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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2849件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.589 6点 死の天使- パトリシア・モイーズ 2015/01/26 12:14
(ネタバレなしです) 1980年発表のシリーズ第15作で犯罪組織絡みのスリラー小説ですが、このジャンルのモイーズ作品ではベストの出来栄えではないでしょうか。中盤にヘンリの妻エミーが主役になる場面がありますが、誰を信じていいのかわからない状況を作り出してサスペンスを巧みに盛り上げます。美しい風景描写に定評ある作者ですが、本書ではカリブ海のハリケーンに挑戦しているのも読ませどころです。結末も十分に劇的ですがやや駆け足気味に終息してしまい、余韻に浸れなかったのがちょっと惜しい気もします。

No.588 6点 ドラゴン殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2015/01/26 11:40
(ネタバレなしです) 1933年発表のファイロ・ヴァンスシリーズ第7作です。謎の魅力が高い一方で真相が脱力モノというのが大方の意見ですが、ドラゴンの仕業(に思える)というオカルト風な設定への挑戦意欲をどこまで評価するかで賛否両論が分かれそうです。確かに犯人が結構目立つ失敗をしていてヴァンスだけでなく事件関係者の何人かも真相の見当がつき、それでいながら警察は五里霧中というプロットはどこか釈然としない部分もありますが、犯人当てとしての推理ロジックは十分納得できました。篠田秀幸が本書を下敷きにして「龍神池の殺人」(2004年)を書いているので比較しても面白いですよ。

No.587 6点 虚空から現れた死- クレイトン・ロースン 2015/01/26 10:12
(ネタバレなしです) ロースンはスチュアート・タウン名義で奇術師ドン・ディアボロを探偵役にした本格派推理小説の中編を4作発表していますが、その内「過去からよみがえった死」と「見えない死」の2編を収めた1941年の第一中編集が本書です。パルプ雑誌に発表されたためか派手な筋立てで、前者ではコウモリ男、後者では透明人間の謎が提供されます。とにかくトリックまたトリックのオンパレードで、犯行トリックだけでなくディアボロや彼の仲間たちがチャーチ警視を愚弄するトリックまで入り乱れ、読む方は振り回されます。複雑なプロットと緻密な謎解きなので登場人物リストを作って読むことを勧めます。

No.586 4点 出張鑑定にご用心- ジェーン・K・クリーランド 2015/01/23 16:19
(ネタバレなしです) 2006年発表のジョシー・プレスコットシリーズ第1作です。主人公が過去の不幸な出来事で心に傷を負い、涙もろくなっているのが珍しいです。主人公が容疑者になることはいくらでも前例がありますが、ジェシーが真犯人探しにはそれほど積極的でなく自身を守ることを優先しているところが自然なストーリーづくりになっています。ただそのためかジェシーの知らないところで解決に向かっている印象が強く、真相説明も結果報告調で推理が物足りません。

No.585 5点 名探偵登場- ウォルター・サタスウェイト 2015/01/10 09:22
(ネタバレなしです) 米国のウォルター・サタスウェイト(1946年生まれ)はハードボイルド小説も書きますが1995年発表のフィル・ボーモントシリーズ第1作の本格派推理小説です。作中時代を1920年代に設定して実在の有名人を多数登場させているのが特徴です。大きな屋敷に怪しげな容疑者が大勢集まるという、本格派推理小説としてあまりにも古典的な舞台に加えて密室あり降霊術あり探偵対決あり、そしてゲスト有名人は奇術王ハリー・フーディニにシャーロック・ホームズの生みの親コナン・ドイルという贅沢さです。しかし雰囲気はいいのですが肝心の謎解きが物足りず(特に密室トリックは残念レベル)、大風呂敷を広げたはいいがきれいに畳めていません。創元推理文庫版で550ページ近い大作ですが、むしろ薄味で軽い作品という印象を残しました。

No.584 5点 神学校の死- P・D・ジェイムズ 2015/01/09 15:22
(ネタバレなしです) 2001年発表のダルグリッシュシリーズ第11作の警察小説で、ダルグリッシュにとって重要な存在となるエマ・ラヴェンナムが初登場する作品です。宗教世界を舞台にして多彩な人物描写で読ませる点でケイト・チャールズのデイヴィッド・ミドルトンブラウンシリーズを連想しましたが、受けた印象は大分異なります。どちらも人物描写には定評あるのですが、ケイト・チャールズは喜怒哀楽の対比をきっちり描いてわかりやすい人間ドラマです。一方ジェイムズは一部を除くと感情に抑制を効かせたようなところがあり、それが重厚で暗く地味な作風につながっているようです。推理が少なく読者が謎解きに参加する要素はあまりありません。純文学的な作風を高く評価されている作者ですが個人的には謎解きの面白さが物足りないです。あと本筋とは関係ありませんが、第2部第6章で黄金時代の女流作家の本が登場しますが、セイヤーズ、アリンガム、マーシュ。ああクリスティーがありませんね。機会あるごとにクリスティー批判していたジェイムズらしいです(笑)。

No.583 6点 閉ざされた庭で- エリザベス・デイリー 2014/12/21 03:24
(ネタバレなしです) 1945年発表のヘンリー・ガーメッジシリーズ第9作の本格派推理小説です。米国作家ながら英国本格派風に複雑な人間関係をじっくり描くプロットは他のデイリー作品と共通しています。第三章の庭園描写は筆力の確かな作者ならではですが、ミステリーの舞台なのでできれば現場図を付けてほしかったです。真相は過去の作品を連想させる部分がありますが同工異曲に感じさせないのは人間ドラマとして全く異なった魅力を持たせているからでしょう。

No.582 5点 密室・十年目の扉- 日下圭介 2014/12/19 10:17
(ネタバレなしです) 日下圭介(1940-2006)の最後の長編作品となった1997年発表の本格派推理小説です。作者は「トリックにはいささか自信がある」と自負していたようです。しかし小さいとはいえ人口5千人の島での人間消失というのは謎の不可能性としては弱く、「密室」というタイトルに期待し過ぎると失望すると思います。作者のもう一つのねらいである、「現代に起きた事件と110年以上前に起きた事件を絡める」についてもそれほどの相互関連性を感じませんでした。登場人物がそれなりに多いのですが、散発的にちょっとだけ登場してはだいぶ後になって再登場というパターンが多いので、記憶力の弱い私には人物整理が大変でした。

No.581 5点 死は熱いのがお好き- エドガー・ボックス 2014/12/13 23:23
(ネタバレなしです) 小説家、脚本家、評論家、エッセイストなど多面的に活躍した米国のゴア・ヴィダル(1925-2012)が1950年代に3作だけエドガー・ボックス名義で発表したミステリーの第3作です(1954年発表)。作者プロフィールを読むと豊かな才能と型破りな性格が同居していたようで、その作品は時に前衛的、時に反社会的、時に背徳的と、何度も物議を醸しているそうですが本書はそれほど「過激な」内容ではありません(通俗的な文体ではありますが)。ハヤカワポケットブック版ではハードボイルドと本格派推理小説のジャンルミックス型と紹介していますがハードボイルド雰囲気はあるもののアクションよりも推理にウエイトを置いており、意外としっかりした謎解きプロットです。後出し的な手掛かり提示があったのはちょっと惜しまれますが。

No.580 4点 レイナムパーヴァの災厄- J・J・コニントン 2014/12/13 22:43
(ネタバレなしです) 1929年発表の本書は全部で17長編と1短編が書かれたクリントン・ドリフィールド卿シリーズの第5作ですがかなりの問題作です(作者自身は満足できなかったらしいです)。真相は(前例があるとはいえ)型破りで、これがお気に召さない読者も少なくないとは思いますが、プロットも本格派推理小説としては場当たり的な事件発生に加えて推理が証拠不十分の仮説ばかりで謎解きがあまり盛り上がりません。結末は問題の真相のおかげかそれなりに衝撃的ではあるのですが、何と第一の事件については全く触れられていません。最後のクリントン卿の独白で「それなりの知恵を持っている人間なら細かい点が抜け落ちていても想像で埋め合わせしてくれるはずだ」なんて、知恵不足の読者の私には無理!

No.579 6点 剣の道殺人事件- 鳥羽亮 2014/12/10 09:47
(ネタバレなしです) 鳥羽亮(1946年生まれ)は時代小説家として大変有名ですが、1990年発表の本書でミステリー作家としてデビューしていました。作者自身が剣道の有段者ということもあってか剣道に関する描写に並々ならぬ力が入っており、決してお飾りのタイトルではありません。剣道を極めることが人生をも左右するという考え方は軟弱な人生を歩んできた私には理解し難いところもありますけど(笑)。トリックは運任せではないかと思わせるところもありますが、衆人環視状態の剣道の試合中に起きた不可能犯罪という極めて魅力的な謎解きに挑戦した意欲は高く評価されてよいと思います。

No.578 5点 水曜日の子供- ピーター・ロビンスン 2014/12/04 18:34
(ネタバレなしです) 1992年発表のバンクス警部シリーズ第6作です。読者が推理に参加する余地がない警察小説で、犯人の正体は結構早くわかります。サイコ・サスペンス小説に出てきそうな犯人像が描かれていますがまだ初期の叙情的作風が残っているためかそれほど赤裸々な異常性格描写にはなっておらず、作風が変化する過渡期の作品と言えそうです。叙情性にこだわるなら少女の不幸な境遇をもっと深堀りするというやり方もあったかもしれません。今回はバンクスよりも上司のグリスソープ警視の方が名探偵らしかったですね。

No.577 4点 シナモンロールは追跡する- ジョアン・フルーク 2014/12/01 01:08
(ネタバレなしです) 2012年発表のハンナ・スェンセンシリーズ第15作です。シリーズ前作の「デビルズフード・ケーキが真似している」(2011年)の後日談的要素があり、ぜひ前作を先に読むことを勧めます(私は本書の方を先に読んでしまいました)。殺人犯探しもやってはいるのですが、どちらかといえばハンナの恋敵の弱点探しの方が盛り上がっています(笑)。ハンナよりも取り巻き連中の方が気合入っていますね。

No.576 5点 死のクロスワード- パトリシア・モイーズ 2014/12/01 00:56
(ネタバレなしです) 1983年発表のヘンリ・ティベットシリーズ第16作の本格派推理小説で、「殺人ファンタスティック」(1967年)のある登場人物が再登場しています。大胆な真相に劇的な結末と優れたところもいくつかありますが全体的にはあっさり過ぎに感じました。せっかくミステリー団体を登場させながらミステリー談義がほとんどないのが物足りなく、個々の人物描き分けもモイーズにしては淡白でした。

No.575 5点 ひらけ胡麻!- マイケル・ギルバート 2014/12/01 00:46
(ネタバレなしです) 1949年発表のヘイズルリッグ主任警部シリーズ第3作ですが、軽い内容の冒険スリラーでヘイズリッグは脇役です。もっとも主役を特定するのは難しく、最初はバディかと思いましたがやがてバディの友人ナップの方が目立つようになり、後半になると今度はナップの伯父シーダーブルック卿が活躍しています。物語のテンポがよくて主役不在でも退屈も混乱もせずに読め、政治ネタや経済ネタが織り込まれたプロットながら軽妙さは失われません。最後はヘイズルリッグが手引き(?)して荒業(あらわざ)で締め括っているのが印象的です。

No.574 6点 シタフォードの秘密- アガサ・クリスティー 2014/12/01 00:20
(ネタバレなしです) 1931年発表のシリーズ探偵の登場しない本格派推理小説です。使われているトリックが有名ですが、使われ方があまりにもシンプルなので現代ミステリーの複雑なトリックに馴染んだ読者にはさすがに古臭く感じるかもしれません。もっともトリックだけに依存した作品でもないので今でもそれなりの面白さはあります。登場人物が多いのですが後年の名作「ナイルに死す」(1937年)などに比べると人物描写がまだ不十分なのは仕方ないとはいえ惜しまれます。

No.573 6点 眠りの森- 東野圭吾 2014/11/25 08:14
(ネタバレなしです) 1989年発表の加賀恭一郎シリーズ第2作の本格派推理小説です。シリーズ前作の「卒業」(1986年)では学生だった加賀は刑事になっています。「卒業」では自身が事件の中心にいた加賀ですが、刑事になっても登場人物の1人に肩入れして公私混同ぎりぎりの行動をとったりしています。講談社文庫版の巻末解説で述べられているように「より心理描写を重視するようになった」ところが見られますが描けている人物と描けていない人物のばらつきが大きく、必ずしも成功してはいないように思います。そのためか動機の探求に力点を置いたプロットなのですが、例えば見知らぬ男はなぜ事務所に侵入したのかという謎解きが推理というよりも単なる後付け説明しにしか感じられませんでした。締めくくりの哀愁的なメロドラマは良くも悪くも若々しいです。

No.572 5点 霧に包まれた骸- ミルワード・ケネディ 2014/11/21 12:01
(ネタバレなしです) 英国の評論家として有名でしたがあまりにも激辛の評論が多くてミステリー作家と衝突することもしばしばだったミルワード・ケネディ(1894-1968)はミステリー作家としては20作ほどの作品があります。本格派推理小説の書き手ですが前衛的な作品と伝統的な作品を書き分けていたそうで、1929年発表の本書は後者タイプです。もっともデビュー作に引き続き登場のコンフォード警部が名探偵役ではないところは少し風変わりです(本書以降はコンフォード警部の登場作品はないようです)。論創社版の巻末解説が非常に充実しており(ネタバレしているので事前に読まない方が吉です)、私の感想は全部カバーされてしまいました(笑)。単純そうな事件で指紋を始め色々と手掛かりがあるのに捜査が進むほどわけがわからなくなり、死体の身元さえはっきりしなくなる不思議なプロットは結構読みにくかったです。最後はすっきりと締めくくっており随所でユーモアも見られますが、中盤まではじれったい展開でした。

No.571 5点 帝銀村の殺人- 篠田秀幸 2014/11/17 18:45
(ネタバレなしです) 2002年発表の弥生原公彦シリーズ第5作の本格派推理小説です。ハルキノベルス版の作者による巻末解説で、このシリーズが往年のミステリー作品のオマージュと現実の犯罪の研究を特色としていることが紹介されていますが、特に本書は過去の犯罪(帝銀事件)の分析に非常に多くのページを割いており、また松本清張の犯罪ドキュメント「小説帝銀事件」(1959年)(私は未読です)を強く意識しています。そのためか名探偵の活躍する本格派推理小説としては物足りなくなってしまい、「読者への挑戦状」の直後のコメントにあるように「(弥生原が)他人の推理に感嘆の意を露にするだけで自分なりの推理を述べていない」状況が長々と続きます。かなり後半になって新たな事件を起こして謎解きを盛り上げてはいますが、展開的には遅すぎの感があります。

No.570 5点 窓辺の老人- マージェリー・アリンガム 2014/11/17 18:35
(ネタバレなしです) 日本で独自に編集されたアルバート・キャンピオンシリーズ短編集ですが、ほぼ発表年代順に収めてあるのがいいですね。1936年から1939年にかけて発表された7つのシリーズ短編にエッセイが1作収めてあります。長編でも本格派推理小説あり冒険スリラーありと多彩な作風のシリーズですが短編もやはり多彩でした。kanamoriさんの書評にもあるように本格派推理小説らしい作品は「ボーダーライン事件」と「窓辺の老人」ぐらいでしょうか。もっとも前者は何だこれはと言いたくなるような人を食った真相ですし、後者の方は何が起きたのかさえなかなかはっきりしないもやっとした展開です。「怪盗<疑問符>」も本格派と言えなくはありませんが、推理が強引過ぎです。中には非ミステリー作品もあってとらえどころがありません。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2849件
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