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こうさん
平均点: 6.29点 書評数: 649件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.229 6点 針の誘い- 土屋隆夫 2008/09/15 22:09
 製菓会社社長の娘が誘拐され身代金受け渡しの際に現金を運んだ母親が殺され、娘は一向に帰ってこない、というストーリーです。
 土屋作品らしく犯人はすぐわかりますし犯人の見当がつけば動機もあらかた予想がつきます。ただ捜査側の犯人をきめつけた様な捜査は現実的ではないと思います。(他作品も大抵そうですが)また肝心の殺人トリックはお粗末でいくらうまくいった様に説明されても納得いくものではありません。
 また動機の一つは奇抜ではありますが狙いどおりいくかは疑問です。むしろ逆効果になる可能性が強いと思います。
 この作品も現代ではまあまあな印象でした。

No.228 6点 危険な童話- 土屋隆夫 2008/09/15 21:58
 以前読んだときはトリックに感心した記憶がありますが再読で感動が薄れた印象です。
 まず発端の所で容疑者が逮捕されますがいくらなんでもいきなり逮捕されるのはおかしいです。(任意同行ならともかく)また危険を冒してまでの葉書のトリックもはっきりいうと不要ですし、善意の子供を利用するのも危険すぎます。
 月の童話を利用した一連のトリックのつながりは上手く考えられていると改めて思いますが土屋隆夫作品によく見られる理論上はトリック実現可能でも蓋然性、実現性が低いトリックに思いました。
 物悲しいストーリーではありますが今となってはまあまあでしょうか。

No.227 5点 怪しい人びと- 東野圭吾 2008/09/15 21:51
無難な短編集だと思います。一人称視点で語られている作品がほとんど占められているのは東野作品では珍しく新鮮でした。何となく岡島二人の作品ぽい感じがしました。作品自体はミステリというより小噺のようなものもありますがそこそこ楽しめました。

No.226 8点 消失!- 中西智明 2008/09/14 23:27
この作品が15年以上前に書かれたのは驚きです。今読んでも古くなくとても面白かったです。真相を当てるのは難しいと思いますが。

No.225 10点 双頭の悪魔- 有栖川有栖 2008/09/14 23:26
女王国の城もでましたが今のところ有栖川氏の最高傑作はこれでしょう。10年くらい前に徹夜で読んだのを思い出します。

No.224 10点 そして誰もいなくなった- アガサ・クリスティー 2008/09/14 23:25
 中学生のときこれを読んで感動したのを覚えています。登場人物の独白から犯人をしぼっていったつもりがわからず納得できないところもありましたが後年若島正氏の明るい館の秘密を読んで納得しました。何で犯人を含めた全員の独白があるのに犯人が指摘できないのか、という点で叙述トリックが秀逸で感動しましたが自分が読んだ早川文庫版の誤訳は直っていませんでしたし今も直っていないかもしれません。ただ直っていなくても傑作は傑作です。

No.223 4点 ハマースミスのうじ虫- ウィリアム・モール 2008/09/14 23:20
瀬戸川氏の夜明けの睡魔を読んで創元クライムクラブの他のラインナップから推測して読む前はとても楽しみにしていましたが正直書評ほどではなかった気がします。

No.222 10点 第二の銃声- アントニイ・バークリー 2008/09/14 23:19
 個人的にバークリーの作品で最も気に入っている作品です。某有名作品に触発されて書かれた作品ですがフェアプレイに満ちた成功例だと思います。またあの有名な序文を読むためにも一読をお薦めします。

No.221 7点 二重裁判- 小杉健治 2008/09/14 02:52
 日本では珍しい弁護士を主人公にした法廷ミステリの作品です。この作品は冤罪を被害者の家族側から描いた作品ですがそれに重きを置くのではなく主人公によって真相を明らかにするストーリーです。問題となるマスコミ、報道陣の所謂「推定有罪」についての批判が描かれていますが扇情的ではありません。
 無実の兄が獄中自殺したが刑が確定しているため社会からは「有罪」の扱われ方をしているが建前上は無罪で事件は終了し妹の再審請求は不可能であった。その真相を明らかにするために妹がとった手は、という展開のストーリーです。
 妹がとった手は非常に奇抜ですがそういう展開になったのは明らかに偶然だったのと結局ある人物の告白によって明らかにされるものの推理の余地はない点(というよりある人物の告白頼みになってしまっている点)、また現実にはこの兄の事件であれば冤罪にならずに釈放されそうな内容であり甘い点が多い気はします。また自殺の動機もよく考えればかなり独りよがりな所もあり自殺する必要があったかどうかも疑問に思います。
 日本では法廷ミステリが珍しい上に小杉健治の作品は事件の選び方がうまく個人的には好きな作家です。この作品もしみじみとした筆致で描かれている上品な作品で(描かれている人物は上品な人間ばかりではないのですが)読後感は良かったです。

No.220 7点 大いなる幻影- 戸川昌子 2008/09/14 02:27
 戸川昌子処女長編かつ乱歩賞受賞作です。老女ばかりが住む女性アパートが作品の舞台となっている作品です。冒頭の部分で男女の会話より赤ちゃんの死骸を地下室で埋め、この作業を誰かが目撃しているところが描かれ、また視点が変わり米軍少佐と日本人妻の一人息子が誘拐された事件の記述がされその後マンションの住人の視点で日常で行われる様々な事件が描かれてゆきます。
 一見無関係な事柄が最後にマンション移転日に意味をもってつながってゆく作品で乱歩賞の作品中でも記述、構成についての完成度は非常に高いと思います。(ちなみに中井英夫の虚無への供物や天童真の陽気な容疑者たちが落選した年です。)但しその真相がある人物の独白で語られるのですがこの人物の行動はフェアではないもので絶対にうまくいかないと思います。また珍しく「操り」をしているわけですが狙いどおり動いてくれるかどうかが疑問です。またその人物の一連の行動の動機も今では古臭いかな、と思います。その後ラストで語られるエピローグでの一ひねりはありきたりですが上手いと思います。
 トリック(というかある人物の行動)の部分の説明には正直納得できない所はありますが作品自体の出来は良いと思います。

No.219 6点 盤上の敵- 北村薫 2008/09/14 01:56
 円紫さんと私シリーズ以外で初めて読んだ北村薫の作品でした。後味は悪かったですがカットバックに似た(正確には違いますが)スタイルも悪くないと思います。この作品では叙述トリックも使用されていますが読者のみならず作中人物も欺くためのトリック(というか嘘なわけですが)が使用されておりますがその嘘の必然性もあり記述も客観性の見地からはフェアだと思います。
 読んでいて楽しい作品ではありませんが一読の価値はあるかと思います。

No.218 7点 メグストン計画- アンドリュウ・ガーヴ 2008/09/10 23:45
 これも推理の余地のない展開、ストーリーを楽しむ類の作品ですが面白かったです。
 第二次大戦で勇名を馳せるも戦後は一介の役人で一攫千金をただ夢見ている男クライヴが主人公で彼は大金と金のかかる愛人を両方手に入れる方法を思い付く。
 「仕事上手に入る機密を置き忘れ、船で失踪する。新聞社にソ連に情報を売った、と書きたてられてから無事生還し名誉棄損の巨額の賠償請求をする」という奇策を思い付き実行に移すが、というストーリーです。流石に1956年の作品でテレビではなく新聞が主流であり東西冷戦が小道具に使われネタとして古すぎるのは難点でしょうが数あるスパイものとは違い現代でも通用するのでは、と個人的には考えています。
 スリラーといっても本当にのんびりしていますし恐怖感も感じず「甘い」展開などの難点はガーヴの他作品同様ですし本格的要素は全くなく推理の余地はありませんが、逆に全く推理せずに読むには十分面白いストーリーだと思います。
 悪女ものの一面もありますが典型的な悪女ものに比べれば大したことはありません。端的に褒める所が難しい作品、作家ですが昔のスリラーが合う方にはどれも合うのでは、と思います。

No.217 8点 レアンダの英雄- アンドリュウ・ガーヴ 2008/09/10 23:20
 全く本格作品ではなくサスペンス、スリラー一本ですが非常に面白い作家です。
 瀬戸川猛資氏が「夜明けの睡魔」で推薦していたので読んだ作家ですがその評論通りでした。サスペンスは甘くのんびりした進行、ある意味ワンパターンで結末もかなり甘い、という批評そのものですが話が短くストーリーテリングの力で一気に読ませるというのも概ねあてはまります。
 この作品は主人公がヨットで放浪している若者マイクでイギリス植民地の独立解放運動指導者カステラを幽閉された島からの救出を2万ドル+ヨット一艘の報酬で依頼を受ける。依頼者がつけたカステラの崇拝者の助手レアンダと共に救出に向かうことになる、というストーリーです。
 この作品はガーヴの作品の中では最もミステリ的要素が強い作品で一ひねりがあり非常に気に入っています。この作品も非常に「甘い」展開ではありますし他作品同様ワンパターンではありますが展開もスリリングで面白かったです。ただ推理の余地のある作家ではないので本格色を求めると失望しますが昔のスリラーが合う方なら絶対面白いと思います。 

No.216 10点 心ひき裂かれて- リチャード・ニーリィ 2008/09/10 23:00
これもニーリィ節炸裂、サプライズエンディングのあるサイコサスペンスです。
 精神病院から退院したばかりの妻がその当日レイプされた夫ハリーが主人公で、犯人はつかまらず、周囲にレイプ事件が続発して、というストーリーです。描写が他作品以上にきつくエログロがきつい作品であることと最後のどんでん返しが前例というか類似作があるのが難点ですが面白かったです。ただラストは衝撃はありますが嫌悪感が強い方もいるかもしれません。
 本格的手がかりで犯人、真相を当てる作品ではありませんがサイコサスペンス好き、どんでん返し好きならニーリィの邦訳作品はこの作品含めた全作品がお薦めです。

No.215 7点 招かれざる客たちのビュッフェ- クリスチアナ・ブランド 2008/09/07 23:38
 クリスティ以降のイギリス本格継承者といえるブランドの短編集です。作風として作者の「意地悪さ」が特徴ですが本格色は他作家よりも、クリスティよりも強いと思います。
 16作品収められていますがやはり何といっても「ジェミニー・クリケット事件」が一番でした。ただこの作品に収められているのはイギリス版でアメリカ版とは結末が違います。アメリカ版は角川の「北村薫の本格ミステリライブラリー」に収められていますがアメリカ版の方が良いかな、と思います。衝撃の短編という触れ込みでしたが期待しすぎかそこまでではなかったですが。
 それ以外にも水準作の作品が入っておりお薦めです。個人的には長編で持ち味を発揮していると思いますがこの短編集も良かったです。

No.214 8点 復讐法廷- ヘンリー・デンカー 2008/09/07 23:13
 フィリップ・マーゴリンやグリシャム、スコット・トゥロー以降のリーガルサスペンスが流行する以前の力作です。
 デニスリオーダンという男が拳銃を購入し、路上で黒人男性を射殺しその足で警察にかけこみ自首、殺意を自白する所からいきなり始まります。射殺した黒人はリオーダンの娘を強姦、殺害し逮捕されたものの裁判で無罪になった男だった。
 本人は目的も果たし殺意も認め助かるつもりもなく、実際弁護困難な状況で担当した主人公ゴードン弁護士はどう対応してゆくのか、というストーリーです。
 読者にもリオーダン同様そもそもなんでこの黒人が裁判で無罪放免になったのかがわからず、それが裁判を進めてゆく上で明らかになってきます。そしてどの国でも言えるのでしょうが裁判制度の限界、問題点が浮き上がってゆくのが非常に興味深かったです。内容はちがいますが日本の少年犯罪で放免されるケースを思い浮かべてしまいました。
 また本人の自白もあり殺意も立証されているこの老人をどう弁護し、陪審員はどう裁定するのか、という所も見どころです。
 結末はいかにもアメリカ的な結末で、またいわゆる仇討ちを作者が容認しているわけではないでしょうがそういうふうに取られかねない書きっぷりな点はマイナスでしょうがその後の弁護士を主人公にしたサスペンスやサクセスストーリーの作品と違い裁判制度に向き合った作品で非常に面白かったです。

No.213 7点 試行錯誤- アントニイ・バークリー 2008/09/07 22:28
 バークリーの皮肉が効いた傑作です。
 余命2~3か月と宣告された中年男性が生きているうちに善行を行いたいと思い社会に有害な人間を殺すことを決意、実行に移す。しかし別の人間が殺人容疑で逮捕されあわてて自分の犯行を自白するも余命いくばくない男のたわごととしてとりあってもらえず、というストーリーです。
 70年以上前の作品ですが当時は衝撃的な内容だったと思います。難点はとにかく長いことでもっと圧縮できたと思います。ストーリー自体も皮肉が効いていますがラストの展開も一ひねりがあり上手いと思います。
 ストーリー展開が冗長であること以外は満足でした。ただバークリー独特の皮肉はある意味ワンパターンではあるのでシェリンガム物も読み進めてゆくと飽きてくるかもしれません。ちなみにこの作品にはシェリンガムではなく毒入りチョコレート事件から連続してチタウィックが登場します。 

No.212 7点 猟人日記- 戸川昌子 2008/09/07 04:15
 戸川昌子第二長編の作品です。昭和38年作と古さはどうしようもないですが昭和の風俗をよく現わしていると思います。
 プロローグでまず男女の出会い、そして一人の若い女性の自殺が描かれ、彼女が妊娠していたことがわかる。唯一の身寄りの姉がそれを知らされ相手の男への怒りをみせる。その後第一部で夜な夜な若い女性をひっかけ、その成果を「猟人日記」と名付けた日記に詳細に記録をつけている本田一郎が描かれています。そのうち若い女性の連続殺人が起こるがその被害者は彼の獲物ばかりだった。被害者から彼の血液、精液が検出されそして彼は逮捕、死刑宣告される。
 一転して第二部で弁護士が彼を救うため動き出し、真相をつきとめる、というストーリーです。
 だれが可能だったかということを考えれば犯人は簡単にわかりますし動機も簡単にわかります。またミステリとしてはアンフェアな部分もありますし昭和38年当時でも「血液」の扱われ方としては間違っているところがあります。本田一郎という人物像は現在ではありきたりでしょうが当時では非常に珍しかったのではないかと思います。作品の雰囲気、展開も悪くなく長さも手頃で一気に読ませます。ミステリとしては現在では通用しないと思いますが、かなり楽しめました。ただあまり現代作品を読みなれていない時期に読むのをお薦めする作品です。 

No.211 7点 秘密の友人- アンドリュー・クラヴァン 2008/09/07 03:46
 キースピータースンが別名義(といっても本名)で書いたサイコサスペンスです。
 主人公は精神科医で殺人罪で起訴された美少女エリザベスを診察することとなるが、彼女は自分ではなく自分にしか見えない「秘密の友人」が殺したと訴え、その後主人公が恐ろしい事件に巻き込まれて、といったストーリーです。
 事件の真相がわかるとそれに対する伏線が張られていることに気づきますし犯人サイドの狙いがみえてくるのが面白いです。主人公が事件に遭遇してからは最後まで400ページほどかけて1日の話をまとめている書き方も上手いと思います。
 ただし本格的てがかりがあるわけではなく、主人公サイドへの最終的には都合のいい展開がみられる点と殺人というか死体の描写はかなりどぎついのが難点でしょうか。
 個人的に気に入っているのは主人公と犯人の一人の対決の結末の部分と監視されている主人公の妻がある点に気付いて行動に走る所です。
 推理の余地はあまりない作品ですがサイコサスペンスとしては比較的気に入っています。 

No.210 7点 恐怖の誕生パーティー- ウィリアム・カッツ 2008/09/06 00:43
 サイコサスペンスの良作でした。夫の誕生パーティのため夫の友人を呼ぼうと夫の過去を探るも学校、会社、軍に夫の記録がないことに愕然とする主婦サマンサがヒロインで並行して毎年同じ日に鳶色の髪の女性が殺される事件が語られます。
 確かクリスティの短編で同じように過去がわからない夫を扱ったサスペンスがあったはずでそれを元ネタにしているのではないかと思います。そちらは結構クリアカットにまとめられていた記憶がありますがこちらはウィリアム・カッツだけにこってりと描かれているのが特徴です。
 サイコサスペンス、シリアルキラーものではありますが最後の一ひねりが気にいっています。ただしクリステイの前例がある点と展開が非常に予想しやすい点が難点でしょうか。

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こうさん
ひとこと
 私の採点で10点は単なる好みです。10~20年前の初読時の印象で不当に高いのもありますが気にしないでください。トリックものは古臭くても昔初めて触れたトリックだったら高得点の傾向が高いです。
 ガイド...
好きな作家
泡坂妻夫、有栖川有栖、東野圭吾、岡島二人、梶龍雄 
採点傾向
平均点: 6.29点   採点数: 649件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(60)
有栖川有栖(32)
岡嶋二人(24)
折原一(22)
連城三紀彦(20)
泡坂妻夫(19)
石持浅海(17)
梶龍雄(17)
法月綸太郎(12)
東川篤哉(11)