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こうさん
平均点: 6.29点 書評数: 649件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.489 6点 最優秀犯罪賞- 鷹見緋沙子 2010/05/31 00:15
 本格ミステリフラッシュバックの推薦で読んだ作品です。この作家名は大谷羊太郎、草野唯雄、天藤真の三人のハウスネームでこの作品は草野唯雄の作品です。(天藤真の「わが師はサタン」もこのハウスネームで書かれた作品です)
 十数億の遺産をかけてかつての強盗仲間に社会的制裁、交換殺人の競作をさせるというプロット、隠された真相、ユーモアあふれる結末とうまくまとまった作品でした。
 展開は比較的スピーディでさっと読める作品だと思います。
 この作家をプロデュースした中島河太郎があとがきを書いているのも白々しくて笑えます。

No.488 7点 鎌倉XYZの悲劇- 梶龍雄 2010/05/30 23:59
 天国に行った殺人事件の被害者が地上の私立探偵に捜査させる、という設定も突飛ですが真相の全体像は泡坂妻夫の長編に類似していますが上手く考えられています。
 そもそもの前提からして推理クイズみたいな作品ですが軽く読んで楽しめる作品です。

No.487 7点 ジャンピング・ジェニイ- アントニイ・バークリー 2010/05/30 23:52
久々に読んだシェリンガム物でしたがこれほど作品中の真相究明に成功するのか失敗するのかわからない探偵も珍しいですがこの作品ではまさか殺人事件の揉み消しを試みるとはびっくりです。構成としても論理の試行錯誤、最終章のひっくり返しとバークリーらしい作品に仕上がっています。
 建物内での殺人そのものは大掛かりなものではないですしシェリンガム物はどれものんびりした印象のある作品ばかりですが個人的には海外物の古典にしては読み易くどれも水準作で楽しめます。

No.486 9点 殺す者と殺される者- ヘレン・マクロイ 2010/05/14 22:54
 マクロイは何冊か積ん読があるのですがこれまでまともに読んだのは「暗い鏡の中に」と「歌うダイアモンド 」だけでしたが今回kanamoriさんの点数を見て読んでみました。
 久々に楽しめた作品でした。途中で狙いは大体わかったのですが更なる狙いについてはわかりませんでした。かなりページが残っている所で種明かししていましたが上手くまとめています。kanamoriさんも書かれていますが数々の伏線も見事です。
 未読のマクロイ作品も久々に読み進めていきたいと思わせる作品でした。
 kanamoriさんも言及なさっているヘレン・ユースティスの「水平線の男」もサスペンスとして面白いものですがこの作品の方が個人的には好みです。 

No.485 5点 さまよえる脳髄- 逢坂剛 2010/05/14 22:44
 作者得意分野の作品ですがサイコミステリというより脳神経学的ミステリといった趣きです。書かれている内容は興味深い所もありますがサスペンスとしての盛り上がりも小さく「水中眼鏡の女 」の様な作品を期待したのですが少々違いました。

No.484 6点 キリオン・スレイの生活と推理- 都筑道夫 2010/05/14 22:36
 「なぜ自殺に見せかけられる犯罪を他殺にしたのか」「なぜ完璧のアリバイを容疑者は否定したのか」「なぜ殺人現場が死体もろとも消失したのか」など各短編タイトルは非常に魅力的です。しかし期待したほどロジックを解き明かすという作品ばかりでないのが少し残念です。
 都筑道夫氏の短編の主人公(探偵)については「退職刑事」も「~もどき」などもそうですがあまり魅力を感じません。この作品集はへんてこ外国人キリオン・スレイを配していますがあまりおかしみは感じません。都筑道夫氏の作品は実験精神あふれる作品ばかりでお薦めですが短編についてはこの作品も含めてまあまあかなと思います。 

No.483 4点 三重露出- 都筑道夫 2010/05/14 22:25
 1ページ目にいきなり「日本版翻訳権所有」更に英語でTriple Exposureと書かれていて一見翻訳ミステリのスパイ活劇と思わせて次の章は現実の世界を描写その後交互に現実の本格ミステリとスパイ活劇が並行して語られるという構成は当時としては真新しく、遊び心に富んだ都筑道夫作品らしいと思います。ただ今読むと現実世界舞台のトリックはかなりの瑕がありますし小説部分と現実世界の収束が上手くいっていないと思います。長い間探しても手に入らず数年前再版された時は凄く期待したのですがそこそこでした。また表紙があまり冒頭の意図を組んでないのも残念です。
 あと再読してないので覚えていませんがつじつまがあわなくて理解できなかった所があった気がします。

No.482 6点 方壺園- 陳舜臣 2010/05/09 02:40
 10年近く前購入時、一作目の方壺園の中国人物名が中々頭に入らず10ページくらいで読むのをやめてしまったのですが今読んでも特に問題なく読了できました。
 全体としてオーソドックスなミステリですし文学性というか雰囲気が味わえる作品集だと思います。個人的には「九雷渓」が好みです。

No.481 4点 Xに対する逮捕状- フィリップ・マクドナルド 2010/05/09 02:30
 都筑道夫氏の「黄色い部屋はいかに改装されたか?」でも言及されていた冒頭は非常に魅力的でした。登場人物の一人が喫茶店で顔も見えない女性2人の「何か恐ろしい犯罪計画」の話を偶然聴きゲスリンに相談、という所までは面白かったのですが作品全体としては全然論理的でなく読んだ当時「てっきり本格かと思ったら全然そうじゃなかった」ことに拍子抜けした覚えがあります。スリラーもお話が面白ければ好きなのですがスリラーとしてものんびりした感じで残念でした。これはエイドリアン・メッセンジャーのリストでも同様ですが。

No.480 9点 清里高原殺人別荘- 梶龍雄 2010/05/09 02:15
 この作品のメインプロットの後発作は既読でしたが20年以上前しかも晩年にこれを書くのが素晴らしいですしこれが文庫化されていないのがつくづく残念です。
 人物像や会話などに不満な点はありますし旧制高校シリーズ程の伏線の美学の様なお話ではありませんが現代の読者ならこの作品の方が読み易く楽しめると思います。
 既読作品でも今の所「リア王」や「龍神池」よりこちらの方が好みです。戯曲化や映像化できそうな内容で一読をお薦めする作品です。
 正直「本格ミステリフラッシュバック」を見るまでは「透明な季節」以外全く作品名すら知りませんでしたがこの作者は素晴らしいです。

No.479 7点 捜査線上のアリア- 森村誠一 2010/05/09 02:05
  新人作家がホテルでの殺人に遭遇し容疑者扱いされたことを作品として発表したところ大ベストセラーとなり、というストーリーですが一読して森村誠一がこういった作品も書くのか、という軽い驚きがありました。同じ様なプロットを用いた作品の中では1981年作なので発表は早いですが当時は評判にならなかったのでしょうか。
 進行はスピーディですしストーリー上気になっていた欠点も結果的には意図的ですし良かったです。この作品を推薦していた本からの情報により結末は予想通りでした。同種の作品を読んでいる方の評価は低いかもしれませんが個人的には評価したいです。

No.478 6点 七つの棺- 折原一 2010/05/06 01:34
 密室パロディものとして黒星警部ものとして割と気に入っています。タイトルもばかばかしくていいです。

No.477 6点 螺旋館の殺人- 折原一 2010/05/06 01:29
 倒錯のロンド、倒錯の死角のパロディとして気軽に楽しめる作品だと思います。
 ただエピローグの趣向は作者は他の作品でも何回も使っておりバリエーションが少ない叙述作品とはいえあまり連発してほしくはないです。この作品の方が発表は先なのでこの作品の問題ではありませんが。

No.476 5点 網にかかった男- パトリック・クェンティン 2010/05/06 01:21
 巻き込まれ型サスペンスの様な作品で既読の作者他作品とはちょっと毛色が違う内容でした。
 田舎で生活する画家が主人公でアルコール中毒で問題を抱えた妻が彼が不在の時失踪するが外面のいい夫人の失踪を警察、住人は彼の殺人と決めつけ、というサスペンスです。
 お得意の家族の悲劇を扱った割にはこの夫妻の描写がそれぞれ深みがなく夫人の失踪にもさほどひねりがなくまたこの手のサスペンスはむしろ他作家に類型作がたくさんあるのでパトリック・クェンティンの特長がでているとは言い難いです。ただいわゆる住民、警察の対応はおそろしいなあと感じる描写でサスペンスとしては十分かもしれません。
 真相が推理の余地のないのはいつものことです。 

No.475 7点 死後- ガイ・カリンフォード 2010/05/06 01:10
 50年以上前の異色作です。作家である主人公が身の回りの人間に少なくとも2度殺されそうになる、そして3度目に実際に殺された後幽霊となり誰が自分を殺したか推理して、というストーリーです。
 結構死後の彼の周囲の人間の描写の部分が冗長で作品として不必要に長い気がしますが50年以上前の発表ということを考えると非常に斬新だったと思います。
 フェア、アンフェアということより発想、また作品の枠組みというか構成を評価したい作品です。幽霊がでてくることを除けば現代では常套手段の作品ではありますが個人的には楽しめました。

No.474 10点 暗殺者- ロバート・ラドラム 2010/05/04 03:00
  サスペンス、冒険小説の最高峰でラドラムの既読作品の中でも最高傑作だと思います。今ではジェーソン・ボーンシリーズとして映画化されていますがその第一作目です。(映画は見ていないのでこの作品の面白さがどの程度生かされているかわかりません)
 瀕死状態で小島で発見された男性が一命をとりとめる出だしから記憶喪失で自分の名前すらわからない男が自分の正体をつきとめようと動き出してからの展開、プロット言うことなしです。20年くらい前初めて読んだ上下巻でしたが一気に読まされました。ラストは不消化ぎみですがおそらく続編を踏まえてのことだったのでしょう。ただこのシリーズは続編はいらなかったと今でも思います。「殺戮のオデッセイ」以降は無駄に長く面白くありませんでした。よく言われますがこの次の「狂気のモザイク」くらいまでは長さ的にもまだ読めましたがそれ以降はどんどん長くなっていき面白くなくなっていったのが残念です。
 ただ「暗殺者」は記憶喪失テーマの冒険ミステリ、エンターテインメント小説としては最高だと思います。個人的にはこれと「オスターマンの週末」が好きです。

No.473 6点 百舌の叫ぶ夜- 逢坂剛 2010/05/04 02:39
 百舌シリーズ第一弾です。ハードボイルド好きなら高得点でもおかしくなくスピーディな展開で読ませる作品だと思います。この手の作品らしからぬ例のトリックについてはこの手の作品が好きな読者層にはあまり重要視されないだろうなあと思います。逆に本格好きがトリックを期待して読んでも面白くないと思います。

No.472 6点 デズデモーナの不貞- 逢坂剛 2010/05/04 02:34
 「まりえの客」の続編短編集です。バーでの客とのやりとりの話なのに精神医学系のネタが多いのは逢坂剛らしいですが一番気に入ったのは一番ミステリらしい「闇の奥」でした。
最後の「まりえの影」はミステリとはいえませんが全体として読み易く楽しめる作品集でした。この後続編は出ていないようなのは残念です。

No.471 5点 まりえの客- 逢坂剛 2010/05/04 02:23
 表題作はバー「まりえ」を舞台としたミステリ(?)でバーのママ「まりえ」と客の会話、雰囲気もひっくるめて楽しむ作品でしょう。この作品ではあまり特長はでていませんが。
 それ以外は作者得意のスペインもの、精神医学(心理分析)ものなどが収められていて、どの作品がいいということはないのですが、読み易くお話として面白いものが多いです。

No.470 6点 裏切りの日日- 逢坂剛 2010/05/01 01:48
 一時期はまっていた逢坂剛の処女長編です。(実際はカディスの赤い星の執筆の方が先の様ですが)
 ハードボイルド、悪徳警官物の範疇の作品内に人物消失のトリックが描かれているのは当時斬新だったと思いますがトリックそのものは「あなたはこのトリックを見破れるか」という帯ほどの凄みはなかったです。
 個人的にはトリックとは関係なく読まされた作品で楽しめた覚えがあります。

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こうさん
ひとこと
 私の採点で10点は単なる好みです。10~20年前の初読時の印象で不当に高いのもありますが気にしないでください。トリックものは古臭くても昔初めて触れたトリックだったら高得点の傾向が高いです。
 ガイド...
好きな作家
泡坂妻夫、有栖川有栖、東野圭吾、岡島二人、梶龍雄 
採点傾向
平均点: 6.29点   採点数: 649件
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