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ミステリの祭典

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sophiaさんの登録情報
平均点:6.92点 書評数:384件

プロフィール| 書評

No.204 4点 叙述トリック短編集
似鳥鶏
(2019/03/14 02:06登録)
●ちゃんと流す神様 6点・・・終わってみれば最初の話が一番マシという実に萎えるパターン。
●背中合わせの恋人 5点・・・勘違いの経緯に工夫がない。本当にただの思い込み。そして話が無駄に長い。
●閉じられた三人と二人 3点・・・これは酷い。
●なんとなく買った本の結末 4点・・・いや、通話記録は?作中作の作者の力量不足のせいにして逃げないで。
●貧乏荘の怪事件 4点・・・途中で呼び名が変わるから違和感しかない。倒れた酒瓶の論理もおかしい。
●ニッポンを背負うこけし 5点・・・ここまでの各章の人物描写でもっと丁寧に伏線を張っていないと驚けないです。微かな違和感を感じさせて来ないと。
●あとがき 採点不能

こんなタイトルの本を出されて叙述トリック好きとしては読まないわけにいかない、そう思って手を出したのですが失敗でした。冒頭の「読者への挑戦状」で上げに上げたハードルを全く越えられていません。ほとんどの話が酷いですし、伏線が足りていないため「やられた」と思えません。全編通して仕掛けられている叙述トリックに関して特にそう思います。主要人物の人物描写をあまりしていないのは敢えてのことだと思われますが、それは揚げ足取りを避けるための逃げの手段。攻めの姿勢を見せて欲しかった。「あとがき」による解説も野暮なような。結局、叙述トリックというものは宣言してから仕掛ける物ではないなと再認識しただけのことでありました。


No.203 9点 ボッコちゃん
星新一
(2019/03/07 00:04登録)
著者の作品には従前より興味はあったものの、作品の数が多いためどれを読めばいいのか分からずにいましたが、最近読んだ米澤穂信「本と鍵の季節」に星新一の代表作のような触れ込みで本書のタイトルが出てきたので読んでみました。とても50年近く前の作品とは思えません。ショートショートというジャンルを少し軽く見ていました。ただし前半に比べると後半はキレが落ちた気がします。「ボッコちゃん」「包囲」「不眠症」「生活維持省」「鏡」「人類愛」「ゆきとどいた生活」「妖精」「おみやげ」が特にお気に入り。最後に「ボッコちゃん」あるあるを。博士の家に強盗入り過ぎ。金庫開けようとしすぎ。


No.202 6点 沈黙のパレード
東野圭吾
(2019/03/02 18:43登録)
ミステリーランキングで高評価なのでかなり期待して読んだんですが、意外と大したことない?多くの人を巻き込んだせいで、犯行の工程が無駄に細かくなっています。アリバイトリックはあれで成立しているんですかねえ。その気になれば別のところからも調達できるような物をフェイクに使うことが有効なのか。歌手の卵の凋落の経緯は陳腐ですし、登場人物のキャラ造形も類型的で没個性。こういうところは初期の作品の頃から変わってないですよね。終盤の囚人のジレンマ的なところは少し面白かったです。まあそこだけですかね。


No.201 7点 本と鍵の季節
米澤穂信
(2019/02/25 19:23登録)
図書委員の男子高校生二人の友情(?)物語。謎解きは基本的に松倉君が主導権を握っているのですが、堀川君の方も単なるワトソン役には収まらず、後半の話では松倉君を上回る冴えを見せます。地味ではありますが、日常の謎という括りで見ればどの話も高い水準にあって楽しめると思います。


No.200 7点 ホワイトラビット
伊坂幸太郎
(2019/02/05 21:59登録)
ギミックを成立させるために行った二つの場面の時間軸の微妙なずらしが見事。「レ・ミゼラブル」へのオマージュであろう作者の視点からの注意書きが要所で挿入されるのも最初は鬱陶しかったですが、時間軸のずれたこの作品を読みやすくするのに効果を上げています。なかなか新しい趣向で楽しめました。


No.199 4点 オーパーツ 死を招く至宝
蒼井碧
(2019/01/31 00:21登録)
●第一章「十三髑髏の謎」
事件発覚後にアリバイと動機ばかりを論じていますが、密室にした方法も論じるべきでした。特に鍵がどこにあったのかを強調しておかないと。それをしなかったばかりに真相が明かされた時の驚きが半減してしまっている。まあその辺りをきちんとやったところで、下らないトリックであることに変わりはありませんが。
●第二章「浮遊」
現場に黄金シャトルがいくつあったのかをはっきり書いてくれませんかねえ。私はひとつだと思っていたので真相を読んで混乱しましたよ。しかも密室トリックが「○○を持ってました」って・・・多分一番酷いでしょう、この話。
●第三章「恐竜に狙われた男」
第二章を超えないでくれ・・・。
●第四章「ストーンヘンジの双子」
そんなバランス悪そうな物は風で倒れるでしょう。それから死体発見時の描写が下手です。誰がどこで死んでたのか分かり難くて混乱します。

総評。つっこみどころ満載。終わってみれば第一章が一番マシだったという。各話少し長めの推理クイズという感じで、小説を読んだという気分になりませんでした。第三章はやや趣向が変わって期待したのですが、肝心のトリックが一番酷い。そもそもミステリーとしてどうこう以前に小説家として未熟です。描写力が乏しいため情景が頭に浮かびにくい。状況説明も雑で分かり難いところがしばしばあります。ここで一行空ける意味はあるのか、とか。この作品の読みどころはオーパーツに関する薀蓄部分だけです。よく出版しましたよねこれ。今後ミステリー作家を続けるのであれば色々修業し直した方がいいと思うのですが。


No.198 9点 戦場のコックたち
深緑野分
(2019/01/24 18:20登録)
まず作者の世界の歴史や軍事への造詣の深さに参りました。タイトルやあらすじからもっとコミカルなものを想像していましたが、どの事件も陰惨ですね。そりゃそうですよね、戦争小説ですから。その戦争小説がミステリーと上手く融合しています。解かれた謎が次の戦場へと繋がって物語を構築していき、読者は次第に引き込まれていく。感受性豊かながらも弱さや醜さを抱える主人公の、仲間たちに支えられての成長物語でもあります。「コック」という設定はそれほど関係ありませんでしたが。


No.197 7点 AX
伊坂幸太郎
(2019/01/19 17:05登録)
3編目までのほのぼのっぷりにどうしたことかと心配になりましたが、4編目からこのシリーズ本来の殺伐とした感じが出てきて一気に面白くなりました。3編目までは言わばフリのようなものかもしれません。そう考えると連作短編集という体裁は採っていますが、実質的に一つの長編かと思います。第4編のある仕事の下りが本編から浮いていたのは伏線だったからなんですね。最後に余談ですが、伊坂幸太郎ほどの作家が「いつぶり」などというおかしな言葉を使っていることに驚きました。


No.196 7点 マリアビートル
伊坂幸太郎
(2019/01/11 19:01登録)
人物やトランクの複雑な動きをよく考えて物語が作られてあり、読者は頭の中に常に列車の見取り図を描いて展開を追うことになります。終盤に視点人物のバトンタッチが行われるのは、アイラ・レヴィン「死の接吻」を思わせる構成でワクワクしたのですが、そこがこの作品のピークになってしまった気がします。なお、この作品を読む前に「グラスホッパー」を再読していて正解でした。読んでいないと面白さが半減とまでは言いませんが、2割減ぐらいはします。


No.195 7点 グラスホッパー
伊坂幸太郎
(2019/01/08 00:33登録)
「マリアビートル」や「AX」を読む前に、殺し屋シリーズ第1作を復習がてら十数年ぶりに再読。だいぶ忘れてました。スピーディーな展開で読者を引き込む手腕はさすが。3人の視点人物の切り替えも効果的。ただしあまり中身のない血腥い話であり、伊坂版「パルプ・フィクション」といったところでしょうか。なお鈴木と蝉については分かりますが、鯨の行動の動機付けがいまいち分かりませんでした。最後の決着もあっさりとしたものでした。


No.194 6点 この闇と光
服部まゆみ
(2018/12/17 17:41登録)
全て「レイア」視点の物語であり、「父」の方の素顔があまり明らかになりません。ああいうことを行うに至った明確な動機が存在してほしかった。そこに期待して読んだので残念な結果になりました。この作品は中盤で明かされる物語の舞台に驚けないとアウトかもしれません。でもそれは序盤に分かり易い伏線がひとつありましたからねえ。文字に関するところですが。


No.193 5点 リカーシブル
米澤穂信
(2018/11/30 00:19登録)
正直なところタイトルもピンと来ませんし、あらすじを読んでもあまり興味を引かれなかったのですが、私の好きな米澤作品でなおかつこのミス上位に入っていたので読んでみました。結果、やっぱり期待はずれでした。半分読んでも3分の2読んでも面白くならない。情景描写や回想が多いですし、伏線も次々に出てくる割に途中で回収されることがなくストレスが溜まりました。最後まで読んでしまわないと何も分からないタイプの作品で、「さよなら妖精」並みに読むのに根気が要りました。それで肝心の真相ですが、ちょっと無理があると思います。いつの時代なのかと。しかも結局何一つ解決してないですよね。


No.192 6点 許されようとは思いません
芦沢央
(2018/11/15 17:56登録)
●許されようとは思いません 8点・・・表題作だけのことはあります。
●目撃者はいなかった 7点・・・「死刑台のエレベーター」ですね。でもこれは結局のところ真実を証言してやる義理はないのではないですか?その後の駆け引き次第でしょうかね。
●ありがとう、ばあば 7点・・・これはミスディレクションが上手かった。動機はそっちの方ですか。
●姉のように 5点・・・単純な叙述トリックですが、ネット掲示板の書き込みの「人間、自分が育てられたようにしか育てられないからね。」云々の部分がアンフェアだと思うのですが。
●絵の中の男 6点・・・悪くないプロットですが、独白というスタイルを採ったことがあまり成功していない気がしました。

全体的に米澤穂信っぽい毒だと思いました。しかしながら米澤作品と比べると何か物足りない(表題作除く)。ストーリーテリングの差でしょうか。オチ以外印象に残らない話が多いですからね。それとタイトルの付け方がどうも上手くない気がするんですよね。後でタイトルを聞いて中身を思い出せるのは「ありがとう、ばあば」だけだろうなと思います。


No.191 7点 リバーサイド・チルドレン
梓崎優
(2018/10/25 23:59登録)
ホワイダニットに重点を置いた作品。著者の短編「叫び」に近いものがあります。ミステリーというよりは文学作品として読むべき小説であり、「スタンド・バイ・ミー」のようなほろ苦さがあります。哲学的でやや難しいですが。一点気になったんですが、医者の所に乗り込むときに舟に置き去りにした墓守の少年のこと忘れてませんか?


No.190 6点 黒百合
多島斗志之
(2018/10/18 22:29登録)
青春小説としては読めましたがミステリーとしてはいまいち。個人的に嫌いな類のオチなので。この手の騙しは安直に感じてしまうんですよね。話に謎が存在しないので読み進むモチベーションがなかなか持てませんでした。最後の最後に読者の考えていた構図をひっくり返してようやくミステリー色を出すわけですが、目玉となる相田真千子の正体もその人物に存在感がなかったので衝撃がそれほどありません。また、本の紹介文に「文芸とミステリの融合」というようなことが書かれていましたが、融合はしていないと思いました。分離して並存している感じです。


No.189 10点 かがみの孤城
辻村深月
(2018/10/07 00:28登録)
期待以上の感動作。第三部から一気に面白くなりました。「閉城」で終わっても十分傑作でしたが「エピローグ」にやられました。ちなみにこの作者の作品を読むのはこれが初めてですが、リーダビリティの高さに驚きました。制服による気付き、街並みの食い違いを家に籠っているせいだと思わせておいてからのひっくり返しなどストーリー運びも上手い。本屋大賞のみならずこのミスでも上位に入っているのも納得です。


No.188 3点 殺人鬼フジコの衝動
真梨幸子
(2018/10/02 19:29登録)
あとがきによる締めが強引でポカンとしてしまいました。イヤミスとよく言われますが、その域にも達していないと思います。心に嫌な気分どころか何も残らなかったですから。藤子の転落の過程も実に陳腐ですし、場面転換や時間の経過が上手く書き表せていないのにイライラさせられました。これは故意だと思いたいぐらいのものですが、仮に故意だとしても何の効果も上げられていません。
大きな疑問がひとつ。一家惨殺事件のとき妹は学校にいたんじゃないんですかねえ。姉は早退して帰ってきたはずなんですが。妹は実は生きているのでは?そして藤子の子どもを叔母として引き取ってループするのでは?と考えた人は多いと思うのですが、ミスディレクションだったのですかね。これも分かりにくい。
他にも、独白だと思っていたら会話文だったという箇所も多いですし、殺害シーンで藤子に「くっくっくっくくくく」とか言わせているのも上滑りしており痛々しい。とにかく文学的な趣が皆無です。同じくイヤミス女王と称される湊かなえや沼田まほかるに比べて力量はだいぶ劣るんじゃないでしょうか。


No.187 10点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2018/09/21 23:46登録)
特殊設定をフルに生かしている。中盤までは設定の割に地味な展開でなかなか面白くならないなあと思っていましたが、解決編に入ってからは驚愕の連続でした。クローズドサークル、緻密な論理、叙述トリック、人間ドラマ、私がミステリーに求めているものが全て入っていました。○○○の描写にはあまり筆力は使われていないのですが、多くの人が見たことがあるであろうその手の映画のおかげで具体的なイメージを持って読めるようになっています。トリックを成立させるため、あるいは展開を作るために部屋割りもよく考えられてあります。○○さんは絶対生きてると思ってましたけど、殺しちゃってよかったのかな?しかしデビュー作でこれほど完成度の高いものを書いてしまって今後大丈夫なのか気がかりではあります。杞憂だといいのですが。
追記 再読して気になったんですが、内線電話の履歴の下りで「携帯電話があるんだから内線電話をわざわざ使わないはず」というような話がありましたが、初日の夜から携帯電話は使えなくなっていたのではないでしょうか。その後の高木の証言が嘘だった場合の論理もよく分からないです。まあ評価に影響はありませんが。


No.186 7点 真実の10メートル手前
米澤穂信
(2018/09/17 19:12登録)
●真実の10メートル手前 7点・・・「満願」のあの話みたいなオチですね。今回のこのオチは蛇足なのでは。後味を悪くする必要があったのでしょうか。文字通り手前で終わっておけば。
●正義漢 8点・・・短いながら視点の切り替えが見事に決まった一編。
●恋累心中 8点・・・「満願」のあの話みたいな動機ですね。それが今回は他人に害を及ぼしているから始末が悪い。心中の方の動機はありがちです。
●名を刻む死 6点・・・読み終わっても「名を刻む死」というレトリックがいまいちピンと来ず。
●ナイフを失われた思い出の中に 9点・・・これが一番。なかなか泣かせますね。ちょっと展開が都合よすぎる気もしますが。「さよなら妖精」の書評でも書きましたが、こんなすごい手記を書く10代はいないでしょ(笑)
●綱渡りの成功例 5点・・・それだけのこと?と思ってがっかりしました。そんなことで誰も責めないと思うのですが。完成度は一番低い。この短編集を出すために急いで書き下ろしたのでしょうか。


No.185 8点 ユリゴコロ
沼田まほかる
(2018/09/04 20:32登録)
いかにも女性が書きそうなドロドロした恋愛小説だなあと思って読んでいましたが、後半の急展開にやられました。「イヤミス」と呼ばれており、胸糞悪い殺人鬼の話ではあるんですが、後味は悪くないんですよね。映画「マディソン郡の橋」を思い出しました。ノートの記述だけでなく父親の告白でもフォントが変わる演出がニクい。

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