皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ クライム/倒叙 ] さらばその歩むところに心せよ |
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エド・レイシイ | 出版月: 1959年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 4件 |
早川書房 1959年01月 |
No.4 | 7点 | 人並由真 | 2020/01/01 18:06 |
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(ネタバレなし)
「おれ」こと、父親ネイトを敬愛し、相手からも深い愛情を受けて育った少年バッキー(バックリン)。だが彼は意外な出生の秘密を知ってネイトとの袂を分かち、朝鮮戦争での兵役を経て、もと幼馴染の女房エルマを養うために警官となる。生活水準を向上させるため、自分のなかの良心とぎりぎりの折り合いをつけながら日々の収賄なども厭わないバッキーだが、そんな彼はある事件を利用して功績をあげ、私服刑事になるチャンスを掴んだ。バッキーは老獪な先輩刑事のドック(ハリー)・アレキサンダーと組んでの職務のなかで、百万ドルの身代金が要求された幼女誘拐事件の捜査に参加するが……。 1958年のアメリカ作品。評者が先に読んだ、翻訳ミステリファンにもややマイナーな(?)二冊『褐色の肌』『死への旅券』がともに秀作~傑作だったエド・レイシイ。本作はそのレイシイの著作のなかでも評判の良い代表作のようなので、これも相応に面白いだろうと予期しながら読み始めたが、十分以上に期待に応えた出来であった。 ストーリーは、すでに決定的な事態が起きてしまった状況から開幕。そこから主人公バッキーの回想形式で、少年時代、従軍時代、そして警官になってからのエピソードが順々に積みあげられていく。作者も読者もふくめておそらく大半の人間がそうであろう、人の心の中にある善と悪との振幅ぶりを個々の挿話を介してドラマチックに語りながら、次第に抜き差しならぬ局面にはまっていくバッキーの内面と行動の軌跡をつまびらかにしてゆく。 評者が先に読んだレイシイ作品の二冊同様、何よりも小説として実に読ませるが、最後のミステリとしての大技も切れ味鋭い。 いや、本来なら冷静に読んで、本作のこの(中略)を意識すれば先読みすることは十分に出来たはずなのだが、語り口のうまさに引き回されて視界を狭くされ、うまい具合にぶん投げられてしまった。作者がその辺まで計算しながら書いてるのだとしたら、実によくできた作品だと思う。 それでも最後のツイストは、(中略)ながらも見事に(中略)を決めた爽快感でニヤリ。大事なことだが、これもこの作品ならではの文芸があったからこそ際立った(中略)である。 つーわけで、評者にとってレイシイ三冊目の本作もまた、十分に秀作であった。ただし一方でこれが、レイシイの中で特にすごい、突出した作品だとはまったく思わないけれど(それくらいどれもレベルが高い)。 しかしポケミス巻末の都筑の解説にある、この作品の前にレイシイが書いた(エイヴォン・ブックスからぺーパーバックオリジナルで出した)あまり評判のよくない、出来の悪い二冊、というのが妙に気になる。いや、現状の感触からいうと、レイシイがそんな出来の悪い作品なんか書く事あるんだろーかという感じで。実際には、かなり打率のいい作家なんじゃないだろうかねえ。 シリーズものもいくつかあり、未訳のものも少なくないんだから、21世紀のこれからもいくらでも発掘してほしい作家の筆頭だけどね。 |
No.3 | 7点 | クリスティ再読 | 2016/12/18 22:32 |
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マッギヴァーンとか「夜の終る時」をやったからには、悪徳警官モノの名作の誉れ高き本作もやりたいよね。本作そこそこ有名作品でこの作者のMWA受賞作の「ゆがめられた昨日」は文庫になったのに、なぜかポケミスで出ただけ(何回か再版してるはず)と冷遇されている。けど面白いよ。
本作は悪徳警官のみみっちい役得のさまざまな手口をいろいろと紹介しているあたりがとても興味深い。主人公は出生の秘密から義父との関係がおかしくなってちょいとグレて..とかそういう小説的興味の部分も丁寧に描写しているから、主人公が(ワルいことをしているにも関わらず)とても身近に感じられる。 それとレイシイっていえばあれ。カットバック技法だよね。本作も主人公とその悪徳刑事の師匠に当たる先輩との潜伏先の描写から始まって、出生から警官時代に立てた手柄の話やそれから刑事になって悪徳刑事のいろいろな手口を教えてもらう...といったシーンがカットバックされていき、最終的に二人が犯した身代金横取りの経緯と潜伏先からの脱出計画が語られていく。 というわけで、本作は小説として大変おいしい。主人公の描写が丁寧なこともあって、ちょっとヒューマンな視線の温かさまで感じちゃうよ。でしかも、本作はかなり大仕掛けなどんでん返しまで完備。結構日本人好みだから、きっちり宣伝とか入れればそれなりに売れた作品じゃないのかな。あ、あとタイトルがめちゃかっこいい。こういうタイトルにありがちなことだけど、ネタは名訳で名高い文語訳聖書から。Be Careful How You Live って原題よりもカッコイイな。 |
No.2 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2016/07/16 14:04 |
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逢坂剛氏推薦の一冊。倒叙ものなので、犯人はうまく逃げ切るのか?それとも逮捕?または悲劇的な最期を迎えるのか?などというイメージで読み進めたのですが、いい意味でその期待は裏切られました。途中での違和感は、やはり伏線だったのですね(笑)。 |
No.1 | 7点 | kanamori | 2011/01/16 15:45 |
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老練の同僚刑事ドックと共謀して、誘拐事件の身代金を横取りした若手刑事・・・・。
都筑道夫氏の書評集で本書の存在を知り読んでみました。 物語は、ふたりの隠れ家にて、若手刑事・バッキーが過去を回想し、徐々に現在に至る状況が明らかになる構成になっています。 ジャンル的には、悪徳警官もののクライム小説ですが、なにか違和感のある描写が伏線になり、ラストのサプライズに繋がるというミステリでした。バッキーの幼い頃のエピソードがなかなか読ませ、最後にタイトルの意味が浮き彫りになるプロットが巧妙。 |