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makomakoさん
平均点: 6.19点 書評数: 848件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.29 8点 カーテン- アガサ・クリスティー 2016/12/23 12:13
 ポアロ最後のお話です。自分が犯人たりえない方法で殺人を繰り返す殺人者。まさに究極の殺人者といえるかもしれません。それに対するポアロはもう命がつきかけてでも頭はさえています。
 作者も歳をとり、若い頃のような感性がつきかけているようで、登場人物がちょっとこらえ性がない。でもまあそこそこには収まっているところはさすがクリスティー。
 最終場面ではついにポアロが死んでしまう。
 私はポアロがそれほど好きではないように思っていましたが、こうしてお別れとなると実に心残りです。
 あとあとまで心に残るお話でした。

No.28 5点 鳩のなかの猫- アガサ・クリスティー 2016/12/04 08:35
 クリスティーにしてはこの作品はあまり出来がよろしくないと思います。本格物としてはこのサイトの書評でも述べられているように無理があります。ポアロが登場するのも半分以上話が済んだ後、しかも彼が話を聞いたらたちどころに解決してしまう。犯人のわかった理由は後付けで出てくるといったアンフェアさ。
 確かにこれでは誰が犯人でも成り立ってしまうでしょう。しかも彼女の長編の中でも長いほうのお話なので、途中で退屈してしまう。
 なんだか無理やり書き上げた作品のような気もします。
 大作家でもこういった駄作?があるのですね。

No.27 6点 書斎の死体- アガサ・クリスティー 2016/11/25 21:23
 小説の序文に筆者自身が書いているように、オーソドックスな書斎にその住人には全く面識のない奇抜な若い女性の死体が発見されるという、現実には到底無理な設定の事件のお話です。
 ミスマープルによって真相が明らかにされるとまあ納得できるものではあります。
 クリスティーの作品だけあって真相はそう簡単には見抜けません。こんな真相であるなんて私は思いもよらなかった。ただしこのトリック?はあくまでも古き良き時代のお話であって、現代なら絶対無理でしょうね。現代の推理小説作家さんは大変だなあ。

No.26 5点 死者のあやまち- アガサ・クリスティー 2016/11/23 17:33
 お金持ちの屋敷で余興に殺人ゲームを企画したら、殺される役の女の子が本当に死んでいたという、サービス精神にあふれた作品といえましょう。
 登場人物の推理作家アリアドニオリヴァーはクリスティーの分身のようなところがありなかなか興味深いのですが、このお話はクリスティーとしてはあまり出来が良いとは言えないと思います。
 例によって最後にポアロにより真相が明らかにされますがあまりにも作りすぎで、これほど複雑なことをしなくてもいくらでもやりようがあろうかと思うのです。

No.25 5点 象は忘れない- アガサ・クリスティー 2016/11/11 19:42
 最近クリスティーの作品をよく読むようになりましたが、これは本当に最晩年の作品で、やはり年寄りが書いたの作品といった感じは拭い去れませんでした。
 悪くはないのです。
 作家がファンからあまりに称賛されると気恥ずかしくていやだといったところは、多分作者自身の感慨からのものであろうと思います。クリスティーは謙虚な人だったようですから。
 高齢になっても筆力が衰えないことをある意味証明したような作品ではありますが、うまくまとめてはいるが若いパワーがないなあとしみじみ感じるところもあります。
 私だけかもしれませんが、ことに前半ではセリフのうけとりの場面が長く続き、誰がしゃべっているのかよくわからなくなるところが多くありました。ひょっとしたら翻訳のせいかもしれませんが、これが重なってくるとかなり読みにくい。原文はどうなのかな。

No.24 5点 ABC殺人事件- アガサ・クリスティー 2016/10/19 21:24
 クリスティーはどの作品も水準が高く楽しめると思っていますが、この作品はあまり好みではありません。ちょっと無理がありすぎると思うのです。
 ABC順に予告殺人がポアロのところに届き、すべて実行されてしまう。名探偵も赤っ恥といったところですが、ポアロは全然めげずに最終的には真犯人をみつけだす。
 読んでいる途中では犯人らしき挿話がちょろっと入るのですが、これが犯人なら推理小説として成り立たないなあと若干心配になる。主な登場人物でない人物が犯人で、話の本筋とは違うところで急に見つかってでは、推理小説としてはいかんでしょう。
 当然ながらクリスティーはそんなに甘くはないのですが。
 それでも話としてはやはり無理があると思うのです。結構書評が高いようですが、私はあまり楽しめませんでした。

No.23 7点 メソポタミヤの殺人- アガサ・クリスティー 2016/10/11 20:18
 ずいぶん前に読んだことがあったのですが、内容はすっかり忘れてまた面白く読めました。
 最初読んだときはメソポタミア文明に興味があったのでそこが舞台の小説と期待したのでしたが、案外メソポタミアの雰囲気は少ない(クリスティーの話は場所が変わっても旅情ミステリーのように旅が主題ではない)。
 ポアロは本来尋問を繰り返すことにより犯人を見つけるといった志向が強い探偵ですが、ことにこの作品ではほとんど実際の調査は重要ではなく、かなりアームチェアーデテクチブ風です。
 密室殺人のトリックはちょっと強引で成功率が低そうな感じです。

以下ちょっとネタバレ
 犯人はめちゃくちゃに以外で、これが成り立つ可能性は低そうだなあ。女性は男と違って体の特徴をあまり覚えていないの?。夫婦でなければわからない癖が絶対あるからそれを忘れることなんて信じられないけど。

 でも全体としては面白く読めましたよ。

No.22 6点 死との約束- アガサ・クリスティー 2016/09/26 19:54
 このお話は初めから殺されそうな人は分かっているのになかなか殺人事件が起きない。ちょっとイライラ気味となるが、ようやく待望の?事件が起きる。
 犯人は誰であっても成り立ちそう。実際この小説をアレンジして良いといったら誰でも犯人にできそうです。
 さらにおしまいになってポアロが次々と何人もの容疑者に対して犯人らしいといった推理をする。さいごは全く意外な犯人で。またしてもやられました。
 小粒な話で映画化がヒットしなかったのはある意味当然でしょう。小説のほうがはるかにあっている話でした。
 初めのイライラした話が長いため、私の評価としては少し低めです。

No.21 7点 スタイルズ荘の怪事件- アガサ・クリスティー 2016/09/19 20:57
クリスティーのそしてポアロの最初の作品。
 初めからこんなに濃い内容の話を書けるなんてさすがクリスティー。どんな作家でも処女作は初々しい反面どこかに完成度が低いところがあるのですが(それもまた楽しいのですが)、クリスティーは初めから熟達した作家に負けない作品を書いていたのだ。すごいねえ。

No.20 6点 アクロイド殺し- アガサ・クリスティー 2016/09/19 20:47
 クリスティーの作品の中でもとりわけ有名なものと思いますが、ずっと敬遠していました。それというものなにで知ったのか忘れましたが、犯人を知ってしまっていたからです。それでも結構読めましたが、やはり知らない方が数倍びっくりすることでしょう。さらに多分を立てるかも。
 当時ヴァンダインもこんなのありかといっていたそうですが、そりゃそうだ。
 忘れっぽい私でもさすがにこんな犯人は忘れることができませんでした。
 推理小説は、ことにこの小説のように犯人がわからない、とても意外な犯人だったといったところが楽しみなのに、犯人を知っていては興味半減です。
 クリスティーの作品は映画化やテレビ化されることが多いので時々みてしまうのです。それなりに面白く見るのですが、本を読む前に見るのはやめよう。オリエント急行は映画が面白かったが、これもあまりにすごい結末なので忘れられません。そのため本は未読のまま。

No.19 7点 マギンティ夫人は死んだ- アガサ・クリスティー 2016/08/11 08:02
 被害者はどこにでもいる平凡な中年女性、どんなに探しても動機が見つからない。犯人と目された人物ははすでに裁判でほとんど有罪になっており、しかも犯人とされた人物そのものが、自分の無罪をとりわけて訴えようとしない。
こんな状況なのに実際に担当した警察官からほかの犯人がいそうだとの依頼がポアロされる。
 ほとんど無理そうな設定の中から鮮やかな推理のもとに意外な犯人が名探偵によって暴かれる。
 うーん本格推理の教科書のようなお話ではありませんか。とてもよくできたお話と思います。本格物が好きならぜひどうぞ。
 その割に評価が特別良くないかというと、このお話は現代の日本ではちょっと成り立ちにくいということと、「何とか婦人」がたくさん出てきて、名前を覚えるのが苦手な私にとって誰が誰なのかが分かりにくく、話の筋がはっきりつかめないところがあったところです。

No.18 7点 ポアロのクリスマス- アガサ・クリスティー 2016/07/31 07:36
 この作品で犯人をあらかじめ指摘するのはすごく難しいでしょう。後から考えるとちゃんと伏線も張ってあるのですが、若干後出しじゃんけん風でもあります。
 もちろん私にも犯人は全然当てられませんでした。ポアロの推理にびっくり仰天。まあクリスティーの作品で犯人がわかったことなんかないけどね。
 本格推理小説としてはとてもよくできたものと思います。
 殺された人物はとても嫌なやつで、その子供たちも個性的であまり感じがよくないと思われる人が多い。こういったシチュエーションでのお話は、一般にいやな感じと展開となり嫌味な小説となりがちであろうかと思うのですが、そこはクリスティーで、全然嫌な感じはなくするりとお話に入っていけます。
 遅まきながらこのところクリスティを読み始めています。だんだん古き良きイギリスになじんできました。まだまだ彼女の作品で未読のものがあるのが楽しみです。

No.17 6点 愛国殺人- アガサ・クリスティー 2016/07/16 22:00
 初めはやや退屈でしたが、中盤になり俄然面白くなった。最後にポアロの推理が来るのですが、内容はかなりこみ入っており分かりやすいとはいいがたい。つるつると読んでしまったが、本当は事件の真相がしっかりわかりませんでした。きちんとすじを通して読んでいかないとわからない気がします。
 昔は表にしてでも理解しようと頑張ったのですが、年のせいかこの頃はまあこれでなんだかよく分からないが解決したということでしょうといったかんじです。犯人が指摘されたらああそうですか、きっと正しい推理なんでしょうねえとすることとしています。
 でもまあ面白かったです。

No.16 8点 杉の柩- アガサ・クリスティー 2016/06/28 08:07
 この作品は他の評でも言われているようになかなか素晴らしいと思います。どこを探してもこの人物以外に犯人は考えられないといった状況から、ポアロが一人ずつインタビューを行いながら謎を解いていくといった設定はまことに興味深いものでした。
 ポアロ自身ももうだめかと思ったような発言を繰り返しつつ、次第に真相に迫っていく。面白いねえ。

以下ネタバレ気味
 ちょっと問題なのは後出しじゃんけん風の真相の知られ方であることと、この殺人方法が日本では絶対無理、多分当時のイギリスでも無理だったでしょうと思えることです。こんな危ない方法を選ばなくてもよかったでしょ。失敗したら自分も危ないのですから。いくらでもほかの方法でやれるチャンスがあったと思うのです。

No.15 8点 ナイルに死す- アガサ・クリスティー 2016/04/15 22:36
 とても面白かった。本作品は大変有名で映画化などもされているのですが、本を読む前に絶対に見ないようにしていたものです。以前「Yの悲劇」や「オリエント急行殺人事件」を映像で見て20年以上たってから本を読んだのですが、忘れっぽい私でも犯人やそのシチュエーションを明らかに覚えていたため(それだけ映画が良かったとも言えますが)、小説を読む興味が半減したことがあったためです。
 エジプトは今まで訪れた国の中でも指折りに好きな国で、そこでこのような豪華なお話が組み立てられているというだけでも、たまらない魅力です。
 お話も実に綿密に作られていて、殺人事件がなかなか起きないのに、全く飽きさせることなく読ませてしまうのはすごいですね。

以下多少ネタバレです。
 ただ今まで読んだクリスティ-の作品で犯人がわかったことがない私ですが、この作品に限っては犯人はこれだとかなり初めからわかりました。ただしトリックが全然わからない。あらゆる本能?がこの人物と示しているのですが、犯行は絶対無理だからなのです。最後まで読んでみれば簡単で納得がいくトリックでした。
なるほどね。参りました。さすがクリスティー。

No.14 8点 白昼の悪魔- アガサ・クリスティー 2016/04/10 21:06
 いつものことですが、クリスティーには見事に騙されてしまいます。この作品は氏の作品の中では有名ではない方?にも思いますが、なかなかの名作です。
 びっくりするようなトリックではなく、でもやっぱり最後には驚かされました。
 未読な方はぜひ。おすすめですよ。

No.13 7点 ポケットにライ麦を- アガサ・クリスティー 2016/02/11 09:03
 物語が始まるとほどなくして殺人事件が起き、それに対して登場人物が過不足なく語られてと、とてもテンポがよい。途中からちょっと緩むが、それでもお話の興味を割くことはなく、表題の不思議な謎について次第に明らかになってくる。これは、ああマザーグースなんだ。
 ところがさすがクリスティーで、伏線なのかミスリードなのか混乱させられながら終盤を迎える。ミスマープルの推理は鮮やかですが、その発想が決めつけから始まるのはちょっとどうかなあ。まあ小説の中でしかもマープルなのですから、当然的を得ているのですがね。
 推理小説として過不足なく書かれた秀作と思います。

No.12 5点 おしどり探偵- アガサ・クリスティー 2016/01/09 18:03
 ずい分軽いお話でした。連作集で一つの話が短いためすららと読んでしまえるのですが、内容はあまり濃いとは言えませんでした。本格推理だと思ってまじめに読んではいけないよという内容のもあります。
 トミーもタペンスもやたらに冒険好きで、大ピンチになっても全然めげないため、漫画チックで現実感に乏しいですねえ。子供のころテレビで見た少年ジェットやまぼろし探偵みたい(古いなあ。分かった人はかなりの年配の方でしょうね)。
 いろんな探偵小説のパスティーシュになっているようなのですので、当時の推理小説ファンが読めばもっと面白かったとは思いますが、私には本家本元がわからない部分がかなりあったため、充分に楽しめなかったところもあるとは思います。
 

No.11 6点 春にして君を離れ- アガサ・クリスティー 2015/12/18 21:19
 この作品は推理小説ではない。クリスティーも発表当時メアリ・ウェストマコットの名義で発表し、長くクリスティーの作品であることを秘密にしたとのこと。
 私はそう言ったことを知らず、推理小説であろうと読んでいて、あれ?といった感じでした。
 主人公やご主人のキャラクターは今日の日本の夫婦でも極めてありがちなことなので、しばしばわが身に置き換えて読むこととなりました。
 ご主人のロドニーの気持ちは自分もそういった環境に置かれておるところもあるのでとてもよくわかる。解説の栗本薫さんのご主人はいやなやつと感じたらしいが、私は自分不本意ではあるが、それを選ばざるを得なかった環境の中で、精一杯働いた彼は立派だと思います。成功しても本意ではないが、でも文句は自分の中に納めて力いっぱい働いて世間的には成功したのですから。
 一方主人公のジョーンはちょっと嫌いだなあ。優等生であることが人生の目標でありそれ以外は決して認めようとしない(全然見えないというべきか)。こんな人が自分を見直すことなど本当にあるのかなあ。

No.10 6点 終りなき夜に生れつく- アガサ・クリスティー 2015/12/11 20:41
 この作品は読者によってかなり評価がわかれるようです。クリスティーの最高傑作という方もおられるようですが、私はそれほどでもなかった。
 もちろんクリスティーなのですから悪いということはないのですが。恋愛小説風の書き出しで、しかもそれが当分続く。ところどころにちょっと引っかかるところがあるので、ただの恋愛小説ではなさそうと思っていたらやっぱり最後はやられました。
 どんでん返しというよりはだまされた感じが強く、自分としてはあまり面白くはなかったのです。

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makomakoさん
ひとこと
歴史ミステリーや、本格物が好きです。薀蓄も結構好き。変人が登場するのは嫌いではないが、冷たい人間が出てくるのは肌に合いません。外国ものは登場人物が理解不能であったり翻訳文が合わないことが多くあまり得意で...
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鮎川哲也、山田隆夫、綾辻行人、法月綸太郎、高田崇史、伴野朗
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平均点: 6.19点   採点数: 848件
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