皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 短編集(分類不能) ] 一角獣・多角獣(異色作家短篇集) |
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シオドア・スタージョン | 出版月: 1964年07月 | 平均: 7.67点 | 書評数: 3件 |
早川書房 1964年07月 |
早川書房 2005年11月 |
No.3 | 7点 | クリスティ再読 | 2023/10/04 18:07 |
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異色作家は評者も好物だから、シリーズやってきたいとは思ってる。
でスタージョン。クイーンの「盤面の敵」のライターとして本サイトでは「有名」かも(苦笑)。「人間以上」はSFの大名作で有名だけど、いや意外にこの人、長編少ないんだな。即物的吸血鬼小説の「きみの血を」はポケミスで紹介されたから、以前評者も評している。 で「奇妙な味」を大々的に紹介した「異色作家短編集」の一つでスタージョンも取り上げられている。どうやらこの本は日本の独自編集のようだ。メルヘンあり、SFあり、ホラーあり、恋愛あり、奇談あり、とジャンルで見たら統一感がない...と見たら全然違う。「テーマ」が一貫しているんだね。器用だけど不器用な、とでも言いたくなるくらいに、扱いに困るところがある。「孤独な魂に送られてくるメッセージ」と法月倫太郎氏が評したのが有名だけど、「自他の境界」がクズグズと崩れていくような、奇妙な崩壊感覚を評者はどの作品でも強く感じる。 なので読んでいて「怖い」短編集だった。「人間以上」も実は「ホモ・ゲシュタルト(集合人)」として、ピーキーな能力しかない超能力者たち(他の能力は人並み以下)が集って全体として「人間」を超える話だったわけで、「自分が自分である」自我の壁が崩壊していくことに、恐怖とともに解放を感じるという「危うい」部分がこのスタージョンらしさ、というものなのだと思う。そういう意味だとね、エヴァンゲリオンの人類補完計画ってスタージョンのパクリなんだろうな。 まあだから、どの短編もこの変奏といえばそうで、これを「泣ける話」にもっていけば「孤独な円盤」だし、SFで理屈をつければ「シジジイ」の話になってくる。ミステリ風の「死ね、名演奏家、死ね」だって、ジャズバンドという「ホモ・ゲシュタルト」の話なのである。 (けど「一角獣・多角獣」って名タイトルだと思う...) |
No.2 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2021/04/18 06:24 |
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いかにも異色作家の作品集と言えます。小難しい表現が多いので、一読や流し読みでは意味不明の恐れあり
①一角獣の泉 7点 青年デルは地主の娘リタに翻弄させられ盲目に・・・幻想的な大人の童話 ②熊人形 6点 熊人形が怪物だった?・・・予知夢 ③ビアンカの手 5点 知的障害のある娘。彼女の美しい手に魅せられた青年の行く末は・・・フェチ系のホラー ④孤独の円盤 9点 円盤を目撃した女性が自殺未遂。その理由は?・・・題名の意味が分かる愛の物語 ⑤めぐりあい 7点 青年は理想の恋人に出会う。人間の創造力には、心霊的な世界に触れ、具象化させる力があるらしい・・・摩訶不思議な「シジジイ」の世界 ⑥ふわふわちゃん 6点 男は猫が嫌い。猫も男を嫌っている。その結果・・・しゃべる猫が登場 ⑦反対側のセックス 7点 シャム双生児が殺された?・・・⑤の「シジジイ」の具体的な説明がなされるSF ⑧死ね、名演奏家、死ね 8点 俺は幸運をつかむバンドリーダーが憎い・・・題名にもこめられている怨念 ⑨監房ともだち 5点 同房の男の胸が異常に大きい。脱走するというが・・・洗脳? ⑩考え方 6点 逆の発想をする男。その弟が殺された・・・その行動(考え方)は一瞬面白いと思うが結局同じ結果じゃないの? |
No.1 | 9点 | tider-tiger | 2015/11/27 23:45 |
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さまざまなジャンルが混合した変な小説の詰め合わせです。
合う、合わないはあるかもしれませんが、駄作はありません。 ミステリではありませんが、高得点を付けさせて頂きます。 ミステリしか興味ないという方はスルーして下さいませ。 以下、ネタバレなしの寸評。 ★一角獣の泉 処女が大好きな一角獣ではありますが、このモチーフをこういう風に使って、こういう美しい話に仕上げるのがスタージョンです。 ★熊人形 ――「お眠り」と、怪物は言った。口の中に血がいっぱい詰まっているので、怪物は耳でしゃべった。――本作の書き出しです。 浦沢直樹の漫画にテディベアが出てきた時、自分はこの話を思い出しました。 ★ビアンカの手 内容はあまり紹介したくないので逸話を。 短編コンテストでグレアム・グリーンを押しのけて一等賞を取った作品ですが、「こんな異常な発想で小説を書く人とは関わりたくない」と、とある出版関係者に言われてしまいましたとさ。雑誌に掲載したら読者から抗議の手紙が殺到したというシャーリー・ジャクスンさんの『くじ』に勝るとも劣らない作品です。 原題は Bianca's Hands ★孤独の円盤 円盤って、もう死語ではないかと。今さらそんな話を読まされてもねえ……でも、泣いた。 ★めぐりあい グロリアという女性と恋に落ちるレオ。ある時、彼の前に宙に浮かぶ首が現れた。その首は「単性生殖にはシジジイがあってさえ、生存の価値はほとんどない。シジジィがなければ、存在することはできない」などとわけのわからないことを言う。 なんともつかみどころのない話。シジジィとはなんなのか? 原題はIt Wasn't Syzygy. ★ふわふわちゃん お喋りといたずらが好きな猫の話です。 この短編集の中ではもっともわかりやすい話かな。 ★反対側のセックス 序盤でシャム双生児のような死体が出てきますが、ミステリではなくて、SFっぽく展開して、オチは意外と……。 これも『めぐりあい』に登場したシジジィの話です。実は「めぐりあい」ではシジジィってのがなんなのかイマイチよくわからず、こちらを読んでようやく朧げながらに理解できました。 ★死ね、名演奏家、死ね 『輝く断片』の書評にて寸評済みなので省略 ★監房ともだち なんともすっとぼけた友だちなんですね。とても怖い話なのに笑ってしまいます。 ★考え方 女に扇風機を投げつけられた男は激怒して、女に扇風機を投げ返……さないのです。では、どうするのか? これは傑作です。 |