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[ ハードボイルド ]
カリフォルニア・ロール
モウゼズ・ワイン
ロジャー・L・サイモン 出版月: 1986年03月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1986年03月

No.1 7点 クリスティ再読 2019/03/20 23:05
80年代をちゃんと生きている探偵モウゼズ・ワインの第4作は、コンピュータ業界が舞台で、日本にまで足を延ばしちゃう話題作である。なにせ小鷹信光とか訳者本人?と思わせる登場人物まで出ちゃう。「007は二度死ぬ」を評者やりついでで、ミョーな日本理解の本作は本作で面白い。
しかしね、本作ではワインの「ヒッピー探偵」というのを買われて雇われた先がアップル社をモデルにしたチューリップ・コンピュータ社である。面白いのはね、この創設者が「ウィズ」であって「ジョブズ」じゃないあたりだ。要するにアップル社=マッキントッシュではなくて、アップル社=AppleⅡの時代なのである。だからCEOのウィズ(もちろんスティーヴン・ウォズニアックがモデル)は本当のヒッピー上がりで、ヒッピー探偵ワインと意気投合してチューリップ・コンピュータの保安課長に任命することになる。まあデザイナー&セールスマン的なジョブズじゃあ、話が回らないからね、強烈にギークで隠遁者めいたウォズの方が話としてはもちろん、面白い。
で、チューリップ社の秘密プロジェクト「ブラック・ウィドウ」の主任プログラマが失踪し、その行方をワインは追うのだが、さらにその奥の「ブロウフィッシュ(河豚)」というコードネームで呼ばれるプログラムを巡って、ソ連、それから日本のエージェントが暗躍しているらしい...というあたりで、ワインは日本に調査に飛ぶ。ワインを助けるのは「マルタの鷹協会」の面々(苦笑)。もちろん、訳者の木村二郎がサイモン来日の世話をしたことからの作品登場ということらしい。
で、このブロウフィッシュ、PROLOGとか三段論法とかエキスパート・システムとか言ってるあたりからして、評者なんかめちゃくちゃ懐かしい。第五世代コンピュータまで出るんだよ。日本の「ブラックカーテン」(黒幕)は通産省と組んだコンピュータメーカーだったらしい。まあこの第五世代とかΣプロジェクトとか、結果的に大失敗で、日本のメーカーも通産省も何も理解できてないことがバレて、現実には恥をさらしたわけだけど、小説の中では事件の背景になっている。そこらへん評者は何ともビミョーな感想だね。
でこのブロウフィッシュのプログラムをワインは手に入れるわけだが、実のところ一種の人工知能というか人工無脳というか、例の Eliza みたいなもので、「悟りを開くために」ゲームで、「ダニー・リグロッドを殺したのは誰だ?」と聞くと「すべての存在には本質的に欠点はない」なんて意味ありげな回答をする。まあここらの質問&回答は Eliza 調で、禅というか Zen とコンピュータ・カルチャーが一体になったアノ時代を髣髴とさせる。ロータスの創立者が会社を売ってヨガスクールを始めた時代なんだよね....
というわけで、サイモンのハッカー・カルチャー理解はそれなりにまとも。知識があればコンピュータがアングラで怪しくて楽しかった時代を追体験できる


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