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ミステリの祭典

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三枝さんの登録情報
平均点:5.81点 書評数:27件

プロフィール| 書評

No.7 8点 法月綸太郎の功績
法月綸太郎
(2023/12/29 00:01登録)
※※※ネタバレあり※※※

イコールYの悲劇:風見鶏の記号かと思ったのですが外しました。かといって真相もあまりおもしろいとは…“業界用語”“探偵に届くメッセージが未完成”と定番ネタを組み合わせたわりに約80ページは冗長に感じます。

中国蝸牛の謎:正直やっつけ仕事感が…。大して意味も感じない冒頭文2度目のコピペに、資料丸写しみたいなカタツムリの知識と原稿埋めたかったようにしか見えません。
ネタのキレも悪く、不自然に挿入される窓の建て付けのエピソードに、これまた持ち物として不自然極まりないドライバーと怪しい部分が見え見えです(真相に気付けたわけではないですが)。

都市伝説パズル:「先入観を逆手に取ったトリック」(ノベル版P175)、ミステリーを読んでいてこれ程おもしろい瞬間もないでしょう。
有名都市伝説が現実になるという設定、パズルだけで真相を推理していく展開、綸太郎の気づきからわずか4ページで解決となる鮮やかさ。
どれをとってもお見事です。

ABCD包囲網:ABC殺人事件の亜種として、うまく盲点を突いています。これはまったく読めなかった。
ミステリーでよく突っ込まれる“トリックなんか使うより通りすがりに襲った方が早いのでは”というネタが盛り込まれているのに少し笑いました。

縊心伝心:カーペットの謎から盗聴器の存在まで飛ぶのにいささか論理飛躍を感じますが、その飛躍を受け入れると数々の謎が綺麗に解けるのがポイント。
作中でも言われていますが、まさにパズルのピースがはまる感覚です。
犯人は西澤保彦ならボロカスに書きそうですね。

2話目まで微妙だったのですが3話目以降は出色のおもしろさでした。


No.6 9点 ドミノ
恩田陸
(2023/12/22 18:09登録)
このサイト向けの本格物ではありませんが、エンタメとしては傑作だと思います。

契約書を届けようとするサラリーマン
お菓子を買いに出かけたOL
オーディションに落ちてばかりの少女
オフ会のために上京した老人
と様々なキャラクターが実に生き生きと描かれており、読んでいるだけでもおもしろいです。

シナリオ同士の絡ませ方も
契約書を届けるためにバイクで暴走
→それを捕まえるためのパトカーがテロリストを刺激してしまう
→すぐ近くにいた少女が人質に
とただキャラクター同士が合流するだけに留まりません。

一方、28ものキャラクターを処理するためかシナリオは淡白に作られており、ひねった展開もありません。
いくつもの物語がバラバラに進むうちは読者としてもその方が読みやすいのですが、話がまとまってくるにしたがって地味さが目につくようになり、読後は物足りなさを感じます。


No.5 6点 我らが隣人の犯罪
宮部みゆき
(2023/12/13 21:33登録)
小説としては素晴らしいですが、本格としてはやや辛い評価にせざるをえません。

表題作:ジュブナイル的爽やかさに尽きる話です。やっていること自体は窃盗に脅迫と結構悪どいのですが、上手に読みやすくしています。オチにしても結局あの犬はあまり愛されていないというのが肝だったのではないかなと。
ただ犬さらいまではオリジナリティを感じられたものの、実行に入ってからは結局よくある方向にいってしまった感があります。

この子誰の子:30ページというボリュームを考えればかなり上手にまとめたのではないかと。タイトルのダブルミーニングが光ります。

サボテンの花:印象的な謎であるプールの場面が、実は勘違いによる不要な手順だったというのは読者に推理しようがないと思います。お話としては感動しますが、子供の集団エスケープまでお目こぼしするのは無軌道に過ぎる気もします。

祝・殺人:9マイルは遠すぎる的味わいがありますが、よく見ると推理の進展がほぼ論理ではなく明子がどこそこで得た情報であることに気づきます。この話の核心はバラバラにしたことの真相より、本来他人の読むことがないはずの手紙が祝電だけはおおっぴらに読まれるという部分なのかなあと。

気分はスーサイド:設定はおもしろいのですが、やっていることは老人が感じた不幸をオーナーでも共感可能な形にちょこっと変えただけに見えます。


No.4 6点 死の演出者
マイクル・Z・リューイン
(2023/12/05 21:44登録)
シリーズ最初の方で、作者特有のユーモラスな文章にはやや滑っている部分が散見されます。
事件は結局サムスンが介入したところで依頼人の救いになっている部分が薄く、結末の好みが分かれる気がしました。


No.3 6点 御手洗潔の挨拶
島田荘司
(2023/12/05 21:33登録)
数字錠:昭和の時代はこういう貧乏の悲哀みたいなお話をよく見たものですね。推理部分は難ありですが、レストランの夢のような筆致はさすがです。

疾走する死者:メイントリックはまあまあ好きでしたが、他の方のレビューを見た感じ使い回し?なのですかね。評価保留とさせていただきます。

紫電改研究保存会:既に指摘している方がいますがシャーロックホームズの有名エピソードを思い出す内容。ターゲット選定の無理やりさが目に付きます。

ギリシャの犬:暗号の解答は読者が推理するのはほぼ不可能だと思いますが、単純に読む分にはおもしろいと思います。


No.2 4点 遠まわりする雛
米澤穂信
(2023/11/15 23:12登録)
キャラクター小説としてはまあまあ楽しめますが、ミステリーとしては到底満足いくものではありません。
特に『大罪を犯す』は、こんな小ネタで短編1本書こうという姿勢を横着にすら感じます。


No.1 6点 空白の殺意
中町信
(2023/11/14 21:59登録)
※ややネタバレ

プロローグの仕掛けは読み返してもやや違和感が強く、綺麗に決まっているとは言い難い気がします。件の人物が得た情報とリアクションを考えると、手に持った時点で気づくと思うのですが…。
他方、日記の仕掛けは感心させられました。小粒ながらうまいとおもいます。

シナリオはいかにも2時間ドラマ風味でやたらと性的にだらしない人が登場したり、浮気が物語のキーになったりで昭和を感じました。

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