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[ 警察小説 ]
雨の国の王者
ファン・デル・ファルク警部
ニコラス・フリーリング 出版月: 1969年12月 平均: 6.75点 書評数: 4件

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早川書房
1969年12月

No.4 6点 人並由真 2025/01/09 08:03
(ネタバレなし)
 オランダの大企業「ソベックス」社の当主で80代の古老シルヴェスター・マーシャル。その息子で42歳のジャン=クロードは父の会社で形ばかりの要職に就いていたが、ある日突然、失踪した。アムステルダムの敏腕警部ファン・デル・ファルクは、アムステルダム警察のトップ、フフト総監の勅命もあり、ソベックスの地方支配人F・R・カシニウスと対面したのち、内密の個人捜査の形でジャン=クロードの捜索に乗り出すが。

 1966年の英国作品。
 評者はこれで3冊目の、ファン・デル・ファルクシリーズ。

 邦題は昔から、意味もわからぬまま言葉の響きがカッコイイと思っていたが、出典はボードレール(『悪の華』)だったか。
 
 本来所属する警察組織とは分断された形で、ファン・デル・ファルクが私立探偵風に失踪した中年御曹司の行方を追うメインプロットだが、描写が積み重なるなかで、中盤~後半(のとば口)にてひとつのヤマ場を迎える。

 そのあとの主人公探偵の仮説の組み立て直しはなるほど、ここが評価されたか? という勢いではある。ファン・デル・ファルク視点で結局誰が……が変遷すると、当たり前だが事件の様相は大きく変わってしまう。

 その辺が読みどころなのはわかるが、当時の現代諸国の比較文化論とかを盛り込んだ、作者の分身としてのファン・デル・ファルクの饒舌にやや疲れた。とはいえたぶんこの辺がないと、かなり味もそっけもなくなる作品だろうしな。シークエンスとしては、中盤のスキー場のくだりとかわかりやすい見せ場になっていて面白い。
 ちなみにファン・デル・ファルクが職業警官ながらミステリファンでもある描写が随所に登場するが、チャンドラーにはひとかたならぬ傾注のようでそこらは楽しかった。

 なんだろう。作品の狙いはわかるつもりで、実際の作劇ポイントのそれぞれにも共感を覚えるんだけど、トータルで読むとどこかで要素が相殺しあっている感覚がある。評者にはちょっと苦手なタイプの作品かもしれない(汗)。

No.3 7点 クリスティ再読 2016/10/17 22:27
皆さんはボードレールの話ばかり引き合いに出すようだが、本作のポイントは、「マイヤーリンク(うたかたの恋)」を下敷きにしたロマン味なんだけどな...まあ日本だとヅカファンだったらマイヤーリンクをネタにした人気作が「うたかたの恋」と「エリザベート」と2つもあって馴染み深いんだけど、今さらダリュー&ボワイエがピンとくる人もほとんどいなかろう。創元の文庫の原型を作った世界大ロマン全集には入ってるんだけどね(訳文に日本ではなじみのある邦題の「うたかたの恋」という言葉すらないな...訳者大丈夫か?)。
で、本作警察小説とはいいながら、チャンドラー風の凝った描写の多い文学性の高いハードボイルドみたいな感じのもの。文章はなかなかいい。「九尾の猫」をやった直後でこんなことを言うのも何なんだけど、狙ったわけではないが本作は「後期クイーン的問題」の応用編みたいなものである。ただし、

おれは玄人なのだ。明敏な素人の探偵が活躍するのは、小説の中だけ。本当の警察官は頑固で強情で、鈍重で散文的で、しばしば低俗で心が狭く、ほとんどつねにけちなものだ

なので、素人味の抜けきらぬエラリーのように泣き言をいったりしない。評者は職人好きなので、背中で泣いてるこっちのがカッコいいと思うよ。

No.2 6点 kanamori 2010/09/08 17:46
オランダの警察小説・ファン・デル・ファルク警部シリーズの代表作。
雨のアムステルダムを舞台にメグレ風の警部が地道な捜査をし犯人を挙げる様なストーリーかと思いきやちょっと違った。
本書は、莫大な財産を持ちながら妻を残し失踪した中年男の行方を警部が追う私立探偵小説風のプロットで、ドイツ、オーストリア、南仏と舞台を移しながら、失踪した大会社の後継者の人物像を浮き彫りにしていく。
ボードレール詩集「悪の華」のなかの一編に出て来る「雨の国の王」が示唆するものが、この物語の全てといっていい意味合いを持ち、本書を印象に残る作品にしています。

No.1 8点 mini 2010/06/19 09:12
日本時間で本日夜に2戦目の強豪オランダ戦が行なわれる
ミステリーの世界でオランダと言えば「オランダ靴」・・
じゃなくてニコラス・フリーリングなのだ

フリーリングは国籍上は英国作家なのだが、描く舞台は欧州大陸側で、中心はオランダ
アムステルダム警察のファン・デル・ファルク警部は、自嘲気味な人物造形も魅力で、さながらオランダのメグレと言ったところか
ボードレールの詩の一節を題名の由来とする「雨の国の王者」は、MWA賞受賞も納得の傑作である
冒頭の警部が銃で撃たれる衝撃的なシーンで幕を開け、話は捜査を依頼されるきっかけに戻って経緯が語られる
そして欧州各地を転々と舞台は移るのだが、国際色豊かな舞台設定といい、異国情緒が漂う
やはり警察小説と異国情緒は相性が良いのだなと改めて思った


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