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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
Xに対する逮捕状
ゲスリン大佐
フィリップ・マクドナルド 出版月: 1963年01月 平均: 4.33点 書評数: 3件

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浪速書房
1963年01月

浪速書房
1965年01月

国書刊行会
1994年12月

東京創元社
2009年12月

No.3 5点 クリスティ再読 2023/07/18 16:42
これも国書刊行会・世界推理小説全集の目玉として期待された作品で懐かしい。
...「幻の黄金期作家」としてマニア内では有名だったわけだけど、「本格」かというとずいぶん違って戸惑った人が多かろう。うん、改めて読んでみると「警察小説」だよこれ。

場末の喫茶店で漏れきいた会話に、犯罪の企画が進行中だと気がついた劇作家ギャレットが、名探偵ゲスリンの協力を得て「まだ実行されていない犯罪を止める」ことを目的として奮闘する話。謎の派出婦紹介所を追っていると、ギャレットは1日に3回も殺されかかる。そんなスリラーだから「なんで警察小説?」と評者の判断に疑問を持たれるかもしれない。
ゲスリン大佐は元諜報部員というのもあるけども、陰で警察を動かす力もあれば、配下の新聞記者を使って調査させたり、意外なくらい「組織力」の捜査の指揮を取るわけ。で、細い細い手がかりの連鎖をしつこく追いかけていく。このマンハントのプロセスが、それこそ「警察小説」の味わい。

いやだからさ、イギリスのスリラーってかなり多義的なものだと思っている。その後のミステリのいろいろな側面が未分化のままに成立していると見るべきなんだろう。クロフツだって多くの作品がスリラーだし、だからガーヴが「クロフツっぽい」と言われたりする。本作みたいに黄金期名探偵の一人とされるゲスリン大佐作品でも、使われ方は警察小説。

けどね、本作スピード感がないんだな。描写はカメラアイ的なリアリズムだし、カットバックを意識した場面切り替えとか、とても映画的なんだよ。しかし、細かい描写にこだわりすぎちゃって、これが冗長にしかなってない。映画なら一瞬で理解できる「絵」を一生懸命文章で絵解きすることになるから、読んでいてイライラしてくる。
悪い意味で「映画的」というのもあるんだな。ハメットとかヘミングウェイなんてセンスの塊のわけだ。

(本作の有名な冒頭、乱歩好みだと思う。「妖虫」もこんな始まり方だよね。本作の方が少し後だが)

No.2 4点 こう 2010/05/09 02:30
 都筑道夫氏の「黄色い部屋はいかに改装されたか?」でも言及されていた冒頭は非常に魅力的でした。登場人物の一人が喫茶店で顔も見えない女性2人の「何か恐ろしい犯罪計画」の話を偶然聴きゲスリンに相談、という所までは面白かったのですが作品全体としては全然論理的でなく読んだ当時「てっきり本格かと思ったら全然そうじゃなかった」ことに拍子抜けした覚えがあります。スリラーもお話が面白ければ好きなのですがスリラーとしてものんびりした感じで残念でした。これはエイドリアン・メッセンジャーのリストでも同様ですが。

No.1 4点 kanamori 2010/05/03 21:28
ゲスリン大佐が登場するシリーズの第12作。
劇作家が耳にした犯罪計画をゲスリン大佐が阻止するために少しの手掛かりから推理し追い詰めていくというストーリーで、通俗スリラー色の強いミステリです。
著者の作品の特徴は、冒頭の魅力的な謎の設定の割に、最後が腰砕けに終わるという印象ですが、この後期の作品も推理の妙味はあるものの本格とはいえず、サスペンスによる盛り上げ方も稚拙で中途半端という感じでした。


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