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[ クライム/倒叙 ] 夜の終り |
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ジョン・D・マクドナルド | 出版月: 1963年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 2件 |
東京創元新社 1963年01月 |
東京創元社 1963年10月 |
No.2 | 7点 | tider-tiger | 2022/07/30 19:40 |
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~州をまたいでさまざまな悪事を働き、人々を恐怖させた『群狼』の死刑が執行された。そのなかの一人は執行吏に『ありがとう』と告げたのだった。~
1960年アメリカ。『群狼』と名付けられた四人の犯罪者が処刑される場面から始まり、複数の人間の手記が組み合わされて事件の全容が明かされていく形式を取っている。この形式がとてもよく機能している。他人事のように語られる導入部の執行シーンなど読後に読み返すとカポーティの『冷血』を感じさせるくらいに怖ろしい。 本作の主たる謎は二つある。 『群狼』はどのような事件を起こしたのか。 『群狼』はなぜそんなことをしたのか。 彼らがなにをやったのかは終盤になるまではっきりしない。はっきりしないのだが、読者にひどい事件を想像させるような情報が提供されているので、サスペンス度は高い。 彼らがなぜそんなことをしたのかについては最後まではっきりしない。ただ、彼らが最初の殺人に至った過程、その描写が素晴らしい。動機はどうでもいいんだと納得がいくように描かれている。本作白眉の描写だと思う。ジョン・Dの描写は絵になって頭に浮かびやすい。 序盤、中盤は本当にいい。群狼のうちの一人にスポットを当てることにより、普通の人間、特に若者が犯罪に手を染めてしまうほんの些細なきっかけがうまく描かれている。若者が集団になり、無軌道になっていく過程もよく描かれている。 ただ、終盤に変な作りこみを感じてしまい、それがどうも大きな瑕疵のように思えるので減点して7点。 本作とトルーマン・カポーティ『冷血』との読み比べも面白いかもしれない。 |
No.1 | 7点 | 空 | 2013/12/10 22:40 |
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4人の若い男女の電気椅子による死刑執行の模様を、死刑執行人が友人に書き送った手紙で幕を開ける犯罪小説。通常の三人称小説形式に、死刑になった若き犯罪者たちの弁護士の覚書や、犯罪者の一人が留置所内で書いた手記を取り混ぜる手法は、効果を上げていると思います。
読んでいて、何となく『郵便配達は二度ベルを鳴らす』を連想してしまいました。若者たちの「理由なき」凶悪犯罪を描いたということでは、むしろカミュの『異邦人』やシムノンの『雪は汚れていた』が近いのかもしれませんが、やはりアメリカらしいハードボイルドっぽい雰囲気が、ケインとの類似性を感じさせるのでしょうか。ただし、本作では弁護士の覚書を通して、グループであるからこその犯罪であることが強調されています。 また、犯罪者の手記により、最初の殺人に至る彼等の心理状況が説得力を持って描かれているのが、本作の特徴と言えるでしょう。 |