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[ 短編集(分類不能) ]
15のわけあり小説
ジェフリー・アーチャー 出版月: 2011年04月 平均: 6.50点 書評数: 4件

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新潮社
2011年04月

No.4 5点 メルカトル 2021/03/17 22:39
宝石商から18カラットのダイヤの指輪をまんまとせしめる「きみに首ったけ」。大胆な保険金詐欺を企む「ハイ・ヒール」。信号待ちをしている間に恋に落ちる「カーストを捨てて」など15の短編を収録。思わず「やられた!」と叫びたくなる、驚きのエンディング。くすっと笑い、鮮やかに騙され、ホロリと涙する―。そう、面白いのには“わけ”がある。巨匠がこだわりぬいた極上の短編集。
『BOOK』データベースより。

『ブラインド・デート』が8点、『きみに首ったけ』が7点、『女王陛下からの祝電』が6点。それ以外は4~5点って感じです。15の短編の内、実際に起きた出来事に基づいた物語が10篇あり、事実上創作は5篇のみでは淋しすぎます。そんなもの、『アンビリーバボー』でも観ていたほうが余程刺激的でしょう。

どうも期待値が高すぎたせいか、全体的に面白みに欠け、オチも弱かったりなかったり、説明不足のため驚くべきところで驚けなかった感じがします。文章自体も翻訳のせいなのかオリジナルに魅力が足りなかったせいか、十分に楽しむことが出来ませんでした。
ベストセラー作家らしいですが、どうなんだろうと思ってしまいました。でもなあ、何作か長短編を既に購入済みだから、読むしかないんでしょうねえ。

No.3 7点 あびびび 2013/11/28 23:34
15編のうち、10編が実話と言う。それは※マークで分けられいてるが、これがなければ全部が創作と思っただろう。

特に気に入ったのは「女王陛下からの祝電※」と、「ブラインドデート」。思わずニヤリとさせられる珠玉の話だった。この作者の短編で必ず入るのが「メンバーズ・オンリー」のような一代記。いつも力作で、全体的な厚みを増している。

No.2 7点 E-BANKER 2012/10/10 22:12
ストーリーテラー、J・アーチャーが贈る珠玉の短編集。
どの作品もラストの捻り、いわゆる「ツイストの効いた」小気味いい読後感を味わえる。

①「きみに首ったけ」=要は詐欺師の美女にいいようにあしらわれる男の話。軽いテイストでまずは読者を惹きこむ。
②「女王陛下からの祝電」=これはラスト1行のための作品。
③「ハイ・ヒール」=これはミステリー風味の作品。事故による火事とみせかけた放火なのだが、主人公がそれを見破るきっかけとなったある「小物」が効いている。
④「ブラインド・デート」=これも実に良いツイスト感。こんなセンスのいい短編って他にない。
⑤「遺書と意志があるところに」=英語では「遺書」も「意志」も“will”。一人の女性の奸計が見事。
⑥「裏切り」=これもラストの捻りが見事、としか言いようがない。
⑦「私は生き延びる」=これも①や⑥と同ベクトルのストーリーだが・・・
⑧「並外れた鑑識眼」=一人のダメ人間が一級の鑑識眼を持つパトロンの支援により一流の画家になる。時代は下って・・・ていう展開。
⑨「メンバーズ・オンリー」=本編のみ結構な分量のある作品。それだけ読み応えのある好編。一人の男の数奇な(?)人生って感じ。
⑩「外交手腕のない外交官」=このオチは予想がついた。どっかで聞いたことのある話。
⑪「アイルランド人ならではの幸運」=アイルランド人に対する他の欧米人の見方が分かる。「小話」。
⑫「人はみかけによらず」=これもラスト1行のためのストーリーだが、非常に想定内。
⑬「迂闊な取引」=これはブラック風味のオチが効いている好編。伊坂幸太郎「死神の精度」を思い出した。
⑭「満室?」=ふーん。
⑮「カーストを捨てて」=タイトルどおり舞台はインド。感想は「へーえ」。

以上15編。
さすがです。うまいです。
まぁ、作品ごとのレベル差はありますが、トータルで評価すれば十分に評価できる作品集だと思います。
ミステリーの範疇に入らないものが多いので、評点はこの程度で。
(①~⑩プラス⑬は水準以上だろう。とにかく作者のテクニックを堪能しよう。)

No.1 7点 2012/02/18 13:20
小気味のよい、落語のオチのような、いたずらっぽく捻りのあるオチが待ち受けている数々の掌編群をはじめ、男の意地を描いたドラマ、紆余曲折のロマンスなど、収められた短編は種々雑多。傷ものという意味のわけありではなく、面白いのにはわけがあるという意味のようだ。
うち10話は実話にもとづくもので、これらはオチよりも途中の変遷あるドラマが楽しめる。
特に、「メンバーズ・オンリー」は小気味よく爽やかに締めくくるラストを含め、サーガにも匹敵する男の半生を描いたストーリーが素晴らしい。この主人公の執念と意地には感服。
「女王陛下からの祝電」も爽やか系で良かった。「遺書と意志があるところに」は、編中ではミステリー度高し。手口はなかなか巧妙。これも実話なのか。
創作5話の中では、意外なオチで心地よい後味を残してくれた超掌編の「ブラインド・デート」が良かった。わくわく感たっぷりの「満室?」も楽しめた。

平均的には、切れ味鋭い創作短編よりも実話にもとづく短編のほうが良かった。事実は小説より奇なりということなのでしょうか。
かつて、「十二本の毒矢」などの短編集も読んだはずなのだが、筋や読後感の記憶がほとんど残っていない。アーチャーは長編でこそ活きる作家だと感じていたが、本書を読んで短編も決して悪くはないと思った。短編テクニック的には文句のつけようがなかった。

ミステリーと広言できるのは2,3編だけで、トリック付きとなると1編ぐらいか。出来については平均すると5,6点というところが妥当だが、「ブラインド・デート」「女王陛下からの祝電」「メンバーズ・オンリー」がお気に入りなので、それらに免じて、評点は7点。


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