皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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nukkamさん |
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| 平均点: 5.44点 | 書評数: 2921件 |
| No.761 | 5点 | 死の競歩- ピーター・ラヴゼイ | 2015/08/16 22:00 |
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| (ネタバレなしです) 英国のピーター・ラヴゼイ(1936-2025)の1970年発表のデビュー作で、ヴィクトリア朝英国を舞台にしたクリッブ巡査部長とサッカレイ巡査のコンビシリーズ作品でもあります。本書の作中時代は1879年11月、16人が参加した6日間に渡る徒歩競技という舞台がユニークです。そつなくまとめられた本格派推理小説でありますが全般に平明過ぎるとも言え(せっかくの競技描写はもう少し競り合いを盛り上げてほしかったです)、読者によっては物足りなく感じるかもしれません(いわゆる地味な英国ミステリーの典型)。クリッブの最後のせりふには(現代では問題発言でしょうけど)思わずにやりとしました。 | |||
| No.760 | 6点 | アリアドネの糸- キャロル・クレモー | 2015/08/16 21:55 |
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| (ネタバレなしです) 米国の古典文学の大学教授であるキャロル・クレモー(1935年生まれ)の1982年発表のミステリーデビュー作です。「犯人は誰か、動機は何かというパズル的要素でもって読者をひきつけるタイプの古典的ミステリを書きたい」と本格派推理小説ファンなら諸手をあげて歓迎したいコメントを寄せています。プロットとしてはD・M・ディヴァインの傑作「こわされた少年」(1965年)を髣髴させるところがあり、失踪や盗難といった些細に思える事件が中心の前半は盛り上がりを欠いていますが事件の凶悪性が増してくる後半はなかなか読ませます。ディヴァインと違って犯人当てとしては容易過ぎますが、展示品盗難事件の背景に珍しい動機が隠されていたのが印象的でした。 | |||
| No.759 | 5点 | ブロの二重の死- クロード・アヴリーヌ | 2015/08/16 21:44 |
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| (ネタバレなしです) フランスの文学者であるクロード・アヴリーヌ(1901-1992)はミステリー作家としてはフレデリック・ブロシリーズの本格派推理小説を全部で5作品残しました。但し最初からシリーズ化を意識してはいたかは疑問です。なぜなら1932年発表のシリーズ第1作である本書はブロが謎解きに挑戦するプロットではなく、ブロ自身の謎をシモン・リヴィエールが調べていくという、シリーズ作品としては極めて異色の作品だからです。後にアヴリーヌはシリーズ作品として最初に読むべきは3作目の「U路線の定期乗客」(1947年)で、本書は最後に読むべき作品と位置づけています。現場見取り図が4つも用意されていて謎解きの雰囲気はそれなりに濃厚ですが、読者が推理するだけの手掛かりが十分に用意されているとは言えず、最後は犯人の自白頼りになっています。登場人物が少なく、ページ数も(創元推理文庫版で)300ページに満たない短さなのでとても読みやすい作品です。 | |||
| No.758 | 5点 | ロマンス作家は危険- オレイニア・パパゾグロウ | 2015/08/16 21:35 |
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| (ネタバレなしです) 米国の女性作家オレイニア・パパゾグロウ(1951年生まれ)はウィリアム・L・デアンドリアの夫人で、ジェーン・ハッダム名義でもミステリーを書いています(本国ではパパゾグロウよりハッダムの方で知られているかも)。6フィート(約183センチ)の身長にコンプレックスを抱くロマンス作家ペイシェンス・マッケナシリーズを書いており、本書は1984年発表のシリーズ第1作となる本格派推理小説です。ロマンス作家の世界が描かれていますが甘かったり夢見るようなところは微塵もなく、むしろどろどろしていますね(笑)。プロットが複雑なだけでなく、終盤には会話が噛み合わなくなるような場面が増えて難解さに拍車をかけています。このまどろっこしさがサスペンスを生み出してもいるのですが、私のような短気な読者にはちょっとつらかったです。密室トリックは小手先のトリックですが謎解きはしっかり伏線が張られています。なおハヤカワポケットブック版裏表紙の粗筋紹介が第30章の内容までばらしているのは少々やり過ぎではと思います。 | |||
| No.757 | 6点 | 城館の殺人- S・T・ヘイモン | 2015/08/16 21:10 |
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| (ネタバレなしです) 1984年発表のベンジャミン・ジャーネットシリーズ第3作です。シリーズ前作の「聖堂の殺人」(1982年)のような宗教色や民族問題といったテーマがない分、一般に受け入れやすいプロットとなっています。人物描写も上手いです。ただあまりにも救いのない現実に打ちのめされる人がいたりと、物語としては後味のいいものではありません。謎解きに意外性を意図したと思われる部分があるのですが伏線があまりに地味なため、読者がその意外性に気づきにくいかもしれません。 | |||
| No.756 | 6点 | うかつなキューピッド- E・S・ガードナー | 2015/08/16 21:03 |
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| (ネタバレなしです) (女性が)「自分を尾行している男の顔をぶったらどうなるか知りたい」という依頼で幕開けする1968年発表のペリイ・メイスンシリーズ第79作の本書はたたみかけるようなストーリーテンポが圧倒的です。次から次へとクライマックスシーンに突入するかのような勢いです。大した推理もなく解決されてしまうので謎解きとしては呆気ないのですが、退屈しない作品であることは確かです。 | |||
| No.755 | 4点 | クッキング・ママの供述書- ダイアン・デヴィッドソン | 2015/08/16 20:55 |
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| (ネタバレなしです) 2002年発表のゴルディシリーズ第11作です。このシリーズにしては登場人物が少ない方ですが、だからといって読みやすい作品ではありません。自分で事態をどんどん複雑にしてしまうゴルディが相変わらずです。ゴルディは想像力(?)でああだこうだと色々と考えてはいますが、解決は完全に力づくで推理要素はほとんどありません。 | |||
| No.754 | 4点 | 霧の塔の殺人- 大村友貴美 | 2015/08/16 00:10 |
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| (ネタバレなしです) 藤田警部補シリーズ三部作の第3作ではありますが藤田警部補、ますます影が薄い!前半と後半でがらりと雰囲気が変わるプロットです。前半は連続首切り殺人の捜査が中心ですが、後半になるとそれまで小物っぽい人物が突如大暴走します。最初は場当たり的な犯罪だったのにいつの間にか警察をきりきり舞いさせるテロリストみたいになってなかなか収拾がつきません。どうにかこうにかそれが一段落してようやく首切り殺人の謎解き、一応手掛かりによる推理もありますが説明者は藤田警部補ではありません。また犯人が判って大団円というわけではなく、どうしてこんな犯罪になったかの背景が長々と解説されます。そこには地方社会ならではの様々な問題が提示されます。私も空さんの講評通り、本書はどちらかと言えば社会派推理小説かなと思います。横溝正史との共通点はほとんどありません。 | |||
| No.753 | 4点 | 蛇遣い座の殺人- 司凍季 | 2015/08/14 18:13 |
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| (ネタバレなしです) 1992年発表の一尺屋遥シリーズ第2作の本格派推理小説です。なかなか大掛かりな仕掛けが用意してあるのですが、仕上げがかなり雑に思えます。謎解き伏線を結構豊富に揃えてはいるにもかかわらず飛躍し過ぎた推理に感じられました。また人物描写が弱いため、事件の背景に結構複雑な人間模様が隠れていてもこれまた唐突な真相という印象しか残りません。島田荘司の某作品を髣髴させる全体着想はなかなかのアイデアとは思いますが。 | |||
| No.752 | 5点 | 戌神はなにを見たか- 鮎川哲也 | 2015/08/14 17:58 |
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| (ネタバレなしです) 1976年発表の鬼貫警部シリーズ第14作です。得意のアリバイ崩し本格派推理小説で、犯人の正体は中盤でわかります。個人的にはアリバイ崩しより動機探しの方が面白かった作品です。また本書ではプロットの中に推理小説論のようなものが垣間見えるのも特長で、推理小説家になろうとする人は1度は本書を読んでおいても損はないと思います。 | |||
| No.751 | 6点 | 瀬戸内海の惨劇- 蒼井雄 | 2015/08/14 17:48 |
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| (ネタバレなしです) 戦前の国内本格派推理小説を代表する「船富家の惨劇」(1936年)に続く南波喜市郎シリーズ第2作(1936年発表)です。姿の見えない犯人を追いかけるという、本格派推理小説としては結構風変わりなプロットで、地味な展開と次々に起こる事件のアンバランスな組み合わせが不思議な魅力を生んでいます。丹念なアリバイ捜査描写で評価の高い「船富家の惨劇」と比べるとスリラー要素が強いのがあだとなったのか一般的評価が低いのも理解できます。しかしクロフツやフィルポッツの影響があからさまなあちらよりも本書の方が私には個性的に感じられ、これはこれで面白い作品でした。定年までサラリーマンを全うした蒼井雄(1909-1975)にとって作家業はあくまでも副業に留まったようで、本書以降は目立った活躍もなく、残念ながら国内ミステリー界をリードする存在にはなれませんでした。 | |||
| No.750 | 6点 | 幻惑の死と使途- 森博嗣 | 2015/08/14 17:36 |
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| (ネタバレなしです) 1997年発表のS&Mシリーズ第6作の本格派推理小説です。奇術の世界での不可能犯罪という、とびきり派手な設定なのですがこの作者の文章はどこか抑制が効いており意外と地味です(退屈ではありません)。これまでの作品でも萌絵は密室トリックを見破ったりと、単なるワトソン役からの脱却を見せていましたが本書においてはほとんどの謎を自力で解いており、本書の主役は彼女といってもいいのではと思います。出番の少ない犀川にも彼ならではの重要な役割が与えられており、謎は全て解けたと思われた時の彼の発言によって物語の世界が一変したかのような読後感が与えられます。これが「幻想」効果なのでしょうか。 | |||
| No.749 | 6点 | 妖狐伝説殺人事件- 山村正夫 | 2015/08/14 17:06 |
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| (ネタバレなしです) 1989年発表の滝連太郎シリーズ第5作です。作者は「伝奇本格派は非合理性と合理性を結合させることに苦労する」とコメントしていますが、本書は両者のバランスが絶妙に保たれており、狐の仮面をかぶった怪人物が死体(らしきもの)を運ぶ場面などは下手な書き方をすると冗談めいてしまうのですが怪奇的な雰囲気を出すことに成功しています。事件の真相は全て人間的で合理的なものですが、最後は怪奇風に締めくくっているところが印象に残ります。 | |||
| No.748 | 5点 | 寝室に鍵を- ロイ・ウィンザー | 2015/08/14 16:49 |
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| (ネタバレなしです) 1976年発表のアイラ・コブシリーズ第3作となる本格派推理小説です。遺言書書き換えのタイミングで発生する事件、金持ちを取り巻く容疑者たち、さらには重要な役割を果たす小道具として暖炉の火かき棒と、まるでアガサ・クリスティーが得意とした古典的パターンのプロットです。ただクリスティーと決定的に違うのは探偵が容疑者と直接やり取りする場面が意外と少ないことです。そのため容疑者のキャラクターが把握しにくく、小説としては若干味気なく感じました。推理はそれなりに理詰めですが、謎解き伏線が重箱の隅をつついたようなものばかりであまり印象に残りません。最後のどんでん返しが効果的なだけにもう一工夫あればと惜しまれます。 | |||
| No.747 | 5点 | ゴルゴタの七- アントニー・バウチャー | 2015/08/14 15:48 |
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| (ネタバレなしです) 米国のアントニー・バウチャー(1911-1968)はハワード・ヘイクラフトやジュリアン・シモンズと共に20世紀を代表するミステリー評論家として有名ですが、数は多くないながらミステリーやSF小説も書いています。1937年、本格派黄金時代の真っ只中に発表されたデビュー作の本書は「読者への挑戦状」付きというだけでも十分に謎解きファンの意欲をそそりますがそれに加えて「手掛かり索引」付き、しかも通常は解決後に提示されるのに本書では「読者への挑戦状」と同タイミングで提示されているのが大変珍しいです。さらに登場人物リストには謎解きのみなら記号付きの人物だけを覚えればいいと注釈するなど、まさにパズル・ストーリーを突き詰めた作品です。残念ながら小説としてはとても読みにくく、人物が性格描写にしろ行動描写にしろ生彩をほとんど感じれず、中盤の劇上演シーンも盛り上がりません。また第3章での「ゴルゴダの七」に関する薀蓄(うんちく)も宗教的内容で大変難解だったのもつらかったです。作者の意気込みは感じられますが、やはりもう少しストーリーテリングに気配ってほしかったです。 | |||
| No.746 | 6点 | 東方の黄金- ロバート・ファン・ヒューリック | 2015/08/14 15:15 |
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| (ネタバレなしです) ディー判事シリーズは作品発表順と作中事件の発生順がずれており、本書は1959年出版のシリーズ第3作ですが物語としてはディー判事最初の事件を扱っていて、ディー判事が副官マー・ロンやチャオ・タイと初めて出会う場面が描かれています。シリーズ初期の特長である、複数の事件が絡み合う複雑なプロットになっていて密室の毒殺トリックや(ネタバレになるので詳しく書けませんが)ちょっとした発想の転換など印象的な謎解きを多数含みます。オカルト要素の扱い方も巧妙です。なお本来のタイトルは「中国黄金殺人事件」(英語原題も「The Chinese Gold Mureders」)です。 | |||
| No.745 | 5点 | 死のジョーカー- ニコラス・ブレイク | 2015/08/14 15:08 |
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| (ネタバレなしです) 1963年に発表された、シリーズ探偵不在のミステリーです。前半は典型的なサスペンス小説で、事件によって人間関係や心理状態に微妙な変化が生じていく様子を丁寧に描いています。大きな事件は後半にならないと起こりませんが退屈しないプロット展開はお見事で、最後は本格派推理小説としてしっかり謎解きして締めくくられています。ハヤカワポケットブック版は裏表紙の粗筋紹介で後半の出来事まで紹介しているのが勇み足だと思いますし、翻訳も半世紀以上前の古いものなので新訳版で再版してほしいです。 | |||
| No.744 | 6点 | 料理上手は殺しの名人- バージニア・リッチ | 2015/08/14 14:44 |
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| (ネタバレなしです) 米国のバージニア・リッチ(1914-1985)は雑誌の料理欄担当や編集者としてのキャリア以外には執筆経験がなく、本格的に小説を書いた第1号が1982年の本書という大変遅咲きの女性作家です。短い作家期間にミセス・ポッターシリーズを3作しか書けませんでしたが、未完の第4作をあのナンシー・ピカード(リッチのファンだったそうです)が完成させ、その後このシリーズを引き継いで書き続けています。本書はコージー派の本格派推理小説で、巻末には料理レシピがおまけとして付いています。予想以上に謎解きプロットがしっかりしており、特に中盤以降でミセス・ポッターが各容疑者を犯人に想定してシナリオを書くシーンがなかなか面白いです。意外性を出すために(個人的には)あまり感心できないトリックを使っているのが惜しまれます。 | |||
| No.743 | 6点 | 異端の徒弟- エリス・ピーターズ | 2015/08/14 14:32 |
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| (ネタバレなしです) 1989年発表の修道士カドフェルシリーズ第16作です。序盤や終盤での宗教議論はキリスト教徒でない私には少々なじみにくい面がありますが(難解過ぎるほどではありませんけど)、それを差し引いても物語としては起伏豊かで面白い作品です。謎解きは手掛かりがあまりにもわかりやすくかつ整然と提示されていくのでほとんどなし崩し的に犯人がわかってしまうのがちょっと残念ですが(やりようによっては意外性を出せたと思います)、苦難を乗り越える若い男女のストーリーを書かせてはこの作者は本当に上手いと思います。カドフェルも十分に活躍していますが、ラドルファス院長の頼もしさも印象的でした。 | |||
| No.742 | 5点 | チョールフォント荘の恐怖- F・W・クロフツ | 2015/08/14 14:26 |
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| (ネタバレなしです) 1942年発表のフレンチシリーズ第23作となる本格派推理小説で、クロフツとしては平均点的な作品だと思います。地道な捜査が描かれているところは相変わらずですが、初登場となるロロ部長刑事に対するフレンチの指導者ぶりが読めるのが本書の特徴です。もっともこれはある程度シリーズ作品を読んだ読者でないと気づきにくい特徴かもしれません。手堅すぎて盛り上がりに乏しいストーリー展開ですが、最終章だけ妙に芝居がかっているのが良くも悪くも印象的でした。 | |||