皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ サスペンス ] 新車の中の女 |
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セバスチアン・ジャプリゾ | 出版月: 1968年01月 | 平均: 6.50点 | 書評数: 4件 |
東京創元新社 1968年01月 |
東京創元社 1968年10月 |
東京創元社 2015年07月 |
No.4 | 8点 | 斎藤警部 | 2017/07/26 06:50 |
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「おれの顔はこんなふうだろう。。。。?」
盗んだ四輪(クルマ)で走り出す、パリの尾崎豊ことダニーは広告会社の美人タイピスト。残った仕事は社長の自宅でテレワークとしゃれ込み、翌朝旅行に出る社長夫婦(妻はダニーの高慢ちきな幼なじみ)を新車のサンダーバードで空港に送ると、そのまま社長宅に戻、らずいつしかマルセイユ目指して南下一直線。。。。 と・こ・ろ・ガ・・・ 「逆・幻の女」のような、言ってみりゃ「●重・逆・幻の女」のような、、不可解な疑惑と状況証拠に小突き回されつつ時おり恋に落ちたりもするダニーでありました。 語り口はふわふわ幻想、雲の中。。なのに座標くっきりなのは、その枢軸にパリ➡マルセイユの見えやすい一本道がストーリーの脊髄をくっきりレペゼンしてくれるからでありましょう。 各章頭の念押し地図掲載もモノ有り気でありつ有効。 にしても思索のみならず行動まで霧のような幻を纏い纏われじゃないですかっ。てネ。。 その約三十分間。。。。。。そこで分からなくなるのか。。また、三十分、、三十分後? 物語の感触推移は、ざっくばらんに イヤミス➡︎幻想イヤミス➡︎ポジティヴイヤミス(時たまハードボイルド)➡︎真相暴露(いきなり本格) といった所。 投射逆光法… ぁァ、キラキラし てき たよ… 結末披歴の二つ折れ後半から急遽キラキラしだすんだよ。。たとえどんなに主要登場人物の一角がクソ野郎であろうと、この崇高なる物語構築のキラキラ力で自浄圧倒、最ッッ高のエンディングまで独走! この終わりは良いですよ。。 若き日の連城師匠がお手本にしたのも頷け放題、ファッキン・ジャップことジャプリゾの面目躍如作。夏に読もうぜ! |
No.3 | 6点 | makomako | 2016/04/24 20:43 |
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最初は実に読みにくい。翻訳文のせいもありますが、文章が実にあいまいで、その中に何か仕掛けがあるようないような。読み進むにつれて読み難さはなくなりましたが、実に変な感じの展開なのです。
フランス物はアングロサクソンの文学と違って特有の雰囲気があると思っていますが、主人公が良くも悪くもいかにもラテン的なのです。 すらりとした金髪の美人で、社長からサンダーバードを預かるとそれを勝手に乗り回す(日本人ではあまりないシチュエーション)。挙句の果ては遠い南のマルセイユまでいってしまう(ありえないねえ)。初めてあった男と3時間ぐらいで肉体関係を結んでしまう(いいなあ)。これが普通のフランス娘さんなのでしょうか(ちょっとフランスに生まれたかったような)。 ところが初めていった南フランスなのですが、なぜか現地の人は昨日会ったばかりだと、サンダーバードも明らかに修理した車で間違いないといわれたりーー。 わけがわからない展開となるが、こんな話は大体が文章にミスリードするような内容が隠されていると思うのですが、なんせ翻訳文なのでそのあたりがしっくりしない。 翻訳がそれほど悪いとは思いませんが、フランス語で読んだらきっともっと面白いのでしょう。 最終的にはなるほどということとはなるのですが、読むのがちょっとつらかったところを差し引いて、私としてはこの程度の評価です。 |
No.2 | 7点 | kanamori | 2015/08/26 22:36 |
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広告代理店に勤めるダニーは、社長夫妻をオルリー空港へ送った帰りに、気まぐれに社長の新車を駆ってパリから南仏へ向かった。しかし、途中で暴漢に襲われたり、なぜか行く先々で会う人が皆、彼女を知っているという悪夢のような事態が彼女を襲う--------。
作者のミステリ作品としては、「寝台車の殺人者」「シンデレラの罠」につづく3作目。先般出版された新訳版で再読しました。 初めての土地で会う人々が彼女のことを知っていたり、ホテルやカフェなどに彼女の痕跡が残っているという不可思議な謎が魅力的ですが、まあ、想像力を働かせればある程度までは解けないこともありません。しかし、まったくの気まぐれで向かった先で、なぜ”それ”が可能だったのかという謎になると、その真相は意想外でした。ある意味では非常に皮肉的でブラックジョークのような真相です。 ヒロインの一人称で内面をきめ細かく描く章の間の第2章だけが、街道の人々の三人称視点になっていて、不可思議事象を客観的(フェア)に読者に伝えるという練られた構成は見事だと思います。 旧版から転載されている連城三紀彦氏の解説も、フランス・ミステリ通の連城らしい内容です。「私はもう一人の私である。だから私は私でない」という(連城ミステリにも通じるような)レトリックと、本書を「シンデレラの罠」の綴りかえだとする切り口の解説は一読に値します。 |
No.1 | 5点 | 蟷螂の斧 | 2014/02/22 22:19 |
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山田正紀氏が影響を受けた1冊ということで拝読。読後は、島荘氏の「高山殺人行」も本作をヒントにしているなあと思いました。主人公ダニー(タイピスト嬢)は社長が留守の間に、社長の車を拝借し旅に出かける。行く先々で昨日見かけたといわれ始める。自分は昨日パリにいたはずなのに・・・。そしてトランクの中に死体を発見する。記憶喪失、二重人格、または誰かの策略か?といった感じの展開で、彼女の心理を中心に描かれています。原文または翻訳のせいかわかりませんが、読みにくい文章でした。 |