皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] 不肖の息子 メレディス主任警部 |
|||
---|---|---|---|
ロバート・バーナード | 出版月: 1984年02月 | 平均: 6.33点 | 書評数: 3件 |
早川書房 1984年02月 |
No.3 | 6点 | nukkam | 2015/08/08 12:21 |
---|---|---|---|
(ネタバレなしです) 英国のロバート・バーナード(1936-2013)は本格派推理小説の書き手としてだけでなく評論家としても名高く、「欺しの天才」(1980年)はアガサ・クリスティー評論としては最高であるとの評価を得ています。日本であまり積極的に作品が紹介されていないのはシリーズ探偵に重きを置いていないのがネックになっているからだと思います。1978年発表の本書はメレディス主任警部シリーズ第1作ですが、次のシリーズ第2作は実に10年後の「芝居がかった死」(1988年)まで書かれませんでした。彼の作風はクリスティー風の伝統的な犯人当て本格派推理小説のスタイルを踏まえながらも、登場人物がグロテスクに描写され(作者自身がそうコメントしています)、結末も型通りには終わらないケースがあると言われていますが、初期作品である本書を読む限りではそれほどキワモノ的な作品とは思えません。登場人物も「ちょっと風変わりな」といった程度です。すっきりした文体とテンポのいい物語の流れがとても読みやすく、コンパクトな作品ながらちゃんとレッド・ヘリング(読者を騙す仕掛け)も用意してあります。初期作品にして入門編としてお勧めの良作です。 |
No.2 | 6点 | kanamori | 2011/08/13 18:10 |
---|---|---|---|
作家の死を契機にして、残された家族・関係者の人間心理の綾をシニカルに描きだす作品をいくつか書いているバーナード。
本書も、ベストセラー推理作家の毒殺死による残された三人の子供たちの葛藤を描き、なぜ嫌っていた放蕩息子の長男にだけ遺産の大半を譲る遺言状を残したのかという謎から、オリヴァー卿の本当の人となりが浮き彫りになってくるところが面白い。 個性的な事件関係者とは対照的に、探偵役のメレディス警部があまり目立たないので全体的に地味な印象ですが、オーソドックスな現代本格派ミステリとして水準はクリアしているのでは。 |
No.1 | 7点 | mini | 2009/04/04 09:57 |
---|---|---|---|
英国現代本格の人気作家の一人なのに、日本では人気がもう一つ盛り上がらない不遇な作家
アガサ・クリスティに関する評論「騙しの天才」の著者でもあるロバート・バーナードは、クリスティのファンにとってはむしろ評論家として知られているかもしれない 流石にクリスティ研究者だけあって、初期の代表作である本書でも敬愛するクリスティを髣髴とさせるものがある ただ全く似ていない部分もあって、やはり書かれた時代の違いだろうか、バーナードは皮肉に満ちた独特の文体が特徴で、クリスティならこんなシニカルな文章は絶対書かない 翻訳数はそこそこあるのに出版のされ方も問題で、ポケミスで出たものは一つも文庫化されず、逆に最初から文庫で出たものは全て早川書房以外の出版社からで、しかも「暗い夜の記憶」にいたっては倒産したあの現代教養文庫だったという、よくよく日本では運の無い作家だったようだ |