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[ 本格 ]
放送中の死
ヴァル・ギールグッド&ホルト・マーヴェル 出版月: 2015年01月 平均: 5.50点 書評数: 2件

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原書房
2015年01月

No.2 6点 nukkam 2015/02/27 08:51
(ネタバレなしです) 英国のヴァル・ギールグッド(1900-1981)とホルト・マーヴェル(1901-1969、エリック・マシュウィッツの名前の方が有名らしいです)は共にラジオ番組やテレビ番組製作などに辣腕を振るった放送業界人ですが、4作のスピアーズシリーズ(本書では警部補、最終作では首席警部)を合作で発表しました。1934年発表の本書はその第1作の本格派推理小説で、同年には映画化もされています(しかもギールグッドは容疑者役で出演したらしい)。放送局という舞台、放送録音に殺人の手掛かりを求めるというプロットは大変ユニークです。舞台描写については物足りない部分もありますが、あまり克明に描写すると物語のリズムが悪くなることもあるのでこのあたりは一長一短ですね。人物の個性はもう少し描いてほしく、最初は誰が誰やらなかなか理解できませんでした。第14章で現場見取り図を提示してくれていますが、読者サービスとしては冒頭に置いた方がよかったようにも思います。動機の探求が後回し気味の捜査のためか前半は謎解きに停滞感がありますが後半はうまく巻き返します。

No.1 5点 kanamori 2015/02/22 22:14
英国BBCの放送局スタジオで、ラジオドラマの被害者役の俳優が、まさにオンエア中にドラマと同じタイミングで絞殺される。ロンドン警視庁のスピアーズ警部補は、BBCスタッフらの素人探偵にかき回されながら必死の捜査を続けるが-------。

本格ミステリ黄金期の作品(1934年発表)ですが、お屋敷で殺人が発生し名探偵が登場.....といった型にはまった古典本格とは一味違い、現代的な雰囲気のあるフーダニットです。作者コンビの片割れギールグッドは、作中の主人公格の放送ディレクター・ケアードと同様にBBCで長らくラジオ放送に関わっており、のちにディクスン・カーと組んでラジオドラマを製作した業界人で、この時代では珍しい”業界ミステリ”(=ほかに思いつくのはセイヤーズ「殺人は広告する」ぐらい)をリアルな情報を盛り込み仕上げています。
ただ、ミステリ部分の出来に関してはそれほど高い評価はしずらいかな。動機の情報が後出しですし、犯人の計画したトリックがかなり綱渡り的で、ちょっとした齟齬があればすぐ破綻してしまいそうなのも問題です。
設定は”ハイカラ”なのに、中身はあくまでクラシックという感じでしょうか。


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ヴァル・ギールグッド&ホルト・マーヴェル
2015年01月
放送中の死
平均:5.50 / 書評数:2