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[ 警察小説 ]
ハラハラ刑事一発逆転―核ジャックされた大東京
ハラハラコンビ/改題『ハラハラ刑事一発逆転』
草野唯雄 出版月: 1988年03月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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光文社
1988年03月

光文社
1992年02月

光文社
1992年02月

No.1 5点 人並由真 2021/01/29 06:43
(ネタバレなし)
 荒事を嫌う詐欺師のトリオ、神保太・実渕友子・青梅浩二郎は、カモのはずの金持ちの老婆・依田しげとその孫で天才児の洋一に、悪事の尻尾を掴まれた。三人組は使い込んだしげの財産300万前後の返金を要求され、数日内にそれが不可能なら警察に証拠付きで訴えると通告される。金策に躍起になる三人組は、やがて一人の中年男と接触。その中年男=野水の犯罪計画、すなわち小型原爆による日本政府脅迫、の片棒を担ぐ羽目になる。そしてそんな事態は、都内の所轄・坂下署の問題児コンビ「ハラハラ刑事」こと柴田と高見まで巻き込んで……。

 草野唯雄のユーモアコメディ警察小説「ハラハラ刑事」シリーズの第五弾。

 このシリーズは大昔、少年時代に第二作『警視泥棒』(1976年)を読んだような記憶があるが、内容はまったく失念。その後のシリーズ展開を追いかけて読みたくなるような欲求も事実上ほとんどなかったわけだから、あまり面白くなかったのだろう(草野作品のノンシリーズものは、それなりに読んでいるが)。
 今回は、数か月前にぶらりと入った都内の古本屋で本作の文庫版を見かけ、懐かしいシリーズ名が記憶に甦ってきて購入(150円だった)。そんな流れで、今日になって読んでみる。

 しかし、そういう経緯での付き合いだったので、これまでのシリーズ展開がどういう感じだったのかほとんど覚えていない、というか知らないんだけど(なんとなく和製ドーヴァー警部のバディものだったような印象だけはあった)、少なくとも今回のハラハラコンビは主人公ポジションというには語弊があり、むしろ物語の主役は<小型核爆弾を製造して政府を脅迫する>事件そのもの。
 次第に現実化してくる危機的な事態に際して、警視庁やら所轄やら公安やら無数の捜査員が動員され、そんな群像劇がそのままストーリーの中身になる。
 ハラハラコンビも、さらには犯人チームも、また物語序盤のばあちゃんと孫も、みんなあくまで多勢の登場人物のなかの一部、という感じであった。
 
 筋立てのテンポはいいが、核物質入手の捜査範囲などその枠組みでひと区切りしていいの? という違和感があるし(1980年代半ばの科学知識にしても、なんかおかしいような……)、犯人の思惑を超えた突発的事態に対してのキャラ描写とかも、随分とスーダラだったり。

 脅迫状の手掛かりを解析していく当時の鑑識技術の描写はちょっと興味深かったけど、逆に言えば作者が取材で得たソコらへんの知見と、核爆弾製作のそれっぽさ? だけを創作の芯にして、捜査ものの長編ミステリを一本でっちあげてしまったような印象もある。
 それでも期待値を高くしなければ、そこそこ面白い……かな?(汗)
 まあタマには、こんなのもいいや(笑)。


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