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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:958件

プロフィール| 書評

No.758 4点 死体をどうぞ
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/10/20 09:47登録)
ドロシー・セイヤーズ第七作。人好きのしない気難しい女流作家と、贅を極め、女の嗜好も悪食珍味(「フクザツなお味ぃ」)志向になったか、彼女のストーカーと化した大富豪「貴族探偵」。偶然出くわした死体を巡る真相を求めて、計34章に及ぶ「証言?」が続く。退屈な前作「五匹の鰊」と違い、超高級(一見お断り)床屋などユーモア小説として面白い。ミステリとしては・・クロフツtrafficアリバイトリック標準。あの時、女が死体を見つけていなければ、犯行目的は外していたが、ばれることもなかった、てなヒネリ落ちがgood。
※最新中華ミステリの「色覚異常」、90年前の当作の「血友病」、相も変わらず優性遺伝ネタが好きね、ミステリ。


No.757 8点 厳冬之棺
孫沁文
(2023/10/17 22:28登録)
” ついに現る!中国のジョン・ディクスン・カー ”
て、ことで、お通し2皿に、大皿3ディッシュの密室フルコース、さらに犯人Whoツイスト一皿付き・・太好了!
      「地」見立て、入口水没密室に、1点。
      「水」見立て、犯人消失密室に、3点。 
      「空」見立て、頭部切断密室に、2点。                 
      そこに、先付け密室と嬰児殺しネタへ+2点。犯人ドンデン返しは・・むしろ残念で -1点。
      さらに、密室を前面に出す態度に好感、1点おまけ。計、8点。
このサイトで知り初めて読んだが、何か大らかやね、中華ミステリ。大和民族よりも人間がスレてないのか、漢民族。猟奇殺人SMネタは許されているのね、中共検閲。
※「ガンダム」「ウルトラマン」日本料理店etc・・作者、日本マーケット狙ってんのかな、考えすぎか・・・再見!


No.756 6点 髑髏の檻
ジャック・カーリイ
(2023/10/15 23:17登録)
親に捨てられ地下へ売られ、拷問の様な過酷な幼少期訓練を得て、ローマ剣奴や闘犬闘鶏の如く、「地下格闘家」となった男達・・タイガーマスク「虎の穴」やね。残虐ここに極まる連続殺人との連結や如何に・・肛門から腸内にぶち込まれた灼熱コテ棒!(๏Д⊙)!!って・・・。今回は相棒の女刑事と情事に落ちる主人公・・女検死医や女報道記者、毎度ながら三十路四十路の曲者女がお好きで、大人の男やねえ・・。 あのペットの超混血犬「ミックスアップ(!)」がよいな。
※「永遠の仔」「白夜行」アンドリュー・ヴァクス、このところ同主題の小説を偶々思い出すが、巷でも新興宗教・アイドル事務所の、似た様な茎=年少者「虐待」報道が喧しい・・今までがスルーし過ぎだったのかもね。


No.755 4点 屍鬼
小野不由美
(2023/10/13 08:09登録)
「これ採点しよ思ったまま数年すぎた」作品その三。半ば閉ざされた山里集落を舞台にした、人間vs「吸血鬼」「人狼」のサスペンスロマン。生血しか食せず闇でしか生きられない吸血鬼はイヤだが、人間の食生活も可能で日光も平気、その上に永世可なら、もう神状態じゃん「人狼」。


No.754 7点 山妣
坂東眞砂子
(2023/10/13 07:58登録)
「これ採点しよ思ったまま数年すぎた」作品その二。雪山深くに生息する伝説の山姥・・中世近代~現代「父系権威家族」日本のアンチテーゼの如く伝承された・・山姥の生きた浪漫物語。別に本格ミステリでもなんでもないが、敬意を表して点数大いにオマケ。


No.753 4点 永遠の仔
天童荒太
(2023/10/13 07:56登録)
これを採点しよう思っているうちに数年が経ってしまった。同年の何かの賞(?)争いで「白夜行」に勝った(負けた?)とか。話としてはあっちの方が全然面白かった。ミステリとしては・・うーん、「意外なWho」を評価点として掬い・・。多くの読者から自身の過去を綴った手紙が寄せられ、「自分は、傷を負った人々の為に存在する作家だと自覚した」とか。その自覚が、優れたミステリを紡ぎ出す結果に繋がる事を、願って已まない。
※最近の喧しい「ジャニーズ問題」報道と、偶々、このサイト評でアンドリュー・ヴァクスを眼にして・・彼も同じ事に拘っていた・・この作品思い出した。


No.752 4点 チョールフォント荘の恐怖
F・W・クロフツ
(2023/10/09 21:32登録)
クロフツ第二十七作。資産家弁護士の撲殺事件。互いの利便の為に弁護士と「契約」再婚した女を視点に、女の愛人や、十二分な動機持つ被雇用者等のWhoダニット。「本格派」でも「社会派」でも「変態派」でもない、「人生派 (名言やね解説者)」ミステリ。フレンチ視点転回の後半はいつものパターンで・・わが「本格派 σ( ̄^ ̄) エッヘン!」採点基準では・・
せいぜいこの点数かな、「人生派」。


No.751 5点 赤毛のストレーガ
アンドリュー・ヴァクス
(2023/10/08 07:28登録)
ああ、このシリーズ読んでたなぁ。何とかマスティフ(だったか)てな犬とは思えない怪物メス犬や、ボードに躰を乗せて道を漕いで行く上半身だけ男、巨人ぬりかべ武術家、マッドな武器発明家ら異形仲間が実に良かった。ハードボイルド言うより、バットマン風アメコミ半ダークヒーロー物だったな。


No.750 6点 あなたは誰?
ヘレン・マクロイ
(2023/10/06 22:09登録)
ヘレン・マクロイ第四作。二重人格に色覚異常・・今ではベタ過ぎるネタが中央に居座わり、当時(真珠湾攻撃の頃なんだよな)は斬新なネタだったのかな。イケメン上院議員と裏で操る妻(クリントン&ヒラリーみたい(..))、ニューヨークのクラブ歌手女(「今晩会える?」「んな先の事分からない」に出てきそ)、女流通俗ロマンス作家とその息子の青年医師、議員の姪にして医師の幼馴染娘、甘党食い意地男、空想上の女と会話する少年・・登場人物タイトに絞って、相当高いぞ、りいだびりてぃ。ミステリで「別人格」出しちゃうと、双子ネタなみにズッコケる事多いが、そこはシンプルかつ巧みに物語が編まれてて点数オマケ。色盲ネタの伏線&ロジックが鮮やかにプレゼンされてたら、7点付けても良かった。


No.749 8点 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件
白井智之
(2023/09/30 11:56登録)
作者第七(連作短編集含め)長編。「ナミ」のミステリならば、メインネタで出て来るレベルの密室トリックを、オードブル・八寸と言うより付だし・お通しの如く初っ端から軽いジャブで放ち、本編に入り、なんだ、「フツウ(ホメ言葉よ)」のミステリも書けるんじゃん、白井智之・・・と思わせといて・・・ウォっーとお!!!


No.748 3点 五匹の赤い鰊
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/09/29 06:52登録)
ドロシー・セイヤーズ第六作。釣り人か絵描きしかいない(!)村。トラベルメーカーの画家が撲殺されて、容疑者は6つの原因・・民族感情、妻を巡る嫉妬、名誉、釣り場争い、敷地境界抗争、他一つ・・による六人の画家だが、うち五人はニセ物=「赤い鰊」。ニセ油絵アリバイ工作、巻頭詳細地図、丁寧な時刻表、オマケに異色の読者挑戦状まで付いている。にしても、超クロフツ、なんと退屈(必ずしも否定だけの意味でなく)なミステリ小説・・「黄色い部屋」「学寮祭の夜」なみに・・英国の暇な読書士ならば余裕演じて楽しめるだろうが・・
※「わっしは捜査しとるがです」「けんど濃厚だがでのう」等、和訳者工夫してるが、スコットランド方言のニュアンス再現難しいなぁ。我が国で、小地方の方言を笑い嚙み殺して「見下す」のと同様なのか、イングランド - スコットランド関係。なんか、違う気が・・・。


No.747 7点 黒い塔
P・D・ジェイムズ
(2023/09/24 22:07登録)
海と霧の断崖に建てられた、曰くある”黒い塔”付き半宗教的介護施設。自己陶酔信仰の経営者、狷介・奇矯・固陋な男女入所者と看護介護者たち。病気療養を兼ねて訪れた詩人警視が出会う、過去現在の”怪死”・・自殺?事故?の連続。ベートーヴェン弦楽四重奏15番あたりの最も"シブい"部分だけで奏でられるような、気だるく重苦しく、かつグロコミカルな小説。いったい何が起きているの?Whatダニットが、僅か最終部で一気にミステリ解明しながらサスペンスエンドする。サスペンスともかくミステリ真相は肩透かしで、”黒い塔”はじめトリッキー味もなく残念。が、小説としてのシブみ味に点数オマケ加算。ドロシー・ジェイムズなんで。


No.746 4点 暗黒女子
秋吉理香子
(2023/09/23 16:48登録)
おおおお、探してみたら、この文庫本は家の本箱にあった!
(よく見ると「殺人鬼フジコ」「鬼畜の家」とか他作家のもいろいろあるなあ。何で採点してないんだろ。)


No.745 5点 聖母
秋吉理香子
(2023/09/23 16:28登録)
おお、こんなのあったなあ。何年か前、図書館で「一気読み」した記憶が。テクニカルな「叙述もの」だったはず。
あの頃、この手のや、女流イヤミスもの・・フジコなんたら・・とかに凝ってたなぁ。
※記憶なんで、点数は暫定でご勘弁を m(__)m


No.744 6点 ささやく真実
ヘレン・マクロイ
(2023/09/19 22:48登録)
ヘレン・マクロイ第三作。被害者は富豪の超美魔女。海辺の屋敷に集った、と言うより、集わされた容疑者の男女・・ジゴロの如き美形年下夫、夫の元妻、女の会社の支配人、冴えない科学者、ワケあり風の娘・・。殺人事件が起こり、全ての容疑者には、それぞれにもっともな動機があり、タイトでロジカルでスリリングで、しかも情感タップリなWhoダニットミステリ。偶々、殺人現場を「目撃(実は耳撃)」した探偵の摘発したWhoと、その根拠や如何に・・・
※ 時期を逸したロマンは「グロテスクに堕ちる」・・哀れやのう、老いらくの恋・・男女問わず。
※ 「恥(はじ)」と「始(はじ)まる」・・訳者、工夫したなぁ。


No.743 5点 大菩薩峠
中里介山
(2023/09/18 20:46登録)
ついでにこれも。これは凄い。文庫本数十冊に及ぶ超大長編浪漫。剣豪小説・・ほぼチャンバラ劇画・・に始まり、信じがたいまでに複雑壮大化して行く主題・・ついには、ファンタジー・信仰書のレベルに・・結局、未完・・ミステリアスに終わるけれどね。そこがまたよい。


No.742 4点 邪宗門
高橋和巳
(2023/09/18 20:44登録)
「飢餓海峡」の事書いてたら突然これも思いだした。こっちは、明治期に誕生し、昭和にかけて大教団化しながら、国より凄惨な弾圧を受けて崩壊した新興宗教「ひのもと救霊会」(大本教て言う実際のモデルあり)の群像劇。もちろん本格でもなんでもないが、宗教自体がミステリなんで、そのテーマの稀有壮大さに敬意を表して・・でも、山本周五郎水上勉なんかより小説は下手だなあ、高橋和巳。


No.741 3点 飢餓海峡
水上勉
(2023/09/18 20:39登録)
「飢餓海峡」! おお懐かしい。松本清張「ゼロの焦点」や映画(清張でなく)「砂の器」、「白夜行」や「火車」なんかと同様に、The twilight(darkでなく) Side of The modan日本 の半ピカレスク浪漫やね。


No.740 4点 毒を食らわば
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/09/16 23:06登録)
ドロシー・セイヤーズ第五作。最近評したクロフツ諸作や、それ以上に後期クイーン作品に頻出する有罪判決条件の、必要条件:「犯人で在り得る(その可能性がある)」と、十分条件:「犯人でない事は在り得ない(明晰判明である)」の問題が、冒頭の裁判シーンで鮮やかに描かれる。判事自身、被告側には無罪証明(=必要条件の否定=「在り得ない」の証明)の義務はなく、検察にこそ有罪の十分条件(=明晰判明)の証明が求められると宣言をする・・・すなわち、「疑わしき状況」だけでは無罪、があくまでも大原則だ、と。が、そんな裁判の大原則では話にならず、主役「貴族探偵」は、被告以外の真犯人の有罪を明晰判明にする事(できたか?)で、被告の無罪を証明せざるを得ない、そりゃ、ミステリ小説だからね。


No.739 7点 殺す手紙
ポール・アルテ
(2023/09/15 22:55登録)
ヘレン・マクロイ「月明かりの男」同様、これまたナチススパイもの。親友からの手紙に書かれた奇怪な指示どおりに、目的の見えない行動を起こす傷心の男。幻覚の如き危機展開と悪夢の様な逃走劇。舞台ドンデン返しに予期せぬ殺人事件が混入し、ディーヴァーツイストをテンポ良くショートカットさせたジェットコースター展開が、あっと言う間に二重三重返りして、ラスト落ちも決まる。こういうのも書くんだな、ポール・アルテ。

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