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ミステリの祭典

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sophiaさんの登録情報
平均点:6.94点 書評数:370件

プロフィール| 書評

No.190 6点 黒百合
多島斗志之
(2018/10/18 22:29登録)
青春小説としては読めましたがミステリーとしてはいまいち。個人的に嫌いな類のオチなので。この手の騙しは安直に感じてしまうんですよね。話に謎が存在しないので読み進むモチベーションがなかなか持てませんでした。最後の最後に読者の考えていた構図をひっくり返してようやくミステリー色を出すわけですが、目玉となる相田真千子の正体もその人物に存在感がなかったので衝撃がそれほどありません。また、本の紹介文に「文芸とミステリの融合」というようなことが書かれていましたが、融合はしていないと思いました。分離して並存している感じです。


No.189 10点 かがみの孤城
辻村深月
(2018/10/07 00:28登録)
期待以上の感動作。第三部から一気に面白くなりました。「閉城」で終わっても十分傑作でしたが「エピローグ」にやられました。ちなみにこの作者の作品を読むのはこれが初めてですが、リーダビリティの高さに驚きました。制服による気付き、街並みの食い違いを家に籠っているせいだと思わせておいてからのひっくり返しなどストーリー運びも上手い。本屋大賞のみならずこのミスでも上位に入っているのも納得です。


No.188 3点 殺人鬼フジコの衝動
真梨幸子
(2018/10/02 19:29登録)
あとがきによる締めが強引でポカンとしてしまいました。イヤミスとよく言われますが、その域にも達していないと思います。心に嫌な気分どころか何も残らなかったですから。藤子の転落の過程も実に陳腐ですし、場面転換や時間の経過が上手く書き表せていないのにイライラさせられました。これは故意だと思いたいぐらいのものですが、仮に故意だとしても何の効果も上げられていません。
大きな疑問がひとつ。一家惨殺事件のとき妹は学校にいたんじゃないんですかねえ。姉は早退して帰ってきたはずなんですが。妹は実は生きているのでは?そして藤子の子どもを叔母として引き取ってループするのでは?と考えた人は多いと思うのですが、ミスディレクションだったのですかね。これも分かりにくい。
他にも、独白だと思っていたら会話文だったという箇所も多いですし、殺害シーンで藤子に「くっくっくっくくくく」とか言わせているのも上滑りしており痛々しい。とにかく文学的な趣が皆無です。同じくイヤミス女王と称される湊かなえや沼田まほかるに比べて力量はだいぶ劣るんじゃないでしょうか。


No.187 10点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2018/09/21 23:46登録)
特殊設定をフルに生かしている。中盤までは設定の割に地味な展開でなかなか面白くならないなあと思っていましたが、解決編に入ってからは驚愕の連続でした。クローズドサークル、緻密な論理、叙述トリック、人間ドラマ、私がミステリーに求めているものが全て入っていました。○○○の描写にはあまり筆力は使われていないのですが、多くの人が見たことがあるであろうその手の映画のおかげで具体的なイメージを持って読めるようになっています。トリックを成立させるため、あるいは展開を作るために部屋割りもよく考えられてあります。○○さんは絶対生きてると思ってましたけど、殺しちゃってよかったのかな?しかしデビュー作でこれほど完成度の高いものを書いてしまって今後大丈夫なのか気がかりではあります。杞憂だといいのですが。
追記 再読して気になったんですが、内線電話の履歴の下りで「携帯電話があるんだから内線電話をわざわざ使わないはず」というような話がありましたが、初日の夜から携帯電話は使えなくなっていたのではないでしょうか。その後の高木の証言が嘘だった場合の論理もよく分からないです。まあ評価に影響はありませんが。


No.186 7点 真実の10メートル手前
米澤穂信
(2018/09/17 19:12登録)
●真実の10メートル手前 7点・・・「満願」のあの話みたいなオチですね。今回のこのオチは蛇足なのでは。後味を悪くする必要があったのでしょうか。文字通り手前で終わっておけば。
●正義漢 8点・・・短いながら視点の切り替えが見事に決まった一編。
●恋累心中 8点・・・「満願」のあの話みたいな動機ですね。それが今回は他人に害を及ぼしているから始末が悪い。心中の方の動機はありがちです。
●名を刻む死 6点・・・読み終わっても「名を刻む死」というレトリックがいまいちピンと来ず。
●ナイフを失われた思い出の中に 9点・・・これが一番。なかなか泣かせますね。ちょっと展開が都合よすぎる気もしますが。「さよなら妖精」の書評でも書きましたが、こんなすごい手記を書く10代はいないでしょ(笑)
●綱渡りの成功例 5点・・・それだけのこと?と思ってがっかりしました。そんなことで誰も責めないと思うのですが。完成度は一番低い。この短編集を出すために急いで書き下ろしたのでしょうか。


No.185 8点 ユリゴコロ
沼田まほかる
(2018/09/04 20:32登録)
いかにも女性が書きそうなドロドロした恋愛小説だなあと思って読んでいましたが、後半の急展開にやられました。「イヤミス」と呼ばれており、胸糞悪い殺人鬼の話ではあるんですが、後味は悪くないんですよね。映画「マディソン郡の橋」を思い出しました。ノートの記述だけでなく父親の告白でもフォントが変わる演出がニクい。


No.184 7点 叫びと祈り
梓崎優
(2018/08/26 16:36登録)
独特の硬質な文章でちょっと読みにくかったです。主人公の人となりがあまり見えませんし。全体的に紀行文としては面白いですがミステリーとしては微妙な出来でしょうか。「凍れるルーシー」の猫が鳴いた回数や「叫び」の川で服を洗う時間の論理などがちょっと頼りない。


No.183 8点 王とサーカス
米澤穂信
(2018/07/31 21:54登録)
殺人事件自体はそう大したことはないけど、それに付随して起きたことがすごかった。糞坊主に腹立ちますね。タイトルもしかして「オートフォーカス」とかけてます?違いますか(笑)


No.182 5点 ボトルネック
米澤穂信
(2018/07/25 01:16登録)
後味悪いですね(笑)回想シーンでノゾミがイチョウのおばあさんを「殺してやりたい」とか言ったときに、何かおかしな方向に行っちゃうんじゃないかという予感はしましたが。タイムパラドックス系と言いますかパラレルワールド系と言いますか、こういうタイプの作品でバッドエンドってあまり記憶にありません。設定や展開は大変面白かったので、感動系に仕立てて欲しかったですねえ。百歩譲ってバッドエンドでもいいんですけど、もっと上手い終わり方があったのではないでしょうか。ちょっと難解な終わり方をしたせいでどうもすっきりしないです。


No.181 7点 鬼の跫音
道尾秀介
(2018/07/21 01:07登録)
途中まではいまいちな感じでしたが、最後の2つ「冬の鬼」と「悪意の顔」がすごかった。「冬の鬼」は冒頭での謎の提示、そして1日ずつ遡っていく日記という構成がよかったです。7日前にどんなことをやらかしたのかという興味で引き込まれました。伏線もばっちり。「悪意の顔」はSFなのか妄想なのかというシーソーゲーム。最後の最後にはっきりするのですが、その直前のSの一瞬の変貌に含みを持たせているのも効果的。主人公の母親がデザイン事務所に勤めているのが伏線かと思ってちょっと混乱しちゃいましたけど。その他には「よいぎつね」で残された謎の解答を次の「箱詰めの文字」の作中作で示したのには唸らされました。しかしこの作者の「S」と「鴉」に対するこだわりは何なのでしょうか(笑)


No.180 6点 ジェリーフィッシュは凍らない
市川憂人
(2018/07/13 02:24登録)
ネタバレあり

「ジョジョの奇妙な冒険」のような、ウイダーインゼリーを冷凍庫に入れようとする人への注意のような洒落た(?)タイトルの作品。文章が読みやすく展開も速いのでグイグイ引き込まれました。しかし竜頭蛇尾。一方だけを描写するというのは叙述トリックとしてはちょっとあざとく感じるんですよね。一団のキャラ造形はステレオタイプで、「エイリアン」や「インビジブル」等のハリウッド映画のよう。事件の背景は「金田一少年の事件簿」のよう。「21世紀の『そして誰もいなくなった』」と評される割にはそれほど新しさを感じません。しかし「DNA鑑定のない時代ですよ」と登場人物の雑談で念押しをする手法は素敵でした。


No.179 7点 片眼の猿
道尾秀介
(2018/07/08 00:21登録)
殺人事件の解決などどうでもよく、私の関心事は「冬絵の能力はいつ発揮されるんだ?何のために雇ったんだ?作者は何か忘れてるのか?」ということでしたが、見事に作者の術中に嵌ってしまいました。最終盤のネタバラシで×××のオンパレードなのがこの作品のデリケートなところですから、好みは分かれるでしょうか。


No.178 5点 死神の浮力
伊坂幸太郎
(2018/07/03 18:21登録)
結末が読めるんですよねえ。その先に更にサプライズがあると思っていたんですけど特に何もなくて、それで終わり?という感じでした。それも伏線だったのかと思う箇所がある反面、あれは伏線じゃなかったのかと思う箇所もあります。「一週間の生涯なら、百年でもささげるべきである」の下りや、レインコートの男が殺された件です。その辺がどうも荒いんですよね。前作「死神の精度」の方が断然よかったです。麻耶雄嵩の神様シリーズと同じで、短編向きの設定ではないでしょうか。


No.177 8点 ジェノサイド
高野和明
(2018/06/12 19:43登録)
えらい作品を読んでしまった。どこまでが本当でどこからが虚構か分からないです。特に理系部分。東野圭吾が「超理系殺人事件」で言ってたのってまさにこの作品ですね。結構な斜め読みで読みましたが、それでも読了に5日かかりました。スケールも地球規模でとにかくすごい作品なのは確かです。タイトルから想像できる通り残虐描写もありますが、アフリカって現実でもこんなんなんでしょうねえ・・・


No.176 7点 インシテミル
米澤穂信
(2018/06/02 03:00登録)
だいぶ前に映画を先に観ていたんですが、内容をほぼ忘れたのもあって今回読んでみました。久々に評価の難しい作品ですねえ。作者がミステリー大好き、クローズドサークルもの大好きなのはひしひしと伝わってきますし、意欲作ではあります。私自身もクローズドサークルものは大好きで、特に「時計館の殺人」の舞台設定に似ている本作は大変楽しく読ませてもらったのは確かです。ただ、武器にメモランダムにカードキーにとアイテムが多すぎて混乱しますし、賢いキャラだった人物が終盤に突然どうしようもないアホな推理を披露するところや、探偵が間違った人物を犯人と指摘した場合に探偵は報酬減額されるのに助手はされないルール等にご都合主義を感じました。可もあり不可もありで7点というところでしょうか。


No.175 6点 さよなら妖精
米澤穂信
(2018/05/14 20:58登録)
数年前に出た新装版の単行本を読みました。博物的に勉強になる部分は多いんですが(特に東欧の歴史)、物語に大きな展開がないのでちょっと退屈に感じました。ミステリー的主題が母国を突き止めることのみというのも渋いですし。個人的にはマーヤはいくつか謎を残して帰国するものだと思っていたのですが。ただ、随所にちりばめられた伏線から消去法で真実を突き止める手法には「折れた竜骨」の原型を見た気がします。新装版のボーナストラック「花冠の日」は追加して正解でしょう。カタストロフィは変わりませんが、後味の悪さが少しだけ和らいだ感じがします。最後にひとつだけ。こんなしっかりした長大な日記を書く高校生はいないでしょう(笑)


No.174 9点 追想五断章
米澤穂信
(2018/05/03 23:20登録)
単行本でわずか230ページほどの作品ですが、そう感じさせないほどに密度の濃い作品でした。リドルストーリーという物を逆手に取った展開は見事。米澤作品の中では「折れた竜骨」に次ぐぐらいの出来ではないでしょうか。難を言えばタイトルですかねえ。堅苦しくてとっつきにくい。でもむしろこれがいいのかなあ。しかし全体に流れる物悲しさが何とも言えませんね。登場人物はみんな不幸ですし。


No.173 8点 星降り山荘の殺人
倉知淳
(2018/04/20 20:07登録)
「過ぎ行く風はみどり色」を読んだついでに再読しました。章初めの注意書きによる大技ミスディレクションばかりが印象に残っていましたが、それを除いても本格ミステリーとして面白い。メインの謎が大いなる偶然によって成立しているところは「過ぎ行く風はみどり色」と同じではありますが。しかしこの作品の犯人の逆ギレっぷりはミステリ史に残りますね(笑)


No.172 9点 過ぎ行く風はみどり色
倉知淳
(2018/04/12 22:57登録)
視点人物が二人いることの必然性を考えると叙述トリックを疑いはしましたが、これは明かされるまで分かりませんでした。読み返してみると茶封筒の忘れ物の件や着物の帯の件など伏線もしっかり張られており感心しました。第2の殺人のやり方はちょっと難しいんじゃないかとは思いますが。

追記 皆さんの書評を読んでいて思いましたが、取り違えに気付いていたのは例の2人組だけですよね。誤解があるようなので指摘しておきます。


No.171 7点 怪盗グリフィン、絶体絶命
法月綸太郎
(2018/04/09 19:46登録)
アルセーヌ・ルパンも全く読んでいないぐらいで普段手を出さない分野なのですが、なかなか楽しめました。ミステリーランドレーベルの作品ですが、子どもにはちょっと難しいかも。二転三転どころか四転ぐらいしていて、事の成り行きがどうだったのかを完璧に理解しようとするのはなかなか骨が折れます。特に「大統領のジレンマ」のあたりが難しいですね。あんまり深く考え過ぎない方がいいのかもしれません。

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