皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ その他 ] たまごの旅人 |
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近藤史恵 | 出版月: 2021年07月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 実業之日本社 2021年07月 |
![]() 実業之日本社 2024年06月 |
No.1 | 5点 | ことは | 2025/10/19 16:14 |
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単行本の帯に「日常の謎」とデカデカと書いていますが、これはほとんど詐欺です。なんの謎もない、普通小説です。いや、それは「この人はこんなことを考えていたんだ」といったところはあるけど、謎としてフォーカスは全然していないので、これを「日常の謎」としたら、すべての小説が「日常の謎」になってしまいます。
ということで、ミステリではないですが、読みやすさは、安定の近藤印。新人旅行添乗員を語り手にして、旅行記と人情噺をうまくミックスし、するすると読ませる。 旅行記の部分としては、アイスランド、スロベニア、バリ、西安と北京ととりあげて、ツアーで周る観光地を描写していく。人情噺の部分としては、「憧れていた添乗員」、「父と確執がある女性」、「ひとり息子の相手を気にする女性」、「嫌いな国に来た男性」といった人をとりあげる。最終話だけは構成が変わって、舞台は沖縄で、観光地は巡らず、人情噺の部分は、語り手自身となる。 見たことのある素材を熟練の技で料理して、最後には「いい話を読んだ」と感じさせる。 「孤独のグルメ」のゴローさんのように、「そうそう、こういうのでいいんだよ」と言いたくなる読み心地。うまいなぁ。 |