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[ 短編集(分類不能) ] 夢野久作全集 3 ちくま文庫 夢野久作全集 |
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夢野久作 | 出版月: 1992年08月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
筑摩書房 1992年08月 |
No.1 | 6点 | みりん | 2024/12/13 23:43 |
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夢野久作全集3でようやく夢野久作名義の作品が並ぶ。血生臭い『猟奇歌』から始まり、有名所ではやはり『押絵の奇蹟』『鉄鎚』が素晴らしい。他の傑作選には載っていないマイナー作品ながら『卵』『霊感!』も天賦の才を爆発させており、特に後者は私的夢野久作ベスト10に入りそう。ということで、夢野久作の作家としての本領を味わいたい方には、全集1,2を飛ばしてぜひ本作からお読み下さい。
『あやかしの鼓』 7点 改めて再読すると、お得意の独白体形式ではあるものの、この時点ではまだ独特のカタカナ遣いやリズムがなくて逆に新鮮です。「あやかしの鼓」に込められた執念と憎悪が100年間持続し、聞いた者の心を狂わせていくというドラマはまるで『ドグラ・マグラ』に登場する絵巻物みたいですね。持続時間は絵巻物の10分の1ですが。 あとは江戸川乱歩が酷評したことも有名だそうです。SMの話とか如何にも好きそうなのに意外。 『押絵の奇蹟』 8点 これ大好きです。病を患った女性の半生を書簡体形式で流れるように丁寧に描写することで出生にまつわる"奇蹟"が1%でも起こり得そうと納得してしまう。男性視点の独白体だと一種の名人芸のように諧謔的になることが多いけど、女性視点の本作はその清純さに心を打たれる。女性視点の独白体はこれと『少女地獄』以外にあったかな? 『童貞』 5点 恋愛に疎い男性は話しかけられるだけで、相手に好意があると勘違いしやすく、相手のことを盲目的に好きになるけれども、一度拒絶されると魔法が解けるというよくあるお話か。う…はるか昔…身に覚えが… 『鉄鎚』 7点 これも地味ながら面白い。再読して印象に残ったのが、究極のニヒリズムというか傍観主義とでも呼ぶべきなのか、戦局をひたすら眺めて楽しむだけの主人公です。何気にこいつ探偵小説の愛読者なんですよね(笑) 早すぎた虚無への供物。 『怪夢』 5点 「工場」や「病院」はそこそこ好きなんですが、どういう状況なのかはよく分かりませんね。 『ビルディング』『縊死体』『月蝕』『微笑』 採点不能 どれも5ページに満たない短編。『怪夢』と同じく怪奇小説が好きな人は気にいるでしょう。月に女性が宿る『月蝕』が好き。 『人の顔』 6点 怪奇小説と見せかけたユーモア小説。これを読むたびに壁の模様や物音にビビっていた幼き自分を思い出します。 『卵』7点 卵が孵ると幻が現実になる。三太郎は現実を見届けることを放棄し、露子との甘美な幻想世界に閉じこもろうとした。ということらしい。隠れた良作と思う。 『夫人探索』 6点 夢野久作ってこういう変なことばっかり考えてんだろうな…笑 『奥様探偵術』 5点 男の浮気性はいつの時代も変わりません。実に素晴らしい作戦です。 『霊感!』 8点 他の傑作選などには収録されているのを見たことがないけれど、私的夢野久作ベストテンに入るくらい面白い。まさに顎が外れるほどのオチを堪能あれ! 『悪魔祈祷書』6点 『押絵の奇蹟』で言っていた名人芸のような男視点の独白体はまさかの『悪魔祈祷書』が初出だったようです(笑) 夢野久作といえばコレですね。これを機に『死後の恋』や『人間腸詰』 が生まれたんだなとしみじみ… 悪魔の聖書、真偽はともかく、アイデアの使い捨てはもったいない。 『白菊』 6点 脱獄囚がメルヘンの世界に迷い込むお話。やはりまだこの作品の魅力を完全に理解するには至らないというのが正直な感想。 『髪切虫』 6点 『月蝕』と少し共通点を感じないでもない。 『煙を吐かぬ煙突』 6点 記者がスキャンダルをネタに強請りを続けていると想像を絶する巨悪に遭遇してしまうという記者ならではのお話。たしか『少女地獄』にも収録されていましたね。 『涙のアリバイ』 5点 手だけで表現した映画を文字に書き起こすというよくわからない手法でありながら、内容自体は至って普通の探偵小説。 『黒白ストーリー』 4点 「なまけものの恋」はまあまあ 他は明日には忘れてそう。 |