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[ ハードボイルド ] ワイルドターキー モウゼズ・ワイン |
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ロジャー・L・サイモン | 出版月: 1977年08月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1977年08月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2018/08/14 13:20 |
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なんかねえ、モウゼズ・ワイン褒めちゃいけないような風潮があるように感じるんだけど、80年台にさんざん売れたシリーズなんだよ。だから古本屋の百均ポケミスの棚にわんさと並んでいるわけで、そんなにツマんなかったら並んでないよ。というわけで評者少し肩を持ちたい気分である。
「うんち」「うんちなものか」おれは、リノリウムのフロアにサイモンをあおむけにして、胸当てズボンを脱がした。垂れていた。「一番厄介な問題は一人でトイレに行けない二歳半の息子がいることだ」 モウゼズ・ワイン、ユダヤ系、元過激派、現ヒッピーな私立探偵。妻に逃げられ2児を育てながら仕事する。趣味はマリファナで、寂しくなるとオナニーする...とおおよそカッコ悪いこと甚だしい探偵である。このダメでカッコ悪いのが、いい。オトコなんてこんなものなんだよ。 セックス解放を巡って論争していた女性ニュースキャスターが殺され、その論敵の作家が殺害を告白して自殺した...自殺する前の作家に依頼されたワインは、作家の自殺を疑って捜査を継続する。どうやら作家が持っていた録音テープが自殺の現場から奪われたらしい。録音テープを取り返すよう、ワインはキューバ人ギャングに子供を種に脅される。ヒッピーコミューンのセックス解放カウンセラー、服役中のユダヤ系老ギャング、ハリウッド。ワインは70年代ウェストコーストのサブカルの最中を駆け抜ける。スキゾでカラフルでスピード感のある冒険だ。 とまあ、こんな小説。だから風俗小説の色合いも強くて、ビーチボーイズだの「ローリング・ストーンズ誌」だの、「アメリカン・グラフィティ」だの、固有名詞満載で、ここらを懐かしがって楽しめる人ならいいと思うが...馴染みがないとちょっとツラいかな。けどね、似たような傾向のA.D.Gの「おれは暗黒小説だ」がもてはやされるのを見ると、モウゼズ・ワインが無視されるのは評者はなんか納得がいかないな。A.D.G が楽しめるなら、ワインもどうぞ。 |