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[ クライム/倒叙 ]
琥珀色の死
トラヴィス・マッギー
ジョン・D・マクドナルド 出版月: 1968年01月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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早川書房
1968年01月

No.2 8点 人並由真 2023/08/21 03:13
(ネタバレなし)
 その年の6月の暑い夜。「わたし」こと事件屋稼業のトラヴィス・マッギーは親友マイヤーと埠頭で夜釣りを楽しんでいた。すると頭上の橋に車が停車し、足にコンクリートの塊を括りつけたまだ若い女を海に投げ込んでいった。マッギーは彼女を救い、自宅でもあるハウスボート〈バステッド・フラッシュ〉号に連れ帰って介抱した。ここからマッギーはまたも新たな事件に関わり合うことになる。

 1966年のアメリカ作品。マッギーシリーズの第7長編。
 順不同にバラバラにつまみ食いしながら、これで早期にポケミスで刊行された7作品は、ここ数年のうちに全部読んだことになるのかな? なんだかんだ言って、面白いもんね、このシリーズ。

 冒頭のメインゲストヒロインとの出会いはいささかショッキングな画面(えづら)だが、大筋としてはスピレインのマイク・ハマー初期作『俺の拳銃は素早い』の系譜だし、つまりはマーロウの『長いお別れ』でもある。これ以上はあれこれ語るのはヤボだ。

 ストーリーは結構、シンプルだが、ワル相手にマッギーがこういう戦法をとるのかとちょっと驚かされた。
 50~80年代の時代を超えたハードボイルド私立探偵小説の主題がかなりコンデンスに詰め込まれ、そういう意味でのフック度はシリーズのなかでもかなり高い。

 いろいろと言いたいことはあるが、ネタバレになりそうなので、ここでは黙っておこう。いつか本作をちゃんと読んだ人だけを相手にたっぷりモノを語りたい。
 なんかそのときは、いいよね~ マッギー、いいよね~! の、賛辞合戦になってしまいそうだが(笑・汗)。

 とにかく今回は、アウトローに片足突っ込んだ正義のヒーローという主人公の立場がかなり物語のなかで活きている。終盤の展開は二重の意味で、こうじゃなきゃウソだ、と思わされた。そこが本作の価値。

 あと、作者も自信を込めたほどが読んでいてうかがえるが、サブヒロインたち(ダンサーのメリメイ・レーンとか、黒人の未亡人学士ノリーン・ウォーカーとか)の造形がすんごくいい。後者に向けるマッギーの冷めてしかし温かい視線もよろしい。
 秀作。

No.1 6点 mini 2016/02/24 10:01
* 私的読書テーマ、”生誕100周年作家を漁る”、第2弾はジョン・D・マクドナルド

ロス・マクドナルド、フィリップ・マクドナルドに次ぐ第3の存在がジョン・D・マクドナルドだ、さらに第4の存在としてグレゴリー・マクドナルドなんてのも居る
読んだ読まないは問わないが、少なくともジョン・D・マクドナルドという作家の名前を知らなかったらミステリーファンとは絶対に言えない
何故ならジョン・D・マクドナルドは決してマイナー作家じゃないからだ

日本にもそういう位置付けの作家が居るが、要するにそこそこ多作で一般大衆にアピールする通俗的流行作家というタイプって有るでしょ
しかも知名度は高いんだが、視野の狭い本格派読者には敬遠されて、当サイトでも作品数の割に書評が少ないタイプ
あぁ、あの作家とかこの作家とか、何となく名前は浮かぶ国内作家居るよね、ジョン・D・マクドナルドもそんな感じかも
ロスマクと比較するのは可哀想だし高尚な読者には向かないだろうが、良い意味でかなり大衆的人気の有った作家なのである

ジョン・D・マクドナルドの代名詞と言えばもちろんトラヴィス・マッギーである、これで当たりを取ると後期は僅かな例外的ノンシリーズを除いてこのシリーズしか書かなくなる
「琥珀色の死」はたまに名作リスト表にも載っているのでシリーズ初期の代表作であろう
このシリーズは題名に全て色の名前が付く事でも有名だが、今回の”琥珀色”は瞳の色からきている
前半は職業が私立探偵ではないもののちょっとハードボイルド調の捜査場面が続くが、相手の実体が分かってくる後半ではクライムノベル調になる、私もジャンル投票ではクライムを選択した
ジョン・D・マクドナルドは複雑なプロットを構築するのが苦手な印象が有って、複数の要素が同時進行するようなイメージが全くなく、1つの問題が解決したら次の問題へ、といったシンプルな物語展開である
その代わり個々の場面の描出は大変に上手く、また各種アイデアも容易に思い付くタイプらしく、こういった分かり易さが大衆的人気に繋がっていたのだろう

ところで各種名作リストにも時々名前を見るので後期の代表作と思われる「The Green Ripper」をどこぞで翻訳してくれませんでしょうか、そう言えば論創社さん、未だジョン・D・マクドナルドには手を出していなかったよね


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ジョン・D・マクドナルド
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