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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ]
薫大将と匂の宮
別題『源氏物語殺人事件』
岡田鯱彦 出版月: 1955年01月 平均: 5.50点 書評数: 4件

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東方社
1955年01月

講談社
1972年01月

旺文社
1980年07月

国書刊行会
1993年06月

扶桑社
2001年10月

東京創元社
2020年03月

No.4 5点 nukkam 2016/02/06 23:47
(ネタバレなしです) 岡田鯱彦(おかだしゃちひこ)(1907-1993)は大学教授が本業でミステリーの執筆は余技の域を出なかったようですが、1950年発表の長編第2作の本書は代表作として評価の高い本格派推理小説です。歴史ミステリー自体、当時の国内ミステリーでは非常に珍しかったと思いますが、舞台を紫式部の「源氏物語」という古典文学の世界を下敷きにしているのが非常にユニークです。ちなみにオリジナルの「源氏物語」は中途半端な終わり方から未完説と完成説があるそうですが岡田は未完説に準拠して本書を書いたそうで、未完に終わった「源氏物語」の続編があり、しかもその内容が世界最古の探偵小説だったという内容です。紫式部の探偵ぶりが「合理的な理屈を積み重ねて行って事件の謎を究める」のでなく「個人の感情による直感」頼りのため非常に心もとないのですが、最後は推理で解決に至っています。「源氏物語」をよく知らない読者(私もその1人)でも困らないように人物関係の説明は丁寧ですが、それでも登場人物が男か女か名前だけではわかりづらいのは辛かったです(薫(男性)、匂の宮(男性)、中宮(女性)、中君(女性)など)。

No.3 6点 makomako 2014/08/10 08:57
 源氏物語は何度もチャレンジしましたが、どうしても最後まで読み切れない。宇治十帖までたどり着けずに降参してしまう。このお話はそのまた後の出来事としての設定なので、当然ながら「源氏」を最後まできちんと読んでいない者にとっては分かりにくいところがあります。勿論そのためにあらすじを書いてくれているのですが、これが源氏物語の文章をそっくり写しているような感じなのでまあ読みにくい。人物の呼び方も何通りもあり、うっかりすると誰のことかわからなくなってしまう。
 それでも何とか読み通しましたが、途中からは本格推理小説といってよい内容となりなかなか面白かった。紫式部が清少納言の推理の挑戦を受け、苦戦の末に--。
 高校時代に習った紫式部日記の「清少納言こそ」や、自分が男だとよかったと両親に言われたといった自慢話などから式部はかなりいやな女の印象があったのですが、本作品ではもっと優しい感じに書かれており式部に対する私の感じ方を変えてくれたように思いました。
 もう一回源氏物語を読んでみようかな。
 なお私の読んだ昭和ミステリー秘宝には雨月物語や竹取物語なども収載されておりむしろこちらのほうが面白かった。ことに新釈雨月物語の妖奇の鯉魚は良かった。

No.2 5点 ボナンザ 2014/07/12 13:17
昭和ミステリ秘宝で読了。表題作は源氏物語の偽作という驚きの内容。完成度も高く、引き込まれてしまう。
短編集も幻想的で岡田の才能に驚かされる。

No.1 6点 kanamori 2010/05/27 18:44
平安王朝ミステリ。
紫式部を探偵役にして、執筆中の源氏物語の続編のモデルとなった二人の男性が絡む殺人事件を描いています。紫式部と清少納言の推理合戦という設定だけで楽しいですし、匂いを小道具に使ったトリックも面白い。
ただ、国文学者という作者の本職を活かした平安朝の雰囲気描写があまり見られないことと、中編並みの分量なので意外とあっけなく終わってしまう点が惜しいと思いました。


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