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ミステリの祭典

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しゃんてんさんの登録情報
平均点:6.55点 書評数:33件

プロフィール| 書評

No.13 4点 神曲法廷
山田正紀
(2003/05/05 16:45登録)
 私が、『神曲』など読んだ事がなかったり、現在の司法の世界に興味を持たないからだろうか、主人公が何故『神曲』にはまっているのか分からず、また、主人公が検事の社会に持っている不満もピンとこなかった。また、主人公へと語りかけてくる神の声(?)のようなものに対して、主人公は恐怖を感じているのだが、私にはその声に迫力を感じることができなかった。
 主人公がどういう人物なのか感覚的に把握できなかった(想像力の範疇を超えていた)ため、主人公が対面している事件にも関心が持てず、物語を読み進めるのが、私にはなかなか苦痛だった。精神障害や日本人論に関する記述にも興味をもてなかった。
 しかし、ラスト4ページには戦慄を覚えた。すごい。でも、前半で私が退屈さを感じていなければもっと楽しめたのに。


No.12 9点 トキオ
東野圭吾
(2003/05/05 11:53登録)

 東野氏の書く小説とは思えないほど、すごく後味のよい話。
 SF的な設定を使っていて、しかもそれが何故おきたかといった説明をしてないにもかかわらず、荒唐無稽な印象は少し設けなかった。それは、私が登場人物の言動にリアルさを感じたためだろう。主人公の駄目さ加減、トキオにたいする反応、家族への複雑な感情。あるいは、主人公に対する周囲の人間の反応。いずれもすごくリアルである。トキオが優秀すぎる気もするが、でもさほど不自然には感じなかった。
 物語の中盤から後半にかけてはスリリングで主人公たちが対面している状況が如何に展開するのか、登場人物たちはどう動くのか、非常に楽しく読めた。
 トキオが死ぬのは物語の冒頭でしめされている。そのため、この物語の結末はある程度想像がつくといってもいい。にもかかわらず読んでしまうのはどうしてだろう。ラストでは結局トキオの死が描かれる。にもかかわらず、後味のよさや切なさやほのかなしさ、暖かさを感じてしまう。

 東野氏はこれまで『白夜行』や『嘘をもう一つだけ』など、「懸命に生きようとする人間」を描いて、かつ後味が悪い物語を書いてきたに思う。今回は「死に行く人間」を描いて後味のよい物語を書いた。すごい作家である。


No.11 5点 ファンタズム
西澤保彦
(2003/04/18 08:02登録)
冒頭の男の狂気を描いた部分は結構読みにくかった。最初から最後まで良く分かりにくい。(反転)ラスト近くで、主人公は実はアメリカで犯罪を犯していたこと、が明らかになる。これは分かった。おそらく各話で描かれている反抗時の描写は、アメリカでのものなのだろう。しかし、アメリカでの犯行と日本での犯行を、同時に同じ指紋の持ち主が行った、ということは、どういうことなのだろう?やはり、これはホラーなのだろうか? それとも一卵性の双子なり、指紋の偽造なりといったトリックが存在するのだろうか? 良く分からない。後味が悪い。小野不由美氏の『トウケイ異聞』と似ているが…。本作のほうがより嫌な感じ。だが、印象に残りそうなのも事実。


No.10 7点 レイクサイド
東野圭吾
(2003/04/15 11:24登録)
 なんとも不思議な後味の悪さを残した作品。 主人公たちはおとなで、その大人の汚さ、醜さ、エゴの充満しきった世界をリアルに描けているように感じた。
 主人公たちのような人間は私は嫌いだし、読んでいて、むかつくのだけども先が読みたくてたまらなくなってくる。ここに書かれている大人は汚く、醜い。しかし、否定しきれない。主人公の汚い考えに共感できさえする。共感できるからこそ、 余計に汚くいやらしく感じる、
 どんでん返しがあることは予想していたので、驚きはしなかったが、それでも思わずため息をついてしまう。


No.9 6点 星降り山荘の殺人
倉知淳
(2003/04/15 11:23登録)
 会話が読みやすい本格ミステリ。題名からわかるように嵐の山荘モノ。実に典型的な展開。もう、本格ミステリにありがちな展開。しかし、ありがち過ぎて、ん…これは、このありがちな展開と、小説の形式を利用したトリックなのではと疑ってしまった。その疑いは当たっていたが、しかし、自分の推測が当たっていたにもかかわらず、読んでいて飽きなかった。まっとうな本格推理かと言われると、首を傾げてしまうが、しかし、本格ミステリにありがちな幼稚さ(決して作者が幼稚だとか、それが悪いとか言うのではない)を持っているように感じてすごくほほえましく、また、ワクワクさせられた。


No.8 7点 プリズム
貫井徳郎
(2003/04/15 11:21登録)
 章ごとに記述者が変わるミステリ。記述者ごとに、被害者の人物像や事件の見え方が変わるのも面白い。それぞれの記述者の導き出した結論は、必ずしも論理的でない。思いつきに過ぎない。しかし、それがその記述者にとっては、非常に真実味があるというのが納得できた。本格ではなく、推理することの面白さが味わえた。しかも、何度も読み返したくなる構成もうまい。


No.7 5点 ドリームバスター
宮部みゆき
(2003/04/15 11:19登録)
 『ジャックイン』『ファーストコンタクト』の2編は面白い。前者ではまま、ありがちな主婦の悩みと、夢の持つ不安感が結びついて、どきどきしながら読めた。『ファーストコンタクト』でも、現実の人間関係と不可思議な夢が、どこかしらこわく、同時に私の冒険心をくすぐる。
 しかし、全編に共通して言えることだが、私の目には主人公がどうにも、魅力的に映らず、なかなか感情移入が出来なかった。どこか物足りない。


No.6 5点 ロシア幽霊軍艦事件
島田荘司
(2003/04/15 11:18登録)
 前半の謎の手紙と不可思議な写真は、非常に魅力的な謎に感じられる。それが、歴史と絡んでくるのも面白い。
 しかし、謎が魅力的でもあるが、謎解きの部分が私には今ひとつであるように感じられた。
 探偵役は、提示された手がかりのみから、合理的な推理で結論を導き出したとは言いがたいのではないか、と思う。また、手がかりを集めていく調査過程についても、あまり面白さを感じなかった。
 そして、まだ残りページがたくさんある段階で真相が明かされる。そこで、私はどんでん返しを期待して読んだのだが、どんでん返しもなかった。
 前半の謎がすごく面白かっただけに、後半が私には残念なものだった。


No.5 5点 依頼人は死んだ
若竹七海
(2003/04/15 11:16登録)
 ほとんど葉村の一人称で語られるが、時折入る葉村の突っ込みがいい。嫌悪感がにじみ出て、シビアで、滑稽にも感じられるが、怖く感じるときもある。
 各短編のどんでん返しは鮮やかで、そのどんでん返しによって明らかになる真相はどれも醜い。すごく嫌な気分になる。しかし、それはこの作品がすごいからだろうが。
 ラストは不透明な感じがして、私には少しわかりにくかった。しかし、それでも、すごく怖い。やはりいやーな感じになる。自分や人間について色々と考えさせられる。やっぱり人間が一番不気味で怖い。その人間の不気味さな怖さが上手く描けているように感じた。
 しかし、この作品の続編の『悪いうさぎ』のほうが、私の好みに合っているようだ。この作品はこの作品で、有意義な読書体験が出来たのだけど。


No.4 5点 ブードゥー・チャイルド
歌野晶午
(2003/03/04 21:35登録)
 出だしは面白く、提示される謎は魅力的である。「今ぼくは第二の人生を送っています」という書き出しで始まる謎にどのような答えが与えられるのだろうか? 非常に興味を持って読んだ。おそらくこの話は本格ミステリなので少年の申そうと見せかけて、実は実際にあったことだろうと推測。どんな奇抜な真相と解決法で楽しみだった。 しかし、中ほど辺りでおそらく核となる真相と犯人と目される人物を考え付いてしまった。それはあることを知っているか、知らないかだけのクイズ的なもので、あまり本格ミステリという感じはしない。しかし、であれば、その謎がいかにして解け、少年は、周囲の人間はどのようにその答えを受け止め、どのように解決するのかに関心がいき、前半とは別の意味で期待しながらページを喰ったのだが…謎は突然現れた名探偵にとって唐突に解決される。主人公はただ呆然としているだけ。かと思えば、次の瞬間にはあっさりと真相を受け入れている。少年にとっての真相はその程度のものだったのか? おそらくおきていれば、問題の種となる父親は都合よく眠ったまま。消化不良で不満が残った


No.3 7点 魔球
東野圭吾
(2003/02/23 09:51登録)
 人間関係に関する描写が丁寧で、状況が目に浮かぶ気がして、すらすらと読めた。最後に明らかになる真相もほのかなしい。
 しかし、真犯人には反感を抱いてしまう。そういう状況になったらそう考えるのが普通かもしれないとは言え…甘ったれるなといいたい。でも、人間ってそういうものかもしれないな、と考え直して少し暗い気持ちになる。


No.2 8点 依存
西澤保彦
(2003/02/12 17:57登録)
 前作に比べて登場人物が変わりすぎている気がしてびっくりした。前作を読んだ限りではそんな関係だとは思わなかったのだが…私が読み違えていたのだろうか

 観念的で浅く、安っぽい気がしないでもない。しかし、理屈や観念でしか愛や苦しみを認識や表現できない子供と大人の間の大学生らしさ(私が考える大学生らしさ)やその時期に特有の苦しみやせつなさが出ている気がして、非常に説得力があるように感じ、話にのめりこむことができた。
 対話形式の謎解きの部分も、面白い。やはり推理していく楽しみを覚えた


No.1 5点 阿修羅ガール
舞城王太郎
(2003/02/01 15:17登録)
 全体的によくわからない物語という印象を受けた。
 第一部はやっぱり訳がわからなかったけれども、テンポがよくすらすら読めた。それなりに切なく、それなりにつらく、それなりに幸せで、それなりに壊れている女子高生がそこそこ魅力的に書けているのではないかと思った。
 ところが第二部はさっぱり判らない。私の読解力がないせいなのだろうけど。

 第三部の最後では、コレまでの舞城氏の作品のラストと同じく、主人公が現状を肯定できるようになって何となく幸せな気分になれたのだが、それでも、消化不良な気分も強く感じた。

 グルグル魔人とか、桜月淡雪とか、いろんなことが中途半端なままほっぽり出されているような印象を受ける。

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