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[ 本格/新本格 ]
消人屋敷の殺人
深木章子 出版月: 2017年10月 平均: 6.00点 書評数: 5件

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新潮社
2017年10月

新潮社
2020年04月

No.5 6点 ミステリ初心者 2024/03/19 19:49
ネタバレをしております。

 海外翻訳物を読むときは時間のかかる私ですので、その次は読みやすい国内クローズド・サークルを読むことにしておりますw ということで、この作品を選びました。
 また、舞台となった屋敷は江戸後期の武家屋敷であり、大量の人が消えたという伝説があり、館ものでもあります。これはわくわくさせられますねw
 文章は癖がなく、割と序盤で主観人物が屋敷入りします。土砂災害による偶発的なクローズド・サークルになる王道パターンです。ここまでは読みやすかったのですが、殺人らしい殺人は表面上では起こらず、推理小説特有の誰が・どのようにして・どういった理由で殺したのか?を読者(や登場人物)が考えることができません; なので、中盤あたりからやや読みづらさを感じましたw

 推理小説的要素について。
 これは当てるべきでしたw 伏線も多く張ってあり、気づいた時にはなぜわからなかったのか悔しい思いをしましたw これには別の理由もあるのですが後述w
 失踪した兄を心配する幸田と、流星社の編集である司の視点が交互に書かれております。こうなると、推理小説ファンからしたら、まず真っ先にお互いの視点で登場する人物の認識が間違っているのを疑いますよねw 私も当然、深山・西条と平井・城戸入れ替わりを疑っていたのですが、編集者司の存在がそれを否定してしまいます。ここで私の推理はずっと止まってしまいましたw
 伏線はいろいろありましたねw 流星社女編集者の失踪、新城が幸田と名字読みする所などなど…読み返すと多いですねw 324p時点で、あっそうか!となりましたw
 ただ、騙されておいてなんですが、登場人物の認識をずらすトリックも、時系列の認識ををずらすトリックも、今の時代の推理小説ではよく目にするものです。大変上手い推理小説だと思いますが、オリジナルティという点ではいまいちでした。当てるべきだったと思ったのはこのためですw
 また、どんでん返しありきな展開なので、なにか推理小説的な考えるポイントを途中で与えてもらえればもっと好みでした。ただ、時系列をずらして平行して書くスタイルでは、あまりこういうことは難しいのでしょうね(片方だけに違う犯行はかけず、両方に似た犯行を書くと偶然の一致が過ぎてしまう)。

 総じて、読みやすく、どんでん返しも綺麗に決まった、叙述トリックの優等生的作品でした! 初めて手にした推理小説がコレならばもっと評価が高いと思うのですが、やはり似た作品を多くみると6点ぐらいが妥当かなと思ってしまいますw

No.4 5点 虫暮部 2020/12/18 13:28
 それぞれのパーツを鑑みると私の好きなタイプの筈だが、何故かあまり惹かれなかった。トリックの使い方の問題、ってことだろうか?

 ネタバレっぽいけど気になった点。
 ・作中人物の台詞にあるように“招待状がニセモノである以上、(荒天でなければ)すぐに追い返されるだけ”と言う件が、結局曖昧なままになっている。
 ・Hが別人の振りをしてSと対面する場面がある。当然これはSがHの顔を知らないことが条件。SとHの職業からして、Hがそのことを確信出来る根拠は無い。言い訳の余地はあるけど、そこも含めて作中でフォローすべきだったのでは。

No.3 7点 まさむね 2019/10/31 22:19
 読中、明確な違和感を抱いたものの、リーダビリティの高さから、とにかく先が知りたくなり、ソコを追究することなく読み進めてしまいました。結果、作者の狙いどおりに嵌った訳で、何と素直でいい読者なのだろうと自画自賛(?)しつつ、やはり悔しさが残ります。でも、読み返してみると、非常に巧妙な書きっぷりで、仮にその時点で立ち止まって追究したとしても、結局のところは気付けなかったような気もします。過去の「消人」の真相自体はかなり肩透かし気味でしたが、全体構成としては好きなタイプですね。

No.2 5点 HORNET 2018/09/11 19:59
 人里離れた岬の先に立つ、江戸時代末期からの別荘で次々に起こる事件。いわゆる「嵐の山荘」パターンで、こういう類の作品は筆者には珍しい方なのでは?んなこともないか。

 仕掛け自体は面白いと思うのだが、読み進めていく中で時制の前後が混乱してきて、理解するのに時間を要した(まぁそれが仕掛けなのだが)。全く私的な事情で申し訳ないが、ここ最近の自分の読書が、このテの仕掛けの作品がたまたま続いたので、思った以上の衝撃は受けず、「ああ、そういうことか」と冷静に感心するような読後感になってしまった。
 好みは人それぞれだが、私としては氏の作品は法廷モノのほうが好きだ。

No.1 7点 人並由真 2017/11/25 11:34
(ネタバレなし)
 Q半島の軽磐(かるいわ)岬にある旧家の武家屋敷・日影荘。そこは江戸時代、邸内から空に飛び出す人間が目撃されたり、明治初期に十数人の人間が邸内から忽然と消えたりと複数の不思議な伝説を遺す邸宅だった。現在その屋敷は中小出版社・流星社の編集者兼経営参加者の平井の所有物になっている。かたや「わたし」こと女子大生の幸田真由里は、連絡のつかない兄・淳也が、その流星社が抱える大人気の新人合作作家「黒崎冬華」の片方ではないかと推察した。そんな真由里のもとに、その冬華の名で、日影荘にいるので来てほしいとの連絡が届く。真由里は、合作作家・黒崎冬華のもう一方の片割れと思われる文学青年・新城篤史の兄=フリーライターの誠とともに、日影荘に向かうが…。

 今まで読んできた深木作品以上のリーダビリティでスラスラ楽しめる。深夜の寝る前と、明け方の早朝の数時間で早々と読了。もちろんこちらもアレコレ思いを抱きながら読むが…。
 まあとにかく、人間消失の謎をふくめてあんまり語らない方がいいタイプの作品ね。ある程度の予想はつくものの真相の全貌は見破れず、最後まで楽しませていただきました。評点は、最後の一行が妙にエロいので、それも踏まえてこの点数(笑)。


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深木章子
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