皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2814件 |
No.414 | 5点 | 余波- ピーター・ロビンスン | 2014/08/14 17:17 |
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(ネタバレなしです) 2001年発表のアラン・バンクスシリーズ第12作となる警察小説です。私の読んだ講談社文庫版では「英国叙情派ミステリーの傑作」と宣伝されていますが本書の内容をちゃんと読んだのでしょうか?「水曜日の子供」(1992年)では異常性格の犯人を登場させていてもまだ穏健な作風を感じさせていましたが本書あたりになるとグロテスクな場面が赤裸々に描写されているし、特に前半部では喜怒哀楽の「怒」ばかりが突出していてぴりぴりした雰囲気が漂っています。初期作品が持っていた叙情的作風は影もかけらもありません。これはこれで非常によくできた作品で、上下巻合わせて800ページを越すボリュームも苦になりませんでしたがやはり私は初期作品の「叙情性」が懐かしいです。 |
No.413 | 5点 | 六つの奇妙なもの- クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ | 2014/08/14 17:02 |
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(ネタバレなしです) スペイン内乱に義勇軍として参加して戦場に散ってしまった英国人作家クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ(1907-1937)の遺作となった1937年出版の本格派推理小説です。不可能犯罪を得意としていたらしいのですが同世代作家のジョン・ディクスン・カーとは作風が異なるタイプのようです。本書でも不可能犯罪を扱っていますがトリックはさほど感心できず、ちゃんと捜査していたらすぐに見破られていたのではと感じました。またタイトルにも使われている「奇妙なもの」もカー(カーター・ディクスン名義)の「五つの箱の死」(1938年)の謎めいた数々の品物と比べるとインパクトは弱いです。とはいえヒロイン役に迫り来る危機また危機や犯人の凶悪性の描写などはサスペンスに満ち溢れており、不可能犯罪の謎解きに過度に期待しなければ十分楽しめる内容です。カーよりもルーファス・キングの「不変の神の事件」(1936年)の方が近い雰囲気の作品だと思います。 |
No.412 | 6点 | 予期せぬ夜- エリザベス・デイリー | 2014/08/14 16:39 |
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(ネタバレなしです) エリザベス・デイリー(1878-1962)はヘンリー・ガーメッジ(ハヤカワポケットブック版ではガーマジ)を探偵役にした本格派推理小説を16冊書いた米国の女性作家です。1940年に本書でデビューした時には既に還暦を過ぎていたという、英国のエリザベス・ルマーチャンドに匹敵する遅咲きです。年下ながら作家としては先輩格のアガサ・クリスティーから「お気に入りの米国作家」と評されていますが、本書の雰囲気はまるで英国の本格派推理小説風で私にとっても好みでした。コナン・ドイルの某作品をちょっと連想させるところがありますがどんでん返しで意外性の演出に成功しています。プロットが後半は事件の乱発で錯綜気味になってしまうのと、ある殺人事件の動機がちょっと納得しづらいのが気になりますがまずまず楽しめる謎解きでした。 |
No.411 | 6点 | 悔恨の日- コリン・デクスター | 2014/08/14 16:16 |
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(ネタバレなしです) 当初は前作の「死はわが隣人」(1996年)をモース主任警部シリーズ最終作とする予定だったのが読者からの抗議が殺到して書き上げられたのが1999年発表のシリ-ズ第13作の本書で、今度こそシリーズ最終作です(未発表の隠し玉作品が出てこない限り)。そういう経緯で書かれるとおまけレベル、下手をすると蛇足的な作品になってしまうのですが本書はいい意味で裏切ってくれました。これは最終作にふさわしいし、内容的にも前作より優れていると思います。シリーズ中かなりの大作となりましたが謎解きプロットはしっかりしていますし、最終作としての演出もばっちり極まっています。作中で「ウッドストック行最終バス」(1975年)のネタバレがあるので最低でもそちらは先に読了しておくことを勧めます。それからハヤカワ文庫版はシリーズ全作を同じ訳者(大庭忠男)で統一していますが、本書の翻訳時には訳者は八十歳を超えていたとか。高齢に加えて緑内障と戦いながらの達成には本当に頭が下がります。これこそプロの仕事ですね。 |
No.410 | 4点 | ネロ・ウルフ最後の事件- レックス・スタウト | 2014/08/14 15:42 |
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(ネタバレなしです) スタウト(1886-1975)の最後の作品となった1975年発表のネロ・ウルウシリーズ長編第33作です(英語原題は「A Family Affair」です)。作者が最後の作品のつもりで書いたのかはわかりませんが内容的にはシリーズ締め括りにふさわしい趣向が用意されています。但しこの趣向はある程度シリーズ作品を読んでいないとわかりにくいので、できればシリーズ作品を沢山読んでいることを勧めます。謎解きとしては読者に対してアンフェアなのが残念です(例えばソール・パンザーがある手掛かりを説明していますが、あれは普通の読者には手掛かりとして認知できないと思います)。とはいえシリーズファン読者なら読み落とすわけにはいかないでしょうね。 |
No.409 | 6点 | マローン御難- クレイグ・ライス | 2014/08/14 15:10 |
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(ネタバレなしです) 非シリーズ作品の「居合わせた女」(1949年)以降長らく長編作品を発表しなかったライスは1957年になって「わが王国は霊柩車」と本書のマローンシリーズ作品を立て続けに発表しましたが、それが蝋燭が消える直前の輝きだったのかのように同年亡くなってしまいました。シリーズ第11作の本書はシリーズ作品中ではややおとなしく、事務所で死体に出くわしたマローンが次々に危機的状況にはまるのですが淡々と物語が進みます。もっとマローンがあたふたしていればより面白かったのではと思います。それでも後半になるとスピード感が増してどたばたぶりは派手になります。謎解き伏線も丁寧に張ってあって、最晩年の作品だからといって衰えは感じさせません。 |
No.408 | 6点 | 時計は十三を打つ- ハーバート・ブリーン | 2014/08/14 14:05 |
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(ネタバレなしです) 1952年発表のレイノルド・フレームシリーズ第4作(そしてシリーズ最終作)は細菌研究所のある孤島を舞台にし、細菌の恐怖と戦いながらの捜査という異色の本格派推理小説です。まあ描写はあっさりしているのでそれほど恐怖感は感じませんが(過激な描写が苦手な私でも問題なし)。冒険スリラー色の強いプロットなのでハヤカワポケットブック版の翻訳の古さもそれほど読みにくさを感じさせず、すらすらと読めました。評論家のアントニー・バウチャーが「推理があてずっぽう」と批判したそうですが確かに緻密な推理とは言えないでしょうけど目くじらをたてるほどひどいとも思えず、結構楽しめる謎解きでした。ただ魅力的なタイトルがストーリーの中でほとんど活かされていないのはちょっと拍子抜けでしたが。 |
No.407 | 5点 | ロープとリングの事件- レオ・ブルース | 2014/08/14 12:24 |
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(ネタバレなしです) 1940年発表のビーフ巡査部長シリーズ第5作です。この作品はアイデアの秀抜さと作品の完成度をどう評価するかで読者の好き嫌いが大きく分かれそうですね。謎解きの論理性や読者に対するフェアプレーという点では遺漏があり、おまけに信じ難いほどの警察のチョンボ(国書刊行会版の巻末解説でも触れています)もあって本格派推理小説としてのプロット完成度は低く、ここを重視する読者の評価は厳しいものになるでしょう。一方で非常に珍しい仕掛けが用意してあり、この独創性(私は他の例を知りませんです)を高く評価する読者もいるでしょう。せっかくのアイデアも処理の仕方が雑なので損をしていますが。 |
No.406 | 6点 | タナスグ湖の怪物- グラディス・ミッチェル | 2014/08/14 11:48 |
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(ネタバレなしです) 1974年発表のミセス・ブラッドリー(本書ではディム・ベアトリスと表記)シリーズ第48作です。有名なネス湖のネッシー伝説を意識した作品で怪獣探しの面白さもありますが、メインプロットはあくまても犯人当て本格派推理小説です。動機、機会、犯行手段の謎解きをバランスよく捜査していますがこの内容ならタナスグ湖の地図は付けてほしかったですね。後期の作品ゆえかミセス・ブラッドリーの強烈な個性があまり表に出ず(しかも前半はほとんど登場しない)、普通のキャラクターにしか感じられません。プロットもそれほどひねったものでなく、これまで私の読んだシリーズ作品では読みやすい部類です。ただ結末のインパクトはかなりのものです。 |
No.405 | 6点 | 殺人鬼登場- ナイオ・マーシュ | 2014/08/14 11:20 |
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(ネタバレなしです) 1935年発表のアレンシリーズ第2作で、演劇の世界を背景にしているところは演劇プロデューサーとしても名高いこの作者ならではです。「安全なはずの小道具が凶器にすり替わっていた」事件を扱った本格派推理小説です。登場人物の心理描写が前作の「アレン警部登場」(1934年)から格段に進歩しており、アリバイと動機調査というオーソドックスかつ地味なプロットながら、だれることなく物語が進行します。最後はまさに「劇的な」犯人指摘場面が用意されています。ところで本筋とは関係ないのですが、「アレン警部登場」の犯人名を作中でばらしてしまっているのが非常に残念でした。 |
No.404 | 3点 | 退職刑事4- 都筑道夫 | 2014/08/13 20:00 |
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(ネタバレなしです) 1986年出版の退職刑事シリーズ第4短編集ですが徳間文庫版では「退職刑事健在なり」というタイトルで、続く第5短編集(1990年)が「退職刑事4」というタイトルで出版されました。これが創元推理文庫版だと第4短編集が「退職刑事4」、第5短編集が「退職刑事5」で、とてもややこしいことになっています。後発出版の創元推理文庫版の方がタイトルに配慮すべきでしたね。とにかくここでは第4短編集の感想を書きますがマンネリ打破を目指したのか新趣向に取り組んでいます。メッセージの謎解きを扱っているのが特徴です。ミステリーのメッセージの謎解きというと何と言ってもダイイング・メッセージが頭に浮かびますが、本書のメッセージは犯罪予告だったり、本への書き込みだったり、容疑者からの挑戦だったり、未完の小説だったりと実に多彩です。なぜ雨の日に花火を買いに行くかの謎解きかと思えた「線香花火」さえもメッセージの謎解きになっています。作者の挑戦意欲を誉めてあげたいところですが、残念ながら趣向倒れにしか感じられません。そもそも謎の魅力が弱いし、推理というか解釈というか説明が論理的でないので説得力という点でも弱いです。 |
No.403 | 4点 | トレント最後の事件- E・C・ベントリー | 2014/08/13 19:10 |
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(ネタバレなしです) 英国のジャーナリストであるE・C・ベントリー(1875-1956)が発表した本書は歴史的傑作として評価の高い作品なのですが、kanamoriさんのご指摘の通り、普通のミステリーにしか感じられず何が凄いのか私にはさっぱりわかりませんでした。多分発表された1913年では相当モダンな作品だったのでしょう(1900年代から1910年代にかけてのミステリーの中では洗練された文体だと思います)。当時としては型破りであろう結末、そしてシャーロック・ホームズやそのフォロワーである古典的名探偵とは違う探偵役を登場させたというのが画期的だったんでしょうね。でも現代の読者が発表時代順にミステリーを読むわけではないし、むしろ現代ミステリーから手をつけるのが普通でしょうから、歴史的価値は認められても現代水準で評価すると平凡な作品という位置づけに留まってしまうかもしれません。 |
No.402 | 5点 | 幽霊屋敷の謎- キャロリン・キーン | 2014/08/13 18:39 |
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(ネタバレなしです) 1930年発表のナンシー・ドルーシリーズ第2作で、前作「古時計の秘密」(1930年)と同じくエドワード・ストラッテメイヤー創案、ミルドレッド・A・ワード・ベンソン執筆、ハリエット・ストラッテメイヤー・アダムズ校訂という体制で完成されました。幽霊屋敷という、いかにも子供向けミステリーの定番の一つである謎を扱っています。「古時計の秘密」と違ってナンシーが謎解きに結構苦戦しており、そこに重苦しいサスペンスを生み出すことに成功しています。成功といっても子供向けミステリーとしてそれでいいのかというと微妙かも。とんとん拍子に解決に向かっていた「古時計の秘密」の方が子供読者には好まれるかもしれません。 |
No.401 | 6点 | 関税品はありませんか?- F・W・クロフツ | 2014/08/13 18:19 |
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(ネテバレなしです) 「フレンチ油田を掘りあてる」(1951年)から6年ぶりの1957年に発表されたフレンチシリーズ第29作でクロフツ(1879-1957)の遺作となりました。第一部が犯罪物語、第二部は本格派推理小説(犯人の正体は第一部で読者にオープンになっています)という古典的な倒叙推理小説です。第一部は細部まで緻密に仕上げられていますが、第二部は推理が短絡的で都合よく解決されてしまうところが少々弱いかと。でも1番印象に残ったのはフレンチを激怒させたある真相。いやあ堅実なクロフツ作品でまさかアントニイ・バークリー級の「羽目はずし」を味わうことになろうとは。本当は5点評価ぐらいなのですがこの意外性にもう1点おまけしましょう。しかし主任警視になって地方の事件にはあまりタッチしないって言っておきながら、いざ現場に行くと部下(本書ではロロ警部)に任せずほとんど自分でやってしまうフレンチって、管理職としては失格かも...(笑)。 |
No.400 | 4点 | 死の館の謎- ジョン・ディクスン・カー | 2014/08/13 17:47 |
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(ネテバレなしです) 1927年の米国を舞台にした、ニュー・オーリンズ三部作の最後を飾る歴史本格派推理小説です(出版は1971年です)。もっとも作中時代がカーが生きていた時代ということもあってかあまり歴史物らしさを感じられませんでした。不可能犯罪プラス容疑者の大半にアリバイ成立というカーらしいプロット、更には宝探し趣向まで織り込んでいるのですがさすがに晩年の衰えは隠せないですね。元気な時代のカーなら無理そうなトリックでもこれでもかと言わんばかりの伏線を用意してトリック成立の説得力を高めていたのですが、本書では伏線が十分でなく推理の強引さばかりが目立ってしまっています。カーの長所の一つであるストーリーテリングの巧さも翳りが見られ、読みにくくなってしまったのも残念です。 |
No.399 | 6点 | 13羽の怒れるフラミンゴ- ドナ・アンドリューズ | 2014/08/13 17:13 |
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(ネタバレなしです) 2001年発表のメグ・ラングスローシリーズ第3作の本書は作品世界になじむのに時間がかかったのと事件がすぐに起こらないので前半はやや退屈でしたが、昔風な舞台背景と現代風な登場人物の組み合わせに慣れるとこれがとても楽しかったです。物語の後半になるとテンポもどんどんアップして最後はまさしくスラプスティック(どたばた劇)風のクライマックスが待ち構えています。シリーズ前作の「野鳥の会、死体の怪」(2000年)がややトーンダウン気味に感じられて心配していましたが本書では十分に盛り返しています。 |
No.398 | 6点 | 赤髯王の呪い- ポール・アルテ | 2014/08/13 16:50 |
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(ネテバレなしです) デビュー作の「第四の扉」(1987年)より前に書かれ、1986年に50部の限定出版された本格派推理小説です。しかしミステリーコンテストであのフレッド・ヴァルガスに敗れてしまい、しばらくお蔵入りの末に1995年にやっと正規出版されました。ジョン・ディクスン・カーに私淑しているだけあって、不可能犯罪、謎めいた雰囲気づくり、歴史趣味などがてんこ盛りですが単なるカーのコピー作品ではなく、語り手の狂乱ぶり描写などには早くも作者の個性がうかがえており、短い作品ながら内容豊かです。陽の目を見てよかったですね。 |
No.397 | 6点 | フォーチュン氏を呼べ- H・C・ベイリー | 2014/08/13 16:00 |
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(ネタバレなしです) もちろん異説もありますが一般的には英国の本格派推理小説の黄金時代は1920年に始まるとされています。この年にデビューしたのがアガサ・クリスティー、F・W・クロフツ、そしてH・C・ベイリー(1878-1961)です。興味深いのはクリスティーは長編短編を満遍なく書き、クロフツは長編中心、そしてベイリーは短編中心だったこと(後には長編も書くようになりますが1930年代になってからです)。日本におけるベイリーの知名度の低さはそこにも一因があったかもしれません。1920年発表の本書はレジナルド・フォーチュンシリーズの第1短編集で、後年作品と比べて未熟であるかのように紹介している文献もありますが個人的には決して捨てられるべき作品ではないと思います。フォーチュンを時には冷徹で分析的だが温かみとユーモアも持ち合わせている人間として描写しており、そこには後年デビューするヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスやドロシー・L・セイヤーズのピーター・ウィムジー卿の人物像が重なります。ヴァン・ダインの某作品を先取りしたような結末の作品があったことも驚きでした。心理分析推理が印象的な中編「几帳面な殺人」、現代の犯罪にこそありそうな動機の「ある賭け」などは複雑なプロットを持っていて読み応えがあります。 |
No.396 | 7点 | ケニアに死す- M・M・ケイ | 2014/08/13 14:39 |
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(ネタバレなしです) 1958年発表のミステリー第4作である本書はケニアを舞台にしているからかどことなくスケールの大きさを感じさせる本格派推理小説です。ケニアの生活に慣れ親しんで少々のことでは動じない人々と、英国から来たばかりで戸惑いを隠せないヴィクトリアとの人物対比がよく描けています。早い段階で殺されるので登場場面は少ないけどアリスも印象に残ります。彼女が殺される動機はなかなかユニークで驚かされました。謎解きのまとまりでは「キプロスに死す」(1956年)を上回ると思います。なおハヤカワミステリ文庫版の巻末解説は事前には読まない方がよいと思われる記述がありますので注意下さい。 |
No.395 | 5点 | 夜の来訪者- プリーストリー | 2014/08/13 14:23 |
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(ネタバレなしです) 英国の小説家で劇作家のジョン・ボイントン・プリーストリー(1894-1984)の代表戯曲が1946年発表の本書ですが(後には映画化もされています)、恩田陸が「堂々たる本格ミステリ」と絶賛していたので興味を持って読みましたがちょっと違和感を覚えました。バーリング家の人々と死んだ娘との関係がグール警部の事情聴取で少しずつ明らかになっていくプロットなのですが、これがそのまま犯人当てには発展しないのです。秘密を暴かれて後悔する人、開き直る人、全く動じない人など人間模様が巧に描かれ、ユニークな結末も印象的ですがこれは本格派というより(強いて分類するなら)サスペンス小説ではと思います。 |