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[ 短編集(分類不能) ] 救済 SAVE 改題『夏の終わりの時間割』 |
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長岡弘樹 | 出版月: 2018年11月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 3件 |
講談社 2018年11月 |
講談社 2021年07月 |
No.3 | 5点 | パメル | 2024/03/11 06:21 |
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身体的、精神的に何らかの疾病を抱えた人物が登場する「救済」をテーマにした6編からなる短編集。
「三色の貌」震災時の怪我の後遺症で相貌失認症になった宮津勇司が、奇妙な体験をさせられる。震災のどさくさまぎれの犯罪。上司の優しさが救い。 「最後の晩餐」不始末を犯した弟分を兄貴分のヒットマン達川が始末しなければならない。兄貴分や弟分への思いやりが身に沁みる。 「ガラスの向こう側」元警察官の伊関が見事な証拠隠滅を行う。伊関の恋心、経験が物を言う。 「空目虫」介護福祉士の高橋脩平は、ある日入所者の名前を聞いて、聞き覚えがあるように感じられた。驚愕の真相、主人公の笑顔が救いになったと信じたい。 「焦げた食パン」石黒は、ノビ師をしている。安斎宅に侵入し、三百万円を盗むことに成功。そして四年後に再び安斎宅に侵入すると。一人の人生を狂わせてしまった身勝手な犯罪。 「夏の終わりの時間割」小学六年の祥は、友達の信が放火事件の容疑にかけられていることを知る。お互いにお互いを思いやる真っ直ぐな友情に胸を打たれた。 いずれの物語も心地良い余韻が残るが、先が読めてしまう作品が多かったのが残念。 |
No.2 | 5点 | まさむね | 2023/03/18 21:55 |
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ノンシリーズの短編集。文庫化に際して改題されています。
6短編が収録されていて、いずれも誰かを救う物語。それはいいのだけれど、どうにも回りくどいというか、「そこまでやらないでしょ」とか、違和感のある行動が多いのですよね。ネタを使いたさすぎというか、何というか。まぁ、作者らしいと言えばそうなのかもしれないけど。 ベストは、そういった作品が多い中でストレートに読了できて沁みた「空目虫」か。 |
No.1 | 5点 | E-BANKER | 2023/01/07 15:06 |
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現在、最も短編を量産している作家といえば、長岡弘樹の名前を思い浮かべる・・・。そんな作家に育った(?)作者が贈る比較的初期作品が並ぶノンシリーズ短編集。
「教場」シリーズがついに木村拓哉主演で連続地上波ドラマ化するなど話題の作者だけに期待できるのか? 単行本は2018年発表。 ①「三色の貌」=随分と回りくどい方法を取るものだ。こういう病(症状?)があるとは知らなかったけど・・・。 ②「最期の晩餐」=これもなんていうか変わった状況だねぇー。こんなややこしいことをしなくても、はっきり言えばいいのに! ③「ガラスの向こう側」=やや安直かな。設定は凝っているのにね。 ④「空目虫」=これはラストの一行でびっくりさせられる。そうだったのかぁー。 ⑤「焦げた食パン」=”焦げた食パン”のある変わった使い方は何でしょう? その答えは・・・(書くとネタバレ) ⑥「夏の終わりの時間割」=これもちょっと変わった設定でなかなか呑み込めなかった。で、オチもこれまでと同一の方向である。 以上6編。 いかにも、作者の初期作品っぽい作品、っていうのが並んでいる印象。どれもラスト当りにひと捻りしてあるんだけど、設定に無理矢理感がある分、読者に察しやすくなっているのが玉に瑕。 収録の全編が「メフィスト」誌で発表されているということだけど、あまりそぐわないように思ってしまう。 最近はだいぶ手馴れてきて、深みのある作品も書いている印象だけど、本作はまだまだ読み応えという点では見劣りするかなという評価。 (ベストはどれかな・・・。敢えていえば④か⑥だけど) |