home

ミステリの祭典

login
まだ中学生(仮)さんの登録情報
平均点:6.60点 書評数:115件

プロフィール| 書評

No.15 7点 オクサ・ポロック2
アンヌ・プリショタ
(2019/07/20 10:06登録)
図書館司書2人による自費出版はフランスの中高生の間で人気沸騰してシリーズ化、第二弾は「迷いの森」。
地球上の見えない世界(エデフィア)の君主となる運命を背負った13歳のオクサ。親友ギュスが行方不明になり仲間の逃げおおせた人たちとともに新たな冒険に旅立つ。反逆者の陰謀、入り乱れる敵と味方、新たに明かされる家族の秘密・・・。物語は重層的に展開する。
ファンタジーの本場英国でも英国版刊行2日目で緊急重版。従来のファンタジーと違って異世界の出来事ではなく、自分の身の回りでも起こりそうと読者が共感、こまやかに描かれる友情も人気の秘密らしい。


No.14 6点 海辺の町の怪事件
ジュディス・ロッセル
(2019/07/07 09:19登録)
幼い頃両親を亡くしたステラは厳格な3人の伯母に育てられている。健康オタクの伯母たちは各地の保養所を転々、今は海辺のホテルで退屈な毎日を送るステラの楽しみは古い地図帳をながめ想像の翼を広げること。ある日、宿泊客の老紳士から「これを守ってくれ」と小さな包みを預かったことから謎の一団に追いかけられ、いきなり冒険に引きずり込まれていく。
ヴィクトリア調が舞台のミステリー「ステラ・モンゴメリーの冒険」第一弾。大魔術師、幻視少年、芝居小屋の少女、外国人の猫使いなどが登場する、ちょっとダークな物語。お話にぴったりなイラストは画家でもある著者自らが描いたらしい。伯母たちの圧力に負けず、自分のルーツを探そうと決意するステラが頼もしい。


No.13 8点 鐘は歌う
アンナ・スメイル
(2019/06/23 10:29登録)
ヒューゴー賞、ネビュラ賞と並ぶ三大賞の一つ世界幻想文学大賞を受賞した英国のファンタジー小説。
舞台は「大崩壊」によりがれきの街と化したロンドン。朝晩の鐘の音が人々から不安を取り除き秩序をもたらしている。両親を亡くして農村を出てロンドンを訪れたサイモンは、不思議な目を持つ少年と出会い・・・。
サイモンの視点で進む物語冒頭から謎だらけ。だが次第に音楽が意思伝達手段として用いられていることや、すぐに人々の記憶が薄れてしまうことなどが明らかになってゆく。
著者はロンドン大学で英文学の博士号を所得したニュージーランド出身の詩人で、本作で小説家デビューを果たした。詩作で培った手腕を発揮し、歌うような文章で独特の世界観を構築している。


No.12 7点 オクサ・ポロック
アンヌ・プリショタ
(2019/06/07 18:39登録)
ファンタジーといえば英国が本場というイメージが強いと思いますが、フランスでも話題シリーズがあります。
主人公はもうすぐ13歳になる女の子オクサ・ポロック。ある時、手のひらから炎が上がり、自分の不思議な力に気付いたことで一族の秘密を知り、仲間と波乱の運命に立ち向かう。
「ハリー・ポッター」と重なる部分もあるが、特にコミカルで丁寧な心理描写にフランス小説らしさがうかがえる。
図書館司書2人の自費出版に始まった本国では中高生からロックスターさながらの熱い支持を得て、シリーズ累計30万部のベストセラー。世界27の国・地域で翻訳されている。


No.11 7点 放課後のジュラシック 赤い爪の秘密
森晶麿
(2019/04/04 19:18登録)
自らを「小説家」ではなく「虚構家」と名乗ることが多い著者のYA小説。恐竜は絶滅しておらず高度な知能を持ちつつ現代社会に生息するという設定に謎解きの要素が絡む物語からは、読者が子供でも本気な著者の姿勢が感じられる。
恐竜と謎解きのモチーフは、「虚構家」の巧みな筆によって上質なエンターテインメントに融合されているが、特筆すべきは作中で、登場人物たちが虚構である恐竜映画のシーンを引き合いにしてその行動を左右しているところ。
著者は「虚構」こそが世界を変える原動力であると言いたいのかもしれない。想像力や妄想力たくましい多感な少年少女にこそ読んでもらいたい一冊。


No.10 7点 ジョシュア・ファイル
マリア・G・ハリス
(2019/03/26 19:11登録)
2012年12月22日にマヤの長期暦が終わっていることから取りざたされた「世界の終末」と、古代マヤの写本を巡る冒険シリーズ。
ジョシュたちの活躍の末、写本を取り戻したものの、肝心の地球を救う手立ての解明は進まないまま。解決の糸口は未来から?最後に待ち受けるのは思いがけない事態。物語は大団円に向かって一気に加速する。
この物語は作者が骨折療養中に書き始めた処女作。世界中を舞台に、扱う素材もマヤの予言やタイムトラベル、パラレルワールド。張り巡らされた伏線は数知れず、複雑極まりないが、作中に絶えず流れるジャズやボサノヴァをはじめ、文学や考古学の造詣の深さが溢れている。


No.9 7点 天才ジョニーの秘密
エレナー・アップデール
(2019/03/16 10:11登録)
1929年のイギリス。第一次世界大戦が終わって10年。人々はまだ戦争の傷を背負っている。家族を亡くし、職を奪われ、生き残ったことへの後ろめたさを抱え・・・主人公ジョニー少年もその一人。
戦争で父を失い、母は医者の屋敷で家政婦をして暮らしを支えている。背の低さに悩むジョニーは「背が高くなる」という新聞広告に騙されたことからとんでもない商売を思いつく。
後半は打って変わって殺人事件のミステリーへと展開する。母親が医師殺害の犯人に仕立て上げられてしまう。新薬をめぐる医療事件も絡んで一気に加速。意外な犯人に驚かされる。
英国ファンタスティック・ブック賞受賞作。


No.8 7点 ホートン・ミア館の怖い話
クリス・プリーストリー
(2019/03/09 17:58登録)
舞台は19世紀のイギリス。主人公の少年マイケルは母を失い、クリスマス休暇をスティーヴン卿の屋敷で過ごすことになる。
その屋敷の中で、マイケルは不気味な経験をする。誰もいないはずの場所で、なにかをたたくような音が響いたり、闇の中にうごめく影が見えたり・・・。そんないかにもイギリスの幽霊物語に出てきそうな登場人物や建物や、奇怪な事件が、途中から思いがけない方向に転がり始める。そして謎の中の謎が解けたかと思った瞬間、もうひとつの謎が生まれて・・・。という展開には驚くばかり。
さらに「エピローグ」でもうひとひねり!昔さながらの恐怖小説の舞台や道具をそのまま使いながら、現代風のトリッキーなミステリーに仕上げているところが素晴らしい。また引用した部分からわかるように、それを支える文体もいい。


No.7 6点 ガール・イン・ザ・ダーク 少女のためのゴシック文学館
アンソロジー(国内編集者)
(2019/02/11 10:45登録)
少女をモチーフに、恐怖感が漂う文学作品を集めている。
前回評した「猫のまぼろし、猫のまどわし」に収録されている「古い魔術」を訳した西條八十は歌謡曲の作詞家として有名ですが、ここに収録されている「トミノの地獄」という詩が怖い。
また、少女たちが集団で夜、家を抜け出して闇の儀式を行っているのではないかという、大人たちの疑惑の行き着く先を探った、スティーヴン・ミルハウザーの「夜の姉妹団」は、面白いところへ読者を連れていく。藤野可織の「ファイナルガール」は、殺人鬼を殺すことを使命として引き受けた少女の疾走の記録ですが、途中からの思いがけない展開とエンディングが切なくも快い。
その他、佐藤弓生が選んだ短歌と、そこから想像した短い物語、最果タヒの詩などユニークな作品が収められている。


No.6 6点 猫のまぼろし、猫のまどわし
アンソロジー(国内編集者)
(2019/02/09 10:38登録)
パート1は、萩原朔太郎の「猫町 散文詩風な小説(ロマン)という、街路に猫が充満する街を描く幻想的な短編を核に展開する。ブラックウッドの「古い魔術」は「ねている大猫そっくり」な格好の町に魅入られて、ホテルの女主人と、その娘に愛されるという、朔太郎の作品に似た中編。江戸川乱歩の「猫町」は、これら2編をめぐるエッセー。そして旅好きの漫画家つげ義春が、朔太郎の短編を読んだ時の体験を、旅先で思い出してつづったエッセー「猫町紀行」が、このパートを締めくくる。
パート2は、現実と幻想の間を行き来する猫についての短編やエッセーなど7編。パート3は、おどろおどろしい絵物語「鍋島猫騒動」から始まって、英国の外交官ミットフォードが、その怪猫の話を英語で紹介した「ナベシマの吸血猫」や、アイルランドの作家レ・ファニュの妖猫小説「白い猫」など、海外へ視線を向ける。サービス精神たっぷりのマニアックなアンソロジー。


No.5 7点 ゴールデンドリーム
ロイド・アリグザンダー
(2018/12/21 21:01登録)
舞台は西洋と東洋が接する。架空の場所。仕事をクビになった夢見る少年カルロは偶然手に入れた宝の在りかを示す地図を元に勇躍宝探しの旅に出る。相棒になったのは嘘つきの男や謎の美少女、訳あり老人。
こんな面々で始まった旅は盗賊に襲われたり流砂にのみ込まれそうになったり。波乱の旅を続けるうち、仲間の一人一人が思いがけない勇気や英知を示していく。そして最後にはそれぞれの心からの望みがかなう。だが自分が望んでいるとは知らないことだった。
著者は米児童文学を代表する一人で、トールキンの海外での後継者と目される。透徹した人間観察、変化に富んだストーリーで冒険ファンタジーの域を超え、禅に通じる独特の思想性が貫く。


No.4 7点 青鬼 廃校の亡霊
黒田研二
(2018/12/02 10:17登録)
累計60万部を突破した昨年完結したノベル「青鬼」シリーズの児童向け第2弾。原作はユーチューバーをはじめとする「ゲーム実況者」たちによってプレイ動画が星の数ほどアップされている大人気のホラーゲーム。
「恐ろしい噂」がある街外れの洋館ジェイルハウスに閉じ込められた子供たちがブルーベリー色の怪物「青鬼」と命がけの鬼ごっこを繰り広げる第1弾「ジェイルハウスの怪物」は発売直後から品切れするほどの人気作となった。待望の本作では舞台を「廃校」へと移し、再び青鬼と対峙することになる。前作同様、読者も参加できる「3つの謎解き」と物語に仕掛けられた「まさか!」のトリックは中高生もたっぷり楽しめると思う。


No.3 6点 十年屋
廣嶋玲子
(2018/11/15 20:43登録)
すっかり使わなくなったし、取って置いても仕方がないのに、どうしても捨てられない、捨てたくない一品。「十年屋」は誰かにとって大切なものを思い出と共に10年間、魔法で預かる魔法使い。預け賃は「依頼主の寿命1年分」。
小さい頃いつも一緒だったぬいぐるみ、壊れた時計、会えなくなった友達と作る約束だった雪だるま。預かれないものはないが、契約を破ると手痛いしっぺ返しが待っているからご用心。他人から見たらがらくたでも、依頼主には命を削っても守りたかったもの。いったいどんな思い出が詰まっているのか。
執事を務めるもふもふの猫カラシのかわいらしいセリフも読みどころ。「銭天堂」「もののけ屋」シリーズで人気の作家が手掛ける心温まる魔法の物語。


No.2 8点 ザ・ヘイト・ユー・ギヴ
アンジー・トーマス
(2018/10/27 10:22登録)
ギャングがはびこり、ドラッグが蔓延するゲットー(黒人街)に暮らす女子高生スター。ある日のパーティー後、幼馴染のカリルが無抵抗ながらも白人警官によって射殺されてしまう。目撃内容をスターが証言したにもかかわらず、警察はその行為を正当化、事実と異なる報道もされていく。
米国で実際に起きた黒人少年射殺事件を基にした長編小説。繰り返されるのは実在した伝説的ラッパーのトゥパックが歌う「社会に植え付けられた憎しみがやがて噴き出し、社会に報復する」という曲。
トゥパックの死から20年以上を経た今も差別はなくならず、新たなヘイトを生み出し続けている。負の連鎖を断ち切れない社会に向けた問題作といえる。


No.1 6点 意味が分かると怖い話
藤白圭
(2018/10/15 14:51登録)
怖い話はいつの時代も10代の心をつかんで離さない”鉄板”のテーマ。しかし流行のようなものはあって、人気の話も少しずつ傾向が変わってきている。本書もまさに今、小中学生に人気の「怖い話」集だが、最近は一読しただけでは分からない、少しひねりの利いたものが好まれるようだ。
一つ一つの話はとても短い。だが、思い込みや前提を巧みに利用し、予想外のヒヤリとする「オチ」を次々と繰り出してくる。隠された意味に気づいた時にぞっとする仕掛けだ。分からない人のために、「種明かし」も小さく収録。それを読んで改めて本文に戻ると、ああそういうことだったのかと発見もある。
「怖い」ショートショート69編。きっと誰もが、とびきりの「ぞっとする話」に出会えること請け合い。

115中の書評を表示しています 101 - 115