皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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makomakoさん |
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| 平均点: 6.17点 | 書評数: 898件 |
| No.398 | 6点 | ともだち- 樋口有介 | 2014/07/27 08:50 |
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| 登場人物それぞれのキャラクターは立っているのだが、もうひとつインパクトが少ない。助平な剣豪爺さん、恐ろしく強い女子高生、絵の天才男子高生、ちゃらちゃらだが実は財閥のお嬢様などなどサービス満点、しかも意外な展開で終了と読んでいて面白いはずなのだが、どうもいまいちピンと来ない。
作者は人物をそれとなくしかも巧みに描く名手と思っているが、本作品の登場人物はどうもうまく絡んでいない。剣豪女子高生のさやかだけが際立って目立ったいるように感じます。しかも強すぎ。ここまで強いと漫画チックに思えてしまいます。 樋口氏は「どうせ」という言葉をよく使います。ことにこの作品にはこの「どうせ」が多い。主人公が中年のシリーズでは極めて良い効果があるのですが、高校生が主体の作品にこれ程「どうせ」がでてくるとえらく虚無的になってしまい、若者たちのキャラとマッチしなくなってしまう。 文句を色々つけましたが読んで不快な作品ではなくまずまずの出来なのです。ただファンとしては作者にはもっと素敵な作品が書けるに違いない。期待しているのです。 |
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| No.397 | 6点 | 天才たちの値段- 門井慶喜 | 2014/07/21 17:16 |
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| まず出だしで本物だと甘みを贋作だと苦みを感じるというとんでもない設定の神永美有が登場し度肝を抜かれるが、案外まとも?で美術講師の佐々木とともに美術品がらみの事件を解決していく。最初は佐々木がワトソンの役割かと思っていたが、意外とそうでもなく神永と二人で解決していくようなお話となっていた。
まあこのほうがよいね。 登場人物の中にはエキセントリックな学生や主人公のおばさんなども出てくるが、なんとか許せる範囲でしょう。 美術に興味がなくても十分読んで楽しめる設定ですが、逆に相当の美術趣味でないと美術に関する推理を先取りして楽しむことは難しいかも。 |
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| No.396 | 7点 | 探偵は今夜も憂鬱- 樋口有介 | 2014/07/13 07:37 |
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| 柚木草平シリーズの第3弾。3つの中編連作となっておりいずれも美女が出てきて、柚木はそれに翻弄されつつ事件を解決?するお話。
こういってしまうと身もふたもないのだが、中身は濃い。この手の話としてはちょっと濃過ぎるようにも思えたが、作者のあとがきに「自分は短編は苦手でこの話も長く書きすぎて編集者から短く削れといわれた。」とあり納得。 樋口氏の小説は何気ない風景描写と粋な会話が大きな魅力なのだが、それがぐんと濃縮されているので濃すぎるコーヒーを飲んだ感じでした。 なかなかおいしいのだが、ちょっと胸につかえるといったところでしょうか。好きなシリーズなので評価は少し甘いけど。 |
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| No.395 | 6点 | 八月の降霊会- 若竹七海 | 2014/07/12 14:04 |
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| 出だしは良い。なんだか怪しげで絶対に何かありそうで。
実際にいろいろとおきるのだが、かなり複雑に絡み合った話なので若干わかりにくい。でもまあなかなか良いのです。 実はこの作品は再読であって以前に読んだときにかなりがっかりしてしばらく若竹氏の小説は読まなくなっていたのです。そのことは覚えていたのですが、内容はすっかり忘れた(おめでたいことです)ためもう一回読んでみることとしたのです。解説にも再読に耐えると書いてあったし。 最後までつきあうことだと帯にも書かれているので最後までつきあったのですが、なるほど当時の私が以後作者の小説はあまり読みたくなくなった理由がわかりました。 本格推理として最後にどんでん返しがあるのは良いのですが、こんな方向に投げられると反則と訴えたくなってしまいますねえ。 でも途中まで面白かったので採点は甘めとしました。最後が認められないという方は当然評価が下がると思います。 |
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| No.394 | 7点 | タルト・タタンの夢- 近藤史恵 | 2014/07/05 07:50 |
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| フランス料理店長の推理と料理の薀蓄を合わせたような連作で、なかなか面白かった。
こういった傾向の話は好みなので割に読んでいるのですが、北森鴻の「カナリヤ」シリーズにちょっと似た雰囲気です。 推理としてはだいぶん強引でこんなことを繰り返していたら大間違いに必ずはまるような話ですが、もちろん全て的中しますので読者は安心して読んでいられます。 軽いお話ですのでフランス料理の名前など全く覚えなくてもすらすらと読めした。 |
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| No.393 | 6点 | 赤朽葉家の伝説- 桜庭一樹 | 2014/07/05 07:42 |
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| これが推理小説の賞を受けたとは信じられないほど推理小説としての味は薄い。未来予知能力のある女の話やべらぼうに強い女の話や、自信が全くない女の話がしんなりねっちりと語られる。
作者は男の名前だが内容はまさに女性の視点で、女性しか書けないようなお話でした。 美人の姉さんの彼氏をパッとしない妹が寝取る、しかも寝取られた男は妹に骨抜きにされてしまうというのは男として全く解せないし、多分作者も分かっていないのでしょう。男から見れば女として素敵な女性というのは女性からは理解できないのかも。そうでなければ美人の彼女から乗り換えて骨抜きにはされないよね。この小説ではこういった女性の魅力などがすっぽりと抜け落ちています。 まあ不覚にも男の作家だと思って読んだのが間違いだったのだけれどね。女性の名前で発表してくれれば印象は変わったかもしれない。 |
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| No.392 | 8点 | 木野塚探偵事務所だ- 樋口有介 | 2014/06/27 17:56 |
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| 警視庁を定年退職した木野塚氏が唯一の趣味であったバードボイルド探偵を目指して探偵事務所を開く。警視総監賞まで受けているのでが、実は経理一筋で警察行為は全くないが、人生残り少ないのだから思い切りやりたい仕事をやるつもりだが、なかなか現実はそうはいかない。といったお話。
面白い。徹底的にハードボイルド探偵を茶化しているのだが作者特有の表現が効いていて楽しく読めた。 次作を期待しています。 |
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| No.391 | 4点 | 夏期限定トロピカルパフェ事件- 米澤穂信 | 2014/06/27 17:47 |
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| 作者は素敵な高校生だけを描くのは嫌いなのだろうな。どうせなら初めからそれなりの主人公というならまだよいのだが、小学生に見えてかわいい女の子がこんな性格というのはやってられませんね。
私にとっては読後感が悪いいやな小説でした。 |
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| No.390 | 5点 | 夢の終わりとそのつづき- 樋口有介 | 2014/06/22 07:52 |
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| 作者によるとこの作品は20歳代に書いた「ろくでなし」を柚木シリーズとして改稿したものとのこと。
かなりとんでもないストーリーが展開する。いい女も出てくる。いつも以上に柚木は洒落た会話を連発する。でもここまでやるとちょっとやりすぎ。作者もきっと承知で書いているに違いないが、若いころのなつかしさをどうしても残したかったのでしょう。 |
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| No.389 | 4点 | 春期限定いちごタルト事件- 米澤穂信 | 2014/06/12 22:27 |
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| きんとん事件を先に読んだので、その前の話はどうなっているか知りたくなって読んだのだが、「きんとん」よりさらにつまらない内容でちょっとがっくり。一緒に「トロピカルパフェ」も買ったのだがあまり読みたくなくなってしまった。
謎もつまらないが登場人物もちっとも可愛くなくて残念。女子高生がかわいいなんて幻想だよと作者に言われそうだが、せめて小説の中ではもう少し素敵な気分になりたいのだが。 やっぱりおじさんの幻想なのでしょうかね。 |
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| No.388 | 6点 | 秋期限定栗きんとん事件- 米澤穂信 | 2014/06/08 10:52 |
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| この本から読み始めたのでそれまでの経過がわからずはじめはちょっと戸惑ったが、読んでいけばまあ何とかなりました。でもやっぱりこれは春、夏と呼んでいくものなのでしょう。
この子小さくてかわいいと思っていたら、本当はとんでもないやつででしたねえ。 好みとしてはかわいいままで終わるほうがよいのですが、作者はそんなのは甘っちょろくて好きでないのでしょう。 |
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| No.387 | 4点 | 扼殺のロンド- 小島正樹 | 2014/06/08 10:28 |
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| 途中まではなかなか良い。「お、小島正樹氏もだんだん小説が上手になったなあ」などど思っていた。
氏の小説には多くの謎やトリックが詰め込まれており、途中まではこれで本当に謎が解けるのだろうかと思うほどなのだが、登場人物の魅力がいまいちなのと最後の謎解きでたいていはがっくりしてしまう。謎が不思議すぎるのでどうしても解決に無理を生じてしまう。 この小説では犯人は意外だし、殺害方法も一見納得される方も多いと思うのですが、実は医学的に言えばこの方法はほとんどありえない。この分野を専門としてきた者の悲しさで、現実にはできないことがわかってしまうと解決部分は実にばかばかしくなってしまう。ありえない医学的方法の殺人は密室は超能力を使いましたと説明されると同様なのです。 残念です。もう少しきちんと調べてから書いてほしかったなあ。 |
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| No.386 | 6点 | 夜歩く- ジョン・ディクスン・カー | 2014/05/28 18:48 |
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| カーの作品はあまり多く読んだわけではないですが、以前は変な登場人物といかにも作り物と思われるようなシチュエーションさらにこなれない翻訳にかなり違和感を感じていました。最近は日本の作品でもへんてこな登場人物がよく出てくるのでだいぶん慣れたせいかこの作品ではさほど違和感がなく読めました。
密室のなぞは全然解けなかったけど、こんな程度でよいのかなあ。 本格推理が好きな方には面白いと思いますが、そうでなければ読んでいくのも苦痛かもしれない。 |
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| No.385 | 6点 | 海神の晩餐- 若竹七海 | 2014/05/18 21:19 |
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| 再読です。出だしは良いです。氷川丸に主人公が乗るあたりまではワクワクして素敵な雰囲気。作中作やパズルなど魅力的ななぞが提示され前に読んだことなどすっかり忘れて興味津々となるのですが、途中からちょっとだれてきて最後になってもパズルのなぞは解かれずなんだか期待外れとなって幸せなエンディングとなってしまう。
どうも尻切れトンボなのです。作者は海外ミステリーにも造詣が深いようで色々な薀蓄が好事家のためのノートとして巻末に乗っているのも楽しいのですが、これ程のバックグラウンドを含めているのだったらもっと本格としてがちんと書いてほしいなあ。 |
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| No.384 | 5点 | 邪馬台- 北森鴻 | 2014/05/03 08:06 |
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| 北森氏逝去により未完となった作品を浅野里沙子氏が書き継ぎ完成させた大作。邪馬台国と忽然と消失した村に伝わる文献の謎解きという魅力的なテーマに果敢に挑んだ野心作ではある。しかし完成に持ち込んでくれた浅野氏には申しわけないが、途中からえらくご都合主義となり腰砕けとなってしまったのは残念です。
北森氏は好きな作家ですが、蓮杖那智が好きでないのでこのシリーズのみ読み残していました。魅力的な内容なのにやたらな暴君の主人公にペコペコの助手というのが面白くない。読んでいるとだんだん腹が立ってきて、とても主人公に肩入れできないのです。他のシリーズのメインキャラクターで本作にも出てくる性悪の冬狐や越間なんかは大好きなんですがねえ。 |
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| No.383 | 6点 | 晴れた日は図書館へ行こう- 緑川聖司 | 2014/04/25 21:30 |
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| 子供向けとなっているが、はたしてこれは子供が喜ぶ内容か否かは不明。子供が主人公となっているから子供向けということなのだろうか。主人公は小学5年生にしては随分物わかりがよく大人びている。
一応謎はあるが、当然ながら残酷な犯罪や殺人などはなく日常の不思議な事柄を取り上げたお話。 素敵なお話となるには一味足りない気がします。 暇つぶしに読むには悪くはないが、すぐ読めてしまうのであんまり暇つぶしにもならないかも。 |
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| No.382 | 6点 | 生存者ゼロ- 安生正 | 2014/04/13 11:32 |
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| このミス大賞受賞作品で本屋に山積みとなっていたものを購入。
なかなかテンポは良い。はじめは強力な病原性を持ち感染力が強く対処不能な細菌の話のようなので何となく昔映画で見たアンドロメダ病原体に似ているなあと思っていたら、途中から大きく様相は異なってきて、一筋縄ではいかない。 かなり面白いのだが、途中からなんだか神がかった展開となってくるのが違和感を覚える。美人生物学者ももう一つ魅力的でない。 この作者の次作がどうなるか興味を抱いています。 良いほうへ振れれば素晴らしい作品に出会えるかも。 |
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| No.381 | 6点 | 珈琲店タレーランの事件簿3- 岡崎琢磨 | 2014/04/13 11:17 |
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| このシリーズ初めての長編なのでちょっと期待して読んだのだが、まあこんなもんでしょう。こういった話では主人公の魅力が大きいのだが、切間美星なるチビのバリスタはやたら気が強く私としてはもう一つ。大体このシリーズは「ビブリア古書堂」が売れたのに乗じて発売された?ような気もするのだが、主人公の栞子さんと比べてだいぶ劣る。まあ好き好きだけどね。
本格物として伏線も張ってあり犯行手段もあまり無理がないのだが、私のように作者に大体は騙されて翻弄されているのが好きなものにとっては犯人は割と簡単にわかってしまってやや興ざめ。 話がバリスタコンクールで次々に起こる奇怪な事件。こんな事件が起きればすぐ中止になるはずなのになぜか続行される。うーん現実性がないんだなあ。 でも作者がしっかり本格物を書こうとしている姿勢はすばらしい。 次作を期待しています。 |
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| No.380 | 6点 | 和菓子とアン- 坂木司 | 2014/03/19 21:04 |
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| これはミステリーというよりテレビの連ドラ風のお話です。読んでいていやみはなく実に読みやすいがインパクトといったものはほとんどない。
殺伐とした小説よりはずっとよいが、アームチェアーデテクチブとして読んだら大いに物足りない。 NHKの連ドラを毎日見て楽しんでいる人にはお勧めだが、複雑なトリックを好む読者だと「なにこれ」といった感じとなるかもしれません。 |
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| No.379 | 4点 | 青空の卵- 坂木司 | 2014/03/12 20:40 |
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| 作者はシャーロックホームズが好きなのか、名探偵役は些細なところから真相に迫りしかもそれがいつも的をえてしまう。女が廊下や道のふちを歩き、フロアの主任を呼べといったからデパートに勤めていると推理する。それが当たっているから話が成り立つのだが、もし彼女がホテルに勤めていてもきっと同じような行動をとると思われるが(実は私はそのように思ってしまったのだ)そうだったらこの話はうまくいかなくなってしまう。
推理小説にはお決まりがあって「銭形平次の銭が当たらず犯人が逃げたということにはならない」と由良三郎氏が書いているのだが、本作品はあまりにご都合主義ではないだろうか。 またひきこもり探偵の鳥居が実に傲慢で、こんな性格のひきこもりはありえないでしょう。坂木もうじうじと泣きすぎでみっともないね。 切れない糸がよかったので読んでみましたが、これはいただけませんでした。 |
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