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[ 警察小説 ]
犬の首
ハラハラコンビ
草野唯雄 出版月: 1982年10月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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KADOKAWA
1982年10月

No.1 5点 人並由真 2022/04/07 06:18
(ネタバレなし)
 都内の所轄・坂下署に勤務する、45歳の柴田与三郎部長刑事、そして27歳で身長190㎝、体重105kgの高見茂作刑事。この両人に彼らの上司、木下吉之助警部を加えた同署の問題刑事トリオは、常日頃から行き過ぎた捜査で上層部を悩ませていた。現在は資料整理の閑職に追いやられている柴田と高見だが、そんな二人は近所のスーパーマーケット「富士ストア」が商業法に抵触する豪華景品つきの抽選セールをやっているということで、調査を命じられる。高見は店内のレジスター・ガール、新田利恵に接触して内偵の協力を願うが、やがて思わぬ事件が発生。事態は、大規模な惨劇へと繋がっていく。

 作者のユーモア・ミステリと謳った「ハラハラ刑事」シリーズ第一弾。元版は1975年8月に、祥伝社のノン・ノベルスシリーズとして書き下ろしで刊行。

 評者は本シリーズは第二弾『警視泥棒』を大昔に先に読んだが、なんで順番通りに第一弾のこっちから読まなかったかというと、本作のタイトルに、なんか動物虐待的な気配を感じたから。昔からそういうものを売りにする? 作品はキライなのだった。
 今回は少し前に、出先のブックオフで角川文庫版(帯付き)を100円棚から購入。まあそういうイヤンな気分で敬遠しなくてもそろそろいいか、程度の興味で読んでみた。

 話が進むにつれて悪い意味で劇画チックな、かつ大規模な犯罪計画が明らかになっていき、そのぶっとんだ内容に若干引く。
 しかし何より問題なのは、ユーモアミステリと公称しているのに、ほぼ全編ニコリともできなかったこと。いや、ああ、ここで作者は笑わせようとしているのだな、と冷えた頭で思わせる箇所は随所にあるのだが。
 むしろ、ゆがんだ犯罪者側の情念というか、シリアスな事情の方がそのグルーミーさゆえに、こちらの内なる感性を刺激した。ブラックユーモアとして受け取るならば、こっちの妙味の方がまだ笑えるかもしれない。

 途中、本当にロー・テンションで読んでいる間は、コレは4点の評点でもいいかと思ったりもしたが、後半、最後まで付き合って、まあ5点はあげてもいいかとも思い直す。ピンチを救われた高見が、恩人のじいちゃんにちゃんとしっかりお礼を言って別れる描写は良かった。あと、作者なりに最後の方で、事件(犯罪)に奥行きを出そうとしている努力のほども感じた。肝心の? タイトルの意味も、予想どおりに? 良くも悪くもインプレッシブ。

 とはいえ、草野唯雄作品で笑うのって、当人がそのつもりで書いたとかいうユーモアミステリで、じゃないよね。ご本人がマジメに著して滑った天然もののときの方が1000倍オモシロイ(その最高傑作が、あの『死霊鉱山』であろう)。
 まあそれでも本作もあれやこれやで作者らしさは感じたが。


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