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[ SF/ファンタジー ] 人間以上 |
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シオドア・スタージョン | 出版月: 1978年10月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1978年10月 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2023/11/28 16:43 |
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スタージョンって言えば、普通はこれ。ミュータントSFの大名作で有名。
ホモ・ゲシュタルト(集合人)、コンピュータ並みの知能・念動力・瞬間移動・テレパシーなどの超能者が一つに「集合」し人間を超えた「人間以上」になる...という話なんだけど、スタージョンだからね、 SF活劇になるわけが、ないじゃん。 評者最近ご縁があるのか、発達障害を抱えた方と一緒に動いていることが多いのだが、そういう方ってピーキーな能力があったりして、「すごいねえ」と思うんだよ。でもね、ホントできないことはまるっきりダメだし、意思疎通にも問題あることも多い。本作の超能力者もこれを極端にしたようなもので、いろいろ人間としての「能力」が欠落する代わりに「超能力」がある。本作はそういう「超能力者」の「内側」から描いた作品になる。 超能力ではなく、いろいろな「人間としての能力」を欠いているがゆえに、社会からは弾き出された人々。こんな孤独な「超能力者」たちが出会い、一つの「ゲシュタルト」を形成していく。とくにこの「魂の出会い」とでも言いたくなるような出会いを描いた三部構成の第一部に、あたかも蒼古の部族の歴史を見るかのような詩的な美があって素晴らしい。 この「ホモ・ゲシュタルト」が一旦形成されてしまうと、「何のために?」という「集合的な自意識」が芽生えることにもなる。自然発生的に「身を寄せ合った」ために、目的がないんだ。アイデンティティを求めて「ホモ・ゲシュタルト」は殺人など犯さざるを得ないこともある...こういう倫理的なアイデンティティの話に展開していくわけだ。 超人(スーパーマン)には、ひどい飢え(スーパー・ハンガー)があるかい、ジュリー?ひどい孤独さ(スーパー・ロンリネス)が? スタージョン節満開だね。だから第三部タイトルが「道徳」だったり、どうやら作品自体の結論は、人類も十分に「ホモ・ゲシュタルト」だとするようなものだったりする。これを「アメリカ的楽天性」とする論調があるみたいだけど、違うと思うよ。 キャラの内面に食い入るような描写が主で、描写の客観性が薄いから、読むのに時間がかかる本。SFっぽさが嫌いな読者に受けるタイプのSFだなあ。 |