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ミステリの祭典

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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

作家 桜庭一樹
出版日2004年11月
平均点5.33点
書評数9人

No.9 4点 三枝
(2024/01/23 19:05登録)
本格でないのは評点に加えていません。
ミステリーというよりサスペンスに近いですね。
ギリギリな環境にいた少女たちの世界がはかなくも崩壊していく様が描かれています。

後年に直木賞をとった作家だけあり文章は読ませます。
でも、それだけですね。

当時流行っていた携帯小説の女子向け不幸自慢を、オタク向け美少女で包んでラノベに仕上げただけにしか感じませんでした。

No.8 4点 makomako
(2023/06/04 07:45登録)
これは私には合いませんでした。
これってめちゃくちゃなお話です。
なんで親にばらばらに切り刻まれて殺されなければならないのか。全くの必然性がありませんが、幻想に近いストーリーである意味ごまかしているのが目につき出すといやになります。
勿論青春小説の範囲ではない。残酷な話です。
男性の名前なのに絶対女性にしか書けない感覚も、好き嫌いがわかれるかもしれません。
始めてすぐやめよう時間の無駄と思ったが、読んでいくと何とか最後までは読み通すことはできました。でも短くて良かった。長いととても読み通せません。
こんな感覚はわたしが年をとり世間常識的な殻がしっかりついてしまったからかもしれません。

No.7 8点 tider-tiger
(2016/07/13 07:48登録)
これはぜんぜんライトノベルではないと思います。文章は軽めではありますが、ライトノベル的な要素は藻屑の存在くらいだと思います。そして、この藻屑というラノベキャラが普通小説の中で意味を持って、効果的に使用されていることがこの作品の上手さ(技術)というか凄さ(センス)では。
藻屑は非現実的な存在で周囲から浮き上がります。ラノベだったらこれが藻屑のキャラですからで終わりでしょう。ところが、本作では藻屑はラノベ的であることは許されずに孤立してしまいます。さらに、藻屑のラノベ要素は実はやむに已まれぬ哀しい逃避であったわけです。
これって、ある意味ではアンチラノベ的な作品ではないでしょうか。

的外れかもしれませんが、本作は舞城王太郎、シャーリィ・ジャクスン、サリンジャーなどを想起させました。
語り手と藻屑の実弾と砂糖菓子での射ち合いで息を呑み、ウサギはいつ殺されるのかと固唾を呑みました(なぜかウサギは殺されると私は確信していました)。
緊張を強いられ、神経が張り詰める作品でした。
居心地の悪くなる作品でした。
胸が張り裂けそうな作品でした。

実弾にこだわっていた語り手が最後の最後で砂糖菓子の弾丸を放ってしまった。その砂糖菓子の弾丸が藻屑を撃ち抜いた。ひいては語り手自身を。
砂糖菓子の弾丸では自分に対する脅威を撃ち抜くことはできない。なのに自分自身を撃ち抜いてしまうことはあったのです。なんとも皮肉で悲痛なオチなんだろうと。

7/21追記
ライトノベルばかり読んでいる十歳以上年下の男に本作を渡して、ラノベか否か判定しろと命じたところ、「これは初期のラノベですねえ。漫画やアニメしか知らない作者じゃなくて、普通の小説をきちんと読んでいた人が書いたラノベです」とのこと。数ページだけ読んでの判断ですが、これはライトノベルじゃないとした私の判断に陰りが……でも、私はライトノベルじゃないと今でも頑迷に思っております。ちなみに彼は桜庭一樹をまったく知りませんでした。

No.6 5点 人並由真
(2016/06/12 17:10登録)
(ネタバレなし)
 うん。短い紙幅に対して十分に読み応えはあったし、読んで(まぁ)良かったとは思うけれど、これミステリじゃないよね。最近の作品でいうなら東野圭吾の『人魚の眠る家』とかと同方向の、ミステリ的なギミックを随所に用いたブンガクで、人間ドラマ。本書の場合はさらにそこに、今風の青春小説とか、ある種の方向に特化したジュブナイルラノベとかの修辞もつけられる。ミステリのストライクゾーンのかなり広いつもりの自分がそう言うんだから、たぶん間違いはないだろう(笑)。

 読む前はタイトルからそれこそ、弾道などのトリックにからむ変化球的な新本格パズラーとかを予見していたが、実際のものは全く違っていた。
 ちなみに本書を収める叢書・富士見ミステリー文庫は「既存のミステリにとらわれないフレッシュな物語」が看板文句のようだが、ジャンルを一歩二歩踏み出すのはともかく、これは似て非なるものです。

 切ない二人の主人公の少女の叙述、特に最後に苛酷なほどにストイックに自分の心と向き合う山田なぎさの描写は、心に残ったが。 

No.5 8点 風桜青紫
(2016/01/25 19:52登録)
海野藻屑……彼女はなんというかまあ、ファンタジーな存在です。そもそも名前からしておかしいし、自分を「ぼく」と呼ぶのも変だし、なんか人魚を自称してくるし、ミネラルウォーターがぶかぶ飲んでるし、すごく美少女だし、こんなファンシーな人間が存在するわけがないじゃないの。

しかし初っぱなから彼女がバラバラ死体で発見される(「ミステリ流儀的には無し」とかいうちょっと何を言ってるかわからない意見もあるようだけど)ことが仄めかされることで、この作品が決してスイーツなホンワカ小説でないことが読者に提示されます。それゆえに藻屑のファンシーさは痛々しさとなり、作品全体に不安をもたらしていくわけです。「うううう」と言う唸りや「人魚なんです」発言は、「やばいぞこいつ……」と距離をとらせる一方で、スカートに隠れた身体的欠陥やクレイジーな父親というような彼女の「弱者の部分」というのが、どうしても彼女の放っておかせない。しかし彼女はデンジャラスな女の子なのです。ペットボトルをぶつけてきたり、笑顔で人をからかうだけでなく、時には主人公の可愛がっていたウサギを惨殺してしまうような狂暴な一面も除かせます。このパンクな行動は「ウサギが可哀想だ!」とか「こいつ頭やばすぎるぜ!」と拒否感をもたらす一方で、主人公への偏愛だとか切望を痛烈に表しているから「危険だけど放っておけない」という気持ちにさせてしまうのです。DVの男と別れられない心理です。主人公がニート兄貴を保護しているって事実はもちろんこれと無縁ではないわけです。

でも兄貴は就職できたのに対して、藻屑はあっさりとゴミのように殺されてしまう。どうしてこの違いができたかと言えば、やはり、タイトルの通り「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」からであって、ファンタジー的な想像の世界を守っていても現実には敵わないというわけです。主人公の藻屑の死に対しての後悔は、「弱い立場の者にはどうあるべきなのか」という問いかけを残していくわけです。

ライトノベル作家には本編で愚にもつかないようなお涙頂戴を垂れ流しておいて、あとがきでは「人間を書くことを意識した」なんて書いてのける輩もいるんですが、桜庭一樹はそのような凡百の作家とは一線を画しているのは疑いようもない。 ライトノベルの特徴である漫画的キャラクター性を逆手にとって、こんな刃物のような青春小説を作り出す技術力は、見事、のひとこと。

No.4 6点 メルカトル
(2014/12/11 22:38登録)
これはミステリというより文学やね。うん、ラノベっぽいけど、やっぱり文芸作品だと思う。
それにしても票が割れてるねえ、まあ確かに好き嫌いがはっきりしやすい作品かもしれない。ミステリ性を求める読者にはかなり物足りないだろうし、一方そうではなく青春小説と割り切っての評価が許容できる読者には、むしろ好感度は高いと考えられる。
冒頭、いきなり二人のヒロインのうちの一人の末路が詳らかにされるが、これはどうなんだろうか。ミステリ的流儀では「なし」だね。だから、作者は最初からミステリを書くつもりはなかったのだろう。よって私はこれを文学作品と判じることになるわけだ。
ひとつ気になったのは、中学で飼っているウサギが惨殺された理由が推測でしか書かれていないこと。これがはっきりしていればもう1点評価が上がったかもしれないのに。全体の流れを損なってはいないと思うが、どうにも犯人の心情が掴めないのは気持ち悪い。
しかし、そうした瑕疵を些細なものにする美点が本作には息づいている。それはそこはかとない抒情性であろう。全編を覆う美しい抒情を読み取れるかどうかによって、評価は分かれることになるはずだ。強烈な印象はないものの、相当な佳作であるのは間違いないと感じる。決して少年少女向けのジュブナイルではない。

No.3 8点 アイス・コーヒー
(2014/09/04 11:12登録)
中学生の山田なぎさと転入生の海野藻屑のガール・ミーツ・ガール系ライトノベルだが、冒頭から藻屑がバラバラ死体となって発見されることが読者に提示される。ストーリーはなぎさの回想のように展開していくが…。

サスペンスではなく、殺人を中心にしたライトノベルという広義のミステリーに入るだろう。確かに中盤の展開は手に汗にぎらなくもないが、それは本題ではない気がする。
テーマとなるのは山田なぎさの成長に他ならないだろう。社会に出るためには実弾=お金が必要だと考え、それ以外の無意味なもの(砂糖菓子の弾丸)は無視してきた彼女が藻屑に出会ってどう変わったのか。特に終盤の演出は壮絶で読後には強烈な印象が残った。
一見エキセントリックで、自らを人魚だと名乗りミネラルウォーターばかり飲んでいる藻屑も鮮やかに描かれている。父親の暴力を受けつつも、嘘をつき続ける藻屑。「好きって絶望だね」と語る彼女の狂気は物語世界に大きな影を落としている。しかし、それでいて藻屑も一人の少女に過ぎない、と伝えてくるところも器用だ。
残念だったのは、描かれる狂気が不必要なほど存在感を持っていてテーマがブレているところか。200ページ足らずであっさり読める本だが、この読後感はこれからも忘れることが出来ないだろう。
(最初は叙述トリックを疑いまくったがそんなものは無いのでご安心を。)

No.2 4点 ボナンザ
(2014/04/07 22:58登録)
ラノベとして読むにはいいが、ミステリ的要素は皆無。

No.1 1点 ムラ
(2012/02/18 05:43登録)
中学生っぽい感じが出ててよかったかなぁ。淡い青春っぽくて。
先生もけっこう熱血だったし。怒るところがちょっとズレてるような気がしないでもないけど。
ただ死ぬまでの二時間、家の中無音だったのだろうかというどうでもいい疑問が浮かんだ。
しかし今では超有名になってしまった、サイコパステストも当時はまだ浸透してなかったのかな

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