランスはサスペンス小説やノワール小説の時代に突入しますがヴァンドリは(非ミステリー作品も書いたが)本格派を書き続けたようです。本書は1932年発表のアルー判事シリーズ第3作です。行方不明の被害者と2人の自称犯人(1人はこれまた行方不明)という謎がユニークで面白いですが、動機をひた隠す自称犯人への警察の追及が甘すぎるなど不自然さが気になるプロットです。なおROM叢書版では巻末解説で1930年代に集中して発表されたアルー判事シリーズ全12作の粗筋が紹介されています。 | |||
| No.507 | 5点 | ウィーンの殺人- E・C・R・ロラック | 2014/09/03 17:34 |
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| (ネタバレなしです) ロラック晩年の1956年に発表されたマクドナルドシリーズ第42作の本格派推理小説で、題名どおりオーストリアのウィーンを舞台にしています。第14章でマクドナルド警視自身が述べているように「てんでばらばらの話を結び合わせる」展開なのですがその結び方が非常に弱く感じられてしまい、話に付いていくのが大変困難でした。一応謎解きの伏線も張ってはあるのですが、肝心の殺人事件についてはこれだけで犯人を決定するのは無理があると思われます。マクドナルドが休暇中だということをなかなか信じてもらえなかったり、容疑者の中に非常に個性的な人物を配したりと部分的には面白いところもあるのですが、プロットが複雑過ぎで読みにくいです。 | |||
| No.506 | 7点 | 検死審問 インクエスト- パーシヴァル・ワイルド | 2014/09/03 17:20 |
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| (ネタバレなしです) 1939年発表の本書は長編ミステリー第2作の本格派推理小説で法廷ミステリーでもあります。質疑応答場面は意外と少なく供述書や日記、被害者のメッセージ、スローカムたち陪審メンバー間の会話(とてもユーモア豊か)など手を変え品を変えのストーリーテリングが秀逸で一本調子になりません。途中(第三回公判期日)で推理小説批判をしているのも面白いです。後半は複雑な人間関係が明らかになってややごちゃごちゃしますが最後はしっかりと張られた謎解き伏線に基づく緻密な推理で真相が明らかになり、本格派好き読者を納得させてくれます。 | |||
| No.505 | 7点 | 棺のない死体- クレイトン・ロースン | 2014/09/03 17:09 |
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| (ネタバレなしです) 1942年発表のマーリニシリーズ第4作でロースン最後の長編ミステリーです。過去の作品では地味な脇役に甘んじていたロス・ハートが本書では大活躍します(活躍といってもお騒がせ男的な役回りです)。ロースンらしく本書でも色々なトリックが使われていますが、私がびっくりしたのは幽霊写真です。私は写真技術のことなど何も知りませんが、身体の向こうが透けて見える幽霊の写真がこの時代に果たしてどうやって出来たのか結構どきどきしました。確実性には難ありですが、仮に失敗してもねらわれたことを気づかれない殺人方法も印象的です。ちょっとペテンに近い引っ掛けもありますが、どんでん返しの連続に圧倒される本格派推理小説です。 | |||
| No.504 | 6点 | 帽子屋の休暇- ピーター・ラヴゼイ | 2014/09/03 16:22 |
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| (ネタバレなしです) 1973年発表のクリッブ部長刑事&サッカレイ巡査シリーズ第4作です(作中時代は1882年夏)。第一部はある種の犯罪の萌芽らしきものも描かれてはいますが、ミステリーとしてのサスペンスに乏しく冗長に感じます(後でサッカレイも「害がないかどうか何とも言えません」と述べています)。しかし第2部になってクリッブとサッカレイが登場してからは快調で面白くなります。第14章で犯人が判明しますがまだそれで終わりではなく、新たな謎が発生します。その謎解きについてはやや駆け足気味だし、専門的トリックが絡みますがそれを不満に感じさせないほど印象的な結末が待っています。現在でも有名な観光地ブライトンの描写も秀逸です(できれば現地図を添付してほしかったけど | |||
| No.503 | 5点 | 悪魔とベン・フランクリン- シオドー・マシスン | 2014/09/03 16:06 |
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| (ネタバレなしです) 1961年発表の長編歴史本格派推理小説で、1734年のフィラデルフィアを舞台にして政治家、科学者として後世に名を残すことになるベンジャミン・フランクリン(1706-1790)を主人公にしています。本格派の謎解きとしては推理があまり論理的でなく、思いついた仮説が結果的に当たったに過ぎないようにしか感じませんが終盤での容疑者を絞り込んでいく過程はジル・マゴーンの某作品を連想させて印象的です。オカルト要素やタイムリミット要素を織り込み、起伏に富んだ物語はサスペンスたっぷりです。 | |||
| No.502 | 4点 | オオブタクサの呪い- シャーロット・マクラウド | 2014/09/03 15:55 |
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| (ネタバレなしです) 1985年発表のシャンディ教授シリーズ第5作の本書は冒険スリラーと本格派推理小説のジャンルミックス型でシリーズ最大の異色作。何しろシャンディたちが中世へタイムスリップするのですから。本書の中世は魔女や怪物グリフィンが登場する設定なので本格派推理小説ファンの受けは微妙なところかもしれません。この作者はスリリングなアクションを上手く描いた作品もあるので決して冒険スリラーと相性が悪いとは思いませんが、本書に関してはシャンディたちの態度があまりに冷静過ぎて前半の冒険小説パートにどきどきわくわくできませんでした。後半になってようやくミステリーらしくなるのですがページ数が残り少なくなっていてシンプル過ぎる謎解きになってしまい、この私にでさえ犯人はこの人しかありえないというのがみえみえでした。 | |||