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ミステリの祭典

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鐘は歌う

作家 アンナ・スメイル
出版日2018年11月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 8点 まだ中学生(仮)
(2019/06/23 10:29登録)
ヒューゴー賞、ネビュラ賞と並ぶ三大賞の一つ世界幻想文学大賞を受賞した英国のファンタジー小説。
舞台は「大崩壊」によりがれきの街と化したロンドン。朝晩の鐘の音が人々から不安を取り除き秩序をもたらしている。両親を亡くして農村を出てロンドンを訪れたサイモンは、不思議な目を持つ少年と出会い・・・。
サイモンの視点で進む物語冒頭から謎だらけ。だが次第に音楽が意思伝達手段として用いられていることや、すぐに人々の記憶が薄れてしまうことなどが明らかになってゆく。
著者はロンドン大学で英文学の博士号を所得したニュージーランド出身の詩人で、本作で小説家デビューを果たした。詩作で培った手腕を発揮し、歌うような文章で独特の世界観を構築している。

No.1 7点 糸色女少
(2019/03/25 20:00登録)
「大崩壊」なる出来事によって、多くの文明が失われた近未来のロンドンを舞台にした正統派ファンタジー。
町並みなどには「現代」の面影が残っているものの、この世界では言葉が力を失い、ほとんどの人は文字が読めず、単に記号にしか見えなくなっている。
そして言葉や文字の代わりに力を持っているのは音楽。音は人々になすべきことを教え、旋律は意味だけでなく感情をも統御する。しかし文字がない世界では、私的な記憶は失われやすく、観念的で複雑な思考も育たない。それは個性や自我も自覚し難いということでもある。
自由と秩序、故人と公の在り方を鋭く問いかけるドラマは、間違いなく現代の神話と言えるでしょう。

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